理学療法士が公務員になるには?試験の倍率・給料・メリットを解説

 

理学療法士が公務員になるには?試験の倍率・給料・メリットを解説

監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城武志(理学療法士)

 

理学療法士は公立病院や行政機関などで公務員として働く道も選択できます。
理学療法士の公務員は、安定した雇用や充実した福利厚生が魅力ですが、採用枠が少なく、なるには公務員試験の突破が必要です。(自治体によっては公務員試験が無いところもあります)

この記事では、公務員理学療法士の仕事内容や試験の概要、気になる給料事情、働く上でのメリットや注意点を詳しく解説します。

 

 

理学療法士が公務員として活躍できる職場一覧

理学療法士が公務員として働く職場は、主に公立病院、行政機関、自治体が運営する福祉・教育機関の3つに大別されます。
最も一般的なのは公立病院での臨床業務ですが、行政機関で地域の保健福祉に関わる仕事内容もあります。

求人や募集は常にあるわけではなく、欠員が出た際に不定期で行われることが多いため、希望する自治体の採用情報をこまめに確認することが重要です。

公立病院(国立・都道府県立・市区町村立)

公務員理学療法士の最も代表的な勤務先は、国立病院機構や都道府県、市区町村が運営する公立病院です。
市民病院などがこれにあたり、仕事内容は民間の病院と同様に、患者へのリハビリテーション業務が中心となります。

民間病院との大きな違いは、営利を目的としないため経営が安定している点です。
例えば、東京都や千葉県、京都府などの自治体が運営する病院では、地域の中核医療を担う重要な役割を果たします。
東京や千葉といった首都圏だけでなく、全国の公立病院で理学療法士の募集が行われる可能性があります。

行政機関(都道府県庁・市役所・保健所など)

理学療法士は、都道府県庁や市役所、保健所といった行政機関で専門知識を活かして働くこともできます。
この場合、地方公務員として採用され、デスクワークが中心となります。
具体的な業務は、介護予防事業の企画立案、地域包括ケアシステムの構築、住民の健康相談、福祉用具の利用支援など多岐にわたります。
臨床現場とは異なり、地域全体の健康課題に取り組む視点が求められます。

国家公務員として国の機関で働く道もありますが、理学療法士の募集は極めて稀です。
役所で働く場合は、より広い視野で地域医療に貢献することになります。

自治体が運営する福祉施設や教育機関

公立病院や行政機関の他に、自治体が運営する福祉施設や教育機関も公務員理学療法士の勤務先となります。
具体的には、心身障害者福祉センター、児童発達支援センター、特別支援学校などが挙げられます。

これらの施設では、障害を持つ方や発達に支援が必要な子どもたちを対象に、リハビリテーションや日常生活動作の指導を行います。
対象者の年齢層や専門領域が特化しているため、より深い専門性が求められます。
ただし、これらの施設での理学療法士の募集は、病院や行政機関に比べてさらに少ない傾向にあります。

 

 

公務員理学療法士になるための採用試験の概要

理学療法士が公務員になるには、各自治体や機関が実施する採用試験に合格する必要があります。
募集人数が少なく倍率が高いことが多いため、公務員試験は難しいというイメージを持つ人も少なくありません。

採用試験は、一般的に筆記試験、小論文、面接で構成されており、理学療法士としての専門知識だけでなく、公務員として必要な幅広い知識や人物像が評価されるため、十分な準備が不可欠です。

筆記試験(教養科目・専門科目)の内容

公務員採用試験の筆記試験は、「教養科目」と「専門科目」の2つで構成されるのが一般的です。
教養科目は、公務員として必要な基礎学力を問うもので、数的処理、文章理解、社会科学、自然科学など幅広い分野から出題されます。
一方、専門科目は理学療法士としての専門知識を問う内容で、解剖学、生理学、運動学、病理学、リハビリテーション医学など、国家試験で問われるような基礎的な知識が中心です。

この試験内容からもわかるように、理学療法の専門知識だけでなく、一般教養も含めた総合的な学力が求められます。

人物評価を重視する面接試験

筆記試験と並行して、面接試験も公務員採用の重要な選考過程です。
面接は個人面接が一般的ですが、自治体によっては集団討論や集団面接が行われる場合もあります。

面接では、志望動機や自己PR、これまでの経験といった一般的な質問に加え、「公務員として地域にどう貢献したいか」「理学療法士としてどのような役割を果たしたいか」など、公務員としての適性や倫理観を問われることが多いです。
円滑なコミュニケーション能力や協調性、誠実な人柄など、組織の一員として円滑に業務を遂行できるかが評価されます。

小論文や作文で問われること

採用試験では、小論文や作文が課されることも多くあります。
テーマは、「地域包括ケアシステムにおける理学療法士の役割」「高齢化社会における介護予防の重要性」など、医療や福祉に関する時事的なものが頻出です。

ここでは、理学療法士としての専門的視点に加え、社会情勢への関心や、課題に対する論理的な思考力、文章構成力などが評価されます。
与えられたテーマに対して、自身の考えを制限時間内に的確に文章で表現する能力が求められるため、日頃から関連分野のニュースに関心を持ち、自分の意見をまとめる練習をしておくことが重要です。

 

 

気になる公務員試験の倍率と採用事情

公務員理学療法士の採用は、民間病院に比べて募集人数が極めて少ないのが現状です。
多くの自治体では、欠員が出た場合にのみ募集を行うため、毎年必ずしも採用があるとは限りません。

採用人数も1名から若干名というケースがほとんどで、その結果、採用倍率は非常に高くなる傾向にあります。
数十倍になることも珍しくなく、狭き門であることは間違いありません。
そのため、公務員を目指す場合は、希望する自治体や国立病院機構などの公式サイトを定期的に確認し、募集情報を見逃さないようにすることが重要です。
複数の自治体を視野に入れて、チャンスを広げる戦略も必要になります。

公務員理学療法士の給与はどのくらい?民間との違いを徹底比較

公務員理学療法士の給与は、国や地方自治体が定める給与規定(俸給表)に基づいて支給されるため、非常に安定しています。
民間病院と比較すると、初任給は同程度かやや低い傾向にありますが、勤続年数に応じて着実に昇給していくのが大きな特徴です。

景気や病院の経営状況に左右されにくく、ボーナスや退職金も安定して支給されるため、長期的な視点で見ると、生涯年収は民間の平均を上回るケースも少なくありません。

初任給と勤続年数に応じた昇給モデル

公務員の給与は、経験年数や役職に応じて定められた「俸給表」に基づいて決まります。
そのため、初任給は民間の医療機関と比較して特別高いわけではありません。
しかし、最大の魅力は毎年着実に昇給していく点にあります。

個人の業績評価も一部加味されますが、基本的には勤続年数に応じて給料が上がっていく年功序列型です。
これにより、長期的なキャリアプランやライフプランを立てやすくなります。
安定した昇給が見込めることは、将来設計において大きな安心材料となるでしょう。

ボーナス(期末・勤勉手当)と退職金の水準

公務員には、民間のボーナスにあたる「期末・勤勉手当」が年に2回(6月と12月)支給されます。この手当の支給月数は、人事院勧告に基づき決定され、民間企業のボーナス支給状況を踏まえて改定されることがあります。また、個人の成績率によって支給額が変動する場合があります。

退職金制度も整備されており、勤続年数に応じて支給額が増加します。人事院の調査によると、公務員の退職給付水準は民間企業とほぼ同水準になるように調整されています。安定した手当と退職金制度は、公務員の魅力の一つです。

公務員として働く3つの大きなメリット

公務員として働くことには、民間企業にはない多くのメリットが存在します。
特に理学療法士にとっては、雇用の安定性、充実した福利厚生、そしてワークライフバランスの取りやすさが大きな魅力となるでしょう。
これらのメリットは、長期的なキャリアを築き、安定した生活を送る上で非常に重要な要素です。

ここでは、公務員理学療法士として働く3つの主要なメリットを具体的に見ていきます。

安定した雇用と収入が保証される

公務員の最大のメリットは、その安定性にあります。
公務員は法律によって身分が保障されており、重大な問題を起こさない限り解雇されることはありません。
勤務先の経営状況によって雇用が左右される心配がほとんどないため、安心して長く働き続けることが可能です。

また、給与やボーナスも景気の動向に影響されにくく、毎年安定した収入を得られます。
これにより、住宅ローンを組んだり、子育てをしたりといった長期的なライフプランを非常に立てやすくなります。

福利厚生が手厚く、休暇も取得しやすい

公務員は、福利厚生が非常に充実している点も大きな魅力です。
住居手当、通勤手当、扶養手当といった各種手当が手厚く、経済的なサポートを受けられます。

また、休暇制度も整っており、年次有給休暇の取得が奨励されるほか、夏季休暇、結婚休暇などの特別休暇も用意されています。
さらに、育児休業や介護休業といった制度も法律で定められており、実際に多くの職員が利用しています。
ライフステージの変化に合わせて柔軟に働き方を選びやすい環境が整っているといえます。

規則正しい勤務時間でプライベートを両立しやすい

公務員の職場では、勤務時間が法律や条例で定められており、年間休日も民間企業と比較して多い傾向にあります。多くの職場では土日祝日が休みで、カレンダー通りの勤務が基本です。しかし、職種や部署によっては残業時間や休日出勤の状況が異なる場合があります。

終業後の時間や休日を確保しやすい職種や部署では、家族との時間を大切にしたり、趣味や自己研鑽に時間を費やしたりと、プライベートを充実させやすい環境だと言えるでしょう。

ワークライフバランスを重視する人にとって、このような環境は魅力的な選択肢の一つとなるでしょう。オンとオフのメリハリをつけた生活を送りやすい点は、公務員の仕事の大きなメリットの一つです。

 

 

知っておきたい公務員ならではの注意点

安定性や福利厚生など多くのメリットがある公務員ですが、働く上で知っておくべき注意点も存在します。
民間企業とは異なる公務員特有のルールや文化があり、これらを理解しておかないと、就職後にギャップを感じる可能性があります。

特に、副業の制限、年功序列の給与体系、そして定期的な異動は、人によってはデメリットと感じられるかもしれません。
事前にこれらの注意点を把握しておくことが重要です。

原則として副業が認められない

公務員は、国家公務員法および地方公務員法によって、原則として副業が禁止されています。
これは、職務の公正性を保ち、国民全体の奉仕者としての職務に専念するためです。
ただし、不動産投資や農業、あるいは任命権者の許可を得た非営利活動など、一部例外的に認められるケースもあります。

しかし、民間企業のようにスキルアップや収入増を目的とした自由な副業は難しいため、複数の収入源を持ちたいと考えている人にとっては大きな制約となります。

成果が給与に直結しにくい年功序列制

公務員の給与体系は、勤続年数に応じた昇給が基本にありつつも、近年では評価制度が導入され、個人の能力や業績が給与やボーナスに反映されるようになっています。そのため、若いうちから実力で高い収入を得たい、自分の成果を正当に評価してほしいと考える人にとっては、自身の努力や成果が給与に反映される仕組みがある一方で、民間企業と比較して物足りなさを感じる可能性もあります。

安定した昇給が期待できる反面、個人のパフォーマンスが給与に結びつきにくいと感じる場合がある点は、モチベーションを維持する上で課題となる場合もあります。

数年単位での異動や転勤の可能性

公務員には数年単位での定期的な異動が伴います。
これは職員の能力開発や組織の活性化を目的として行われるものです。
同じ自治体内の異なる部署や施設へ異動することが一般的ですが、場合によっては転居を伴う転勤の可能性もあります。

特定の分野で専門性を深く追求したいと考えている人にとっては、異動によってキャリアが中断されるリスクがあります。
また生活環境の変化を望まない人にとっても注意が必要な点であり、将来的な転職を考えるきっかけにもなり得ます。

 

 

公務員理学療法士に関するよくある質問

公務員理学療法士を目指すにあたり、多くの人が疑問や不安を抱えています。
ここでは、試験対策はいつから始めるべきか、臨床経験がない新卒でも目指せるのか、行政職の具体的な仕事内容など、特によく寄せられる質問について回答します。
これらの情報を参考に、公務員というキャリアパスへの理解を深め、自身のキャリアプランニングに役立ててください。

公務員試験の対策はいつから始めるべき?

一概には言えませんが、試験の半年前から1年前には対策を始めるのが一般的です。
教養科目は出題範囲が広く、専門科目も基礎から復習する必要があるため、計画的な学習が不可欠です。

働きながら勉強する場合は、さらに早めに準備を開始すると余裕を持って試験に臨めます。

臨床経験がなくても公務員になれますか?

はい、なれます。

自治体や施設によっては、新卒や臨床経験が浅い人を対象とした求人もあります。
ただし、応募資格として「臨床経験◯年以上」といった条件を設けている募集も多いため、各求人の募集要項を事前にしっかりと確認することが重要です。

行政職の場合、どのような仕事内容になりますか?

主な仕事は、介護予防事業や健康増進施策の企画・運営、地域包括ケアシステムの推進、福祉用具に関する相談対応などです。臨床現場でのリハビリとは異なり、地域住民全体の健康を支えるための施策立案や調整業務が中心となります。

地域包括支援センターの運営主体が自治体直営の場合は、公務員として採用されます。

まとめ

理学療法士が公務員として働く道は、雇用の安定性、充実した福利厚生、ワークライフバランスの取りやすさなど、多くの魅力を持っています。
勤務先は公立病院での臨床業務から、行政機関での企画・調整業務まで多岐にわたります。

しかし、その一方で採用枠が少なく倍率が高いこと、原則として副業が禁止されていること、年功序列の給与体系であること、定期的な異動があることなどの注意点も存在します。
公務員を目指す際は、これらのメリットとデメリットを十分に理解し、自身のキャリアプランや価値観と合致するかどうかを慎重に検討することが大切です。

 

監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城武志(理学療法士)

 

 

作業療法士の役割とは?仕事内容や理学療法士との違いをわかりやすく解説

作業療法士の役割とは?仕事内容や理学療法士との違いをわかりやすく解説

監修:日本リハビリテーション専門学校 田中克一(作業療法士)

 

作業療法士の役割とは、病気やけが、あるいは生まれつきの障害によって日常生活に支障をきたしている人々に対し、心と体の両面からリハビリテーションを行い、その人らしい生活の再建を支援することです。
本記事では、作業療法士の具体的な仕事内容や、しばしば比較される理学療法士との違い、活躍の場について詳しく解説します。

作業療法士とは何か、その専門性や目的を理解するための一助となれば幸いです。

 

作業療法士(OT)が担う中心的な役割とは?

作業療法士(OT)の役割は、対象者が主体的な生活を送れるように、食事や入浴といった日常生活の動作から、仕事、趣味活動に至るまで、あらゆる「作業」を通じて心身機能の回復を支援することです。

その目的は、単に身体機能を回復させるだけでなく、対象者が社会的役割を取り戻し、生きがいを感じられる生活を再構築できるよう、個々の価値観や目標に寄り添いながらサポートすることにあります。

 

心と体の両面から「その人らしい生活」の実現を支援する

作業療法士は、身体機能の回復訓練だけでなく、精神的な安定や意欲の向上も重視します。
対象者にとって意味のある「作業」、例えば料理や園芸、手芸といった活動をリハビリに取り入れることで、楽しみながら自然と心身の機能を高める機会を与えます。

これにより、対象者は自信を取り戻し、再び社会と関わる意欲を持つことができます。
このように、作業療法士は身体的なアプローチと心理的なアプローチを組み合わせ、対象者一人ひとりが望む「その人らしい生活」をオーダーメイドで作り上げていく役割を担っています。

 

リハビリを通して食事や入浴など日常生活の動作回復を目指す

作業療法士が行うリハビリテーションの中核には、食事、着替え、入浴、トイレといった日常生活に不可欠な動作(ADL)の回復があります。
このリハビリでは、単に筋力や関節の動きを改善するだけでなく、実際の生活場面でどのように体を使えば動作が楽になるか、あるいは自助具や福祉用具をどう活用するかといった具体的な方法を指導します。

対象者が安全かつ自立して日々の生活を送れるようになることを目指し、一人ひとりの状態や生活環境に合わせた実践的な訓練計画を立てて実行していきます。

 

社会参加を促進するための精神的なサポート

病気や障害は、身体的な機能低下だけでなく、自信の喪失や社会からの孤立感といった精神的な苦痛をもたらすことがあります。
作業療法士は、対象者が抱える不安や葛藤に耳を傾け、精神的な支えとなることも重要な役割です。

趣味活動やグループでの作業などを通じて、他者と交流する機会を設け、成功体験を積み重ねることで自己肯定感を高めます。
このようにして、対象者が再び地域社会や家庭で自分の役割を見つけ、主体的に参加していくための精神的な基盤を整える支援を行います。

 

 

【比較】作業療法士(OT)と理学療法士(PT)の役割の違いを解説

作業療法士と理学療法士は、ともに対象者の機能回復を支援するリハビリテーションの専門職ですが、その役割には明確な違いがあります。
理学療法士が「立つ」「歩く」といった基本的な動作能力の回復に焦点を当てるのに対し、作業療法士は食事や料理、仕事といった、より応用的で生活に密着した動作能力の改善と社会復帰を目指します。

両者はそれぞれの専門性を活かし、連携しながら対象者をサポートします。

 

作業療法士(OT):応用的な動作や社会復帰を支援する

作業療法士の役割は、基本的動作が可能になった後の、より複雑で応用的な生活動作の再建を支援することです。
例えば、食事の際に箸を使う、服を着替える、料理をするといった具体的な生活行為の訓練を行います。

さらに、復職を目指す人に対しては、パソコン作業や軽作業などの職業関連動作の訓練を行う就労支援も担います。
また、精神的なケアを通じて社会参加への意欲を引き出し、趣味活動の再開など、生活の質(QOL)全体の向上を目指す点も大きな特徴です。

 

理学療法士(PT):立つ・歩くといった基本的な動作の回復を支援する

理学療法士の役割は、病気やけがによって損なわれた基本的な身体機能の回復を支援することにあります。
具体的には、関節を動かす、筋力をつけるといった運動療法や、電気刺激や温熱などを利用した物理療法を用いて、寝返る、起き上がる、座る、立つ、歩くといった動作の改善を図ります。

これらの基本動作は、日常生活を送る上での土台となるため、理学療法士はリハビリテーションの初期段階で中心的な役割を担うことが多いです。
対象者が安全に移動できる能力を獲得することが主な目的となります。

 

 

【対象分野別】作業療法士が果たす4つの役割

作業療法士の専門性は、対象者の状態や年齢に応じて4つの主要な分野で発揮されます。
具体的には、脳卒中後のリハビリなどを行う「身体障害分野」、心の病を抱える人を支援する「精神障害分野」、子供の成長をサポートする「発達障害分野」、そして高齢者の生活を支える「老年期障害分野」です。

これらの4つの領域において、作業療法士はそれぞれの特性に応じたアプローチで、対象者の生活再建を支援しています。

 

1. 身体障害分野:日常生活動作の再獲得とリハビリ

身体障害分野では、脳卒中、骨折、神経難病などにより身体機能に障害がある人々を対象とします。
作業療法士は、食事や着替え、入浴といった日常生活動作(ADL)を再び行えるように、筋力や関節可動域の改善、巧緻性(手先の器用さ)の向上を目指すリハビリを行います。

また、スプーンの持ち手を太くするなどの自助具の提案や、手すりの設置といった住宅改修のアドバイスも行い、対象者が障害を抱えながらも、できる限り自立した生活を送れるように環境面からも支援します。

 

2. 精神障害分野:心のケアと社会生活への適応支援

精神障害分野において、作業療法士は統合失調症やうつ病、依存症などの精神疾患を抱える人々を支援します。

精神科病院やクリニックなどで、手芸、スポーツ、園芸、料理といった具体的な作業活動を用いて、気分の安定、集中力や対人関係能力の向上を図ります。これらの活動は、生活リズムを整え、自己肯定感を高めることにつながります。最終的には、対象者が退院後に地域社会で安定した生活を送れるように、生活スキルの獲得や再就職の準備など、社会生活への適応をサポートする役割を担います。

 

3. 発達障害分野:子供の成長に合わせた機能の発達サポート

発達障害分野では、脳性まひや自閉スペクトラム症など、生まれつき発達に課題のある小児を対象とします。
作業療法士は、遊びを通して、座る、立つといった運動機能や、物をつかむ、字を書くといった感覚・知覚機能の発達を促します。

発達障害領域では、子供が日常生活や学校生活にうまく適応できるよう、個々の特性に合わせた支援計画を立てることが重要です。
また、保護者に対して家庭での関わり方について助言したり、学校の先生と連携したりするなど、子供を取り巻く環境全体に働きかける役割も担います。

 

4. 老年期障害分野:高齢者の生活機能の維持と認知症ケア

老年期障害分野では、加齢や病気に伴い心身機能が低下した高齢者を対象とします。
作業療法士は、できる限り自立した生活を長く続けられるよう、筋力維持の体操や日常生活動作の訓練、趣味活動の提供などを行います。

特に認知症の方に対しては、昔の道具を使ったり、馴染みのある歌を歌ったりする回想法などを通じて精神的な安定を図り、認知機能の低下を緩やかにするアプローチも行います。
高齢化社会が進行する中で、高齢者の尊厳ある生活を支える作業療法士のニーズはますます高まっています。

 

 

【職場別】作業療法士の具体的な仕事内容と役割

作業療法士は、医療機関や介護福祉施設だけでなく、子供の発達支援施設や地域社会まで、非常に幅広いフィールドで活躍しています。
それぞれの職場には異なるニーズがあり、作業療法士は対象者や施設の目的に応じて専門的な役割を果たします。

病院での急性期リハビリから、地域での生活支援まで、働く場所によって仕事内容は多岐にわたります。

 

医療機関(一般病院・精神科病院など)での役割

病院などの医療機関において、作業療法士は医師の指示のもと、患者の病状や回復段階に応じたリハビリテーションを提供します。
急性期病院では発症直後から早期離床や合併症予防を図り、回復期リハビリテーション病院では集中的な訓練を通じて在宅復帰を目指します。

医師や看護師、理学療法士など他職種と連携し、チーム医療の一員として患者の機能回復と退院支援を担うことが重要な役割です。
精神科病院では、精神的な安定と社会生活への適応を目的とした作業活動を行います。

 

介護・福祉施設(老人ホーム・デイサービスなど)での役割

介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどの介護施設において、作業療法士は利用者の心身機能の維持・向上を目的とした役割を担います。
福祉の現場では、個別の機能訓練に加え、集団でのレクリエーションや趣味活動を企画・実施し、利用者の生活に活気と潤いをもたらします。

通所リハビリテーション(通所リハ)では、在宅で生活する高齢者が日帰りでリハビリに通い、身体機能の維持や社会参加の機会を支援します。
老人ホームでは、生活そのものがリハビリと捉え、日常動作を通じた機能維持を図ります。

 

児童福祉・教育機関(支援施設・特別支援学校など)での役割

児童発達支援センターや放課後等デイサービス、特別支援学校などの現場では、発達に課題を抱える子供たちの支援が作業療法士の役割です。
遊びや学習を通じて、身体の動かし方、手先の使い方、コミュニケーション能力などを育むサポートを行います。

個々の子供の発達段階や特性を評価し、それに合わせたプログラムを作成・実施します。
また、保護者への助言や、学校の教員と連携してクラスでの過ごし方について提案するなど、子供が円滑に集団生活を送れるよう環境を調整する役割も重要です。

 

就労支援施設や保健所など地域社会での役割

作業療法士の活躍の場は、地域社会にも広がっています。
就労移行支援事業所では、障害のある人が一般企業へ就職するための職業訓練や相談支援を行います。
また、保健所や市町村の保健センターでは、地域住民の介護予防事業や健康増進活動に関わります。

さらに、利用者の自宅を訪問してリハビリを行う訪問リハビリテーションも重要な役割の一つです。
通院が困難な人に対して、実際の生活環境の中で動作指導や住宅改修のアドバイスを行い、地域での自立した生活を支えます。

 

作業療法士に関するよくある質問

ここでは、作業療法士という職業について、多くの方から寄せられる質問にお答えします。
対象となる人、資格取得の方法、そして仕事のやりがいといった、作業療法士を目指す上での基本的な疑問点を解説します。

これから作業療法士を目指す方や、この仕事に関心のある方はぜひ参考にしてください。

 

Q1. 作業療法士のリハビリはどのような人が対象になりますか?

身体や精神に障害がある、またはそれが予測される全ての方が対象となります。
年齢も、新生児から高齢者まで幅広く、特定の疾患に限りません。

脳卒中後の後遺症、骨折、発達障害、認知症など、日常生活や社会生活に何らかの支障がある場合に支援を行います。
スポーツ選手のパフォーマンス向上を目指すスポーツリハビリとは異なり、生活の再建を主目的としています。

 

Q2. 作業療法士になるには、どのような資格や学びが必要ですか?

作業療法士になるには、国家資格である「作業療法士免許」の取得が必須です。
この国家試験を受験するためには、文部科学省または厚生労働省が指定する大学、短期大学、あるいは3年制以上の専門学校の養成課程を修了する必要があります。

養成校では、解剖学や生理学などの基礎医学に加え、専門的な知識と技術を講義や実習を通して学びます。

 

Q3. 作業療法士の仕事のやりがいは何ですか?

対象者ができなかったことができるようになった瞬間に立ち会い、その人らしい生活を取り戻す過程を一番近くで支援できる点にあります。
対象者やその家族から「ありがとう」と直接感謝の言葉を伝えられることも多く、人の役に立っていると実感できるのが大きな魅力です。

一人ひとりの人生に深く関わり、その人の可能性を引き出す手助けができる、非常に充実感のある仕事です。

 

まとめ

作業療法士は、身体的な機能回復だけでなく、精神的なサポートを通じて、対象者が「その人らしい生活」を送れるよう支援する専門職です。
理学療法士が「立つ・歩く」といった基本動作を担うのに対し、作業療法士は食事や更衣といった日常生活の応用動作から、復職や趣味活動といった社会参加まで、より生活に密着した領域をサポートします。

活躍の場は病院や介護施設にとどまらず、子供の発達支援や地域での生活支援など多岐にわたります。
対象者一人ひとりの人生に深く関わり、その人の生きがいを再構築する手助けをする、社会にとって不可欠な役割を担っています。

 

 

監修:日本リハビリテーション専門学校 田中克一(作業療法士)

理学療法士と作業療法士どっちが大変?仕事・勉強・給料の違いを比較

 

理学療法士と作業療法士どっちが大変?仕事・勉強・給料の違いを比較

監修:日本リハビリテーション専門学校 山田 慶(作業療法士)

 

理学療法士と作業療法士は、どちらもリハビリテーションの専門職ですが、その役割や仕事内容は異なります。
進路選択で迷う方にとって、どちらが難しいのか、自分に向いているのはどちらかという点は大きな悩みどころです。
この記事では、仕事内容・勉強・給料・将来性など、様々な観点から両者の「大変さ」を比較し、後悔しないための選択のヒントを解説します。

どちらが難しいという単純な比較ではなく、大変さの質の違いを理解しましょう。

 

 

結論:大変さの種類が違う!自分に合うのはどっちか見極めよう

理学療法士と作業療法士のどちらが大変かという問いの結論は、「大変さの種類が異なる」です。
理学療法士は患者の体を支えて動かすなど肉体的な負担が大きい場面が多く、作業療法士は患者の精神面に寄り添い、生活全体を支援するため精神的な負担や対応範囲の広さが大変だとされます。

どっちがいいとは一概には言えず、体力的な大変さと精神的な大変さのどちらが自分にとって許容できるかを見極めることが重要です。
自分自身の適性や興味と照らし合わせ、納得のいく選択をすることが大切です。

 

 

まずは基本をおさらい!理学療法士と作業療法士の役割の違い

理学療法士(PT)と作業療法士(OT)は、どちらもリハビリテーションを通じて患者の自立を支援する専門職ですが、そのアプローチの対象が異なります。
理学療法士が「立つ・歩く」といった基本的な動作能力の回復を目指すのに対し、作業療法士は食事や入浴といったより応用的・社会的な活動への復帰をサポートします。

仕事内容や求められるスキルの難易度にも違いがあるため、両者の役割を正しく理解することが、自分に合った進路を選択するための第一歩となります。

 

 

理学療法士(PT)は「立つ・歩く」など基本的な動作の回復をサポート

理学療法士(Physical Therapist, PT)は、ケガや病気によって身体機能が低下した人々に対し、運動療法や物理療法を用いて基本的な動作能力の回復を支援する専門職です。 具体的には、寝返り、起き上がり、座位保持、立ち上がり、歩行といった、日常生活を送る上で基礎となる動作の改善を目指します。

関節の可動域を広げる訓練や筋力を強化するトレーニング、電気刺激や温熱などの物理的手段を駆使して、患者が自立した生活を取り戻せるようサポートします。 専門性を活かして長く働き続けることが可能な職業です。

 

 

作業療法士(OT)は「食事・入浴」など応用的な動作の回復をサポート

作業療法士(Occupational Therapist, OT)は、基本的な動作の回復を目的とする理学療法士に対し、食事、着替え、入浴、料理、書字といった、より応用的でその人らしい生活を送るために必要な動作(作業)の回復をサポートします。
身体的なリハビリだけでなく、精神的なケアも重要な役割であり、患者の興味や関心事を活用しながら、社会復帰に向けた意欲を引き出すアプローチを行います。

進路に迷う人にとっては、どちらの専門性が自分の関心に近いか考えることが、どっちがいいかを判断する重要な要素です。
人の生活全体に深く関わりたいと考えるなら、作業療法士の仕事に魅力を感じるかもしれません。

 

 

【仕事編】理学療法士と作業療法士の大変さを比較

理学療法士と作業療法士の仕事における「大変さ」は、その性質が大きく異なります。
理学療法士は、患者の身体を直接支える場面が多いため、体力的な負担が大きな特徴です。

一方、作業療法士は、患者の身体面だけでなく精神面にも深く関わり、生活環境全体を調整していくため、精神的な負担や多角的な視点が求められるという大変さがあります。
それぞれの仕事内容を深く理解し、どちらの大変さが自分にとって乗り越えやすいかを考えることが重要です。

 

 

体力的な負担が大きいのは理学療法士

理学療法士の仕事は、体力的な負担が大きい場面が多いのが特徴です。
例えば、脳卒中後の麻痺がある患者さんの歩行訓練では、体重を支えながら一緒に歩いたり、ベッドから車椅子への移乗を介助したりと、自身の体を使って患者をサポートする必要があります。

特に、回復期リハビリテーション病棟や急性期病院では、身体機能が大きく低下した患者を担当することが多く、一日に何人もの患者のリハビリを行うため、相応の筋力と体力が求められます。
腰痛は理学療法士の職業病とも言われており、日々のボディメカニクスを意識した介助や、自身の身体のメンテナンスが欠かせません。

 

 

精神的な負担や対応範囲の広さが大変なのは作業療法士

作業療法士は、身体機能の回復だけでなく、患者の精神状態や生活背景までを考慮したアプローチが求められるため、精神的な負担や対応範囲の広さが大変さにつながることがあります。
例えば、精神科領域では患者との信頼関係の構築に時間を要したり、高次脳機能障害の患者の意欲を引き出すための工夫が必要だったりと、コミュニケーション能力や忍耐力が試されます。

また、退院後の生活を見据え、家屋の改修提案や福祉用具の選定、家族への指導など、リハビリ室の中だけにとどまらない幅広い視点と調整能力が不可欠です。
患者一人ひとりの人生に深く寄り添う分、責任も大きい仕事です。

 

 

 

活躍の場(就職先)の違いもチェックしよう

理学療法士と作業療法士は活躍の場にも違いがあります。
理学療法士の主な就職先は、病院やクリニックといった医療機関が中心で、特に整形外科やリハビリテーション科での需要が高いです。
近年では、スポーツ分野でアスリートのコンディショニングをサポートする理学療法士も増えています。

一方、作業療法士も医療機関で働きますが、それに加えて介護老人保健施設、特別支援学校、精神科病院、就労支援施設など、より幅広い領域で活躍しています。
特に、精神障害領域や発達障害領域のリハビリは作業療法士が中心となって担うことが多く、活躍の場の多様性は作業療法士の大きな特徴といえます。

 

 

【勉強・試験編】理学療法士と作業療法士の大変さを比較

理学療法士と作業療法士になるためには、養成校で専門知識を学び、国家試験に合格する必要があります。
どちらの道も簡単なものではありませんが、勉強内容や試験の難易度にはいくつかの違いが見られます。

国家試験の合格率には若干の差があり、また、大学や専門学校で学ぶカリキュラムもそれぞれの専門性に応じて異なります。
ここでは、学業や資格取得における大変さの違いを比較し、進路選択の参考にします。

 

 

国家試験の合格率は作業療法士のほうがやや低い傾向

理学療法士と作業療法士の国家試験の合格率は、年によって変動はあるものの、全体的な傾向として作業療法士の方がやや低い水準で推移しています。
近年のデータを見ると、理学療法士の合格率がおおむね80%台から90%台前半であるのに対し、作業療法士は70%台後半から80%台半ばとなることが多いです。

この差の背景には、試験範囲の広さが一因として考えられます。
作業療法士は身体障害、精神障害、発達障害、老年期障害と多岐にわたる領域を深く学ぶ必要があり、その学習範囲の広さが試験の難易度に影響している可能性があります。
ただし、どちらの試験も養成校のカリキュラムを真面目に修了すれば合格できる水準です。

 

 

養成校で学ぶ内容や臨床実習の大変さの違い

理学療法士と作業療法士の養成校では、学ぶ内容に専門性の違いが明確に現れます。
理学療法士のカリキュラムは、解剖学、生理学、運動学といった人体の構造や機能に関する科目に重点が置かれ、科学的根拠に基づいた運動療法を深く学びます。

一方、作業療法士はこれらの基礎医学に加え、精神医学、心理学、社会学など、人の心や生活に関わる人文社会科学系の科目も幅広く履修します。
臨床実習においてもその違いは顕著で、理学療法士は主に身体機能の評価や治療プログラムの立案・実施を学び、作業療法士はそれに加えて患者の生活環境の評価や精神的なアプローチ、レクリエーションの活用なども実践的に学びます。

 

 

 

【給料・将来性編】理学療法士と作業療法士の大変さを比較

職業を選択する上で、給料や将来性は重要な判断基準です。
理学療法士と作業療法士のどちらの道に進むか考える際にも、経済的な安定やキャリアパスの展望は無視できません。
給与水準や求人数、そして将来的な需要など、両者の待遇やキャリアにおける違いを比較することで、長期的な視点での「大変さ」を把握することができます。

ここでは、給料と将来性という2つの側面から両職種を詳しく見ていきます。

 

 

平均給与に大きな差はないが、求人数は理学療法士が多い

理学療法士と作業療法士の平均給与を比較すると、両者に大きな差はないのが現状です。厚生労働省の調査などを見ても、平均年収はほぼ同水準で推移しており、給与面での有利不利はほとんどないと言えます。ただし、就職のしやすさという点では、求人数に違いが見られます。一般的に、病院やクリニックからの需要が安定して高い理学療法士の方が、作業療法士に比べて求人数が多い傾向にあります。これは、診療報酬制度上、理学療法士の配置が求められる場面が多いことなどが理由として挙げられます。しかし、作業療法士も介護保険領域や精神科領域などで専門性が高く評価されており、活躍の場は広がっています。

一方、作業療法士は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年問題や、一人暮らしの高齢者が増加しているといった社会背景から、その不足が指摘されています。特に、地域に根差した在宅医療や介護予防の分野では、作業療法士が提供する生活機能向上の支援が不可欠であり、今後ますます需要が高まると予測されています。病院や施設でのリハビリテーションだけでなく、地域社会での生活支援においても専門性が求められるため、作業療法士の活躍の場は今後さらに多様化していくでしょう。

 

 

!! POINT !! 1. 求人数の違い 作業療法士の目線

結論から言うと、「絶対的な求人数」はPTの方が多いですが、「競争率(有効求人倍率)」で見るとOTの方が有利な傾向にあります。

求人数と有資格者数
現在、国内の有資格者数はPTが約21万人、OTが約11万人と、PTの方が圧倒的に多い状況です。

理学療法士 (PT): 病院、整形外科クリニック、訪問リハビリなど、ニーズが非常に幅広いため求人の絶対数は多いです。ただし、供給(志望者)も多いため、人気のある都心部の病院などでは倍率が高くなる傾向があります。

作業療法士 (OT): PTに比べると募集件数は少なめですが、有資格者数も少ないため、一人あたりの求人数(倍率)はOTの方が高い(就職しやすい)傾向にあります。

 

 

キャリアパスや将来性の違いを理解しよう

理学療法士と作業療法士は、どちらも高齢化社会の進展に伴い将来性が高い専門職ですが、キャリアパスにはそれぞれの特色があります。
理学療法士は、病院での経験を積んだ後、スポーツトレーナーとしてアスリートを支えたり、整体院やフィットネスクラブを開業したりするなど、身体機能の専門性を活かした多様な道へ進むことが可能です。

一方、作業療法士は、福祉用具の開発や住宅改修のアドバイザー、あるいは地域包括支援センターで高齢者の生活を支える専門職として活躍するなど、人の「生活」に密着した分野でのキャリアが広がります。
どちらも専門性を深め、認定資格を取得することで、管理職や教育者としての道も開けます。

 

 

!! POINT !! 2. キャリアパスの違い 作業療法士の目線

リハビリの「目的」が異なるため、将来的な専門性の磨き方が変わります。

理学療法士 (PT) のキャリア
「動作の専門家」として、身体機能の回復を深掘りする道が一般的です。
専門分化: スポーツリハ、心臓リハ、呼吸リハなど、特定の疾患や部位に特化した認定理学療法士を目指す。
スポーツ分野: プロチームのトレーナーや、スポーツクリニックでの専属スタッフ。
開業・自費リハ: 整体院の開業や、保険外のパーソナルリハビリサービスの展開。

 

!! POINT !! 作業療法士 (OT) のキャリア

「生活の専門家」として、心身の両面からアプローチするため、活躍の幅が横に広いです。

精神科領域: 精神科病院やデイケアで、手工芸やレクリエーションを通じた社会復帰支援のスペシャリスト。
高次脳機能障害・認知症: 脳の機能や認知面に特化したリハビリの専門性を高める。
就労支援・教育: 障害者の一般企業への就労支援や、特別支援学校での指導。
福祉用具・住環境: 福祉住環境コーディネーターなどの資格を合わせ、住宅改修のコンサルティングを行う。

 

 

 

結局どっちを選べばいい?向いている人の特徴で比較

これまで仕事内容や給料、将来性など様々な観点から理学療法士と作業療法士を比較してきましたが、最終的にどちらを選ぶべきかは、自身の性格や価値観との相性が重要になります。
ここでは、それぞれの職業に「向いている人」の特徴をまとめました。

これまでの比較内容と合わせて自己分析を行い、自分がどちらのタイプの「大変さ」なら乗り越えられそうか、どちらの仕事にやりがいを感じられそうかを考えるための参考にしてください。

 

 

理学療法士(PT)に向いている人の特徴

理学療法士には、まず体力と忍耐力が求められます。
患者の身体を支えたり、根気強くリハビリを続けたりする場面が多いため、身体的にも精神的にもタフな人が向いています。

また、身体の構造や動きの仕組みに対して強い探究心があり、解剖学や運動学といった分野に興味を持てることも重要です。
リハビリは科学的根拠に基づいて計画されるため、物事を論理的に考え、客観的なデータから問題を分析・解決していく能力も必要とされます。
患者の「歩けるようになりたい」という目標に向かって、粘り強くサポートし、共に回復を喜べる人にとって大きなやりがいを感じられる仕事です。

 

 

作業療法士(OT)に向いている人の特徴

作業療法士には、相手の立場に立って物事を考えられる共感性と、細やかな気配りができる観察力が不可欠です。
患者の言葉にならない思いや小さな変化を汲み取り、リハビリに活かしていく姿勢が求められます。

また、手工芸やレクリエーションなどをリハビリの手段として用いることも多いため、手先が器用であったり、遊びや創作活動のアイデアを考えるのが好きだったりする人にも向いています。
身体機能だけでなく、心理面や生活環境まで含めたトータルサポートを行うため、広い視野を持ち、人と深く関わることに喜びを感じる人にとって、非常に魅力的な職業といえるでしょう。

 

 

理学療法士と作業療法士に関するよくある質問

ここでは、理学療法士と作業療法士を目指すにあたって、多くの方が抱く疑問について回答します。
ダブルライセンスの可能性や、文系からの進学、将来の需要など、進路選択の最終判断に役立つ情報をまとめました。

これらの回答を参考に、自身のキャリアプランをより具体的にイメージしてみてください。

 

 

 

両方の資格を取得することは可能ですか?

はい、可能です。
理学療法士と作業療法士、両方の国家資格を取得することは制度上できます。
ただし、そのためにはそれぞれの養成校で3年以上学び、国家試験に合格する必要があります。

一部の共通科目は単位互換が認められる場合もありますが、時間も学費もかかるため、強い意志と計画性が必要です。

 

 

文系からでも理学療法士や作業療法士を目指せますか?

はい、目指せます。
養成校の入試科目は学校によって様々で、文系科目で受験できる学校も少なくありません。
入学後は生物や物理といった理系分野の知識が必要になりますが、多くの学校では基礎から学べるカリキュラムが組まれているため、入学後の本人の努力と意欲があれば文系出身でも十分に追いつけます。

 

 

将来的にどちらの需要が高まりますか?

理学療法士、作業療法士ともに、高齢化が進む日本において需要はますます高まると予測されます。
特に、病院だけでなく在宅医療や介護予防、地域包括ケアの分野での活躍が期待されており、どちらの専門性も不可欠です。

需要の優劣を考えるより、自分がどの分野で貢献したいかを考えることが重要です。

 

 

まとめ

理学療法士と作業療法士の「大変さ」は、体力的な負担、精神的な負担、学習範囲、活躍の場など、様々な側面で質が異なります。
理学療法士は身体機能の回復という明確な目標に対し、論理的かつ体力的にアプローチする大変さがあり、作業療法士は心と身体、そして生活全体という広範な対象に寄り添う精神的な大変さがあります。

どちらの職業が優れているというわけではなく、自身の適性、興味、そしてどのような形で人の役に立ちたいかによって、選択は変わります。
本記事で比較した内容を参考に、自身のキャリアについて深く考え、納得のいく進路を選択してください。

監修:日本リハビリテーション専門学校 山田 慶(作業療法士)