理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の違いとは?役割や略称(PT/OT/ST)を解説

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の違いとは?役割や略称(PT/OT/ST)を解説

監修:日本リハビリテーション専門学校 五十嵐千代子(作業療法士)

 

理学療法士とは身体の基本的な動作能力の回復を図る専門家、作業療法士とは心と体の両面から日常生活や社会復帰を支援する専門家、言語聴覚士とは言葉や聞こえ、飲み込みの専門家です。

これら3つの職種はリハビリテーションの専門職であり、それぞれPT、OT、STという略称で呼ばれます。
この記事では、それぞれの役割や仕事内容の違いについて詳しく解説します。

 

 

理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)はリハビリテーションの専門職

理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)は、いずれも病気やけが、加齢などによって心身の機能に障がいを持つ人々を支援する、国家資格を持つリハビリテーションの専門職です。
それぞれの専門分野からアプローチし、患者がより自立した生活を送れるよう支援するという共通の目標を持っています。

3職種が連携することで、患者一人ひとりの状態に合わせた、多角的で質の高いリハビリテーションを提供することが可能になります。
この専門性の高い役割は、医療や介護、福祉の現場で不可欠な存在となっています。

 

【一覧】理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の担当領域と役割の違いを比較

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は、それぞれ専門とする領域と役割に明確な違いがあります。
理学療法士は「立つ」「歩く」といった基本的な動作能力の回復を担い、作業療法士は食事や入浴といった日常生活の応用動作から社会復帰までを支援します。

一方、言語聴覚士は「話す」「聞く」「食べる」といったコミュニケーションや嚥下機能の改善を専門とします。
この違いを理解することで、各専門職がどのような場面で活躍するのかが明確になります。

 

理学療法士(PT)とは|「立つ・歩く」を支える基本動作の専門家

理学療法士(PhysicalTherapist、略してPT)とは、けがや病気、加齢などによって身体機能が低下した人々に対し、「起き上がる」「座る」「立つ」「歩く」といった基本的な動作能力の回復や維持、悪化の予防を目的としてリハビリテーションを行う専門職です。運動療法や物理療法(温熱、電気など)といった専門的な手段を用いて、身体機能の改善を図り、自立した日常生活を送れるよう支援します。

 

理学療法士(PT)の具体的な仕事内容

理学療法士の主な仕事は、患者一人ひとりの身体状況や目標に合わせてリハビリテーション計画を立案し、実行することです。
具体的には、筋力増強や関節可動域の改善を目的とした運動療法、痛みや循環の改善を図る温熱療法や電気刺激などの物理療法を行います。

また、歩行訓練や杖、車いすといった福祉用具の選定・使用方法の指導も重要な役割です。
さらに、在宅復帰を目指す患者に対しては、住宅改修に関する助言や、家族への介助方法の指導も行い、生活環境の整備を支援します。

 

理学療法士(PT)が対象とする主な疾患や状態

理学療法士が対象とするのは、新生児から高齢者まで幅広い年齢層にわたります。
具体的な疾患としては、脳梗塞や脳出血といった脳血管疾患、脊髄損傷、パーキンソン病などの中枢神経系疾患が挙げられます。

また、骨折や変形性関節症、腰痛といった整形外科疾患、心筋梗梗塞後の心臓リハビリテーション、肺炎やCOPDなどの呼吸器疾患も対象です。
このほか、スポーツによるけがからの復帰を目指すアスリートや、加齢により筋力やバランス能力が低下した高齢者など、その領域は多岐にわたります。

 

 

作業療法士(OT)とは|日常生活から社会復帰まで支援する心と体の専門家

作業療法士(OccupationalTherapist、略してOT)とは、身体や精神に障がいのある人々に対し、その人らしい生活を取り戻すための支援を行う専門職です。
食事や着替え、入浴といった日常生活動作から、家事や仕事、趣味活動まで、あらゆる「作業」を通じてリハビリテーションを行います。

単に身体機能の回復を目指すだけでなく、精神面にも働きかけ、社会とのつながりを再構築する役割を担い、個人の尊厳や生きがいを支えます。

 

作業療法士(OT)の具体的な仕事内容

作業療法士とは、対象者一人ひとりの価値観や生活背景を尊重し、目標となる「作業(その人が行う活動)」の実現を支援する専門職です。
具体的な仕事内容として、身体機能や精神機能の回復を図るとともに、具体的な生活動作の練習や使用する道具の工夫、家屋環境へのアドバイスなど作業が行いやすくする多角的な視点で関わっていきます。

食事や着替えなどの日常生活動作(ADL)の訓練、仕事復帰に向けた職業前訓練、子どもの遊びや学校支援、認知症の進行予防プログラムなども行います。
さらに、障がいに合わせて生活環境を調整するための自助具の提案・作成や、家族への助言も重要な業務です。
また手工芸やゲーム、レクリエーションなどを治療手段として用いる面白さもあります。

 

作業療法士(OT)が対象とする主な領域

作業療法士が関わる領域は、身体障害、精神障害、発達障害、老年期障害の主に4つに大別されます。
身体障害領域では、脳卒中や骨折後の患者に対し、日常生活動作の再獲得を支援します。
精神障害領域では、統合失調症やうつ病の患者の社会復帰をサポートをします。
発達障害領域では、子どもの発達段階に応じた遊びや学習の支援を行います。

老年期障害領域では、認知症の高齢者がその人らしい生活を続けられるよう支援する役割を担い、活動範囲は非常に広範です。

 

 

言語聴覚士(ST)とは|「話す・聞く・食べる」を支えるコミュニケーションの専門家

言語聴覚士(Speech-Language-HearingTherapist、略してST)とは、言葉によるコミュニケーションや、食事の際の飲み込み(嚥下)に問題を抱える人々を支援する国家資格を持つ専門家です。
脳卒中後の失語症や、子どもの言葉の発達の遅れ、加齢による聴力の低下や食べ物の飲み込みにくさなど、多岐にわたる症状に対して、検査や評価を通じて原因を特定し、一人ひとりに合わせた訓練や指導、助言を行います。

 

言語聴覚士(ST)の具体的な仕事内容

言語聴覚士は、コミュニケーションや嚥下の問題に対し、専門的な訓練や指導を行う国家資格職です。
主な仕事として、失語症や構音障害を持つ人への言語訓練、子どもの言語発達支援、吃音の改善指導が挙げられます。

また、聴覚障害を持つ人に対しては、補聴器のフィッティングや人工内耳の調整、コミュニケーション手段の指導を実施します。
さらに、嚥下障害のある人には、安全に食事をとるための訓練や食事形態の調整、姿勢の指導も行い、生活の質の向上を支援します。
資格取得の難易度は他のリハビリ職と比較してやや高い傾向にあります。

 

言語聴覚士(ST)が対象とする主な症状

言語聴覚士が対象とする症状は多岐にわたります。
まず、言葉の問題として、脳卒中などが原因で言葉を思い出したり話したりすることが難しくなる「失語症」や、発音が不明瞭になる「構音障害」、声が出しにくくなる「音声障害」があります。
また、子どもの言葉の発達の遅れや吃音も専門領域です。

聞こえの問題である「聴覚障害」や、注意・記憶・遂行機能などが低下する「高次脳機能障害」も支援対象です。
さらに、食べ物や飲み物がうまく飲み込めなくなる「嚥下障害」に対して、専門的なリハビリテーションを提供します。

 

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の働き方や資格について比較

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は、それぞれ国家資格を必要とする専門職であり、資格取得の難易度や活躍の場に違いがあります。
高齢化社会の進展に伴い、いずれの職種も医療・介護現場での需要は高まっています。

給与水準に大きな差はありませんが、それぞれの専門性を活かせる職場は異なります。
ここでは、これら3職種の国家試験合格率、給与、そして主な勤務先での役割を比較し、それぞれの働き方の特徴を解説します。

 

国家試験の合格率から見る資格取得の難易度

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の国家試験合格率は毎年変動します。過去5年間のデータを見ると、理学療法士は79〜89%、作業療法士は80.5〜85.8%で推移しており、おおむね80%前後と言えるでしょう。一方、言語聴覚士の合格率は、2024年(令和6年)で72.4%であり、また2022年度のデータでは50%台の年も含まれるため、一概に70%前後で推移しているとは言えません。

この数字だけ見ると言語聴覚士の難易度が高く見えますが、合格率は養成校の教育レベルや受験者層にも影響されるため、一概に資格取得の難しさを表すものではありません。

いずれの資格も、養成校で専門知識と技術を3年以上学び、国家試験に合格することで、それぞれの専門的な役割を担うことが可能になります。

 

3職種の給料や平均年収の傾向

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の給料や平均年収は、いずれも400万円台前半から中盤が相場となっており、職種による大きな差は見られません。
ただし、これは全体の平均値であり、実際の収入は勤務先の規模や種類(病院、介護施設、訪問リハビリなど)、経営母体、地域によって異なります。

また、経験年数を重ねて管理職になったり、専門性を高めて認定資格を取得したりすることで、給与アップが期待できます。
これらの専門職になるには、国家資格の取得が前提となります。

 

活躍できる職場とそれぞれの勤務先での役割

3職種ともに病院やクリニック、介護老人保健施設、訪問リハビリテーション事業所などで活躍しています。
理学療法士は整形外科クリニックやスポーツ関連施設、作業療法士は精神科病院や就労支援施設、言語聴覚士は小児療育センターや耳鼻咽喉科など、それぞれの専門性がより求められる職場もあります。

これらの専門職になるには国家資格が必須であり、勤務先によって求められる役割は異なります。
多様なキャリアパスの中から、自分の興味や専門性を活かせる場所を選択することが可能です。

 

リハビリ現場での連携体制|チームで患者を支える3職種の関わり

リハビリテーションの現場では、患者一人ひとりの目標達成に向けて、多職種が連携するチームアプローチが基本となります。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は、医師や看護師、ソーシャルワーカーなどと密に情報を共有し、それぞれの専門資格に基づく視点から意見を出し合います。

例えば、脳卒中の患者に対し、理学療法士が歩行能力の向上を図り、作業療法士が食事や更衣などの日常生活動作を指導し、言語聴覚士が円滑なコミュニケーションや安全な食事摂取を支援するなど、役割を分担しながら一体となってサポートします。

 

 

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に関するよくある質問

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を目指す方や、リハビリテーションに関心のある方から寄せられることの多い質問をまとめました。
それぞれの仕事への適性や、社会人からのキャリアチェンジ、複数の資格取得の可能性について解説します。

進路選択やキャリアプランを考える際の参考にしてください。

 

自分には理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のうちどの仕事が向いていますか?

身体の構造や運動に興味があるなら理学療法士、人の生活や心に寄り添うことに関心があるなら作業療法士、言葉やコミュニケーション、食べることに興味があるなら言語聴覚士が向いている傾向があります。

まずは各職種の役割を深く理解し、自身の興味や関心がどこにあるかを考えることが重要です。

 

未経験の社会人からでもこれらの資格を目指すことはできますか?

可能です。多くの養成校では社会人入試制度を設けており、多様な経歴を持つ人が学んでいます。

ただし、学業と仕事の両立や学費の準備など、計画的な準備が必要です。夜間部を設置している学校や、社会人向けのサポートが充実している学校もあるため、自身のライフスタイルに合った学校選びが大切になります。

 

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の資格を複数取得することは可能ですか?

可能です。例えば、理学療法士の資格取得後に作業療法士の養成校に入り直すことで、両方の資格を得られます。

ただし、それぞれ国家試験の受験資格を得るために養成校で3〜4年学ぶ必要があり、時間と費用がかかります。

ダブルライセンスは専門性やキャリアの幅を広げますが、強い意志と計画性が求められます。

 

まとめ

理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)は、それぞれが独自の専門領域を持つリハビリテーションの専門職です。
PTは「立つ・歩く」などの基本動作、OTは日常生活から社会参加までの応用動作と精神面、STは「話す・聞く・食べる」といったコミュニケーションと嚥下機能の専門家として、患者の自立した生活を支援します。

これらの職種は互いに連携し、チームとしてアプローチすることで、より質の高いリハビリテーションを提供します。
この記事では、3職種の役割や働き方の違いについて解説しました。

 

 

監修:日本リハビリテーション専門学校 五十嵐千代子(作業療法士)

理学療法士のリハビリとは?仕事内容や作業療法士との違いを解説

理学療法士のリハビリとは?仕事内容や作業療法士との違いを解説

監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城武志(理学療法士)

 

理学療法士は、リハビリを通じて患者の身体機能回復を支援する専門職です。
この仕事内容とは、具体的にどのようなものでしょうか。

本記事では、理学療法士が行うリハビリの具体的な内容から、作業療法士といった他の専門職との違い、主な活躍の場、そして理学療法士になるためのステップまでを詳しく解説します。

 

理学療法士とは?身体の基本的な動作を回復させるリハビリの専門家

理学療法士とは、病気や怪我などによって身体機能が低下した人々に対し、運動療法や物理療法を用いてリハビリを行う専門家です。
英語ではPhysicalTherapistと表記されるため、その頭文字から「PT」という略称で呼ばれることもあります。

理学療法の役割は、寝返る、起き上がる、座る、立つ、歩行するといった基本的な動作能力の回復や維持、悪化の予防を支援することです。
患者一人ひとりの状態に合わせたサポートを通じて、日常生活や社会生活への復帰を手助けできる点に、この仕事の大きな魅力があります。

 

 

理学療法士が行う具体的なリハビリ内容

理学療法士は、リハビリテーションを提供するにあたり、まず患者一人ひとりの身体機能や生活状況を詳細に評価します。
その評価結果に基づき、個別の目標を設定し、具体的なリハビリ計画であるリハビリプログラムを作成します。

理学療法士がリハビリを行う上で用いるアプローチには、大きく分けて「運動療法」と「物理療法」の2種類があり、これらを患者の状態に合わせて組み合わせることが一般的です。
この計画に沿ってリハビリテーションを進め、定期的に再評価を行いながら内容を最適化していきます。

 

運動療法で身体機能の改善をサポートする

運動療法とは、関節の可動域を広げたり、筋力を強化したり、バランス能力を高めたりすることを目的として、身体を動かすことで治療を行う方法です。
具体的な内容としては、関節を動かす練習や筋力増強トレーニング、歩行訓練、ストレッチなどが挙げられます。

このアプローチは、脳卒中後の麻痺や骨折による機能障害、スポーツ障害、腰痛といった症状を持つ患者に対して行われます。
理学療法士が患者の状態を評価し、個々の能力に応じた運動メニューを立案・指導することで、安全かつ効果的に身体機能の改善を図ります。

 

物理療法で痛みの緩和や回復を促進する

物理療法は、熱、電気、光、水、超音波といった物理的なエネルギーを利用して、症状の改善を図る治療法です。
このアプローチの主な目的は、痛みの緩和、筋肉の緊張をほぐすこと、血行を促進して組織の回復を早めることにあります。

例えば、温熱療法で患部を温めて血流を改善させたり、電気刺激を与えて痛みを和らげたりします。
物理療法は、運動療法の効果をより高めるための補助的な手段として用いられることが多く、両者を組み合わせることで、より効果的な回復を促進することが可能です。

 

 

 

理学療法士と他のリハビリ専門職との違い

リハビリテーションの現場では、理学療法士のほかにも、作業療法士や言語聴覚士といった専門職が連携して患者をサポートしています。
これらの職種は、それぞれ専門とする領域やアプローチの方法に違いがあり、患者の状態に応じて各専門家がチームとなって関わります。

ここでは、理学療法士と作業療法士、そして言語聴覚士との間にある、それぞれの役割や対象領域の具体的な違いについて解説します。

 

作業療法士との目的やアプローチの違い

理学療法士と作業療法士の最も大きな違いは、リハビリテーションの目的にあります。

理学療法士が「立つ」「歩く」といった基本的な動作能力の回復を目指すのに対し、作業療法士は食事や着替え、入浴といった日常生活の応用的な動作や、社会復帰を目的としたアプローチを行います。

作業療法でいう「作業」とは、人の生活に関わる全ての活動を指し、手工芸やレクリエーションなどもリハビリの手段として用います。

このように、理学療法が身体機能そのものに焦点を当てる一方、作業療法はより生活に密着した活動を通じて心と身体の回復を支援する点が特徴です。

 

言語聴覚士が対象とするリハビリ領域の違い

理学療法士が身体全体の基本的な動きをリハビリの対象とするのに対し、言語聴覚士はコミュニケーションや食事に関する機能の専門家です。
具体的には、病気や事故の後遺症で「話す」「聞く」「表現する」といった言葉の機能に問題が生じた人への訓練や、食べ物をうまく飲み込めない嚥下障害を持つ人へのリハビリを行います。

主なリハビリ領域は、失語症や構音障害に対する会話の訓練や、安全に食事をするための嚥下訓練です。
このように、言語聴覚士は、人が社会生活を送る上で不可欠なコミュニケーションと食べる機能に特化して支援するという違いがあります。

 

理学療法士が活躍する主な職場

理学療法士の専門知識と技術は様々な場面で必要とされており、その活躍の場は多岐にわたります。
最も代表的な職場は病院などの医療機関ですが、高齢化社会の進展に伴い、介護保険領域の施設での需要も急速に高まっています。

さらに、スポーツ選手のパフォーマンス向上を支える分野や、利用者の自宅に直接訪問してリハビリを行う在宅分野など、活躍のフィールドは広がり続けています。

 

病院やクリニックなどの医療機関

理学療法士にとって最も一般的な職場は、大学病院や総合病院、リハビリテーション専門病院、整形外科クリニックといった医療機関です。
これらの施設では、手術直後の急性期から回復期、そして退院後の維持期まで、患者の病状や状態に合わせたリハビリテーションを提供します。

入院患者や外来患者に対し、医師や看護師、その他の医療専門職とチームを組んで連携しながら、身体機能の回復と社会復帰を支援する重要な役割を担っています。

 

高齢者を支える介護老人保健施設や福祉施設

高齢化が進む現代において、介護老人保健施設や特別養護老人ホーム、デイサービスセンターなどの介護・福祉施設も理学療法士の重要な職場です。

これらの施設では、高齢者の身体機能の維持・向上や、転倒予防、日常生活動作の自立支援を目的としたリハビリを行います。また、認知症の進行緩和を目的としたプログラムや、生活の質を高めるためのケアにも関わります。利用者が自分らしく安心して生活できるよう、長期的な視点で支える役割が求められます。

 

プロ選手のパフォーマンスを支えるスポーツ分野

理学療法士の中には、プロスポーツチームや実業団、フィットネスクラブ、スポーツジムなどで活躍する人もいます。
スポーツ分野での主な役割は、選手の怪我の予防やコンディショニング管理、怪我をした際のリハビリテーション、そして競技への早期復帰のサポートです。
さらに、選手の身体的な特徴を分析し、パフォーマンスを最大限に引き出すためのトレーニング指導も行います。
医学的な知識に基づいた専門的なアプローチで、アスリートの活躍を支える重要な存在です。

 

利用者の自宅へ訪問してリハビリを行う在宅分野

訪問看護ステーションや介護施設に所属し、利用者の自宅へ直接出向いてリハビリを提供する働き方も増えています。
この訪問リハビリの大きな特徴は、利用者が実際に生活している環境で、より実践的な支援を行える点です。

日常生活動作の練習はもちろん、住宅改修に関する助言や福祉用具の選定、家族への介助方法の指導など、その人らしい生活を在宅で継続できるよう、多角的な視点からサポートします。

 

 

 

理学療法士になるための具体的なステップ

理学療法士として働くためには、理学療法士国家資格を取得することが不可欠です。
資格を取得するためには、国が定めた教育課程を修了し、年に一度行われる国家試験に合格する必要があります。

理学療法士になるには、まず指定された養成校で専門知識と技術を学び、国家試験の受験資格を得ることから始まります。
ここでは、その具体的なステップについて解説していきます。

 

指定の養成校で3年以上学び国家試験の受験資格を得る

理学療法士になるための最初のステップは、文部科学大臣または厚生労働大臣が指定した養成校で専門教育を受けることです。
養成校には、4年制大学、3年制の短期大学、そして3年制または4年制の専門学校があります。
これらの学校では、解剖学や生理学といった基礎医学に加え、理学療法に関する専門的な知識と技術を学びます。

カリキュラムには臨床実習も含まれており、医療機関や施設での実務経験を通じて、卒業後に国家試験の受験資格が与えられます。

 

年に一度の理学療法士国家試験に合格する

養成校で必要なカリキュラムを全て修了し、卒業見込みとなることで、年に一度、2月下旬に実施される理学療法士国家試験の受験資格を得られます。
この試験はマークシート形式の筆記試験で、理学療法に関する幅広い専門知識が問われます。

合格率は例年80〜90%前後で推移していますが、決して簡単に合格できるわけではなく、養成校で学んだ内容を十分に理解しておく必要があります。
この国家試験に合格することで、正式に理学療法士としての免許が与えられ、専門職として働くことが可能になります。

 

 

 

理学療法士のリハビリに関するよくある質問

理学療法士という職業やリハビリの分野に関心を持つと、様々な疑問が浮かんでくるかもしれません。
特に、将来性や仕事への適性、収入といったキャリアに関する点は、多くの人が知りたい情報です。
ここでは、理学療法士を目指すにあたってよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

進路やキャリアプランを考える上での参考にしてください。

 

理学療法士と作業療法士ではどちらが将来性がありますか?

理学療法士と作業療法士は、どちらも高齢化社会において需要が高く、将来性のある専門職です。

それぞれ専門領域が異なるため、一概にどちらが優れているとはいえません。
理学療法士は基本的な動作、作業療法士は応用的な動作や精神面を支える役割を担います。
自身の興味やどのような形で人の役に立ちたいかに基づいて、適した職種を選ぶことが重要です。

 

理学療法士のリハビリはどのような人に向いていますか?

理学療法士は、他者への思いやりがあり、根気強く人と向き合える人に向いています。
リハビリの対象は高齢者だけでなく、小児の発達障害やスポーツ選手など多岐にわたり、精神科領域でも役割があります。

患者だけでなくその家族を支える視点も必要です。
目の前の課題に対し、観察力と探究心を持って解決策を考え、粘り強くサポートできる人が適しています。

 

理学療法士の平均年収はどのくらいですか?

理学療法士の平均年収は、勤務先の規模や地域、経験年数によって変動しますが、おおよそ430万円前後が目安です。
経験を重ねて専門性を高めたり、管理職になったりすることで給料アップが期待できます。
また、認定理学療法士や専門理学療法士といった資格を取得することも、キャリアアップと年収向上につながる一つの方法といえます。

まとめ

理学療法士は、病気や怪我によって身体機能に障害を持つ人々に対し、運動療法や物理療法を用いて基本的な動作能力の回復を支援するリハビリの専門職です。
主な職場は医療機関や介護福祉施設ですが、スポーツ分野や在宅分野など活躍の場は広がっています。

作業療法士や言語聴覚士とはそれぞれ専門領域が異なり、チームで連携して患者を支えます。
理学療法士になるには、指定の養成校で3年以上学び、国家試験に合格して資格を取得する必要があります。

 

監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城武志(理学療法士)

 

 

 

作業療法士のやりがいと魅力|福祉の心でその人らしい生活を支える

作業療法士のやりがいと魅力|福祉の心でその人らしい生活を支える

監修:日本リハビリテーション専門学校 柴田美雅(作業療法士)

 

作業療法士は、身体や心に障害を持つ人々がその人らしい生活を送れるよう支援するリハビリテーションの専門職です。
この仕事の大きな魅力は、医療の知識と福祉の視点を持ち、対象者一人ひとりの人生に深く関わりながら、日々の生活を取り戻す過程を支えられる点にあります。

患者さんと共に目標を達成する喜びは、何にも代えがたいやりがいとなります。

 

作業療法士とは?理学療法士との違いも解説

作業療法士は、英語で「OccupationalTherapist」と呼ばれ、その頭文字から「OT」とも称されます。
心と身体の両面からアプローチし、日常生活における具体的な活動を通して機能回復を目指す専門職です。

同じリハビリ職である理学療法士としばしば比較されますが、その役割やアプローチには明確な違いが存在します。

 

身体と心の両面から日常生活の動作を支える専門家

作業療法士の役割は、食事や着替え、入浴といった基本的な日常活動から、仕事や趣味、地域活動への参加まで、人が行うすべての「作業」を支援することです。
病気やケガによってこれらの活動が困難になった人に対し、身体機能の回復だけでなく、精神的な安定や自信を取り戻すためのリハビリも行います。

対象者一人ひとりの価値観や生活背景を尊重し、その人らしい生活を再構築するための専門的な知識と技術を持つスペシャリストです。

 

理学療法士との違いは「応用的な動作」と「精神面」へのアプローチ

理学療法士(PT)が「立つ」「歩く」「寝返る」といった基本的な動作能力の回復を目的とするのに対し、作業療法士(OT)は、それらの基本動作を応用した、より複雑で個別性の高い活動の再獲得を目指します。

例えば、料理をする、字を書く、趣味を楽しむといった具体的な生活行為が対象です。また、身体的なアプローチに加え、精神疾患を持つ方への支援や、高次脳機能障害による認知的な問題への対応など、精神面へのアプローチを専門的に行う点も大きな違いです。

 

 

作業療法士が感じるやりがい|具体的な5つの瞬間

作業療法士のやりがいは、日々の業務の中でさまざまな形で感じることができます。
特に、患者さんの回復や成長を間近で支え、その喜びを分かち合える瞬間は、この仕事ならではのものです。

ここでは、多くの作業療法士がやりがいを感じる具体的なエピソードを交えながら、5つの瞬間を紹介します。

 

できなかったことができるように!患者さんと分かち合う回復の喜び

患者さんが以前はできなかった動作を再びできるようになった瞬間は、作業療法士にとって最も大きな喜びの一つです。
例えば、脳卒中で麻痺が残った方が、練習を重ねて再び箸を使えるようになったり、字を書けるようになったりする過程に立ち会えます。

特に回復期のリハビリテーションでは、小さな成功体験を積み重ねることが患者さんのモチベーション維持につながります。
目標を共有し、共に乗り越えた末に達成できたときの喜びは、何物にも代えがたいやりがいとなります。

 

「あなただから」と信頼され、患者さんの人生に深く関われる

作業療法士は、患者さんの生活背景や価値観、家族構成などを深く理解した上でリハビリ計画を立てます。
時には、夫や妻、親としての役割を再び果たせるように支援するなど、その人の人生そのものに寄り添うことが求められます。

時間をかけて丁寧に関わる中で、患者さんやその家族から「あなたに担当してもらえてよかった」という言葉をもらえた時、深い信頼関係を築けたことを実感します。
個人として信頼され、人生の重要な局面を支えられることは、大きなやりがいにつながります。

 

趣味や生活歴を活かしたオーダーメイドのリハビリを提案できる面白さ

作業療法士の仕事は、マニュアル通りのリハビリを行うだけではありません。
患者さんが元々持っていた趣味や関心、過去の仕事経験などをリハビリテーションに取り入れる創造性が求められます。

例えば、元料理人の患者さんには調理活動を、スポーツ好きの方にはボールを使った運動を取り入れるなど、その人ならではのプログラムを考案します。
楽しみながら取り組めるリハビリは効果も高く、個々の生活に合わせたオーダーメイドの支援を自分のアイデアで形にできる面白さがあります。

 

退院後の生活まで見据えた長期的なサポートができる

作業療法士の支援は、病院内だけで完結するものではありません。
患者さんが退院した後も、地域社会でその人らしく安全に暮らし続けられるよう、長期的な視点でサポートします。

具体的には、自宅に戻る前に家屋調査を行い、手すりの設置や段差の解消といった住宅改修の提案をしたり、生活に必要な福祉用具を選定したりします。
医療機関から在宅まで、シームレスに関わり続け、生活の再建を根本から支えられることは、この仕事の専門性であり、大きなやりがいの一つです。

 

医師や看護師など多職種と連携して患者さんを支えるチームの一員になれる

医療現場では、多くの専門職が連携して一人の患者さんを支える「チーム医療」が実践されています。
作業療法士は、その重要な一員として、医師や看護師、理学療法士、言語聴覚士などと情報を共有し、それぞれの専門性を活かしながら治療方針を決定していきます。

生活の専門家という視点から意見を求められ、チームに貢献できたときに大きな達成感を得られます。
多様な専門家と協力し、包括的なサポートを提供できることも、作業療法士のやりがいと言えます。

 

 

やりがいだけじゃない!作業療法士として働く魅力

作業療法士の仕事は、患者さんの人生に寄り添うやりがいに満ちていますが、それ以外にも職業としての魅力が多く存在します。
専門職としての安定性や多様な働き方の可能性、そして社会的な需要の高さなど、長期的なキャリアを築く上で重要な要素が揃っています。

ここでは、作業療法士として働くことの具体的な魅力について解説します。

 

医療・福祉・教育など多彩なフィールドで活躍できる

作業療法士の活躍の場は、病院やクリニックといった医療機関に限りません。
介護老人保健施設やデイサービスなどの福祉施設、子どもたちの発達を支援する療育センターや特別支援学校といった教育機関、さらには一般企業での障害者雇用支援や、誰もが使いやすい製品を開発するユニバーサルデザインの分野など、非常に多岐にわたります。

保育士と連携して子どもの成長を支えるなど、多様なフィールドで専門性を発揮できるため、自身の興味やライフステージに合わせたキャリア選択が可能です。

 

高齢化社会でますます高まる需要と将来性

日本は急速に高齢化が進行しており、リハビリテーションを必要とする人の数は年々増加しています。
介護予防や認知症支援、地域包括ケアシステムの推進など、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるための支援において、作業療法士の専門的な視点は不可欠です。

こうした社会的な背景から、作業療法士のニーズは今後ますます高まると予測されており、将来性が非常に高い職業であると言えます。
社会貢献性が高く、安定して働き続けられる点が魅力です。

 

専門知識を活かして安定したキャリアを築ける

作業療法士になるには、国が指定した大学や専門学校などの養成校で3年以上学び、国家試験に合格して資格を取得する必要があります。
この国家資格は専門性の高さを証明するものであり、安定した雇用につながりやすいという大きなメリットがあります。

また、資格があれば全国どこでも通用するため、ライフイベントに応じた引っ越しや転職がしやすいのも特徴です。
有名な病院で臨床経験を積んだり、大学院で研究に進んだりと、キャリアパスも多様に描くことができます。

 

 

作業療法士の仕事で大変なこと・厳しいと感じる点

作業療法士はやりがいや魅力の多い仕事ですが、一方で大変なことや厳しい側面も存在します。
患者さんの人生に深く関わるからこその精神的な負担や、身体的な負担、そして専門職として学び続ける努力も求められます。

この仕事を目指す上では、こうした現実的な側面も理解しておくことが重要です。

 

患者さんの回復が思うように進まないときの向き合い方

リハビリテーションの効果は、必ずしも計画通りに進むとは限りません。
熱心にサポートしても患者さんの機能がなかなか改善しない、あるいは症状が悪化してしまうこともあります。

回復が見られない状況で、患者さんの意欲をいかに引き出し、自分自身のモチベーションを保つかは、多くの作業療法士が直面する課題です。
思うような結果が出ない中でも、最善の方法を模索し続けなければならない精神的な厳しさがあります。

 

リハビリをスムーズに進めるための体力と忍耐力

作業療法士の仕事は、デスクワークだけではありません。
患者さんの体を支えながら動作を補助したり、ベッドから車椅子への移乗介助を行ったりと、身体的な負担が大きい場面も多くあります。

特に、体格の大きな患者さんを担当する際は、相応の体力が求められます。
また、リハビリへの意欲が低い患者さんや、コミュニケーションが難しい患者さんに対しても、根気強く関わり続ける忍耐力が必要です。
心身ともにタフさが求められる仕事です。

 

常に新しい知識を学び続ける必要がある向上心

医療やリハビリテーションの分野は、日々進歩しています。
そのため、作業療法士は国家資格を取得した後も、常に新しい知識や技術を学び続ける必要があります。

関連する医学知識はもちろん、新たな治療法や支援機器についても理解を深めるため、休日を利用して学会や研修会に参加することも少なくありません。
専門職として質の高いサービスを提供し続けるためには、自己研鑽を怠らない向上心が不可欠であり、学ぶことへの意欲がなければ務まらない側面があります。

 

 

作業療法士に関するよくある質問

ここでは、作業療法士を目指す方からよく寄せられる質問について、Q&A形式で解説します。
仕事への適性や具体的な就職先、収入面など、進路を考える上で気になるポイントをまとめました。

 

Q. 作業療法士にはどんな人が向いていますか?

他者の気持ちに寄り添い、人を支えることに喜びを感じる人が向いています。
一人ひとりに合わせたリハビリを考える創造力や、根気強く人と関わるコミュニケーション能力、そして相手を注意深く観察する力が重要です。

心と体の両面から人をサポートしたいという強い意志を持つ人に適した職業です。

 

Q. 主な就職先と仕事内容を教えてください

主な就職先は、総合病院やリハビリテーション専門病院、精神科病院、介護老人保健施設、特別支援学校など多岐にわたります。

身体や精神に障害のある方に対し、食事や入浴などの日常生活動作から、仕事や趣味といった活動まで、その人らしい生活を送るためのリハビリテーションを提供します。

 

Q. 作業療法士の平均年収はどのくらいですか?

厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、作業療法士の平均年収は約444万円です。ただし、これは全体の平均であり、勤務先の種類(病院、施設など)や規模、経験年数、役職、地域によって変動します。国家資格を持つ専門職として、比較的安定した収入が期待できる職業と言えます。

 

まとめ

作業療法士は、対象者が「できなくなったこと」を「できる」ように支援し、その人らしい生活を取り戻す過程に深く関わる専門職です。
患者さんと共に回復の喜びを分かち合える瞬間や、信頼関係を築きながら人生に寄り添える点に、大きなやりがいがあります。

また、医療、福祉、教育など多様な分野で活躍できる将来性や、国家資格としての安定性も魅力です。
仕事には体力や忍耐力が求められる厳しい側面もありますが、それ以上に、人の生活を根底から支えることのできる充実感の大きい仕事です。

 

 

 

監修:日本リハビリテーション専門学校 柴田美雅(作業療法士)