
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の違いとは?役割や略称(PT/OT/ST)を解説
監修:日本リハビリテーション専門学校 五十嵐千代子(作業療法士)
理学療法士とは身体の基本的な動作能力の回復を図る専門家、作業療法士とは心と体の両面から日常生活や社会復帰を支援する専門家、言語聴覚士とは言葉や聞こえ、飲み込みの専門家です。
これら3つの職種はリハビリテーションの専門職であり、それぞれPT、OT、STという略称で呼ばれます。
この記事では、それぞれの役割や仕事内容の違いについて詳しく解説します。
理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)はリハビリテーションの専門職
理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)は、いずれも病気やけが、加齢などによって心身の機能に障がいを持つ人々を支援する、国家資格を持つリハビリテーションの専門職です。
それぞれの専門分野からアプローチし、患者がより自立した生活を送れるよう支援するという共通の目標を持っています。
3職種が連携することで、患者一人ひとりの状態に合わせた、多角的で質の高いリハビリテーションを提供することが可能になります。
この専門性の高い役割は、医療や介護、福祉の現場で不可欠な存在となっています。
【一覧】理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の担当領域と役割の違いを比較
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は、それぞれ専門とする領域と役割に明確な違いがあります。
理学療法士は「立つ」「歩く」といった基本的な動作能力の回復を担い、作業療法士は食事や入浴といった日常生活の応用動作から社会復帰までを支援します。
一方、言語聴覚士は「話す」「聞く」「食べる」といったコミュニケーションや嚥下機能の改善を専門とします。
この違いを理解することで、各専門職がどのような場面で活躍するのかが明確になります。
理学療法士(PT)とは|「立つ・歩く」を支える基本動作の専門家
理学療法士(PhysicalTherapist、略してPT)とは、けがや病気、加齢などによって身体機能が低下した人々に対し、「起き上がる」「座る」「立つ」「歩く」といった基本的な動作能力の回復や維持、悪化の予防を目的としてリハビリテーションを行う専門職です。運動療法や物理療法(温熱、電気など)といった専門的な手段を用いて、身体機能の改善を図り、自立した日常生活を送れるよう支援します。
理学療法士(PT)の具体的な仕事内容
理学療法士の主な仕事は、患者一人ひとりの身体状況や目標に合わせてリハビリテーション計画を立案し、実行することです。
具体的には、筋力増強や関節可動域の改善を目的とした運動療法、痛みや循環の改善を図る温熱療法や電気刺激などの物理療法を行います。
また、歩行訓練や杖、車いすといった福祉用具の選定・使用方法の指導も重要な役割です。
さらに、在宅復帰を目指す患者に対しては、住宅改修に関する助言や、家族への介助方法の指導も行い、生活環境の整備を支援します。
理学療法士(PT)が対象とする主な疾患や状態
理学療法士が対象とするのは、新生児から高齢者まで幅広い年齢層にわたります。
具体的な疾患としては、脳梗塞や脳出血といった脳血管疾患、脊髄損傷、パーキンソン病などの中枢神経系疾患が挙げられます。
また、骨折や変形性関節症、腰痛といった整形外科疾患、心筋梗梗塞後の心臓リハビリテーション、肺炎やCOPDなどの呼吸器疾患も対象です。
このほか、スポーツによるけがからの復帰を目指すアスリートや、加齢により筋力やバランス能力が低下した高齢者など、その領域は多岐にわたります。
作業療法士(OT)とは|日常生活から社会復帰まで支援する心と体の専門家
作業療法士(OccupationalTherapist、略してOT)とは、身体や精神に障がいのある人々に対し、その人らしい生活を取り戻すための支援を行う専門職です。
食事や着替え、入浴といった日常生活動作から、家事や仕事、趣味活動まで、あらゆる「作業」を通じてリハビリテーションを行います。
単に身体機能の回復を目指すだけでなく、精神面にも働きかけ、社会とのつながりを再構築する役割を担い、個人の尊厳や生きがいを支えます。
作業療法士(OT)の具体的な仕事内容
作業療法士とは、対象者一人ひとりの価値観や生活背景を尊重し、目標となる「作業(その人が行う活動)」の実現を支援する専門職です。
具体的な仕事内容として、身体機能や精神機能の回復を図るとともに、具体的な生活動作の練習や使用する道具の工夫、家屋環境へのアドバイスなど作業が行いやすくする多角的な視点で関わっていきます。
食事や着替えなどの日常生活動作(ADL)の訓練、仕事復帰に向けた職業前訓練、子どもの遊びや学校支援、認知症の進行予防プログラムなども行います。
さらに、障がいに合わせて生活環境を調整するための自助具の提案・作成や、家族への助言も重要な業務です。
また手工芸やゲーム、レクリエーションなどを治療手段として用いる面白さもあります。
作業療法士(OT)が対象とする主な領域
作業療法士が関わる領域は、身体障害、精神障害、発達障害、老年期障害の主に4つに大別されます。
身体障害領域では、脳卒中や骨折後の患者に対し、日常生活動作の再獲得を支援します。
精神障害領域では、統合失調症やうつ病の患者の社会復帰をサポートをします。
発達障害領域では、子どもの発達段階に応じた遊びや学習の支援を行います。
老年期障害領域では、認知症の高齢者がその人らしい生活を続けられるよう支援する役割を担い、活動範囲は非常に広範です。
言語聴覚士(ST)とは|「話す・聞く・食べる」を支えるコミュニケーションの専門家
言語聴覚士(Speech-Language-HearingTherapist、略してST)とは、言葉によるコミュニケーションや、食事の際の飲み込み(嚥下)に問題を抱える人々を支援する国家資格を持つ専門家です。
脳卒中後の失語症や、子どもの言葉の発達の遅れ、加齢による聴力の低下や食べ物の飲み込みにくさなど、多岐にわたる症状に対して、検査や評価を通じて原因を特定し、一人ひとりに合わせた訓練や指導、助言を行います。
言語聴覚士(ST)の具体的な仕事内容
言語聴覚士は、コミュニケーションや嚥下の問題に対し、専門的な訓練や指導を行う国家資格職です。
主な仕事として、失語症や構音障害を持つ人への言語訓練、子どもの言語発達支援、吃音の改善指導が挙げられます。
また、聴覚障害を持つ人に対しては、補聴器のフィッティングや人工内耳の調整、コミュニケーション手段の指導を実施します。
さらに、嚥下障害のある人には、安全に食事をとるための訓練や食事形態の調整、姿勢の指導も行い、生活の質の向上を支援します。
資格取得の難易度は他のリハビリ職と比較してやや高い傾向にあります。
言語聴覚士(ST)が対象とする主な症状
言語聴覚士が対象とする症状は多岐にわたります。
まず、言葉の問題として、脳卒中などが原因で言葉を思い出したり話したりすることが難しくなる「失語症」や、発音が不明瞭になる「構音障害」、声が出しにくくなる「音声障害」があります。
また、子どもの言葉の発達の遅れや吃音も専門領域です。
聞こえの問題である「聴覚障害」や、注意・記憶・遂行機能などが低下する「高次脳機能障害」も支援対象です。
さらに、食べ物や飲み物がうまく飲み込めなくなる「嚥下障害」に対して、専門的なリハビリテーションを提供します。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の働き方や資格について比較
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は、それぞれ国家資格を必要とする専門職であり、資格取得の難易度や活躍の場に違いがあります。
高齢化社会の進展に伴い、いずれの職種も医療・介護現場での需要は高まっています。
給与水準に大きな差はありませんが、それぞれの専門性を活かせる職場は異なります。
ここでは、これら3職種の国家試験合格率、給与、そして主な勤務先での役割を比較し、それぞれの働き方の特徴を解説します。
国家試験の合格率から見る資格取得の難易度
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の国家試験合格率は毎年変動します。過去5年間のデータを見ると、理学療法士は79〜89%、作業療法士は80.5〜85.8%で推移しており、おおむね80%前後と言えるでしょう。一方、言語聴覚士の合格率は、2024年(令和6年)で72.4%であり、また2022年度のデータでは50%台の年も含まれるため、一概に70%前後で推移しているとは言えません。
この数字だけ見ると言語聴覚士の難易度が高く見えますが、合格率は養成校の教育レベルや受験者層にも影響されるため、一概に資格取得の難しさを表すものではありません。
いずれの資格も、養成校で専門知識と技術を3年以上学び、国家試験に合格することで、それぞれの専門的な役割を担うことが可能になります。
3職種の給料や平均年収の傾向
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の給料や平均年収は、いずれも400万円台前半から中盤が相場となっており、職種による大きな差は見られません。
ただし、これは全体の平均値であり、実際の収入は勤務先の規模や種類(病院、介護施設、訪問リハビリなど)、経営母体、地域によって異なります。
また、経験年数を重ねて管理職になったり、専門性を高めて認定資格を取得したりすることで、給与アップが期待できます。
これらの専門職になるには、国家資格の取得が前提となります。
活躍できる職場とそれぞれの勤務先での役割
3職種ともに病院やクリニック、介護老人保健施設、訪問リハビリテーション事業所などで活躍しています。
理学療法士は整形外科クリニックやスポーツ関連施設、作業療法士は精神科病院や就労支援施設、言語聴覚士は小児療育センターや耳鼻咽喉科など、それぞれの専門性がより求められる職場もあります。
これらの専門職になるには国家資格が必須であり、勤務先によって求められる役割は異なります。
多様なキャリアパスの中から、自分の興味や専門性を活かせる場所を選択することが可能です。
リハビリ現場での連携体制|チームで患者を支える3職種の関わり
リハビリテーションの現場では、患者一人ひとりの目標達成に向けて、多職種が連携するチームアプローチが基本となります。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は、医師や看護師、ソーシャルワーカーなどと密に情報を共有し、それぞれの専門資格に基づく視点から意見を出し合います。
例えば、脳卒中の患者に対し、理学療法士が歩行能力の向上を図り、作業療法士が食事や更衣などの日常生活動作を指導し、言語聴覚士が円滑なコミュニケーションや安全な食事摂取を支援するなど、役割を分担しながら一体となってサポートします。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に関するよくある質問
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を目指す方や、リハビリテーションに関心のある方から寄せられることの多い質問をまとめました。
それぞれの仕事への適性や、社会人からのキャリアチェンジ、複数の資格取得の可能性について解説します。
進路選択やキャリアプランを考える際の参考にしてください。
自分には理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のうちどの仕事が向いていますか?
身体の構造や運動に興味があるなら理学療法士、人の生活や心に寄り添うことに関心があるなら作業療法士、言葉やコミュニケーション、食べることに興味があるなら言語聴覚士が向いている傾向があります。
まずは各職種の役割を深く理解し、自身の興味や関心がどこにあるかを考えることが重要です。
未経験の社会人からでもこれらの資格を目指すことはできますか?
可能です。多くの養成校では社会人入試制度を設けており、多様な経歴を持つ人が学んでいます。
ただし、学業と仕事の両立や学費の準備など、計画的な準備が必要です。夜間部を設置している学校や、社会人向けのサポートが充実している学校もあるため、自身のライフスタイルに合った学校選びが大切になります。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の資格を複数取得することは可能ですか?
可能です。例えば、理学療法士の資格取得後に作業療法士の養成校に入り直すことで、両方の資格を得られます。
ただし、それぞれ国家試験の受験資格を得るために養成校で3〜4年学ぶ必要があり、時間と費用がかかります。
ダブルライセンスは専門性やキャリアの幅を広げますが、強い意志と計画性が求められます。
まとめ
理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)は、それぞれが独自の専門領域を持つリハビリテーションの専門職です。
PTは「立つ・歩く」などの基本動作、OTは日常生活から社会参加までの応用動作と精神面、STは「話す・聞く・食べる」といったコミュニケーションと嚥下機能の専門家として、患者の自立した生活を支援します。
これらの職種は互いに連携し、チームとしてアプローチすることで、より質の高いリハビリテーションを提供します。
この記事では、3職種の役割や働き方の違いについて解説しました。
監修:日本リハビリテーション専門学校 五十嵐千代子(作業療法士)






















