スポーツ理学療法士になるには?仕事内容や就職先、資格まで解説

 

スポーツ理学療法士になるには?仕事内容や就職先、資格まで解説

監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城武志(理学療法士)

スポーツ理学療法士は、アスリートの怪我の治療からパフォーマンス向上までを支える専門職です。
その仕事内容はリハビリテーションにとどまらず、怪我の予防やコンディショニング管理など多岐にわたります。

この記事では、スポーツ理学療法士になるための具体的なステップ、病院やプロチームといった主な就職先、必須となる理学療法士の国家資格、さらにキャリアアップに役立つ関連資格について詳しく解説します。

スポーツ理学療法士とは?一般的な理学療法士やトレーナーとの違い

スポーツ理学療法士とは、スポーツ活動によって生じた障害を持つ人や、パフォーマンス向上を目指すアスリートに対して、理学療法を用いて支援する専門家です。
一般的な理学療法士が病気や高齢など幅広い対象を扱うのに対し、スポーツ分野に特化している点が特徴です。

また、理学療法士とスポーツトレーナーは混同されがちですが、国家資格の有無が大きな違いです。
作業療法士は日常生活の動作回復を支援する点で役割が異なります。

アスリートを支える医療の専門家としての役割

スポーツ理学療法士は、アスリートの身体を医学的観点からサポートする医療の専門家です。
主な役割は、怪我からの回復を促すリハビリテーションですが、その基盤には解剖学や運動学といったスポーツ医学の深い知識があります。

医師の診断のもと、選手一人ひとりの状態や競技特性に合わせた専門的なプログラムを作成し、科学的根拠に基づいたアプローチで競技復帰を支援します。
また、怪我の予防やパフォーマンス向上に関しても、身体の仕組みを熟知した専門家として、トレーニング指導やコンディショニング管理を担い、アスリートが最高の状態で競技に臨めるよう支えます。

 

 

スポーツトレーナーとの目的と資格の違い

スポーツ理学療法士とスポーツトレーナーは、どちらも選手を支える存在ですが、その目的と資格に明確な違いがあります。
理学療法士の主な目的が、医師の指示のもとで怪我の治療やリハビリテーションといった医療行為を行うことであるのに対し、トレーナーは主に選手のコンディショニング管理やパフォーマンス向上、怪我の予防を目的とします。

最も大きな違いは資格であり、理学療法士は国家資格ですが、スポーツトレーナーに関連する資格の多くは民間資格です。
そのため、理学療法士はリハビリテーションの専門家、トレーナーはコンディショニングの専門家として、それぞれの領域で協力し合います。

スポーツ理学療法士の具体的な仕事内容

スポーツ理学療法士の仕事内容は、単に怪我を治療するだけでなく、多岐にわたります。
選手のコンディションを医学的視点から評価し、怪我からのリハビリテーションを計画・実行するのはもちろん、怪我を未然に防ぐための予防トレーニング指導も重要な業務です。

さらに、日々のコンディショニング管理を通じて選手のパフォーマンスを最大限に引き出すためのサポートも行います。
試合や練習現場では、怪我人が出た際の応急処置など、迅速な判断と運動知識が求められます。

怪我をした選手の競技復帰を支えるリハビリテーション

スポーツ理学療法士の中心的業務が、怪我をした選手に対するリハビリテーションです。
リハビリとは、単に身体機能の回復を目指すだけでなく、選手が再び最高のパフォーマンスで競技に復帰できるよう導くプロセスを指します。
医師の診断に基づき、選手個々の怪我の状態、競技の特性、ポジションなどを詳細に分析し、専門的なリハビリ計画を立案します。

筋力回復や関節可動域の改善といった基本的なリハから始まり、徐々に競技特有の動作を取り入れた運動療法へと移行させ、最終的な競技復帰までを二人三脚でサポートします。
このリハビリテーション過程全体を管理することが、スポーツ理学療法士の重要な役割です。

選手の怪我を未然に防ぐ予防トレーニングの指導

怪我の治療だけでなく、そもそも怪我をさせないためのアプローチもスポーツ理学療法士の重要な仕事です。
選手の身体機能評価や動作分析を通じて、個々の弱点や怪我につながりやすい動作の癖を特定します。

その評価結果に基づき、筋力バランスの改善、柔軟性の向上、正しい身体の使い方を習得させるためのトレーニングプログラムを立案し、専門的な運動指導を行います。
過去の怪我の再発防止はもちろん、新たな怪我のリスクを低減させることで、選手生命を守り、チーム全体の戦力維持にも貢献します。

最高のパフォーマンスを引き出すコンディショニング管理

アスリートが常に最高の状態で競技に臨めるよう、日々のコンディションを管理するのもスポーツ理学療法士の役割です。
トレーニングや試合による身体的な負荷を評価し、疲労回復を促進するための物理療法やストレッチ、マッサージなどを行います。

また、身体の状態に合わせてトレーニングの強度や量を調整するよう、選手やコーチに助言することも少なくありません。
医学的知識に基づいたコンディショニング管理によって、アスリートの身体を最適な状態に保ち、パフォーマンスの維持・向上を支える専門的な運動サポートを提供します。

試合や練習現場での迅速な応急処置

プロチームなどに帯同するスポーツ理学療法士は、試合や練習中に選手が負傷した際、現場で迅速な応急処置を行う役割を担います。
捻挫や打撲、脱臼、骨折といった突発的なアクシデントに対し、専門的な知識と技術を用いて即座に状態を評価し、RICE処置などの適切な対応を実施します。

その場で競技を続行できるか、あるいは医療機関での診察が必要かを判断することも重要な役目です。
チームドクターと連携しながら、選手の安全を確保し、怪我の悪化を防ぐための初期対応を担う、医療の最前線ともいえる業務です。

スポーツ理学療法士が活躍できる主な就職先

スポーツ理学療法士の就職先は、医療機関にとどまらず多岐にわたります。
最も一般的なのは、スポーツ整形外科を専門とする病院やクリニックです。
また、多くの人が目標とするプロスポーツチームや実業団チームの専属スタッフとして働く道もあります。

近年では、健康志向の高まりを受け、フィットネスクラブやパーソナルトレーニングジムで、一般の利用者に対して専門的な指導を行うケースも増えており、活躍の場は広がりを見せています。

スポーツ整形外科が専門の病院やクリニック

スポーツ理学療法士の最も代表的な就職先が、スポーツ整形外科を専門とする病院やクリニックです。
これらの医療機関には、プロアスリートから学生、一般のスポーツ愛好家まで、スポーツによる怪我や障害に悩む多くの患者が訪れます。

理学療法士は、医師の診断のもとでリハビリテーション計画を立案し、運動療法や物理療法を用いて患者の競技復帰や日常生活への復帰をサポートします。
スポーツクリニックでは、最新の医療知識や治療技術に触れる機会も多く、専門性を高めるための環境が整っています。

プロスポーツチームに帯同する専属スタッフ

プロスポーツチームの専属理学療法士として働くことは、多くの人が憧れるキャリアパスの一つです。
野球やサッカーなどのプロスポーツチームに帯同し、選手のコンディショニング管理、トレーニングのサポート、怪我の予防、試合中の応急処置、そしてリハビリテーションまで、シーズンを通して包括的に関わります。

選手の最も身近な存在として、最高のパフォーマンスを引き出すために日々サポートを行います。
ただし、求人は非常に少なく、高い専門性や豊富な経験、人脈などが求められる狭き門でもあります。

実業団や地域のスポーツチーム

活躍の場はプロスポーツチームだけに限りません。
企業が運営する実業団チームや、地域のスポーツクラブなども重要な就職先です。
実業団では、社員選手が仕事をしながら競技を続けられるよう、練習や遠征に帯同して身体のケアやリハビリテーションをサポートします。

また、地域スポーツの現場では、ジュニア世代から社会人まで幅広い年齢層のアスリートを対象に、怪我の予防や育成年代に適した身体づくりを指導する役割を担います。
地域に根差した活動を通じて、スポーツ文化の発展に貢献できます。

フィットネスクラブやパーソナルトレーニングジム

医療機関やスポーツチームだけでなく、フィットネスクラブやパーソナルトレーニングジムも活躍の場として増えています。
理学療法士の国家資格を持つトレーナーとして、医学的な知識に基づいた安全で効果的なトレーニングプログラムを一般の利用者に提供します。

身体の痛みや不調を抱える利用者に対して、その原因を評価し、改善に向けた専門的なアドバイスができる点は大きな強みです。
健康増進やダイエット、ボディメイクなど、多様なニーズに応えながら、利用者の目標達成をサポートします。

 

 

スポーツ理学療法士になるための3つのステップ

スポーツ理学療法士になるには、理学療法士の国家資格が必須であり、段階的なステップを踏む必要があります。さらに、スポーツ分野で活躍するためには、CSS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)や日本スポーツリハビリテーション学会認定トレーナーといった民間資格も有利とされています。

まずは理学療法士としての土台を築くことが不可欠です。

ここでは、スポーツ分野で活躍する専門家になるための具体的な3つのステップについて解説します。

高校卒業後の進路選択から、資格取得、そして現場での経験の積み方まで、目標達成に向けた道のりを順に見ていきましょう。

STEP1:理学療法士の国家資格を取得する

スポーツ理学療法士として活動するための絶対的な第一歩は、理学療法士の国家資格を取得することです。
「スポーツ理学療法士」という独立した資格は存在せず、すべての活動は理学療法士であることが前提となります。

資格を取得するには、高校卒業後、文部科学省または厚生労働省が指定する大学や専門学校などの養成校で3年以上学び、専門知識と技術を修得しなければなりません。
そして、カリキュラムを修了した後に理学療法士国家試験を受験し、合格することで、初めて理学療法士としてのキャリアをスタートできます。

STEP2:スポーツ分野の知識が学べる大学や専門学校を選ぶ

理学療法士の養成校を選ぶ際には、スポーツ分野の教育に力を入れている学校を選ぶことが将来への近道となります。
スポーツ系の学科やコースが設置されている4年制大学や専門学校では、基礎的な理学療法の知識に加え、スポーツ医学やトレーニング理論、コンディショニングなど、専門性の高い知識を深く学べます。

また、スポーツチームと提携していたり、関連施設での実習が充実していたりする学校も存在します。
高校生の段階から将来を見据え、自分の興味や目標に合った大学や専門学校を選択することが、夢を実現するための重要なステップです。

 

 

STEP3:医療機関やスポーツ現場で臨床経験を積む

理学療法士の国家資格を取得した後は、すぐにスポーツの現場で働けるとは限りません。
まずは病院、特にスポーツ整形外科などの医療機関に就職し、理学療法士としての基礎的な臨床経験を積むことが一般的です。
様々な症例を担当する中で、評価能力や治療技術を磨きます。

それと並行して、スポーツ分野の勉強会や研修会に積極的に参加したり、休日にアマチュアチームのトレーナーとしてボランティア活動を行ったりして、専門知識と現場での経験を積み重ねていく努力が、スポーツ理学療法士としてのキャリアを築く上で求められます。

キャリアの幅を広げるためにおすすめの資格

理学療法士の国家資格は必須ですが、それに加えてスポーツ分野に関連する資格を取得することで、自身の専門性を客観的に証明し、キャリアの可能性を大きく広げられます。
これらの資格は、スポーツ現場での信頼性を高め、より専門的な役割を担うための足がかりとなります。

ここでは、スポーツ理学療法士としてステップアップを目指す上で、特に取得が推奨される代表的な資格を2つ紹介します。

日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)

日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)は、スポーツ現場で活動する上で、スポーツドクターやコーチと連携し、選手の健康管理、傷害予防、応急処置、リハビリテーション、体力トレーニングなど、幅広い役割を担える能力を証明する資格です。

ただし、JSPO-ATの「認知度の低さ」が課題として挙げられている現状もあります。また、この資格は医療資格ではないため、「医療行為が可能な人」という誤解がある点も指摘されています。

理学療法士の資格と併せて保有すること(ダブルライセンス)は、医療的な視点と現場でのトレーナーとしての視点を両立できるというメリットがあります。これにより、働ける職場の範囲が広がり、就職や転職に有利になるなど、スポーツトレーナーとしての活躍の場を広げることが可能です。

日本理学療法士協会認定スポーツ理学療法士

日本理学療法士協会が認定する「認定スポーツ理学療法士」は、スポーツ理学療法の分野における高い専門性を持つことを証明する資格です。
この認定資格を取得するには、理学療法士としての実務経験を積んだ上で、協会が指定する研修を受講し、試験に合格する必要があります。

資格取得を通じて、最新の知識や技術を体系的に学ぶことができ、スポーツ理学療法のスペシャリストとしての信頼性を高めます。
キャリアアップや専門性を追求する上で、目標となる資格の一つです。

 

 

スポーツ理学療法士に関するよくある質問

スポーツ理学療法士を目指す方からよく寄せられる質問に回答します。
スポーツ理学療法士の年収、仕事のやりがい、そしてプロチームで働くことの難易度など、キャリアを考える上で知っておきたい問題を取り上げます。

具体的な疑問を解消し、将来のキャリアプランを立てるための参考にしてください。

スポーツ理学療法士の平均年収はどれくらいですか?

理学療法士全体の平均年収である約430万円が目安です。
ただし、勤務先や契約形態、経験によって大きく異なり、一般的な病院勤務の場合はこの水準に近くなります。
プロチームの専属スタッフなど、高い専門性が求められる職場で好条件の契約を結べば、平均を大きく上回る年収を得ることも可能です。

仕事で一番やりがいを感じるのはどのような時ですか?

怪我や不調で苦しんでいた選手が、自身のリハビリテーションを経て無事に競技へ復帰し、再び活躍する姿を見た時に最も大きなやりがいを感じます。

選手の目標達成に向けて二人三脚で努力し、その成果がパフォーマンスとして現れた瞬間に、この仕事内容ならではの喜びと達成感を覚えるという声が多いです。

プロチームの専属理学療法士になるのは難しいのでしょうか?

求人の数が非常に限られており、ポストに空きが出にくいため、プロスポーツチームの専属スタッフになるのは極めて難しいのが現状です。

高いレベルの専門知識や豊富な臨床経験はもちろん、選手や監督との信頼関係を築くコミュニケーション能力、そして業界内での人脈も重要視される、非常に狭き門といえます。

まとめ

スポーツ理学療法士は、理学療法士の国家資格を基盤とし、スポーツ分野に特化した知識と技術でアスリートを支える専門職です。
その業務は、怪我からのリハビリテーションをはじめ、傷害予防、コンディショニング管理、現場での応急処置まで多岐にわたります。

主な活躍の場は、スポーツ整形外科のある病院やクリニックが中心ですが、プロスポーツチームや実業団、フィットネスクラブなどへも広がっています。
この分野でキャリアを築くには、資格取得後も継続的に学び、臨床経験を重ねることが不可欠です。

 

監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城武志(理学療法士)

 

 

理学療法士が公務員になるには?試験の倍率・給料・メリットを解説

 

理学療法士が公務員になるには?試験の倍率・給料・メリットを解説

監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城武志(理学療法士)

 

理学療法士は公立病院や行政機関などで公務員として働く道も選択できます。
理学療法士の公務員は、安定した雇用や充実した福利厚生が魅力ですが、採用枠が少なく、なるには公務員試験の突破が必要です。(自治体によっては公務員試験が無いところもあります)

この記事では、公務員理学療法士の仕事内容や試験の概要、気になる給料事情、働く上でのメリットや注意点を詳しく解説します。

 

 

理学療法士が公務員として活躍できる職場一覧

理学療法士が公務員として働く職場は、主に公立病院、行政機関、自治体が運営する福祉・教育機関の3つに大別されます。
最も一般的なのは公立病院での臨床業務ですが、行政機関で地域の保健福祉に関わる仕事内容もあります。

求人や募集は常にあるわけではなく、欠員が出た際に不定期で行われることが多いため、希望する自治体の採用情報をこまめに確認することが重要です。

公立病院(国立・都道府県立・市区町村立)

公務員理学療法士の最も代表的な勤務先は、国立病院機構や都道府県、市区町村が運営する公立病院です。
市民病院などがこれにあたり、仕事内容は民間の病院と同様に、患者へのリハビリテーション業務が中心となります。

民間病院との大きな違いは、営利を目的としないため経営が安定している点です。
例えば、東京都や千葉県、京都府などの自治体が運営する病院では、地域の中核医療を担う重要な役割を果たします。
東京や千葉といった首都圏だけでなく、全国の公立病院で理学療法士の募集が行われる可能性があります。

行政機関(都道府県庁・市役所・保健所など)

理学療法士は、都道府県庁や市役所、保健所といった行政機関で専門知識を活かして働くこともできます。
この場合、地方公務員として採用され、デスクワークが中心となります。
具体的な業務は、介護予防事業の企画立案、地域包括ケアシステムの構築、住民の健康相談、福祉用具の利用支援など多岐にわたります。
臨床現場とは異なり、地域全体の健康課題に取り組む視点が求められます。

国家公務員として国の機関で働く道もありますが、理学療法士の募集は極めて稀です。
役所で働く場合は、より広い視野で地域医療に貢献することになります。

自治体が運営する福祉施設や教育機関

公立病院や行政機関の他に、自治体が運営する福祉施設や教育機関も公務員理学療法士の勤務先となります。
具体的には、心身障害者福祉センター、児童発達支援センター、特別支援学校などが挙げられます。

これらの施設では、障害を持つ方や発達に支援が必要な子どもたちを対象に、リハビリテーションや日常生活動作の指導を行います。
対象者の年齢層や専門領域が特化しているため、より深い専門性が求められます。
ただし、これらの施設での理学療法士の募集は、病院や行政機関に比べてさらに少ない傾向にあります。

 

 

公務員理学療法士になるための採用試験の概要

理学療法士が公務員になるには、各自治体や機関が実施する採用試験に合格する必要があります。
募集人数が少なく倍率が高いことが多いため、公務員試験は難しいというイメージを持つ人も少なくありません。

採用試験は、一般的に筆記試験、小論文、面接で構成されており、理学療法士としての専門知識だけでなく、公務員として必要な幅広い知識や人物像が評価されるため、十分な準備が不可欠です。

筆記試験(教養科目・専門科目)の内容

公務員採用試験の筆記試験は、「教養科目」と「専門科目」の2つで構成されるのが一般的です。
教養科目は、公務員として必要な基礎学力を問うもので、数的処理、文章理解、社会科学、自然科学など幅広い分野から出題されます。
一方、専門科目は理学療法士としての専門知識を問う内容で、解剖学、生理学、運動学、病理学、リハビリテーション医学など、国家試験で問われるような基礎的な知識が中心です。

この試験内容からもわかるように、理学療法の専門知識だけでなく、一般教養も含めた総合的な学力が求められます。

人物評価を重視する面接試験

筆記試験と並行して、面接試験も公務員採用の重要な選考過程です。
面接は個人面接が一般的ですが、自治体によっては集団討論や集団面接が行われる場合もあります。

面接では、志望動機や自己PR、これまでの経験といった一般的な質問に加え、「公務員として地域にどう貢献したいか」「理学療法士としてどのような役割を果たしたいか」など、公務員としての適性や倫理観を問われることが多いです。
円滑なコミュニケーション能力や協調性、誠実な人柄など、組織の一員として円滑に業務を遂行できるかが評価されます。

小論文や作文で問われること

採用試験では、小論文や作文が課されることも多くあります。
テーマは、「地域包括ケアシステムにおける理学療法士の役割」「高齢化社会における介護予防の重要性」など、医療や福祉に関する時事的なものが頻出です。

ここでは、理学療法士としての専門的視点に加え、社会情勢への関心や、課題に対する論理的な思考力、文章構成力などが評価されます。
与えられたテーマに対して、自身の考えを制限時間内に的確に文章で表現する能力が求められるため、日頃から関連分野のニュースに関心を持ち、自分の意見をまとめる練習をしておくことが重要です。

 

 

気になる公務員試験の倍率と採用事情

公務員理学療法士の採用は、民間病院に比べて募集人数が極めて少ないのが現状です。
多くの自治体では、欠員が出た場合にのみ募集を行うため、毎年必ずしも採用があるとは限りません。

採用人数も1名から若干名というケースがほとんどで、その結果、採用倍率は非常に高くなる傾向にあります。
数十倍になることも珍しくなく、狭き門であることは間違いありません。
そのため、公務員を目指す場合は、希望する自治体や国立病院機構などの公式サイトを定期的に確認し、募集情報を見逃さないようにすることが重要です。
複数の自治体を視野に入れて、チャンスを広げる戦略も必要になります。

公務員理学療法士の給与はどのくらい?民間との違いを徹底比較

公務員理学療法士の給与は、国や地方自治体が定める給与規定(俸給表)に基づいて支給されるため、非常に安定しています。
民間病院と比較すると、初任給は同程度かやや低い傾向にありますが、勤続年数に応じて着実に昇給していくのが大きな特徴です。

景気や病院の経営状況に左右されにくく、ボーナスや退職金も安定して支給されるため、長期的な視点で見ると、生涯年収は民間の平均を上回るケースも少なくありません。

初任給と勤続年数に応じた昇給モデル

公務員の給与は、経験年数や役職に応じて定められた「俸給表」に基づいて決まります。
そのため、初任給は民間の医療機関と比較して特別高いわけではありません。
しかし、最大の魅力は毎年着実に昇給していく点にあります。

個人の業績評価も一部加味されますが、基本的には勤続年数に応じて給料が上がっていく年功序列型です。
これにより、長期的なキャリアプランやライフプランを立てやすくなります。
安定した昇給が見込めることは、将来設計において大きな安心材料となるでしょう。

ボーナス(期末・勤勉手当)と退職金の水準

公務員には、民間のボーナスにあたる「期末・勤勉手当」が年に2回(6月と12月)支給されます。この手当の支給月数は、人事院勧告に基づき決定され、民間企業のボーナス支給状況を踏まえて改定されることがあります。また、個人の成績率によって支給額が変動する場合があります。

退職金制度も整備されており、勤続年数に応じて支給額が増加します。人事院の調査によると、公務員の退職給付水準は民間企業とほぼ同水準になるように調整されています。安定した手当と退職金制度は、公務員の魅力の一つです。

公務員として働く3つの大きなメリット

公務員として働くことには、民間企業にはない多くのメリットが存在します。
特に理学療法士にとっては、雇用の安定性、充実した福利厚生、そしてワークライフバランスの取りやすさが大きな魅力となるでしょう。
これらのメリットは、長期的なキャリアを築き、安定した生活を送る上で非常に重要な要素です。

ここでは、公務員理学療法士として働く3つの主要なメリットを具体的に見ていきます。

安定した雇用と収入が保証される

公務員の最大のメリットは、その安定性にあります。
公務員は法律によって身分が保障されており、重大な問題を起こさない限り解雇されることはありません。
勤務先の経営状況によって雇用が左右される心配がほとんどないため、安心して長く働き続けることが可能です。

また、給与やボーナスも景気の動向に影響されにくく、毎年安定した収入を得られます。
これにより、住宅ローンを組んだり、子育てをしたりといった長期的なライフプランを非常に立てやすくなります。

福利厚生が手厚く、休暇も取得しやすい

公務員は、福利厚生が非常に充実している点も大きな魅力です。
住居手当、通勤手当、扶養手当といった各種手当が手厚く、経済的なサポートを受けられます。

また、休暇制度も整っており、年次有給休暇の取得が奨励されるほか、夏季休暇、結婚休暇などの特別休暇も用意されています。
さらに、育児休業や介護休業といった制度も法律で定められており、実際に多くの職員が利用しています。
ライフステージの変化に合わせて柔軟に働き方を選びやすい環境が整っているといえます。

規則正しい勤務時間でプライベートを両立しやすい

公務員の職場では、勤務時間が法律や条例で定められており、年間休日も民間企業と比較して多い傾向にあります。多くの職場では土日祝日が休みで、カレンダー通りの勤務が基本です。しかし、職種や部署によっては残業時間や休日出勤の状況が異なる場合があります。

終業後の時間や休日を確保しやすい職種や部署では、家族との時間を大切にしたり、趣味や自己研鑽に時間を費やしたりと、プライベートを充実させやすい環境だと言えるでしょう。

ワークライフバランスを重視する人にとって、このような環境は魅力的な選択肢の一つとなるでしょう。オンとオフのメリハリをつけた生活を送りやすい点は、公務員の仕事の大きなメリットの一つです。

 

 

知っておきたい公務員ならではの注意点

安定性や福利厚生など多くのメリットがある公務員ですが、働く上で知っておくべき注意点も存在します。
民間企業とは異なる公務員特有のルールや文化があり、これらを理解しておかないと、就職後にギャップを感じる可能性があります。

特に、副業の制限、年功序列の給与体系、そして定期的な異動は、人によってはデメリットと感じられるかもしれません。
事前にこれらの注意点を把握しておくことが重要です。

原則として副業が認められない

公務員は、国家公務員法および地方公務員法によって、原則として副業が禁止されています。
これは、職務の公正性を保ち、国民全体の奉仕者としての職務に専念するためです。
ただし、不動産投資や農業、あるいは任命権者の許可を得た非営利活動など、一部例外的に認められるケースもあります。

しかし、民間企業のようにスキルアップや収入増を目的とした自由な副業は難しいため、複数の収入源を持ちたいと考えている人にとっては大きな制約となります。

成果が給与に直結しにくい年功序列制

公務員の給与体系は、勤続年数に応じた昇給が基本にありつつも、近年では評価制度が導入され、個人の能力や業績が給与やボーナスに反映されるようになっています。そのため、若いうちから実力で高い収入を得たい、自分の成果を正当に評価してほしいと考える人にとっては、自身の努力や成果が給与に反映される仕組みがある一方で、民間企業と比較して物足りなさを感じる可能性もあります。

安定した昇給が期待できる反面、個人のパフォーマンスが給与に結びつきにくいと感じる場合がある点は、モチベーションを維持する上で課題となる場合もあります。

数年単位での異動や転勤の可能性

公務員には数年単位での定期的な異動が伴います。
これは職員の能力開発や組織の活性化を目的として行われるものです。
同じ自治体内の異なる部署や施設へ異動することが一般的ですが、場合によっては転居を伴う転勤の可能性もあります。

特定の分野で専門性を深く追求したいと考えている人にとっては、異動によってキャリアが中断されるリスクがあります。
また生活環境の変化を望まない人にとっても注意が必要な点であり、将来的な転職を考えるきっかけにもなり得ます。

 

 

公務員理学療法士に関するよくある質問

公務員理学療法士を目指すにあたり、多くの人が疑問や不安を抱えています。
ここでは、試験対策はいつから始めるべきか、臨床経験がない新卒でも目指せるのか、行政職の具体的な仕事内容など、特によく寄せられる質問について回答します。
これらの情報を参考に、公務員というキャリアパスへの理解を深め、自身のキャリアプランニングに役立ててください。

公務員試験の対策はいつから始めるべき?

一概には言えませんが、試験の半年前から1年前には対策を始めるのが一般的です。
教養科目は出題範囲が広く、専門科目も基礎から復習する必要があるため、計画的な学習が不可欠です。

働きながら勉強する場合は、さらに早めに準備を開始すると余裕を持って試験に臨めます。

臨床経験がなくても公務員になれますか?

はい、なれます。

自治体や施設によっては、新卒や臨床経験が浅い人を対象とした求人もあります。
ただし、応募資格として「臨床経験◯年以上」といった条件を設けている募集も多いため、各求人の募集要項を事前にしっかりと確認することが重要です。

行政職の場合、どのような仕事内容になりますか?

主な仕事は、介護予防事業や健康増進施策の企画・運営、地域包括ケアシステムの推進、福祉用具に関する相談対応などです。臨床現場でのリハビリとは異なり、地域住民全体の健康を支えるための施策立案や調整業務が中心となります。

地域包括支援センターの運営主体が自治体直営の場合は、公務員として採用されます。

まとめ

理学療法士が公務員として働く道は、雇用の安定性、充実した福利厚生、ワークライフバランスの取りやすさなど、多くの魅力を持っています。
勤務先は公立病院での臨床業務から、行政機関での企画・調整業務まで多岐にわたります。

しかし、その一方で採用枠が少なく倍率が高いこと、原則として副業が禁止されていること、年功序列の給与体系であること、定期的な異動があることなどの注意点も存在します。
公務員を目指す際は、これらのメリットとデメリットを十分に理解し、自身のキャリアプランや価値観と合致するかどうかを慎重に検討することが大切です。

 

監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城武志(理学療法士)

 

 

理学療法士と作業療法士どっちが大変?仕事・勉強・給料の違いを比較

 

理学療法士と作業療法士どっちが大変?仕事・勉強・給料の違いを比較

監修:日本リハビリテーション専門学校 山田 慶(作業療法士)

 

理学療法士と作業療法士は、どちらもリハビリテーションの専門職ですが、その役割や仕事内容は異なります。
進路選択で迷う方にとって、どちらが難しいのか、自分に向いているのはどちらかという点は大きな悩みどころです。
この記事では、仕事内容・勉強・給料・将来性など、様々な観点から両者の「大変さ」を比較し、後悔しないための選択のヒントを解説します。

どちらが難しいという単純な比較ではなく、大変さの質の違いを理解しましょう。

 

 

結論:大変さの種類が違う!自分に合うのはどっちか見極めよう

理学療法士と作業療法士のどちらが大変かという問いの結論は、「大変さの種類が異なる」です。
理学療法士は患者の体を支えて動かすなど肉体的な負担が大きい場面が多く、作業療法士は患者の精神面に寄り添い、生活全体を支援するため精神的な負担や対応範囲の広さが大変だとされます。

どっちがいいとは一概には言えず、体力的な大変さと精神的な大変さのどちらが自分にとって許容できるかを見極めることが重要です。
自分自身の適性や興味と照らし合わせ、納得のいく選択をすることが大切です。

 

 

まずは基本をおさらい!理学療法士と作業療法士の役割の違い

理学療法士(PT)と作業療法士(OT)は、どちらもリハビリテーションを通じて患者の自立を支援する専門職ですが、そのアプローチの対象が異なります。
理学療法士が「立つ・歩く」といった基本的な動作能力の回復を目指すのに対し、作業療法士は食事や入浴といったより応用的・社会的な活動への復帰をサポートします。

仕事内容や求められるスキルの難易度にも違いがあるため、両者の役割を正しく理解することが、自分に合った進路を選択するための第一歩となります。

 

 

理学療法士(PT)は「立つ・歩く」など基本的な動作の回復をサポート

理学療法士(Physical Therapist, PT)は、ケガや病気によって身体機能が低下した人々に対し、運動療法や物理療法を用いて基本的な動作能力の回復を支援する専門職です。 具体的には、寝返り、起き上がり、座位保持、立ち上がり、歩行といった、日常生活を送る上で基礎となる動作の改善を目指します。

関節の可動域を広げる訓練や筋力を強化するトレーニング、電気刺激や温熱などの物理的手段を駆使して、患者が自立した生活を取り戻せるようサポートします。 専門性を活かして長く働き続けることが可能な職業です。

 

 

作業療法士(OT)は「食事・入浴」など応用的な動作の回復をサポート

作業療法士(Occupational Therapist, OT)は、基本的な動作の回復を目的とする理学療法士に対し、食事、着替え、入浴、料理、書字といった、より応用的でその人らしい生活を送るために必要な動作(作業)の回復をサポートします。
身体的なリハビリだけでなく、精神的なケアも重要な役割であり、患者の興味や関心事を活用しながら、社会復帰に向けた意欲を引き出すアプローチを行います。

進路に迷う人にとっては、どちらの専門性が自分の関心に近いか考えることが、どっちがいいかを判断する重要な要素です。
人の生活全体に深く関わりたいと考えるなら、作業療法士の仕事に魅力を感じるかもしれません。

 

 

【仕事編】理学療法士と作業療法士の大変さを比較

理学療法士と作業療法士の仕事における「大変さ」は、その性質が大きく異なります。
理学療法士は、患者の身体を直接支える場面が多いため、体力的な負担が大きな特徴です。

一方、作業療法士は、患者の身体面だけでなく精神面にも深く関わり、生活環境全体を調整していくため、精神的な負担や多角的な視点が求められるという大変さがあります。
それぞれの仕事内容を深く理解し、どちらの大変さが自分にとって乗り越えやすいかを考えることが重要です。

 

 

体力的な負担が大きいのは理学療法士

理学療法士の仕事は、体力的な負担が大きい場面が多いのが特徴です。
例えば、脳卒中後の麻痺がある患者さんの歩行訓練では、体重を支えながら一緒に歩いたり、ベッドから車椅子への移乗を介助したりと、自身の体を使って患者をサポートする必要があります。

特に、回復期リハビリテーション病棟や急性期病院では、身体機能が大きく低下した患者を担当することが多く、一日に何人もの患者のリハビリを行うため、相応の筋力と体力が求められます。
腰痛は理学療法士の職業病とも言われており、日々のボディメカニクスを意識した介助や、自身の身体のメンテナンスが欠かせません。

 

 

精神的な負担や対応範囲の広さが大変なのは作業療法士

作業療法士は、身体機能の回復だけでなく、患者の精神状態や生活背景までを考慮したアプローチが求められるため、精神的な負担や対応範囲の広さが大変さにつながることがあります。
例えば、精神科領域では患者との信頼関係の構築に時間を要したり、高次脳機能障害の患者の意欲を引き出すための工夫が必要だったりと、コミュニケーション能力や忍耐力が試されます。

また、退院後の生活を見据え、家屋の改修提案や福祉用具の選定、家族への指導など、リハビリ室の中だけにとどまらない幅広い視点と調整能力が不可欠です。
患者一人ひとりの人生に深く寄り添う分、責任も大きい仕事です。

 

 

 

活躍の場(就職先)の違いもチェックしよう

理学療法士と作業療法士は活躍の場にも違いがあります。
理学療法士の主な就職先は、病院やクリニックといった医療機関が中心で、特に整形外科やリハビリテーション科での需要が高いです。
近年では、スポーツ分野でアスリートのコンディショニングをサポートする理学療法士も増えています。

一方、作業療法士も医療機関で働きますが、それに加えて介護老人保健施設、特別支援学校、精神科病院、就労支援施設など、より幅広い領域で活躍しています。
特に、精神障害領域や発達障害領域のリハビリは作業療法士が中心となって担うことが多く、活躍の場の多様性は作業療法士の大きな特徴といえます。

 

 

【勉強・試験編】理学療法士と作業療法士の大変さを比較

理学療法士と作業療法士になるためには、養成校で専門知識を学び、国家試験に合格する必要があります。
どちらの道も簡単なものではありませんが、勉強内容や試験の難易度にはいくつかの違いが見られます。

国家試験の合格率には若干の差があり、また、大学や専門学校で学ぶカリキュラムもそれぞれの専門性に応じて異なります。
ここでは、学業や資格取得における大変さの違いを比較し、進路選択の参考にします。

 

 

国家試験の合格率は作業療法士のほうがやや低い傾向

理学療法士と作業療法士の国家試験の合格率は、年によって変動はあるものの、全体的な傾向として作業療法士の方がやや低い水準で推移しています。
近年のデータを見ると、理学療法士の合格率がおおむね80%台から90%台前半であるのに対し、作業療法士は70%台後半から80%台半ばとなることが多いです。

この差の背景には、試験範囲の広さが一因として考えられます。
作業療法士は身体障害、精神障害、発達障害、老年期障害と多岐にわたる領域を深く学ぶ必要があり、その学習範囲の広さが試験の難易度に影響している可能性があります。
ただし、どちらの試験も養成校のカリキュラムを真面目に修了すれば合格できる水準です。

 

 

養成校で学ぶ内容や臨床実習の大変さの違い

理学療法士と作業療法士の養成校では、学ぶ内容に専門性の違いが明確に現れます。
理学療法士のカリキュラムは、解剖学、生理学、運動学といった人体の構造や機能に関する科目に重点が置かれ、科学的根拠に基づいた運動療法を深く学びます。

一方、作業療法士はこれらの基礎医学に加え、精神医学、心理学、社会学など、人の心や生活に関わる人文社会科学系の科目も幅広く履修します。
臨床実習においてもその違いは顕著で、理学療法士は主に身体機能の評価や治療プログラムの立案・実施を学び、作業療法士はそれに加えて患者の生活環境の評価や精神的なアプローチ、レクリエーションの活用なども実践的に学びます。

 

 

 

【給料・将来性編】理学療法士と作業療法士の大変さを比較

職業を選択する上で、給料や将来性は重要な判断基準です。
理学療法士と作業療法士のどちらの道に進むか考える際にも、経済的な安定やキャリアパスの展望は無視できません。
給与水準や求人数、そして将来的な需要など、両者の待遇やキャリアにおける違いを比較することで、長期的な視点での「大変さ」を把握することができます。

ここでは、給料と将来性という2つの側面から両職種を詳しく見ていきます。

 

 

平均給与に大きな差はないが、求人数は理学療法士が多い

理学療法士と作業療法士の平均給与を比較すると、両者に大きな差はないのが現状です。厚生労働省の調査などを見ても、平均年収はほぼ同水準で推移しており、給与面での有利不利はほとんどないと言えます。ただし、就職のしやすさという点では、求人数に違いが見られます。一般的に、病院やクリニックからの需要が安定して高い理学療法士の方が、作業療法士に比べて求人数が多い傾向にあります。これは、診療報酬制度上、理学療法士の配置が求められる場面が多いことなどが理由として挙げられます。しかし、作業療法士も介護保険領域や精神科領域などで専門性が高く評価されており、活躍の場は広がっています。

一方、作業療法士は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年問題や、一人暮らしの高齢者が増加しているといった社会背景から、その不足が指摘されています。特に、地域に根差した在宅医療や介護予防の分野では、作業療法士が提供する生活機能向上の支援が不可欠であり、今後ますます需要が高まると予測されています。病院や施設でのリハビリテーションだけでなく、地域社会での生活支援においても専門性が求められるため、作業療法士の活躍の場は今後さらに多様化していくでしょう。

 

 

!! POINT !! 1. 求人数の違い 作業療法士の目線

結論から言うと、「絶対的な求人数」はPTの方が多いですが、「競争率(有効求人倍率)」で見るとOTの方が有利な傾向にあります。

求人数と有資格者数
現在、国内の有資格者数はPTが約21万人、OTが約11万人と、PTの方が圧倒的に多い状況です。

理学療法士 (PT): 病院、整形外科クリニック、訪問リハビリなど、ニーズが非常に幅広いため求人の絶対数は多いです。ただし、供給(志望者)も多いため、人気のある都心部の病院などでは倍率が高くなる傾向があります。

作業療法士 (OT): PTに比べると募集件数は少なめですが、有資格者数も少ないため、一人あたりの求人数(倍率)はOTの方が高い(就職しやすい)傾向にあります。

 

 

キャリアパスや将来性の違いを理解しよう

理学療法士と作業療法士は、どちらも高齢化社会の進展に伴い将来性が高い専門職ですが、キャリアパスにはそれぞれの特色があります。
理学療法士は、病院での経験を積んだ後、スポーツトレーナーとしてアスリートを支えたり、整体院やフィットネスクラブを開業したりするなど、身体機能の専門性を活かした多様な道へ進むことが可能です。

一方、作業療法士は、福祉用具の開発や住宅改修のアドバイザー、あるいは地域包括支援センターで高齢者の生活を支える専門職として活躍するなど、人の「生活」に密着した分野でのキャリアが広がります。
どちらも専門性を深め、認定資格を取得することで、管理職や教育者としての道も開けます。

 

 

!! POINT !! 2. キャリアパスの違い 作業療法士の目線

リハビリの「目的」が異なるため、将来的な専門性の磨き方が変わります。

理学療法士 (PT) のキャリア
「動作の専門家」として、身体機能の回復を深掘りする道が一般的です。
専門分化: スポーツリハ、心臓リハ、呼吸リハなど、特定の疾患や部位に特化した認定理学療法士を目指す。
スポーツ分野: プロチームのトレーナーや、スポーツクリニックでの専属スタッフ。
開業・自費リハ: 整体院の開業や、保険外のパーソナルリハビリサービスの展開。

 

!! POINT !! 作業療法士 (OT) のキャリア

「生活の専門家」として、心身の両面からアプローチするため、活躍の幅が横に広いです。

精神科領域: 精神科病院やデイケアで、手工芸やレクリエーションを通じた社会復帰支援のスペシャリスト。
高次脳機能障害・認知症: 脳の機能や認知面に特化したリハビリの専門性を高める。
就労支援・教育: 障害者の一般企業への就労支援や、特別支援学校での指導。
福祉用具・住環境: 福祉住環境コーディネーターなどの資格を合わせ、住宅改修のコンサルティングを行う。

 

 

 

結局どっちを選べばいい?向いている人の特徴で比較

これまで仕事内容や給料、将来性など様々な観点から理学療法士と作業療法士を比較してきましたが、最終的にどちらを選ぶべきかは、自身の性格や価値観との相性が重要になります。
ここでは、それぞれの職業に「向いている人」の特徴をまとめました。

これまでの比較内容と合わせて自己分析を行い、自分がどちらのタイプの「大変さ」なら乗り越えられそうか、どちらの仕事にやりがいを感じられそうかを考えるための参考にしてください。

 

 

理学療法士(PT)に向いている人の特徴

理学療法士には、まず体力と忍耐力が求められます。
患者の身体を支えたり、根気強くリハビリを続けたりする場面が多いため、身体的にも精神的にもタフな人が向いています。

また、身体の構造や動きの仕組みに対して強い探究心があり、解剖学や運動学といった分野に興味を持てることも重要です。
リハビリは科学的根拠に基づいて計画されるため、物事を論理的に考え、客観的なデータから問題を分析・解決していく能力も必要とされます。
患者の「歩けるようになりたい」という目標に向かって、粘り強くサポートし、共に回復を喜べる人にとって大きなやりがいを感じられる仕事です。

 

 

作業療法士(OT)に向いている人の特徴

作業療法士には、相手の立場に立って物事を考えられる共感性と、細やかな気配りができる観察力が不可欠です。
患者の言葉にならない思いや小さな変化を汲み取り、リハビリに活かしていく姿勢が求められます。

また、手工芸やレクリエーションなどをリハビリの手段として用いることも多いため、手先が器用であったり、遊びや創作活動のアイデアを考えるのが好きだったりする人にも向いています。
身体機能だけでなく、心理面や生活環境まで含めたトータルサポートを行うため、広い視野を持ち、人と深く関わることに喜びを感じる人にとって、非常に魅力的な職業といえるでしょう。

 

 

理学療法士と作業療法士に関するよくある質問

ここでは、理学療法士と作業療法士を目指すにあたって、多くの方が抱く疑問について回答します。
ダブルライセンスの可能性や、文系からの進学、将来の需要など、進路選択の最終判断に役立つ情報をまとめました。

これらの回答を参考に、自身のキャリアプランをより具体的にイメージしてみてください。

 

 

 

両方の資格を取得することは可能ですか?

はい、可能です。
理学療法士と作業療法士、両方の国家資格を取得することは制度上できます。
ただし、そのためにはそれぞれの養成校で3年以上学び、国家試験に合格する必要があります。

一部の共通科目は単位互換が認められる場合もありますが、時間も学費もかかるため、強い意志と計画性が必要です。

 

 

文系からでも理学療法士や作業療法士を目指せますか?

はい、目指せます。
養成校の入試科目は学校によって様々で、文系科目で受験できる学校も少なくありません。
入学後は生物や物理といった理系分野の知識が必要になりますが、多くの学校では基礎から学べるカリキュラムが組まれているため、入学後の本人の努力と意欲があれば文系出身でも十分に追いつけます。

 

 

将来的にどちらの需要が高まりますか?

理学療法士、作業療法士ともに、高齢化が進む日本において需要はますます高まると予測されます。
特に、病院だけでなく在宅医療や介護予防、地域包括ケアの分野での活躍が期待されており、どちらの専門性も不可欠です。

需要の優劣を考えるより、自分がどの分野で貢献したいかを考えることが重要です。

 

 

まとめ

理学療法士と作業療法士の「大変さ」は、体力的な負担、精神的な負担、学習範囲、活躍の場など、様々な側面で質が異なります。
理学療法士は身体機能の回復という明確な目標に対し、論理的かつ体力的にアプローチする大変さがあり、作業療法士は心と身体、そして生活全体という広範な対象に寄り添う精神的な大変さがあります。

どちらの職業が優れているというわけではなく、自身の適性、興味、そしてどのような形で人の役に立ちたいかによって、選択は変わります。
本記事で比較した内容を参考に、自身のキャリアについて深く考え、納得のいく進路を選択してください。

監修:日本リハビリテーション専門学校 山田 慶(作業療法士)