理学療法士は小児領域に関わるの?小学生~高校生にとって必要な理学療法とは

理学療法が必要な小学生~高校生について

理学療法を行う前に、患者さんである理学療法が必要な就学児について知っておきましょう。

まず患者さんは、普通学校と養護学校のどちらに通うかということを選択できます。最近は普通学校での受け入れが増えてきており、一般の子どもと同じ条件で育てたいというご両親が選択するケースが多いです。

その選択に関しても、理学療法士はアドバイスを求められるでしょう。患者さんが普通学校で無理なく過ごしていけるかどうか、設備面で調整ができるかどうか、どの程度のサポートが必要なのかなどの説明を行います。

また、普通学校・養護学校のどちらに進んだとしても、学校とご両親と連携していくことが必要です。就学児にとって学校で過ごす時間は病院に来る時間よりもとても長く、また家庭で療育する時間よりも学校を含めた療育の時間が長くなります。

理学療法士も学校での様子をしっかりとヒアリングしていきましょう。学校へ出向くことは難しいケースが多いので、学校の先生方に来ていただくこともあります。ビデオや写真を活用することも良いでしょう。

小学生から高校生という、心身ともに大きく成長している時期の理学療法では、単にリハビリの経過がどうであるという内容以外に、精神的なケアも求められます。患者さんだけでなくご家族に対してもサポートが必要であったり、修学旅行などのイレギュラーなケースにも対応することがあります。

学校・家庭・専門病院・地元病院間での連絡を取り合い、それぞれの不安を解消し、患者さんがそれぞれの時期を楽しく過ごしていけるよう考えていきましょう。

小学生~高校生への理学療法とは

小学生から高校生へ行う理学療法は、第一に『学校内を自分で好きなように過ごせるようにすること』を目指します。自分で歩くことだけでなく、歩行器や杖や車椅子を使うなどしてなるべく長い時間・長い距離を自分で自由に行き来できるようサポートします。そのためにはスキルだけでなく体力も必要になります。

そして次に、患者さんの言語能力・身体能力にもよって、自分の意志や主張を他の人に伝えられるように教えていきます。常に両親が隣にいる幼児期から、日常生活・社会生活を一人立ちしていくために必要な能力です。絵カードや文字盤、ビックマックやメッセイジメイト、トーキングエイド等、必要なリハビリテーションを行っていきます。

こういった学習を進めて行く上で、患者さんの運動障害だけではなく高次脳機能障害にも配慮をしましょう。字を読むことはできるが、書けない、絵が描けない、着衣を何度教えてもできない等の症状を、おぼえる気がない・やる気がないと判断してしまってはいけません。怒りっぽい・甘えがひどい・すぐに忘れる、なども症状の一部です。症状を見極め、学校生活に適応していけるようサポートしましょう。

予防領域の理学療法

小学生から高校生へ行う理学療法は、すでに症状のある子どもに対してだけではありません。予防の面でも子どもに対してリハビリテーションを行うことがあります。

例としては、肥満予防や肥満の子どもに対しての運動指導がまず上がります。小児肥満の約70%は成人肥満やメタボリックシンドローム(以下、メタボ)に移行すると言われています。

小児の肥満は、テレビ、ゲーム、塾通いなどの時間が多くなり昔よりも運動の機会が減っていることが原因の一つです。また、食生活の乱れもあるでしょう。楽しみながら体を動かし、家族と協力しながら生活習慣を直していくことが必要です。

また、いわゆる『猫背』と言われる脊柱後弯症も予防指導が求められています。姿勢が悪かったり、筋力が低下していると起こります。運動療法と生活指導により改善が期待されます。

そして逆に、運動のしすぎで体を壊してしまう子どももいます。スポーツで負担をかけすぎてしまったり、オーバーワークしてしまったりして成長障害を受けてしまうケースです。そのため、理学療法士は体育の授業等での運動機能評価や部活動などでのオーバーユースによる成長期の運動器障害の予防やアドバイスなども求められます。

理学療法というと病院で高齢者を診ることが主に思われがちですが、子どもに対しての理学療法も重要な分野です。

これから理学療法士を目指す方は、将来具体的にどういった患者さんと関わっていきたいか考えてみましょう。子どもが好き・子どもと関わる仕事がしたい!という方に小児分野はおすすめです。多感な時期に心身の成長をサポートしていくため、責任も大きいですがやりがいのある仕事ですよ。

作業療法士と理学療法士の需要と供給、就職状況、年収の違いについて

作業療法士と理学療法士の数と需要

作業療法士は、回復と心のリハビリテーションにおけるスペシャリストです。人の生活におけるあらゆる活動を本人が望む生活ができるようにしていく治療やサポートを行います。

理学療法士は、身体機能のリハビリテーションのスペシャリストです。身体に障がいのある人の基本的な動作能力の回復や維持、悪化の予防などを行う仕事です。具体的には、起き上がりや立ち上がり、歩行の訓練など、運動的手段や電気的刺激・マッサージなどの物理的手段によって運動機能の回復を図ります。

では、現在実際に作業療法士・理学療法士の資格を持っている人はどのくらいいるのでしょうか?

作業療法士は94,295人・理学療法士は172,084人(2020年度時点)です。

作業療法士の方が理学療法士に比べて有資格者の人数が少ないです。同じ年に国家資格になっていますが、それまでリハビリテーションと言えば身体機能を指すイメージがあったことと、理学療法士の方が養成校の数も多く、受験者数・合格者数ともに多い結果となりました。

ですが、超高齢化社会を迎えている現代においては、活躍の場は作業療法士の方が増えていく余剰があると言えるでしょう。介護との融合や小児領域への展開など、まだまだ作業療法士の需要は増加していきます。

男女割合から見た就職状況について

作業療法士・理学療法士の男女比を見てみると、作業療法士は女性の割合が若干多く6割、逆に理学療法士は女性4割・男性が6割という結果になりました。

就職のしやすさで言うとどちらが良いということはなく、男女平等に就職活動をすることができ、実際に仕事をしてみても大きな男女差はありません。

2つの資格で男女割合の違いがある理由は、仕事内容が作業療法士の方が女性的・女性が得意な分野が多いことがあげられます。

理学療法士は運動機能のリハビリテーションが主で、筋肉トレーニングなどに興味のある方が目指しやすい傾向にあります。対して作業療法士は、生活に即した細かなリハビリテーションが多く、また芸術的な技能があると良いこともあり女性的な側面が要求されやすいのかもしれません。

もう1点、日本では女性の高齢者率が高いため、対象となる患者さんに女性が多く、異性よりも同性の方がより生活に寄り添いやすいという理由も言われています。

就職してからの女性の待遇については、女性の割合の多い作業療法士はもちろんのこと理学療法士についても近年目覚ましく改善されています。結婚・出産してからも仕事を続ける女性が増えていることから、作業療法士・理学療法士がパートタイムで働きやすくなるようにルールが改定されてきました。

作業療法士・理学療法士はどちらも夜勤がなく、ワークライフバランスがとりやすい職業です。病院の受付時間は決まっているので残業も少なく、平均月5時間という調査結果も出ていますよ。

作業療法士と理学療法士の年収の違い

作業療法士と理学療法士に就職したいと考えるなら、年収のことが気になりますよね。

職業別の年収は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査で見ることができます。しかし、「理学療法士および作業療法士」というくくりで発表されているため、2資格は同じ数値になっています。

作業療法士・理学療法士ともに、平均年収は31.8歳で約407万円でした。月額給与は約28万円・ボーナスは年間約70万円です。

2資格をまとめて発表されていますが、分野別の年収比較でみると医療分野が474万円であるのに対し、介護分野は419万円と50万円以上の開きがあります。

一般病院や総合病院といった医療機関はスタッフ数が多い事や教育なども盛んである一方、介護分野は十分な人員を確保しづらいという側面があるようです。

どちらの資格の年収が多いかというよりは、就職する場所によって違いがあります。

理学療法士と作業療法士の違いについて、就職以外の観点からも気になる方は以下のページをご覧ください。

理学療法士と作業療法士の違いとは? >>

理学療法士とパラリンピックとの関わり方と障がい者スポーツトレーナー

理学療法士はパラリンピックに関われるの?

理学療法士として働く人の中で、スポーツ業界で活躍する人は多くいます。スポーツトレーナーの資格は民間資格なので、国家資格である理学療法士を取得しておくと有利に働くためです。

ただし理学療法士としてプロのスポーツ選手と関わることができる人はほんの一握り。特に働き始めてすぐに専属トレーナーとなることは難しく、まずは病院などで働き実力を身に付けることから始め、そしてスポーツトレーナーになるために必要な知識を、理学療法士の資格にプラスして、勉強する必要があります。

また、地域のクラブスポーツ施設でボランティアとして活動するなどして、実績を上げていくことも有効です。

理学療法士としてスポーツ業界で活躍できる人材になり、周りに認めてもらえるようになれば、パラリンピックといった国際的な場面に携われる可能性も十分に可能です。

障がい者スポーツトレーナーについて

理学療法士の資格にプラスアルファで、パラリンピックに関わるための資格を取得するとしたら、障がい者スポーツトレーナーが良いでしょう。

障がい者スポーツトレーナーとは、障がい者のスポーツ活動に必要な安全管理および競技力の維持・向上のサポートするためにある資格です。いわば、障がい者のためのアスレティックトレーナーといったところでしょうか。

日本全国で資格取得者はだいたい140名(2016年のデータ)くらいしかいない、まだまだ認知度の低い資格ではあります。

資格を取るには競技団体の推薦を頂いた上で「障がい者スポーツトレーナー養成講習会に参加することが条件です。講習会に参加できる要件を公式ホームページより引用します。(日本障がい者スポーツ協会|指導者育成講習会・研修会)

(1)次の1)を満たす者:A1)有資格種別

日本体育協会公認アスレティックトレーナー (2)次の1)、2)、3)を全て満たし、当協会障がい者スポーツトレーナー部会の審査を受け、会長が認めた者:B

1)有資格種別
1理学療法士 2作業療法士 3柔道整復師 4あん摩マッサージ指圧師 5灸師 6鍼師 7その他の資格(1~6の資格と同等のものと主催者が判断したもの)

2)推薦団体 (公財)日本障がい者スポーツ協会登録競技団体、都道府県・指定都市障がい者スポーツ協会・障がい者

スポーツ指導者協議会のいずれかの団体においてトレーナーとしての活動を有し、推薦がある者。 3)活動実績

1)に挙げた公認資格に関係した日常活動を2年以上有すること。 ※「日常活動」とは、トレーナー活動を職業として、または職業に近い形で実施している事を示す。

(3)2次講習会からの再受講者:C
平成 27・28 年度の1次検定試験を合格した者
※ C 区分については、再度 2 次講習会からの受講と、2 次検定試験の受験が必須となる。

研修会は1次と2次があり、1次試験は筆記、2次試験は実技試験です。

2次試験では普段どのようにして障がい者スポーツトレーナーとして活動しているかが出てしまいます。「資格を取りに行く」のではなく、日常から障がい者スポーツトレーナーとしての意識・心構えで過ごす習慣をつけることが大切です。

パラリンピックでの理学療法士の役割

東京パラリンピックの盛り上がりに伴って、理学療法士として関わりたいと思う方も増えていくでしょう。障害者の社会参加や自立を支援する理学療法士の役割は大きく、幅広い活動が期待されています。

上記のトレーナーとしての仕事だけでなく、チームスタッフ、レフェリー、シャペロン(ドーピング検査の補助をする人)など、理学療法士が活躍できる仕事は多岐に渡ります。

「障害者のスポーツ」は、特別なスポーツが存在しているのではなく障害のためにできないことをルールの変更や用具の工夫により補って行うスポーツです。クラス分け、用具の開発・工夫、コンディショニングなどの分野で、多くの理学療法士が活躍しています。

スポーツは生活を豊かにしてくれるものであり、心身の健康を与えてくれるものです。それを支えることができる理学療法士は非常にやりがいのある仕事と言えるでしょう。