2026.01.29
理学療法

監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城武志(理学療法士)
身体に不調を感じた際、「病院の理学療法士」と「街中の整体師」のどちらに相談すべきか迷うことがあるかもしれません。
理学療法士と整体師は、どちらも身体の専門家というイメージがありますが、その役割や資格には明確な違いがあります。
この記事では、資格、目的、料金体系などの観点から両者の違いを解説し、症状や目的に応じてどちらを選ぶべきかの判断基準を提案します。
理学療法士と整体師の主な違いは、「資格」「目的」「場所」「保険適用」「対象者」の5つの観点から整理できます。
理学療法士は国家資格を持ち、医師の指示のもと病院などの医療機関で病気や怪我の治療・リハビリを目的とします。
そのため、医療保険が適用されます。
一方、整体師は民間資格または無資格であり、整体院などで慢性的な不調の緩和やリラクゼーションを目的とした施術を行います。
こちらは医療行為ではないため、費用は全額自己負担となるのが基本です。
このように、両者は似ているようで、その背景や役割は大きく異なります。
理学療法士と整体師を分ける最も根本的な違いは、保有している資格にあります。
理学療法士は、国が定めた養成課程を修了し、国家試験に合格した者のみが名乗れる国家資格です。
これに対し、整体師には国家資格が存在せず、民間団体が認定する資格を取得するか、あるいは無資格で施術を行っている場合もあります。
この資格の違いが、施術内容や信頼性に大きく影響します。
理学療法士は「理学療法士及び作業療法士法」に基づく国家資格であり、医学的な知識と技術を持つリハビリテーションの専門職です。
大学や専門学校などの養成校で3年以上学び、解剖学、生理学、運動学といった専門知識を習得した上で国家試験に合格する必要があります。
主な役割は、病気や怪我、加齢などによって身体機能が低下した人々に対し、運動療法や物理療法を用いて、起き上がる、座る、歩くといった基本的な動作能力の回復を支援することです。
医師の指示のもとでリハビリを行うため、医療従事者の一員として位置づけられています。
整体師には理学療法士のような国家資格はなく、誰でも名乗ることが可能です。
ただし、多くの整体師は民間団体が運営するスクールなどで手技を学び、独自の認定資格を取得して活動しています。
しかし、これらの資格は法的な裏付けがあるわけではなく、教育内容や基準も団体によって様々です。
そのため、施術者の知識レベルや技術力には大きな幅があるのが実情です。
信頼できる整体師を見つけるためには、どのような教育を受け、どれくらいの経験を積んでいるかなどを事前に確認することが求められます。
理学療法士と整体師では、目的と提供する内容が異なります。
理学療法士の目的は、医師の診断に基づいた医学的リハビリテーションであり、身体機能の回復という「治療」の一環を担います。
一方で整体師は、病気や怪我の治療ではなく、身体の歪みを整えたり、筋肉の緊張を緩和したりすることによる不調の改善やコンディショニングを主な目的としています。
この目的の違いが、具体的なアプローチの差となって現れます。
理学療法士が行うリハビリテーションは、医師による診断と指示に基づいて計画されます。
その目的は、病気、事故による怪我、障害などによって損なわれた運動機能の回復や維持、悪化の予防です。
例えば、骨折後の関節可動域訓練、脳卒中後の歩行訓練、スポーツ選手の競技復帰に向けたリハビリなどが挙げられます。
運動療法を用いて筋力や柔軟性を改善したり、温熱や電気などの物理療法で痛みを軽減したりと、医学的根拠に基づいたアプローチで対象者の社会復帰を支援します。
整体師が行う施術の主な目的は、日常生活で生じる身体の不調を和らげることです。
骨盤の歪みや姿勢の乱れを整えたり、硬くなった筋肉をほぐしたりすることで、肩こり、腰痛、頭痛といった慢性的な症状の改善を目指します。
また、病気の治療ではなく、心身のリフレッシュや疲労回復を目的としたリラクゼーションとして利用されることも少なくありません。
手技を用いて身体のバランスを調整し、人間が本来持つ自然治癒力を高める手助けをすることが、整体の役割と言えます。
理学療法士と整体師では、主に活動する場所が異なります。
理学療法士は国家資格を持つ医療専門職であるため、そのほとんどが病院やクリニック、介護老人保健施設といった医療機関や介護保険関連施設に勤務しています。
医師の指示のもとリハビリテーションを提供するため、医療体制が整った環境が主な職場です。
一方、整体師は医療従事者ではないため、病院で働くことはありません。
主な活躍の場は、街中にある整体院やリラクゼーションサロン、カイロプラクティック院などになります。
理学療法士によるリハビリテーションと整体の施術では、料金体系に大きな違いがあります。
病院やクリニックで受ける理学療法士のリハビリテーションは、医師の指示のもと行われる医療行為の一環とみなされるため、原則として健康保険や介護保険などの公的医療保険が適用されます。
そのため、利用者は費用の1〜3割を自己負担するだけで済みます。
対照的に、整体院での施術は医療行為ではないため、公的医療保険は適用されません。
料金は全額自己負担となり、費用は各整体院が独自に設定しています。
身体の不調を感じたとき、理学療法士と整体師のどちらを選ぶべきかは、その症状の原因や目的によって異なります。
骨折や手術後のように原因がはっきりしている医学的な問題は理学療法士、原因が特定しにくい慢性的な不調や身体のメンテナンスは整体師、というように大別できます。
ここでは、具体的な症状や目的別に、どちらの専門家を訪ねるのがより適しているかを解説します。
理学療法士によるリハビリテーションは、医師の診断が伴う以下のようなケースで推奨されます。
まず、骨折、捻挫、脱臼、靭帯損傷といった怪我や、人工関節置換術などの手術後のリハビリテーションが必要な場合です。また、脳卒中やパーキンソン病など神経系の疾患による後遺症で身体機能に障害がある人、スポーツによる怪我からの競技復帰を目指す人も対象となります。腰椎椎間板ヘルニアや変形性膝関節症など、整形外科で診断名がついた症状の改善も理学療法の専門分野です。原因が明確な痛みや動作の困難さを抱えている場合は、まず医療機関を受診し、理学療法士のサポートを受けるのが適切です。
整体の利用は、病気や怪我には至らないものの、日常生活で感じる慢性的な不調を抱えている人におすすめです。
具体的には、長時間のデスクワークによる慢性的な肩こりや腰痛、姿勢の悪さが気になる場合などが挙げられます。
また、原因ははっきりしないけれど何となく身体がだるい、疲れが取れないといった不定愁訴の緩和にも役立つことがあります。
病気の治療ではなく、日々の身体のメンテナンスやコンディション調整、心身のリフレッシュを目的とする場合に適しています。
ただし、急な激しい痛みやしびれがある場合は、まず医療機関を受診することが重要です。
理学療法士が提供する整体には、主に3つのメリットがあります。
第一に、解剖学や運動学といった医学的知識に基づいた評価と理学療法が受けられる点です。
身体の構造を熟知しているため、痛みの根本原因を的確に見つけ出し、効果的なアプローチが期待できます。
第二に、安全性の高さです。
医療機関での経験から、マッサージやストレッチを行ってはいけない危険な状態(レッドフラッグ)を見極める能力に長けており、リスク管理を徹底した上で理学療法を行います。
第三に、身体の評価能力の高さです。
姿勢や動作を詳細に分析し、不調の根本的な原因を特定した上で、一人ひとりに合わせたセルフケアやトレーニングの指導まで行ってくれることが多いです。
理学療法士が在籍する整体院を選ぶ際は、いくつかの点を確認することが失敗を防ぐ鍵となります。
まず、ウェブサイトなどで施術を担当する理学療法士の経歴を確認しましょう。
特に、病院やクリニックでの勤務経験が豊富であるかは、臨床能力を判断する上での重要な指標です。
次に、初回のカウンセリングや身体の評価に十分な時間をかけてくれるかどうかも大切です。
流れ作業ではなく、利用者の悩みや身体の状態を丁寧に把握しようとする姿勢があるかを見極めます。
さらに、内容や料金体系が明確に提示されていることも信頼できる院の条件です。
口コミや評判も参考にしつつ、最終的には自身の身体の悩みに親身に対応してくれるかどうかで判断するのが良いでしょう。
職業としての理学療法士と整体師は、仕事内容だけでなく収入やキャリアパスも大きく異なります。
理学療法士の平均年収は比較的に安定しており、病院や介護施設からの求人が多いため、就職や転職はしやすい傾向にあります。
一方、整体師の収入は働き方や技術力によって大きく変動します。
成功すれば高い年収を得ることも可能ですが、競争も激しく、安定した求人が常にあるわけではありません。
理学療法士がスキルアップや収入増を目指して、整体の技術を学び、開業権をもつ国家資格を取得した後、副業や独立開業を視野に入れるケースも見られます。
理学療法士は、身体のリハビリテーションに関わる専門職ですが、同様に身体にアプローチする国家資格は他にも存在します。
特に「柔道整復師」「あん摩マッサージ指圧師」「作業療法士」は、理学療法士と役割や働く場所が似ているため混同されがちです。
しかし、それぞれの専門分野や法律で認められている業務範囲は明確に異なります。
これらの資格との違いを理解することは、自分に合ったサービスを選択する上で役立ちます。
柔道整復師は、主に骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷といった急性の外傷(ケガ)に対して、手術をしない「非観血的療法」によって治療を行う専門家です。
整復、固定などの処置が主な業務であり、「ほねつぎ」や「接骨師」としても知られています。
主な職場は整骨院や接骨院で、理学療法士と異なり医師の指示なしに一部の施術を行えるほか、独立開業権が認められている点が大きな違いです。
理学療法士が病気や手術後を含む幅広いリハビリを担うのに対し、柔道整復師はケガの応急処置やその後の回復に特化しています。
あん摩マッサージ指圧師は、「あん摩」「マッサージ」「指圧」という3つの手技を用いて、身体の変調を整える専門家です。
主な目的は、血行を改善し、筋肉の緊張(コリ)を和らげることです。
理学療法士が運動機能の回復を目指すのに対し、あん摩マッサージ指圧師はリラクゼーションや不定愁訴の改善に重点を置いています。
主な職場は治療院やリラクゼーションサロン、病院、介護施設など多岐にわたります。
理学療法士と異なり、医師の指示がなくても施術を行うことができ、独立して治療院を開業することも可能です。
作業療法士は、理学療法士と最も近い領域で働くリハビリテーション専門職です。
両者の大きな違いは、アプローチする能力の側面にあります。
理学療法士が「歩く」「立つ」などの基本的な動作能力(運動機能)の回復を支援するのに対し、作業療法士は食事、着替え、入浴といった日常生活の応用的な動作や、仕事、趣味活動など、その人らしい生活を送るための能力の回復を支援します。
また、身体的な障害だけでなく、精神的な障害を持つ人も対象とする点が作業療法士の大きな特徴です。
リハビリテーションの現場では、理学療法士が食事、着替え等などのADL、IADLに関わることもありますし、作業療法士が歩くなどの基本動作に関わることもあります。働く場所(病院?急性期?回復期?クリニック?老健?)によって変化します。
ここでは、理学療法士と整体について、よくある疑問点をQ&A形式で解説します。
理学療法士の独立開業に関する法的側面や、「理学療法士監修」という表現の受け止め方、健康保険の適用条件など、具体的な疑問について説明します。
これらの情報を知ることで、自分に合ったサービスを適切に選択できるようになります。
理学療法士が「理学療法」を看板に掲げて治療院を開業することは法律で認められていません。
ただし、整体師として整体院を開業することは可能です。
その場合、提供するサービスはあくまでも整体であり、保険適用外の全額自費サービスとなります。
「監修」は、理学療法士が治療内容の考案などに関わっていることを示しますが、直接施術を行うわけではないため注意が必要です。
信頼性の一つの指標にはなりますが、実際に施術する担当者の資格や経験を確認することがより重要になります。
健康保険を利用するには、まず病院やクリニックを受診し、医師の診察を受ける必要があります。
その結果、治療の一環としてリハビリテーションが必要だと医師が判断した場合に、「処方」という形で理学療法士による処置が開始されます。
理学療法士と整体師の最も大きな違いは、国家資格の有無にあります。
理学療法士は国家資格を持つ医療専門職であり、医師の指示のもと医療機関で保険適用のリハビリテーションを行います。
一方、整体師は民間資格または無資格で、整体院などで保険適用外のコンディショニングを提供します。
この違いから、目的、場所、料金体系が大きく異なります。
骨折や手術後など医学的対応が必要な場合は理学療法士、慢性的な肩こりや身体のメンテナンスが目的であれば整体師が適しています。
また、医学的知識に基づいた安全な施術を自費で受けたい場合は、理学療法士が在籍する整体院も有効な選択肢となります。
自身の症状や目的に合わせて適切に使い分けることが重要です。
監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城武志(理学療法士)
グループ校