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高齢者の歩行支援|介護保険で使える杖・歩行器の症状別選び方

2026.03.13

理学療法

 

 

 

高齢者の歩行支援|介護保険で使える杖・歩行器の症状別選び方

監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城 武志(理学療法士)

 

加齢に伴い歩行に不安を感じ始めた方や、そのご家族に向けて、安全な移動を支えるための情報を解説します。
歩行支援とは、杖や歩行器といった福祉用具の利用や、リハビリテーションを通じて、高齢者が安全に歩けるように手助けすること全般を指します。
この記事では、身体の状態や生活シーンに合わせた福祉用具の選び方から、介護保険を活用して費用負担を抑える方法まで、具体的な情報を紹介します。

 

 

なぜ高齢になると歩行の支援が必要になるのか?

加齢とともに身体機能は変化し、多くの高齢者が歩行に何らかの不安を抱えるようになります。
筋力やバランス能力の低下、あるいは病気や怪我の後遺症など、その原因はさまざまです。
これらの要因が重なることで、かつては容易だった「歩く」という動作が困難になり、転倒のリスクが高まります。

安全を確保し、自立した生活を維持するために、適切な支援の必要性が生じます。

 

 

筋力やバランス能力の低下によるふらつき

年齢を重ねると、特に下半身や体幹の筋力が低下しやすくなります。
体を支える力が弱まると、歩行中に体が左右に揺れたり、小さな段差でつまずきやすくなったりします。
また、平衡感覚を担う機能も衰えるため、体のバランスが不安定になり、ふらつきが生じやすくなります。

こうした状態は転倒の直接的な原因となり、歩行への自信を失わせる一因にもなります。

 

 

病気や怪我の後遺症による歩行困難

脳卒中による片麻痺、パーキンソン病に伴う歩行障害、あるいは骨折などの怪我の後遺症によって、歩行が困難になるケースも少なくありません。
麻痺によって足が動かしにくくなったり、痛みで体重を支えられなくなったりと、症状は多岐にわたります。
このような場合は、身体の状態に合わせた専門的なリハビリや、歩行を補助するための適切な福祉用具の選定が特に重要になります。

 

 

歩行を助ける福祉用具の種類とそれぞれの特徴

高齢者の歩行をサポートする福祉用具には、さまざまな種類が存在します。
代表的なものとして、杖、歩行器、歩行車(シルバーカー)、転倒予防シューズなどが挙げられます。
それぞれの用具には異なる特徴があり、使用する方の身体能力や利用する環境によって最適なものが異なります。

安全で快適な歩行を実現するためには、各種用具の機能や利点を正しく理解し、自分に合ったものを選ぶことが大切です。

 

 

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杖(ステッキ):体重を支えバランスを補助する

杖は、歩行時に体重の一部を支えることで足腰への負担を軽減し、安定した歩行を補助する最も基本的な福祉用具です。
杖を持つことで支持基底面(体を支える面積)が広がり、前後左右のバランスが取りやすくなります。
一本杖(T字杖)が一般的ですが、より安定性を求める方向けに、杖先が4つに分かれた多点杖もあります。

比較的、歩行能力が保たれている方の歩みをサポートする役割を果たします。

 

 

歩行器:安定性が高く体重をしっかり預けられる

歩行器は、体を四方から囲むフレーム構造になっており、非常に高い安定性が特徴です。
両手でしっかりと体を支えながら、体重を預けて歩くことができます。
足腰の力が弱まり、杖だけでは歩行が不安定な方に適しています。

主に室内での移動や、病院でのリハビリテーションの初期段階で用いられることが多く、固定式や、左右のフレームを交互に動かす交互式などの種類があります。

 

 

歩行車(シルバーカー):荷物も運べる外出時の頼れる相棒

歩行車は、キャスターが付いた歩行補助用具で、歩行が困難な方の移動をサポートする福祉用具です。シルバーカーは、自立歩行ができる方が、荷物の運搬や休憩に利用できるようなカゴや座面が付属しているものが多く、買い物の際や、疲れた時に休憩できる利便性を備えています。長時間の外出に不安がある方の頼れる相棒となります。

ただし、体重をかけて使う歩行器とは異なり、歩行の補助を主目的としない製品もあるため選定には注意が必要です。

 

 

転倒予防シューズ:つまずきを防ぎ足元を安定させる

高齢になると足が上がりにくくなり、すり足で歩く傾向が見られます。
転倒予防シューズは、こうした歩行特性を考慮して設計された靴です。
つま先部分が少し上がった形状になっており、小さな段差でのつまずきを防ぎます。

また、軽量で着脱しやすく、靴底が滑りにくい素材でできているなど、足元を安定させるための工夫が施されています。
履物から安全を見直すことも、転倒予防の重要な一環です。

 

 

【状況別】最適な歩行支援用具の選び方

歩行支援用具を選ぶ際は、どの用具が優れているかという視点ではなく、利用者の身体状況や生活環境に最も合っているかという視点が重要です。
適切な歩行補助用具を選ぶことは、安全性の確保と自立した生活の維持に直結します。
ここでは、身体の状態、利用シーン、そして身長という3つの観点から、最適な用具を選ぶための具体的なポイントを解説します。

 

 

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身体の状態に合わせた選び方:片麻痺や円背の場合

身体の状態によって、適した用具は異なります。
例えば、脳卒中後遺症などで片麻痺がある場合は、麻痺していない健康な側に杖を持つのが基本です。
安定性を高めるためには、支持面の広い四点杖などが選択肢の一つに挙げられます。

円背(猫背)で前かがみの姿勢になりやすい方は、体を支えやすい高さのある歩行車が適している場合があります。
また、認知症の程度や要介護度によっては、操作が複雑でないシンプルな構造の用具を選ぶ配慮も必要です。

 

 

利用シーンに合わせた選び方:室内用と屋外用の違い

用具を主にどこで使うかも重要な選定基準です。
室内での使用がメインであれば、狭い廊下や部屋の中でも取り回しがしやすい、コンパクトな歩行器や杖が適しています。
一方、屋外で使用する場合は、アスファルトの凹凸や坂道、段差などに対応できる安定性が求められます。

そのため、大きめの車輪が付いた歩行車や、滑りにくい杖先ゴムを備えた杖などが選択肢となります。
両方のシーンで利用する場合は、それぞれの特徴を考慮して選ぶ必要があります。

 

 

身長に合わせた杖の正しい長さの計算式

杖は、長さが合っていないと逆効果になるため、正しい高さを選ぶことが極めて重要です。
一般的な目安の一つとして、「身長÷2+2~3cm」という計算式などがあります。
実際に選ぶ際は、普段履いている靴を履いて自然に立ち、腕を下げた時の手首の骨の高さに杖の持ち手がくるのが適切です。

この高さだと、肘が軽く曲がり、自然な姿勢で体重を支えられます。最終的には円背、体幹前傾、股関節屈曲拘縮、体幹前傾、下肢長差なども考慮して判断をします。
目線が下がりすぎず、背筋を伸ばして歩ける長さを選びましょう。

 

 

歩行支援用具を利用するメリット

歩行支援用具の利用は、単に移動を楽にするだけでなく、高齢者の生活の質(QOL)を向上させる多くのメリットをもたらします。
転倒という大きなリスクを軽減し、安全に行動できる範囲を広げることは、身体的な健康維持に寄与します。
さらに、それは心理的な安心感にもつながり、日々の生活における活動意欲を高める効果も期待できます。

 

 

転倒を予防し、安全に行動範囲を広げられる

歩行支援用具を利用する最大のメリットは、転倒予防効果です。
杖や歩行器で体を支えることにより歩行が安定し、転倒のリスクを大幅に減少させます。
高齢者の転倒による骨折は、寝たきりにつながる重大な事故です。

用具によって安全が確保されることで、これまで一人で行くことをためらっていた場所へも安心して出かけられるようになり、社会参加の機会が増え、行動範囲が自然と広がります。

 

 

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心理的な不安を軽減し、外出への意欲を高める

「また転んでしまうかもしれない」という恐怖心は、高齢者が外出を控える大きな原因の一つです。
歩行が不安定な状態での外出は、常に緊張を伴います。
信頼できる用具が歩行をアシストしてくれることで、こうした心理的な不安が和らぎ、自信を持って一歩を踏み出せるようになります。

その安心感が、散歩や買い物といった外出への意欲を高め、心身の健康維持に良い影響を与えます。

 

 

歩行支援用具を利用する際の注意点

歩行支援用具は多くのメリットがある一方、選び方や使い方を誤ると、かえって歩行が不安定になったり、身体に負担をかけたりする可能性があります。
安全に用具を活用するためには、いくつかの注意点を理解しておくことが不可欠です。

身体に合わない用具の使用や、過度な依存は、歩行が困難になるリスクを伴うため、正しい知識を持って利用することが求められます。

 

 

身体に合わない用具は逆効果になる可能性も

自分の身体に合っていない用具を使い続けると、さまざまな問題が生じます。
例えば、杖の長さが不適切だと、体をきちんと支えることができず、不自然な姿勢での歩行を強いられます。
これにより、肩や腰に余計な痛みが生じたり、バランスを崩して転倒しやすくなったりするなど、逆効果になる可能性があります。

専門家と相談の上、身長や身体機能に合ったものを選ぶことが重要です。

 

 

頼りすぎによる筋力低下を防ぐためのポイント

「用具に頼ると筋力が落ちてしまうのではないか」という懸念は少なくありません。
確かに、必要以上に用具に依存すると、本来使うべき筋肉が使われなくなり、筋力低下につながる可能性があります。
これを防ぐためには、用具はあくまで安全を確保するための補助と捉え、専門家の指導のもとで適度な運動や歩行訓練を取り入れることが大切です。

安全な環境で、自分の力で歩く機会を持つ意識も必要です。

 

 

介護保険を活用して費用負担を抑える方法

歩行器や特殊な杖など、高機能な福祉用具は購入すると高額になる場合があります。
しかし、要介護認定を受けている場合、介護保険制度を利用することで、費用負担を大幅に軽減することが可能です。
介護保険サービスには、福祉用具を少ない自己負担で借りられる「福祉用具貸与(レンタル)」と、特定の用具の購入費用補助が受けられる「特定福祉用具販売」があり、賢く活用することで経済的な負担を減らせます。

 

 

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レンタル対象の福祉用具と料金の目安

介護保険でレンタルできる歩行支援用具には、歩行器、歩行車、多点杖、松葉杖などがあります。
自己負担額は、レンタル料金の原則1割となります。
例えば、月額レンタル料が5,000円の歩行器であれば、自己負担500円で利用できます。

身体状況の変化に合わせて用具を交換しやすい点も、レンタルの大きなメリットです。

 

 

購入費用の補助が受けられる特定福祉用具とは

介護保険では、レンタルに適さない衛生面が関わる用具などを「特定福祉用具」として定め、購入費用の補助を行っています。
歩行支援に直接関連するものではありませんが、ポータブルトイレ(腰掛便座)や入浴補助用具などが対象です。
同一年度で10万円を上限に、購入費用のうち自己負担分(原則1割)を除いた額が支給されます。

購入前にケアマネジャーや市区町村への確認が必要です。

 

 

介護保険を利用してレンタル・購入するまでの流れ

介護保険サービスを利用するには、まずお住まいの市区町村の窓口で要介護(要支援)認定の申請を行う必要があります。
認定結果が出たら、担当のケアマネジャーに相談し、どのような福祉用具が必要かを検討します。
その後、ケアマネジャーが作成するケアプランに基づき、福祉用具専門相談員がいる事業者を選定・契約し、用具の利用が開始されるのが一般的な流れです。

 

 

歩行の専門家「理学療法士」によるリハビリという選択肢

福祉用具の利用と並行して、身体機能そのものの維持・向上を目指すことも非常に重要です。
そのための有効な選択肢が、歩行の専門家である理学療法士によるリハビリテーションです。
理学療法士は、個々の身体の状態を正確に評価し、なぜ歩行に問題が生じているのかという原因にアプローチします。

用具で安全を確保しつつ、リハビリによって「歩く力」を維持・向上させることが、長期的な自立につながります。

 

 

理学療法士は身体の動きのプロフェッショナル

理学療法士は、立つ、歩く、座るといった日常生活における基本的な動作の改善を専門とする国家資格を持つリハビリのプロフェッショナルです。
関節の動きや筋力、バランス能力などを詳細に評価し、一人ひとりの状態に合わせたリハビリ計画を立案します。
また、安全な歩行方法や福祉用具の適切な使い方について、専門的な視点から具体的な指導を行う役割も担っています。

 

 

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デイサービスや訪問リハビリで受けられる歩行訓練の内容

理学療法士による歩行訓練は、通所リハビリ(デイサービス)や訪問リハビリといった介護保険サービスで受けることができます。
通所リハビリ(デイサービス)では、平行棒やトレーニングマシンなどの器具を利用し筋力強化やバランストレーニングをすることで歩行能力の維持や向上を図ります。

訪問リハビリでは、理学療法士が自宅を訪問し、実際の生活環境(廊下、階段、玄関など)に即した、より実践的な歩行訓練を行います。
これらの訓練を通じて、歩幅を広げ、安定した歩行を目指します。

 

 

高齢者の歩行支援に関するよくある質問

高齢者の歩行支援については、用具の選び方から制度の利用まで、さまざまな疑問が寄せられます。
歩行支援とは、単に道具を使うことだけでなく、安全に自分らしく生活するための工夫全般を指します。

ここでは、特に多くの方が抱く質問を取り上げ、簡潔に解説します。
正しい知識を持つことが、適切なサポートへの第一歩となります。

 

 

シルバーカーと歩行器はどう違うのですか?

一般的に、歩行器は体重を預けて歩行の安定を図る福祉用具で、主にリハビリや室内利用が目的です。
一方シルバーカーは、自立歩行が可能な方向けで、荷物の運搬や休憩が主目的の製品です。
体重をかける構造になっていない点が大きな特徴の違いです。

最近ではシルバーカー、歩行器共に多種多様な製品が開発されており特徴も様々ですので実際の製品を確認することも重要です。

 

 

杖を使い始めると、逆に筋力が落ちてしまいませんか?

適切に使えば、杖は安全な歩行を助け、活動範囲を広げる効果があります。
これにより結果的に筋力維持に繋がります。
ただし、過度に頼ると筋力低下の可能性もあるため、専門家の指導のもとで適度な運動や歩行訓練を取り入れることが大切です。

 

 

介護認定を受けていなくても歩行器はレンタルできますか?

介護保険を使わない自費でのレンタルは可能です。
ただし、介護保険の補助は受けられないため全額自己負担となります。
費用を抑えたい場合は、市区町村の窓口に相談し、要介護認定を申請することをおすすめします。

 

 

まとめ

高齢者の歩行能力は、加齢による身体機能の変化や病気など、様々な要因で低下することがあります。
しかし、杖や歩行器といった福祉用具を適切に選び、介護保険などの制度を上手に活用することで、安全性を高め、行動範囲を維持することが可能です。
また、理学療法士などの専門家によるリハビリを併用することで、身体機能の維持・向上も期待できます。

個々の状態に合った最適なサポートを見つけ、自立した生活を送りましょう。

 

監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城 武志(理学療法士)

 

 

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