作業療法士国家試験の合格率【第60回】過去の推移と難易度を解説

作業療法士国家試験の合格率【第60回】過去の推移と難易度を解説

監修:日本リハビリテーション専門学校 山田 慶(作業療法士)

 

2025年2月24日に実施された第60回作業療法士国家試験の合格発表が2025年3月21日に行われました。
本記事では、この最新の合格率をはじめ、過去の合格率の推移を詳しく解説します。

厚生労働省の発表資料や関連サイトで確認できる、新卒・既卒といった属性別のデータや、理学療法士国家試験との比較を通じて、試験の全体像や難易度を多角的に分析します。
これから受験を控える方や、資格取得を目指す方が、試験の現実性を把握するための情報を提供します。

 

【2025年最新】第60回作業療法士国家試験の合格率と結果概要

2025年3月、厚生労働省より令和7年に実施された第60回作業療法士国家試験の結果が発表されました。
今回の試験では、全体の合格率は85.8%となり、例年通りの水準を維持する結果となりました。
このセクションでは、具体的な合格者数や合格のボーダーラインなど、2025年最新の試験結果の詳細について解説します。

 

合格者数と全体の合格率

第60回作業療法士国家試験の受験者数は5,693名、そのうち合格者数は4,887名でした。この結果、全体の合格率は85.8%となりました。前年の第59回試験の合格率は84.4%であったため、第60回試験は前年より合格率が上昇しました。

受験者数や合格者数に多少の変動はあるものの、合格率自体は長年にわたり80%前後で安定しており、適切な学習を積んだ受験者の多くが合格を手にしています。

 

合格のボーダーラインとなる基準点

作業療法士国家試験の合格基準は絶対評価で定められており、例年変動する可能性があります。第60回作業療法士国家試験の場合、合格基準は総得点279点中168点以上、かつ実地問題120点中43点以上でした。この基準は、例年総得点の約6割が目安とされていますが、具体的な点数は試験回ごとに発表されるため、最新の情報を確認することが重要です。

したがって、一部の難問に固執するよりも、基本的な問題を確実に得点していく戦略が重要です。このラインを超えることで、他の受験者の成績に関わらず合格となります。

 

 

 

過去10年間の作業療法士国家試験における合格率の推移

作業療法士国家試験の難易度を把握するためには、直近の結果だけでなく過去からの長期的な推移を見ることが重要です。
過去10年間を振り返ると、合格率は70%台から80%台で変動しており、特にここ数年は80%を超える高い水準で安定しています。
例えば、第59回は85.0%、第58回は83.8%、第56回は80.5%、第49回は77.5%でした。

このような推移から、試験の難易度が大きく変動することは少ないと読み取れます。

 

合格率は例年80%前後で安定している

作業療法士国家試験の合格率は、長期間にわたり高い水準で安定しているのが特徴です。
具体的に近年の推移を見ると、2024年(第59回)は85.0%、2023年(第58回)は83.8%、2022年(第57回)は80.5%でした。
このように、毎年80%を超える受験者が合格しており、養成校で必要な知識と技術をしっかり身につければ、十分に合格を狙える国家試験であると言えます。

極端な難化や易化は考えにくく、着実な学習が合格の鍵となります。

 

合格基準点は総得点の約6割が目安

作業療法士国家試験の合格基準は、総得点のおおむね6割以上と定められています。具体的には、一般問題と実地問題を合わせた総得点(278点)のうち167点以上、かつ実地問題(117点)で41点以上という2つの条件を満たす必要があります。

この点数は例年、総得点の約60%が目安とされており、合格基準は変動する可能性があります。そのため、周りの出来を気にする必要はなく、自身が合格基準を超えることに集中して学習を進めることが求められます。

 

 

 

【属性別】作業療法士国家試験の合格率を徹底比較

作業療法士国家試験の合格率は、受験者の属性によって大きな差が見られます。
特に、新卒受験者と既卒受験者では、合格率に著しい違いがあります。

また、出身養成校が大学か専門学校かによっても、合格実績に差が生じることがあります。
ここでは、属性ごとの合格率を比較し、その背景にある要因を分析することで、試験の特性をより深く理解していきます。

 

新卒(現役)受験者の合格率は90%超と高水準

新卒、つまり現役学生の合格率は非常に高い水準にあります。
第59回試験では、新卒受験者の合格率は95.3%に達しました。
これは、養成校でのカリキュラムに沿って体系的に学習を進め、試験対策のサポートも受けやすい環境にあることが大きな要因です。

また、学習習慣が途切れることなく試験に臨めるため、知識が定着しやすい点も強みとなります。
このデータから、学校での学びを忠実にこなすことが合格への最も確実な道であることがわかります。

 

既卒受験者の合格率は40%前後と低い傾向

新卒者と比較して、既卒受験者の合格率は低い傾向にあります。近年の例を見ると、2023年実施の第112回看護師国家試験では36.5%、2024年実施の第113回では30.4%でした。この背景には、働きながら国家試験の勉強時間を確保することの難しさや、一度学習から離れたことで知識を呼び戻すのに時間がかかる点が挙げられます。

また、モチベーションの維持や最新の試験傾向の把握といった面でも不利になりがちです。既卒で合格を目指すには、計画的な学習と強い意志が不可欠です。

 

 

 

理学療法士の国家試験と合格率や難易度を比較

作業療法士と同じリハビリテーション専門職である理学療法士の国家試験は、比較対象としてよく挙げられます。
第59回国家試験では、理学療法士の合格率は全体で89.2%(新卒94.9%、既卒45.9%)でした。
作業療法士の合格率85.0%(新卒93.9%、既卒45.0%)と比較すると、理学療法士の方がやや高い年もありますが、両者に大きな難易度の差はないと言えます。

試験範囲や専門性は異なりますが、国家試験合格に求められる学習レベルは同等と考えてよいでしょう。

 

作業療法士の国家試験は本当に難しい?合格に向けたポイント

作業療法士の国家資格は、80%前後という高い合格率だけを見ると簡単に取得できると誤解されがちです。
しかし、この数値は大学や専門学校で3年以上専門教育を受け、卒業(見込み)が認められた受験者に限定されたものです。

ここでは、数字だけでは測れない試験の難易度の実態と、合格を確実にするための重要なポイントを解説します。

 

合格率の高さから見る試験の難易度

作業療法士国家試験の合格率が80%前後と高いのは、受験資格を得るまでのハードルが影響しています。
養成校では3〜4年間にわたり専門的な知識や技術、臨床実習などを履修し、卒業試験に合格しなければ受験できません。
つまり、受験者はすでに一定の学力水準に達しているため、合格率が高くなる傾向にあります。

決して試験内容が易しいわけではなく、養成課程での地道な努力の積み重ねが合格につながることを示しています。

 

 

 

不合格になるケースから学ぶべきこと

不合格になる主な原因は、基礎知識の定着不足と応用力の欠如にあります。
特に、複数の知識を組み合わせて解答する必要がある実地問題で、基準点に満たないケースが多く見られます。
また、過去問演習が不足していると、時間配分に失敗したり、特有の出題形式に戸惑ったりすることも敗因となります。

苦手分野を放置せず、なぜその解答になるのかを深く理解する学習が重要です。
模擬試験などを活用して、本番同様の環境で問題を解く練習も不可欠です。

 

作業療法士の国家試験に関するよくある質問

作業療法士の国家試験を目指すにあたり、多くの受験生が共通の疑問や不安を抱えています。
ここでは、次回の試験の難易度予測、万が一不合格だった場合の対策、そして合格後の手続きといった、特によく寄せられる質問について、簡潔に回答していきます。

 

 

 

第61回(2026年)の国家試験の難易度はどうなると予想されますか?

例年の傾向から、第61回(2026年)の国家試験の難易度も大きくは変わらないと予想されます。
合格率は80%前後で推移し、合格基準点も総得点の約6割という基準は維持される可能性が高いです。
ただし、出題傾向に細かな変化が見られる可能性はあるため、過去問研究を怠らず、基礎から応用まで幅広く対策することが合格への鍵となります。

 

国家試験に不合格だった場合、来年に向けて何をすべきですか?

まずは、今回の試験の自己採点結果を詳細に分析し、自身の弱点や失点の原因を明確に把握することが重要です。
その上で、予備校やオンライン講座を利用して効率的に学習を進める、あるいは働きながら勉強時間を確保するなど、自分に合った学習計画を立て直しましょう。
一人で抱え込まず、学校の先生や仲間に相談することも有効です。

 

試験に合格した後の免許申請手続きについて教えてください

試験合格後、作業療法士として業務を行うには免許申請が必要です。
手続きは、合格証書を受け取った後、必要書類(免許申請書、医師の診断書、戸籍抄本または住民票の写しなど)を揃え、住所地の保健所(一部地域では県庁)に提出します。
申請時には登録免許税として9,000円の収入印紙が必要となります。

 

まとめ

第60回作業療法士国家試験の合格率は85.8%で、例年通り高い水準を維持しました。過去の推移を見ても、合格率はおおよそ80%台で安定しています。合格基準点は毎年変動しますが、総得点の約6割が目安となることが多いです。ただし、これは養成校での学習を修了した上での数値であり、特に既卒者の合格率は低いことから、国家試験対策の重要性がうかがえます。

新卒・既卒を問わず、計画的な学習と確実な知識の定着が合格への道筋となります。

監修:日本リハビリテーション専門学校 山田 慶(作業療法士)

 

 

 

理学療法士・作業療法士を目指すあなたに知って欲しい実技試験『OSCE(オスキー)』を徹底解説

理学療法士・作業療法士を目指すあなたに知って欲しい実技試験『OSCE(オスキー)』を徹底解説

監修:日本リハビリテーション専門学校 吉葉 則和(理学療法士)

 

理学療法士や作業療法士を目指す過程には、専門的な知識を問う筆記試験だけでなく、実践的なスキルを評価する実技試験が存在します。その代表的なものが『OSCE(オスキー)』です。
この試験は、学生が臨床実習に臨む前に、理学療法や作業療法の実践に必要な能力が備わっているかを確認する重要な関門です。
この記事では、OSCEがどのような試験なのか、その目的や対策、そして乗り越えることで得られるメリットについて詳しく解説します。

 

 

OSCE(オスキー)とは?理学・作業療法士の学生が受ける客観的臨床能力試験

OSCE(オスキー)とは、「ObjectiveStructuredClinicalExamination」の略称で、日本語では「客観的臨床能力試験」と訳されます。
この試験は、医療系の学生が臨床実習に臨むにあたり、知識・技能・態度の3つの側面から、臨床能力が一定水準に達しているかを客観的に評価するものです。

その意味は、教員の主観に左右されない、標準化された基準で実践力を測ることにあります。
多くの養成校で導入されており、理学療法士・作業療法士になるための重要なステップの一つとして位置づけられています。

 

 

なぜOSCE(オスキー)を実施するの?その目的を解説

OSCEを実施する最大の目的は、学生が臨床実習において患者に安全で適切な対応ができるか、その基本的な能力を事前に評価することにあります。
実際の臨床現場では、知識だけでなく、それを正確に実践する技術や、患者と良好な関係を築く態度が不可欠です。
OSCEでは、標準化された評価項目と評価基準を用いることで、これらの能力を客観的に測ることが可能です。

これにより、学生は自身の到達度を具体的に把握でき、不足している部分を実習前に補強する機会を得られます。
医療の質と安全性を担保し、学生を安心して臨床の場へ送り出すための重要な評価制度として機能しています。

 

 

OSCE(オスキー)はどんな形式?試験の流れと特徴

OSCEの試験は、複数の「ステーション」と呼ばれる小部屋を順番に移動しながら、各部屋で異なる課題に取り組む形式が一般的です。
各ステーションでは、模擬患者(教員や学生が演じる)を相手に、特定の状況設定のもとで課題が与えられます。

試験の内容は、問診や検査、基本的な治療手技など、臨床で頻繁に遭遇する場面が問題として出題されることが特徴です。
制限時間内に課題をこなすやり方で、評価者はチェックリストを用いて学生のパフォーマンスを評価します。
この形式は、医療面接や身体診察、特定の専門領域の技術など、多岐にわたる能力を体系的かつ網羅的に評価できる利点があります。

 

 

どこが見られる?OSCE(オスキー)で評価される主なポイント

OSCEでは単に手技の正確さだけでなく医療専門職としての総合的な能力が評価されます。
評価される主なポイントは知識技術態度の3つです。
技術面では血圧測定といったバイタルサインの検査や関節可動域測定などの専門的な手技の正確性が問われます。

また包帯交換のような場面では衛生的な配慮を示す無菌操作も評価対象です。
さらに患者への配慮ある言葉遣いや分かりやすい説明といったコミュニケーション能力も非常に重視されます。
これらを通じて安全かつ効果的に理学療法作業療法を実践できるかどうかが総合的に判断されます。

 

 

 

OSCE(オスキー)に合格するための効果的な対策と勉強法

OSCE(オスキー)は、知識の暗記だけでは対応が難しい実践的な試験です。
そのため、合格には日々の学習の積み重ねと、繰り返し行う実技練習が不可欠となります。
本番で慌てずに実力を発揮するためには、計画的な準備が求められます。

ここでは、OSCEに合格するための効果的な対策と勉強法を3つの視点から紹介します。
これらの方法を実践し、自信を持って試験に臨めるようにしましょう。

 

 

日々の授業や実習内容をしっかり復習する

OSCE対策の基本は、日々の授業や実習で学んだ内容を確実に自分のものにすることです。
試験で出題される課題の多くは、これまでの学習内容に基づいています。
特に実技を伴う授業では、手技の一つひとつの手順とその根拠をセットで理解しておくことが重要です。
教科書や配布資料を見直すだけでなく、なぜその動作が必要なのか、どのような点に注意すべきかを常に考えながら復習する習慣をつけましょう。

知識と技術がしっかりと結びついていると、応用力が身につき、本番で予期せぬ状況に直面しても冷静に対処できます。
地道な復習の積み重ねが、合格への確実な土台を築きます。

 

 

友人や仲間と模擬患者役でロールプレイングを繰り返す

OSCEのスキルを向上させるには、実際に体を動かして練習することが最も効果的です。
クラスの友人や仲間と協力し、セラピスト役と模擬患者役を交代しながらロールプレイングを行いましょう。
繰り返し練習することで、一連の動作がスムーズになり、自然なコミュニケーションが取れるようになります。

また、他者に見てもらうことで、自分では気づきにくい癖や改善点を客観的に指摘してもらえます。
時間を計りながら本番さながらの環境で練習すると、時間配分の感覚も身につきます。
実践的な練習を重ねることが、知識を確かな技術へと変える鍵です。

 

 

教員や先輩から客観的なアドバイスをもらう

自主練習に加えて、教員やOSCEを経験した先輩といった第三者からフィードバックをもらう機会を設けましょう。
経験豊富な指導者は、評価のポイントや学生が間違いやすい点を熟知しており、的確なアドバイスを提供してくれます。
自分たちの練習だけでは見落としていた改善点や、より良いパフォーマンスのためのヒントを得られるはずです。

また、試験本番の雰囲気や独特の緊張感について事前に話を聞くことで、心の準備もできます。
客観的な視点を取り入れて自分の技術や態度を修正し、試験に対する不安を自信に変えていくことが大切です。

 

 

試験を乗り越えた先に得られるものとは?OSCE(オスキー)のメリット

OSCE(オスキー)は、学生にとって乗り越えるべきハードルであると同時に、専門家として成長するための貴重な機会でもあります。
試験対策に真剣に取り組む過程で得られるものは、単に合格という結果だけではありません。

ここでは、OSCEを経験することで得られる具体的なメリットを3つ紹介します。
これらのメリットを理解すれば、試験へのモチベーションも高まり、より有意義な学びへとつながるでしょう。

 

 

臨床現場で通用する実践的なスキルが身につく

OSCEに向けた学習プロセスは、座学で得た知識を実践的なスキルへと転換させる絶好の機会です。
模擬患者との対話を通じて、相手に合わせた説明の仕方や、不安を和らげるための声かけなどを具体的に学びます。
また、手技の練習を繰り返すことで、正確性やスムーズさが増し、臨床現場で求められる安全で効率的な動きが身につきます。

このように、OSCEの対策を通して、実際の患者を想定した総合的な対応能力を体系的にトレーニングできます。
この経験は、後の臨床実習や就職後も直接的に役立つ、確かな実践力となります。

 

 

 

自分自身の強みや弱みを客観的に把握できる

OSCEは、標準化された明確な基準に基づいて評価が行われるため、自分自身の能力を客観的に見つめ直す良い機会となります。
試験結果や練習中のフィードバックを通じて、技術的な正確性、コミュニケーション能力、時間管理など、多角的な視点から自分の得意な点と不得意な点が明らかになります。

例えば、手技は正確にできる一方で、患者への説明が不足しがちである、といった具体的な課題が見つかることもあります。
この自己分析の結果をもとに、その後の学習計画を修正し、弱点を克服していくことで、よりバランスの取れた能力を持つ専門家へと成長できます。

 

 

臨床実習や国家試験に自信を持って臨めるようになる

OSCEという客観的な基準をクリアできたという事実は、学生にとって大きな自信となります。
「自分は臨床現場に出るための基本的なスキルと態度を身につけている」という確信は、目前に迫る臨床実習への不安を軽減させます。
自信を持って実習に臨むことで、より積極的な姿勢で学び、多くの経験を吸収できるようになるでしょう。

また、OSCEで問われる実践的な内容は、理学療法士・作業療法士の国家試験で出題される実地問題とも関連が深いです。
そのため、OSCEの学習は国家試験対策の基礎固めにもなり、将来に向けた盤石な土台を築くことにつながります。

 

 

まとめ

OSCE(オスキー)は、理学療法士や作業療法士を目指す多くの学生が、臨床実習の前に受ける実技試験です。この試験は、学生の知識、技術、態度を客観的に評価し、臨床現場で必要とされる実践的能力の習得状況を確認する目的があります。

OSCEを乗り越える過程は、単なる試験対策にとどまらず、自身のスキルを磨き、弱点を克服する貴重な成長機会となります。効果的な対策には、日々の復習に加え、仲間との反復練習や教員からの指導が欠かせません。そのため、OSCE対策を含めた実践的な教育や、学生一人ひとりへのサポートが手厚い専門学校を選ぶことが、将来の活躍につながる重要な一歩となります。

 

監修:日本リハビリテーション専門学校 吉葉 則和(理学療法士)

 

 

作業療法士の人数【最新】将来性と今後の推移をデータで解説

 

作業療法士の人数【最新】将来性と今後の推移をデータで解説

監修:日本リハビリテーション専門学校 阿部 英人(作業療法士)

作業療法士の人数は年々増加傾向にあり、2024年時点で有資格者数は11万人を突破しました。
この人数の推移は、リハビリテーション分野の需要拡大を反映している一方で、将来のキャリアを考える上での重要な指標となります。

この記事では、最新の統計データに基づき、作業療法士の現状と今後の展望について多角的に解説します。

 

 

【2024年最新】日本の作業療法士の有資格者数は約10.5万人

厚生労働省の統計によると、日本国内の作業療法士の有資格者数は年々増加し、2024年3月時点の累計では11万8,715人に達しています。
この増加は、高齢化社会の進展に伴うリハビリテーション需要の高まりが大きな要因です。

本章では、有資格者数だけでなく、日本作業療法士協会の会員数、男女比、平均年齢、主な勤務先といった詳細なデータを通して、作業療法士の現状を詳しく見ていきます。

 

 

日本作業療法士協会の会員数は約6.5万人(2023年度時点)

作業療法士の有資格者数が11万人を超える一方で、一般社団法人日本作業療法士協会への加入者数は2024年度3月時点で約6.5万人となっています。
有資格者総数と会員数に差があるのは、協会への加入が任意であるためです。

協会に加入することで、最新の学術情報の入手、研修会への参加、賠償責任保険への加入といったメリットが得られます。
非加入者には、臨床から離れている人や、他の団体に所属している人などが含まれると考えられます。
この会員数は、現在活発に活動している作業療法士の規模を示す一つの目安と見ることができます。

 

 

男女比は女性が6割以上で多い傾向

作業療法士の男女比は、女性が約64%、男性が約36%と、女性の割合が高いことが特徴です。
これは、リハビリテーション専門職の中でも顕著な傾向といえます。

理由としては、対象者一人ひとりの生活に寄り添い、きめ細やかなコミュニケーションを通じて支援を行う作業療法の特性が、女性の関心を引きやすいことなどが挙げられます。
また、医療や福祉の分野は女性が多く活躍しており、勤務形態の柔軟性からライフイベントに合わせた働き方がしやすいことも、女性の割合が高い一因と考えられています。

 

 

平均年齢は約36歳で若手から中堅が中心

作業療法士の平均年齢は、日本作業療法士協会の統計によると約36.1歳です。
年齢構成を見ると、20代から40代までの若手・中堅層が全体の約8割を占めており、活気のある職種であることがうかがえます。

これは、1990年代以降に養成校が大幅に増え、毎年多くの新しい有資格者が誕生していることが背景にあります。
若い世代が多いため、新しい知識や技術の導入に積極的で、業界全体の新陳代謝が活発に行われているのが特徴です。
今後、経験を積んだ中堅層が管理職や教育者としてキャリアアップしていくことが期待されます。

 

 

勤務先の約7割は病院などの医療機関

作業療法士の主な勤務先として最も多いのは、病院やクリニックといった医療機関であり、全体の約7割を占めています。
特に、急性期から回復期、維持期(療養)まで、さまざまな段階の患者を支援する病院が中心です。
次いで、介護老人保健施設や介護老人福祉施設などの介護保険関連施設が約2割を占めます。

その他にも、訪問看護ステーションからの訪問リハビリ、発達障害のある子どもを支援する児童福祉施設、精神科デイケア、特別支援学校など、活躍の場は多岐にわたります。
近年は、地域包括ケアシステムの推進により、在宅生活を支える分野での需要も高まっています。

 

 

 

作業療法士の人数が増え続けている2つの背景

作業療法士の人数が過去数十年にわたり一貫して増加している背景には、大きく分けて2つの要因が存在します。一つは、供給側の視点である「養成校の増加」です。これにより、毎年安定して新しい有資格者が輩出される仕組みが確立されました。

もう一つは、需要側の視点である「社会的なニーズの高まり」です。急速な高齢化を背景に、リハビリテーションを必要とする人が増え続けていることが、専門職としての作業療法士の必要性を押し上げています。

 

 

背景1:養成校の増加に伴う国家試験合格者数の上昇

作業療法士の人数増加の直接的な要因は、資格取得に必要な養成校の数が大幅に増えたことです。
1990年代には全国で20校程度だった養成校は、規制緩和などを背景に急増し、現在では200校を超えるまでになりました。

この結果、作業療法士国家試験の受験者数も増加し、毎年5,000人前後の新しい作業療法士が誕生しています。
養成校の増加は、多くの人材をリハビリテーション分野に供給する原動力となった一方で、卒業生の質の担保や就職先の確保といった新たな課題も生み出しています。
国家試験の合格率は比較的高い水準で推移しており、安定した人材供給が続いています。

 

 

背景2:高齢化によるリハビリテーション需要の高まり

もう一つの大きな背景は、日本の急速な高齢化に伴うリハビリテーション需要の増大です。
団塊の世代が後期高齢者となる2025年以降、医療や介護を必要とする人口はさらに増加すると見込まれています。

脳卒中後の後遺症や認知症、加齢による心身機能の低下など、高齢者が直面する問題に対して、作業療法士の専門的な支援は不可欠です。
病気やけがからの機能回復だけでなく、住み慣れた地域でその人らしい生活を継続するための「予防」や「生活支援」の役割が重視されるようになり、病院内にとどまらない多様な場面で作業療法士の活躍が求められています。

 

 

作業療法士の将来性|2040年の需要と供給のバランスを予測

作業療法士の人数が増加を続ける中、その将来性、特に需要と供給のバランスについて関心が高まっています。
2025年問題やその先の2040年問題を見据え、リハビリテーション専門職の必要性は増す一方ですが、「人数が増えすぎて飽和状態になるのではないか」という懸念も聞かれます。

ここでは厚生労働省の推計データを基に、将来の需給バランスを予測し、作業療法士が今後も価値を発揮し続けるためのキャリアの方向性を考察します。

 

 

「作業療法士は飽和状態?」供給数が需要数を上回る可能性

作業療法士の人数が増え続けることで、将来的に供給が需要を上回る「飽和状態」に陥る可能性が指摘されています。
厚生労働省の推計によると、現在のペースで有資格者が増え続けた場合、2040年頃には供給数が需要数を上回るという予測も出ています。

特に、養成校や病院が集中する都市部では、求人に対する応募者が増え、就職の競争率が高まる傾向が見られます。
ただし、これはあくまで現状の働き方を前提とした推計です。
後述するように、新たな分野へ職域を拡大していくことで、需要を創出し、飽和状態を回避できる可能性は十分にあります。

 

 

 

 

厚生労働省の推計データで見る今後の人数推移

厚生労働省が公表した「理学療法士・作業療法士の需給推計」では、今後の人数推移と需要について具体的な数値が示されています。
この厚生労働省のデータによると、理学療法士・作業療法士を合わせた供給数は2040年には現在の約1.5倍に達すると予測されています。
一方で、高齢者人口の増加などを踏まえた需要数も伸びるものの、その伸びは供給数の増加ペースに追いつかない可能性が示唆されました。

この推計は、作業療法士が自身のキャリアを考える上で、長期的な視点を持つことの重要性を示しています。
厚生労働省は、今後のサービス提供体制の変化も考慮する必要があるとしています。

 

 

介護保険分野や精神科領域など新たな活躍の場が拡大

供給過多への懸念がある一方、作業療法士の新たな活躍の場は着実に拡大しています。
従来の医療機関中心の働き方から、介護保険分野における通所・訪問リハビリテーション、認知症高齢者への支援、地域包括支援センターでの介護予防事業など、地域に根差した役割がますます重要になっています。

また、精神科領域におけるうつ病からの復職支援(リワーク)、発達障害のある子どもの療育、司法領域での社会復帰支援なども専門性が求められる分野です。
さらに、企業の健康経営支援や、世界の開発途上国でのリハビリテーション技術協力など、グローバルな視点での活躍も期待されています。

 

 

【都道府県別】作業療法士の人数が多い地域ランキング

作業療法士の分布は、全国一様ではありません。
就職や転職を考える際には、全国的な人数の動向だけでなく、地域ごとの需給バランスを把握することが重要です。
人口が多い都市部に集中する傾向がある一方で、人口あたりの人数を見ると異なる実態が見えてきます。

ここでは、作業療法士の人数を「総数」と「人口10万人あたりの人数」という2つの視点から都道府県別にランキング化し、その地域的な特徴を解説します。

 

 

総数で見る|最も人数が多いのは東京都

厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、作業療法士の総数が最も多いのは東京都で、次いで大阪府、神奈川県、埼玉県といった大都市圏が上位を占める傾向にあります。
2021年から2022年にかけてのデータを見てもこの傾向は変わりません。

これは、人口の多さに加え、病院やリハビリテーション施設、養成校がこれらの地域に集中しているためです。
多くの求人が見つかりやすい一方で、求職者も多いため、就職や転職における競争は他の地域に比べて激しくなる可能性があります。
希望する分野や条件によっては、近隣の県も視野に入れた情報収集が有効です。

 

 

人口10万人あたりで見る|最も人数が多いのは高知県

総数とは対照的に、人口10万人あたりの作業療法士数を見ると、全く異なる順位になります。
最も多いのは高知県で、徳島県、宮崎県、熊本県など西日本の県が上位に多くランクインする傾向があります。

これは、地域の高齢化率の高さや、リハビリテーション医療に力を入れている県の医療政策などが影響していると考えられます。
47都道府県の中で、必ずしも総数が多い地域が、人口比で見ても多いわけではない点は注目すべきです。
このデータは、その地域で作業療法士がどれだけ充足しているか、あるいは地域住民がリハビリテーションサービスを受けやすい環境にあるかを示す一つの指標となります。

 

 

作業療法士の人数に関するよくある質問

作業療法士の人数について調べているとさまざまな疑問が浮かび上がります。
特に同じリハビリテーション専門職である理学療法士との比較や人数の増加が就職市場や給与にどのような影響を与えるのかといった点は多くの人が関心を持つテーマです。

この章では作業療法士の人数に関連するよくある質問に対して簡潔に回答します。

 

 

理学療法士と作業療法士ではどちらの人数が多いですか?

理学療法士の方が作業療法士よりも人数は多く、有資格者数は理学療法士が約20万人であるのに対し、作業療法士は約10万人と倍近い差があります。
これは、養成校の数や一校あたりの定員数が理学療法士の方が多いことが主な理由です。

人数が少ない分、作業療法士の専門性が求められる場面、特に精神科領域や発達障害領域、生活行為に特化した支援が必要な場面では、その希少性から安定した需要があります。

 

 

作業療法士の人数は増えていますが、就職や転職は難しくなりますか?

都市部を中心に求人倍率は低下傾向にあり、就職や転職の競争は以前より激しくなっています。
しかし、全体として難しくなったわけではありません。

特に、地方の医療機関や介護施設、訪問リハビリテーション、発達支援分野などでは依然として人材が不足しており、需要は高い状況です。
専門性を磨いたり、需要の高い分野での経験を積んだりすることで、有利な条件での就職・転職は十分に可能です。

 

 

人数が増えると作業療法士の給料は下がりますか?

人数の増加が直ちに給料の低下に結びつくわけではありませんが、将来的には影響が出る可能性があります。
需要に対して供給が大幅に上回る状況になれば、待遇面での競争が激化し、給与水準が上がりにくくなることも考えられます。

しかし、管理職への昇進や、認定・専門作業療法士などの資格取得による専門性の証明、需要が高い分野への転職など、個人のキャリアプラン次第で給与を維持・向上させることは可能です。

 

 

まとめ

作業療法士の人数は、養成校の増加と高齢化に伴う需要の高まりを背景に、一貫して増加を続けています。
2024年時点での有資格者数は11万人を超え、今後もこの傾向は続くと予測されます。
厚生労働省の推計では、2040年頃に供給が需要を上回る可能性も示唆されており、将来的な飽和を懸念する声もあります。

しかし、これは現在の働き方を前提とした予測であり、活躍の場は医療機関だけでなく、介護予防、発達支援、就労支援など多岐にわたって拡大しています。
地域による人数の偏りも存在するため、キャリアを考える上では、全国的な動向と地域ごとの需給バランスの両方を把握することが求められます。

監修:日本リハビリテーション専門学校 阿部 英人(作業療法士)