作業療法士の就職先を知る|病院以外の仕事内容や失敗しない選び方を解説【3】

作業療法士の就職先一覧|病院以外の仕事内容や失敗しない選び方を解説【3】

監修:田中克一(作業療法士)

 

「作業療法士の就職先について知る」連載企画 3回目。今回は児童福祉分野|子どもの成長と発達をサポートする作業療法士の仕事について紹介します。

 

第1回から読む

 

児童福祉分野|子どもの成長と発達をサポートする

児童福祉分野での作業療法士は、生まれつき、または病気や事故により発達に課題を抱える子どもたちを支援します。
主な職場は児童発達支援センターや放課後等デイサービスなどです。
ここでの役割は、治療というよりも「療育」の視点が強く、遊びや学習といった子どもにとって身近な活動を通して、運動能力や感覚、認知機能、社会性などの発達を促すことです。
保護者と密に連携を取り、家庭での関わり方について助言を行うことも重要な業務に含まれます。
一人ひとりの子どもの成長に長期的に寄り添い、その可能性を最大限に引き出す手助けをする、非常にやりがいのある分野です。

 

児童発達支援センター

児童発達支援センターは、主に就学前の、発達に支援が必要な子どもたちが通う施設です。
作業療法士は、子どもの発達段階や特性を評価し、一人ひとりに合わせた療育プログラムを提供します。
ブランコやボールプールなどの遊具を使った遊びを通して、身体のバランス感覚や力のコントロールを養う「感覚統合療法」や、粘土遊びやハサミを使う活動で手先の器用さを育む訓練などを行います。
個別支援だけでなく、小集団での活動を通して、他者との関わり方やルールを学ぶ機会も設けます。
保育士や言語聴覚士など他の専門職とチームを組み、子どもの全面的な発達をサポートします。

放課後等デイサービス

放課後等デイサービスは、障害のある小学生から高校生までの子どもたちが、学校の授業終了後や夏休みなどの長期休暇中に利用する通所支援施設です。
作業療法士は、子どもたちが将来、社会の一員として自立した生活を送るためのスキル獲得を支援します。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)を通じて対人関係のスキルを学んだり、集団でのゲームや創作活動を通して協調性や自己表現力を育んだりします。
また、個々の興味関心に応じた活動を提供し、自己肯定感を高めることも大切な役割です。
学校や家庭とは異なる第三の居場所として、子どもたちの成長を見守り、支援していきます。

 

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次回は 【4】その他|多様なフィールドにおける作業療法士の仕事 について紹介します

作業療法士の就職先を知る|病院以外の仕事内容や失敗しない選び方を解説【2】

作業療法士の就職先一覧|病院以外の仕事内容や失敗しない選び方を解説【2】

監修:田中克一(作業療法士)

「作業療法士の就職先について知る」連載企画 2回目。今回は介護・福祉施設での作業療法士の仕事について紹介します

第1回から読む

介護・福祉施設|利用者の日常生活に寄り添い支える

 

介護・福祉施設における作業療法士は、高齢者や障害を持つ人々が、住み慣れた地域でその人らしい生活を継続できるよう支援する役割を担います。
医療機関のように身体機能の回復を主目的とするのではなく、利用者の現在持っている能力を最大限に活かし、生活の質(QOL)を維持・向上させることに重点を置きます。
具体的な業務は、食事や入浴といった日常生活動作の訓練、福祉用具の選定や住環境への助言、レクリエーションの企画・実施など多岐にわたります。
利用者やその家族と深く関わりながら、長期的な視点で生活全体をサポートする姿勢が不可欠です。

介護老人保健施設(老健)

介護老人保健施設は、病状が安定した高齢者が病院から退院した後、在宅復帰を目指してリハビリテーションを受ける施設です。
医療施設と在宅の中間的な役割を担っています。
作業療法士は、利用者が自宅での生活に戻れるよう、食事、入浴、トイレ、着替えといった具体的な日常生活動作の能力向上を目指した訓練を実施します。
また、家屋調査を行い、手すりの設置や段差の解消といった住宅改修の提案や、福祉用具の選定も行います。
医師や看護師、介護職員など多職種と連携し、医療と介護の両面から利用者の自立を支援する重要な役割を担っています。

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホーム(特養)は、原則として要介護3以上の認定を受け、常時介護を必要とする高齢者が生活する施設です。
「終の棲家」としての側面も持ち、リハビリテーションの目的は機能回復よりも生活の質の維持・向上に置かれます。
作業療法士は、利用者が持つ能力を活かして、その人らしい生活が送れるよう支援します。
具体的には、集団での体操やレクリエーションを企画して心身機能の低下を防いだり、食事の際に適切な食器を選んだり、楽な姿勢で着替えができる方法を介護職員に指導したりします。
日々の生活に彩りを加え、穏やかに過ごせる環境づくりに貢献する仕事です。

デイサービス・デイケア

デイサービス(通所介護)とデイケア(通所リハビリテーション)は、利用者が自宅から日帰りで通い、様々なサービスを受ける施設です。
作業療法士は、利用者の心身機能の維持・向上や社会的な孤立感の解消を目的に、個別または集団でのリハビリテーションを提供します。
手工芸や園芸、調理などの作業活動を通じて、楽しみながら身体機能や認知機能の維持を図ります。
また、自宅での生活をより安全で快適にするための相談に応じ、自助具の紹介や生活環境へのアドバイスも行います。
利用者が住み慣れた地域で生き生きとした在宅生活を継続できるよう、多角的にサポートする役割が期待されます。

訪問リハビリテーション

訪問リハビリテーションでは、作業療法士が利用者の自宅に直接出向き、リハビリテーションを行います。
病気や障害により通院が困難な方が主な対象です。
実際の生活空間でリハビリを行うため、より実践的で効果的な支援を提供できるのが大きな特徴です。
例えば、自宅のキッチンで調理練習を行ったり、浴室で安全な入浴動作の練習をしたりします。
また、手すりの設置や福祉用具の選定、介助する家族への指導など、住環境の調整に関する助言も重要な業務です。
単独で判断を下す場面が多いため、豊富な臨床経験と高いコミュニケーション能力が求められます。

 

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次回は 【3】児童福祉分野|子どもの成長と発達をサポートする作業療法士の仕事 について紹介します

作業療法士の就職先を知る|病院以外の仕事内容や失敗しない選び方を解説【1】

作業療法士の就職先一覧|病院以外の仕事内容や失敗しない選び方を解説

監修:田中克一(作業療法士)

 

作業療法士の就職先は、病院をはじめとして介護施設や児童福祉施設など多岐にわたります。
近年では病院以外で活躍するケースも増えており、多様なキャリアパスを描くことが可能です。
そのため、それぞれの職場でどのような役割を担うのかを理解し、自身の適性や希望に合った就職先を見つけるための選び方を知っておく必要があります。
この記事では、作業療法士の主な就職先とその仕事内容、そして就職活動で失敗しないためのポイントを全4回にわたり解説します。

 

~ 作業療法士の仕事について ~

【1】医療施設の場合

【2】介護・福祉施設の場合 ※10/15公開予定

【3】児童福祉分野の場合 ※10/16公開予定

【4】その他|多様なフィールドでの就職 ※10/17公開予定

【5】ミスマッチを防ぐ!自分に合った就職先の選び方5つのポイント ※10/18公開予定

【6】内定を勝ち取る!作業療法士の就職活動を成功させるコツ ※10/19公開予定

 

 

作業療法士の主な就職先|約半数が病院などの医療機関で活躍

 

 

作業療法士の主な就職先として最も多いのは、病院やクリニックなどの医療関連施設です。
厚生労働省の調査によると、作業療法士の約半数が医療機関に勤務しており、その割合は依然として高い水準を維持しています。
次いで多いのが介護老人保健施設や特別養護老人ホームといった介護・福祉分野の施設です。
その他、発達障害児を支援する児童福祉施設や、行政機関、教育機関など、活躍の場は年々多様化しています。このように、資格を活かせるフィールドは非常に幅広いのが特徴です。

 

 

 

【フィールド別】作業療法士の就職先とそれぞれの仕事内容

作業療法士が活躍するフィールドは、大きく「医療機関」「介護・福祉施設」「児童福祉分野」「その他」の4つに分類されます。
最も代表的な就職先である病院などの医療機関では、病気やけがをした方の機能回復を支援します。
一方、介護施設では利用者の生活に寄り添い、児童福祉分野では子どもの成長をサポートするなど、領域によって役割や仕事内容は大きく異なります。
それぞれの特徴を理解し、自身の興味やキャリアプランと照らし合わせることが重要です。

 

第1回目の今回は作業療法士の【医療機関での仕事】について詳しく解説します。

 

 

 

医療機関|身体機能や精神機能の回復を支援する

医療機関で働く作業療法士は、病気や事故によって心身に障害を負った患者を対象に、リハビリテーションを提供します。
主な目的は、食事や着替え、入浴といった日常生活動作(ADL)の能力を再獲得し、社会復帰を支援することです。
医師や看護師、理学療法士など他職種と連携し、患者一人ひとりに合わせた治療計画を立てて実践します。
近年では、福祉用具メーカーなどの企業と協力し、患者の生活をより良くするための新しい機器やプログラム開発に関わることもあります。
専門的な知識と技術を用いて、患者の回復過程に深く関与する役割を担います。

 

 

一般病院・大学病院

一般病院や大学病院は、急性期から回復期、生活期(維持期)まで、幅広い病期の患者を対象とする点が特徴です。
脳神経外科、整形外科、内科、小児科、精神科など多様な診療科が存在するため、さまざまな疾患や障害を持つ患者のリハビリテーションを経験できます。
多岐にわたる症例に関わることで、総合的な知識と技術を習得したい人におすすめの職場です。
医師や看護師、コメディカルスタッフとのチーム医療が中心となり、密な連携が求められます。
多様な経験を積むことは、将来的なキャリアを考える上での大きな基盤となり、自身の専門性を見出すきっかけにもなります。

 

 

リハビリテーション専門病院

リハビリテーション専門病院は、大学病院などでの急性期治療を終えた患者が、在宅や社会への復帰を目指して集中的にリハビリを行う施設です。
主に回復期リハビリテーション病棟で、脳血管疾患後遺症や骨折後の患者を対象に、集中的な訓練を提供します。
給料は勤務先の規模や経験年数によって変動しますが、専門性を高めることでキャリアアップも期待できます。
求人情報を比較する際は、給料ランキングのような表面的な情報だけでなく、施設の理念や教育体制が自身の目指す方向性と合致しているかを見極めることが肝要です。

 

 

精神科病院

 

 

精神科病院における作業療法士は、統合失調症やうつ病などの精神疾患を抱える患者を対象とします。
主な目的は、症状の安定や対人関係能力の改善、日常生活への適応能力の向上を促し、その人らしい生活を取り戻す手助けをすることです。
手工芸、絵画、スポーツ、園芸といった様々な作業活動を治療手段として用い、患者の自信回復や社会参加意欲の向上を図ります。
新卒の作業療法士にとっては、精神科領域の専門知識を基礎から学び、患者の心に寄り添うコミュニケーションスキルを磨く絶好の機会となります。
長期的な視点で患者と関わり、回復過程を支援する点に大きなやりがいがあります。

 

 

クリニック(診療所)

クリニックは、外来患者を中心にリハビリテーションを提供する小規模な医療機関です。
整形外科クリニックでは、骨折後やスポーツ障害の患者を対象とした運動器リハビリテーション、発達障害を専門とするクリニックでは、子どもたちの感覚統合療法や日常生活動作の指導などを行います。
地域に根ざした医療を提供するため、患者一人ひとりと長期的に関わり、生活に密着した支援ができる点が魅力です。
病院に比べて求人数が限られる傾向にあるため、養成校に寄せられる求人情報を確認したり、クリニックが独自に開催する就職説明会に参加したりして、能動的に情報を集める姿勢が求められます。

 

 

 

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次回は【2】介護・福祉施設での作業療法士の仕事について紹介します