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理学療法士のSOAPの書き方|例文で学ぶアセスメントのコツ

2026.02.26

理学療法

 

 

 

理学療法士のSOAPの書き方|例文で学ぶアセスメントのコツ

監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城 武志(理学療法士)

 

理学療法士にとって、日々の臨床記録で用いるSOAPは非常に重要なスキルです。
しかし、特に新人や実習生は、情報の整理やアセスメントの展開に悩むことが多いのではないでしょうか。
この記事では、理学療法士に求められるSOAPの書き方の基本構成から、質の高いアセスメントを導き出すためのポイント、さらには疾患別の具体的な例までを詳しく解説します。

正しい書き方を身につけ、効率的で論理的なカルテ作成を目指しましょう。

 

 

理学療法士が知っておくべきSOAPの基本構成

SOAPとは、S(Subjective:主観的情報)、O(Objective:客観的情報)、A(Assessment:評価)、P(Plan:計画)の4つの項目で構成される問題志向型システムの記録形式です。
この形式は、患者の抱える問題を明確にし、論理的な思考プロセスに基づいて治療計画を立てるために広く用いられています。
質の高いSOAPの書き方を習得することは、他職種との情報共有を円滑にし、一貫性のあるリハビリテーションを提供する上で不可欠です。

 

 

S(主観的情報):患者さん本人からの訴えや感覚

S(主観的情報)には、患者本人やその家族からの訴えを記載します。
これには、主訴、現病歴、既往歴、痛みやしびれの程度・部位・性質、日常生活で困っていることなどが含まれます。
重要なのは、理学療法士の解釈を加えずに、患者が話した言葉をできるだけそのまま記録することです。

発言を「」で囲んで引用することで、情報の主観性が明確になります。
この情報は、患者が何を問題と感じ、何を求めているのかを理解するための出発点となり、アセスメント(A)における問題点抽出の重要な根拠の一つとなります。

 

 

O(客観的情報):検査や測定によって得られる事実

O(客観的情報)には、理学療法士が客観的な評価によって得た事実を記載します。
視診、触診、各種検査測定の結果がこれにあたり、具体的にはバイタルサイン、関節可動域(ROM)、徒手筋力テスト(MMT)、感覚検査、バランス評価、歩行分析、日常生活活動(ADL)の観察結果などが含まれます。
これらの情報は、誰が測定しても同じ結果が得られる再現性のあるデータであることが求められます。

S情報と照らし合わせることで、患者の訴えを裏付ける客観的な根拠となり、アセスメントの精度を高めるために不可欠な要素です。

 

 

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A(アセスメント):SとOの情報を統合した専門的な解釈

A(アセスメント)はSOAPの核心部分であり、理学療法士の臨床推論能力が最も問われる項目です。
ここでは、S(主観的情報)とO(客観的情報)で得られた情報を統合し、専門的な知識に基づいて問題点を分析・解釈します。
SとOの情報を関連付け、なぜその問題が起きているのかという原因を考察し、機能障害や能力低下の状態を評価します。

また、問題点の関連性や優先順位付け、予後予測なども含めて記述します。
単なる情報の繰り返しではなく、理学療法士としての専門的な視点からの統合と解釈を示すことが重要です。

 

 

P(プラン):アセスメントに基づいた具体的な治療計画

Pには、Aで導き出した評価と考察に基づいて立案した、具体的な治療計画を記載します。
これには、リハビリテーションの最終的な到達点を示す長期目標と、そこに至るまでの中間的な目標である短期目標の設定が含まれます。
さらに、その目標を達成するための具体的な治療プログラムとして、運動療法、物理療法、ADL指導などの内容を具体的に記述します。

次回の治療計画や、患者への教育・指導内容もこの項目に含まれ、計画の実行と再評価へと繋がっていきます。

 

 

【新人・実習生向け】SOAP作成で押さえるべき5つのポイント

SOAPの基本構成を理解した上で、さらに質の高い記録を作成するためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
特に新人や実習生がつまずきやすい点を中心に、論理的で分かりやすいSOAPの書き方を身につけるための5つのポイントを解説します。
これらの点を意識することで、指導者からの修正を減らし、効率的にSOAPを作成する能力が向上します。

 

 

ポイント1:SとOの情報は事実のみを正確に記載する

SOAP作成の基本は、SとOの項目に評価や解釈を交えず、事実のみを記載することです。
Sには患者や家族が語った主観的な情報を、Oにはセラピストが測定・観察した客観的な情報を、それぞれありのままに記述します。
例えば、患者が「膝が痛くて歩きにくい」と訴えた場合はSに記載し、セラピストが膝の腫れや熱感を認めた場合はOに記載します。

この段階で「炎症による痛みのため」といった解釈を加えてしまうと、Aで展開するべき考察の根拠が曖昧になります。
事実と解釈を明確に分離することが、論理的なSOAPを作成する第一歩です。

 

 

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ポイント2:AではSとOの情報を関連付けて問題点を考察する

A(アセスメント)の質は、SとOの情報をいかに有機的に結びつけられるかで決まります。
SとOに記載した情報をバラバラに捉えるのではなく、それらの情報をつなぎ合わせて問題点の原因を分析することが重要です。
例えば、Sの「階段を降りにくい」という訴えと、Oの「大腿四頭筋の筋力低下(MMT4レベル)」という客観的事実から、「大腿四頭筋の遠心性収縮が困難なため、階段下降時の制動が効かず不安定になっている」と考察します。

このように、SとOを根拠として論理を展開することで、説得力のあるアセスメントになります。

 

 

ポイント3:PはAで立てた考察を基に具体的な計画を立てる

P(プラン)は、A(アセスメント)で導き出した結論に基づいて立案される必要があります。
AとPの内容に一貫性がないと、治療計画の妥当性が失われてしまいます。
例えば、Aで「大腿四頭筋の筋力低下が歩行不安定性の一因」と考察したのであれば、Pには「大腿四頭筋の筋力増強訓練(例:膝伸展運動を10回3セット)」といった具体的な計画を記載します。

また、目標設定も重要であり、「2週間後に杖なしで室内歩行が安定して行える」のような、具体的で測定可能な短期目標を立てることで、治療効果の評価がしやすくなります。

 

 

ポイント4:誰が読んでも理解できるように専門用語を使い分ける

SOAPは、理学療法士自身の思考の整理だけでなく、医師、看護師、他のセラピストなど、多職種との情報共有ツールとしての役割も担っています。
そのため、特定の専門職にしか伝わらないような過度な専門用語や略語の使用は避けるべきです。
一方で、専門的な評価や考察を正確に表現するためには、適切な専門用語を用いることも必要です。

例えば、「MMT」や「ROM」といった共通認識のある略語は使用しつつも、読み手の職種を意識し、誰が読んでも患者の状態や治療計画が理解できるような、分かりやすい表現を心がけることが求められます。

 

 

ポイント5:時系列を意識して情報を整理しまとめる

患者の状態は日々変化するため、SOAPを記載する際には時系列を意識することが重要です。
特にOの情報では、前回の測定値と比較して今回のデータがどのように変化したかを記述することで、治療効果や状態の変化が一目で分かります。
この変化を受けて、Aでは前回のアセスメントを更新し、なぜ変化が生じたのかを考察します。

このように時系列で情報を整理し、継続的に記録することで、治療の経過を客観的に追跡でき、リハビリテーション計画の見直しや修正を適切に行うことができます。

 

 

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【疾患別】理学療法士によるSOAPの書き方と具体的な例文

ここでは、臨床で遭遇する機会の多い疾患を例に、SOAPの具体的な書き方を紹介します。
変形性膝関節症、脳梗塞後片麻痺、腰部脊柱管狭窄症の3つのケースについて、S・O・A・Pの各項目にどのような情報を記載し、どのように論理を展開していくのかを示します。

これらの例文を参考に、自身の担当する患者のSOAPを作成する際のフレームワークとして活用してください。

 

 

例文1:変形性膝関節症のケース

立ち上がりや歩き始めに右膝の内側がズキッと痛む
階段、特に降りるのが怖い
右膝関節屈曲120°、伸展-10°
大腿四頭筋MMT4
歩行時、右立脚中期に膝が外側に揺れる
膝内側に圧痛あり
NRSは歩行時6/10
右膝の伸展制限と大腿四頭筋の筋力低下により、立脚期の衝撃吸収能力が低下している
これにより膝関節内側へのストレスが増大し、疼痛やラテラルスラストを引き起こしていると推察される
特に階段下降時は筋の遠心性収縮が求められるが、筋力不足により制動が効かず、不安定感と疼痛が増強している

1ヶ月以内に膝伸展制限を改善し、平地歩行時の疼痛をNRS3/10以下にする
物理療法による膝内側部の疼痛緩和
大腿四頭筋セッティング、SLRなどの筋力強化訓練
膝伸展可動域改善のためのストレッチ指導

 

 

例文2:脳梗塞後片麻痺のケース

麻痺した左足が棒のようで、うまく前に出せない
装具を着けて杖を使わないと歩けない

左上下肢に中等度の麻痺あり。
ブルンストロームステージは下肢III。
左足関節底屈筋群の痙縮が強く、他動的な背屈可動域は-5°。
短下肢装具(AFO)とT字杖を使用し、10m歩行に25秒を要する。
歩行時、ぶん回し歩行が著明。

左下肢の分離運動が困難であり、特に足関節背屈の随意性低下と底屈筋の痙縮が、歩行時の振り出し(クリアランス)を阻害している。
この代償として骨盤の挙上を伴うぶん回し歩行が出現しており、非効率で不安定な歩行パターンとなっている。

2週間以内に、平行棒内にて装具側下肢への十分な荷重と、骨盤の挙上を抑制した振り出しを意識した歩行練習が可能になる。
1.長下肢装具を用いた立位訓練による麻痺側への荷重感覚入力。
2.持続的なストレッチによる足関節背屈可動域の改善。
3.歩行介助下での体重移動と下肢振り出しの促通。

 

 

例文3:腰部脊柱管狭窄症のケース

S:「100mくらい歩くと、お尻から太ももの後ろが痺れてきて歩けなくなる。少し前かがみで休むと楽になる」
O:腰椎の前弯が強く、腹筋群の筋力低下を認める。SLRテストは両側陰性。Kempテストで右下肢への放散痛を誘発。立位保持や歩行時に体幹が前傾する姿勢をとる。
A:典型的な間欠性跛行の症状を呈している。腰椎前弯の増強と体幹支持筋の機能不全により、立位や歩行時に脊柱管が狭窄しやすい状態にあると考えられる。これにより馬尾神経が圧迫され、下肢に痺れや痛みが生じている。体幹を前傾させる姿勢は、脊柱管を拡大させて症状を緩和させるための代償的な疼痛回避行動と推察される。

P:【短期目標】1ヶ月以内に、症状なく連続して200m歩行が可能になる。【治療計画】1.腹横筋など体幹深層筋のトレーニングによる脊柱の安定化。2.骨盤後傾運動による腰椎過前弯の矯正。3.歩行や長時間の立位を避けるなど、日常生活での姿勢指導。

 

 

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アセスメント(A)の質を向上させる臨床推論のコツ

SOAP作成において、多くの理学療法士が最も難しさを感じるのがA(アセスメント)です。
質の高いアセスメントは、単にSとOの情報を要約するだけでなく、それらの情報を基に論理的な思考を展開する臨床推論のプロセスそのものです。

ここでは、優れたsoapの書き方を実践するために、アセスメント能力を高める臨床推論のコツを3つのステップに分けて解説します。

 

 

SとOの情報から問題点を正しくリストアップする

臨床推論の第一歩は、SとOから得られた全ての情報を整理し、患者が抱える問題点を網羅的にリストアップすることです。
この際、ICF(国際生活機能分類)のフレームワークを活用すると、情報を構造的に整理しやすくなります。
「心身機能・身体構造」(例:筋力低下、関節可動域制限、痛み)、「活動」(例:歩行困難、起き上がり困難)、「参加」(例:仕事ができない、趣味の旅行に行けない)の3つのレベルに分けて問題点を抽出します。

これにより、個々の機能障害が日常生活や社会生活にどのように影響しているかを明確に捉えることができ、アセスメントの土台が整います。

 

 

問題点の原因となっている要因を多角的に分析する

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問題点をリストアップしたら、次にそれらの問題が「なぜ」生じているのか、原因を深く掘り下げて分析します。
一つの問題に対して、原因は一つとは限りません。
例えば、「歩行困難」という活動制限の原因として、筋力低下、関節可動域制限、疼痛、バランス能力の低下、麻痺、高次脳機能障害など、複数の要因が考えられます。

SとOの情報を手掛かりに、考えられる原因の仮説を立て、それらを検証していく作業がアセスメントの中心です。
この分析を通じて、最も治療介入の優先度が高い「根本原因」を特定することが、効果的な治療計画の立案につながります。

 

 

分析結果から患者さんの予後を予測し目標を設定する

問題点の原因を分析し、介入すべき要因が明確になったら、次はその患者のリハビリテーションによる回復の見込み、すなわち予後を予測します。
年齢、併存疾患、社会的背景、心理状態なども考慮に入れ、現実的にどのレベルまで回復可能かを考えます。
この予後予測に基づいて、具体的で達成可能な目標を設定します。

例えば、「3ヶ月で屋外の杖歩行を自立する」といった長期目標と、そこに至るためのステップとして「1ヶ月で屋内伝い歩きを獲得する」といった短期目標を立てます。
明確な目標は、P(プラン)の具体的な内容を決定する上での道しるべとなります。

 

 

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理学療法士のSOAPの書き方に関するよくある質問

ここでは、新人理学療法士や実習生から頻繁に寄せられる、SOAPの書き方に関する疑問について解説します。
日々の臨床記録でつまずきやすいポイントをQ&A形式で取り上げ、具体的な解決策を提示します。
SOAPは理学療法士だけでなく、作業療法士をはじめとする多くの医療専門職が用いる記録様式であり、ここで示す考え方は広く応用が可能です。

 

 

S(主観的情報)とO(客観的情報)の分類に迷ったときはどうすれば良いですか?

「誰が判断した情報か」を基準に分類してください。
患者さん本人や家族が感じ、話したことはS(主観)、医療者が検査・測定・観察して得た客観的な事実はOに分類します。
例えば、患者さんの「痛い」という訴えはS、セラピストが確認した圧痛所見はOとなります。

 

 

A(アセスメント)で何を書けば良いか分からなくなってしまいます。

SとOの情報を結びつけ、問題点の原因を考察・分析した内容を記述します。
「なぜSのような訴えがあり、Oのような結果が出ているのか」を説明する部分です。
SとOから得られた情報のみを根拠とし、自分の解釈や推論を展開することが重要です。

 

 

SOAPを効率的に短時間で書くための方法はありますか?

テンプレートや定型文を活用し、思考のフレームワークを持つことが有効です。
治療前に「今日は何を確認し、何を評価するか」を明確にしておくと、情報収集がスムーズになります。
また、考察のパターンをいくつか持っておくことで、アセスメント作成の時間を短縮できます。

 

 

まとめ

SOAPは、S(主観的情報)、O(客観的情報)、A(アセスメント)、P(プラン)という4つの項目から構成される、医療現場で標準的に用いられる記録方式です。
質の高いSOAPを作成するためには、各項目の役割を正しく理解することが不可欠です。
SとOには客観的な事実のみを正確に記述し、Aではそれらの情報を統合・分析して専門的な解釈を加えます。

そして、Aでの考察に基づいて、具体的かつ測定可能な治療計画をPで立案します。
このS-O-A-Pの一連の流れに論理的な一貫性を持たせることが求められます。
本記事で紹介した作成のポイントや疾患別の例文を参考に、日々の臨床における記録の質を高めていきましょう。

 

監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城 武志(理学療法士)

 

 

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