2026.02.19
理学療法
監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城 武志(理学療法士)
理学療法士は、患者さんの機能回復を支えるやりがいのある仕事ですが、一方で心身の負担が大きい側面もあります。
理学療法士の大変なこととして、身体的な負荷や精神的なプレッシャー、給与面での課題などが挙げられます。
しかし、これらの課題は働き方の工夫やキャリアプランニングによって解決できる可能性があります。
この記事では、仕事で大変と感じる具体的な理由と、後悔しないための前向きな対処法について解説します。
理学療法士の業務には、専門職ならではの喜びと共に、特有の困難が伴います。
多くの理学療法士が経験するつらいこととして、主に5つの点が挙げられます。
身体的な負担、精神的なプレッシャー、コミュニケーションの難しさ、チーム連携のストレス、そして経済的な将来設計の難しさです。
これらは個々の問題ではなく、互いに関連し合っていることも少なくありません。
次項から、それぞれの課題を詳しく見ていきましょう。
理学療法士の仕事は、患者さんの体を直接支えたり、移乗を介助したりと、身体的な負担が避けられません。
特に、体格の大きな患者さんを担当する場合や、介助の頻度が高い職場では、腰痛をはじめとする身体の不調につながりやすいです。
こうした作業は日々の業務で繰り返されるため、体への負担が蓄積します。
自身の体を守るためにも、ボディメカニクスを意識した正しい介助技術の習得や、日頃からのセルフケアが不可欠です。
リハビリテーションの計画を立てて介入しても、患者さんの回復が思うように進まない事があります。
機能回復の停滞や悪化が見られると、自分の知識や技術不足が原因ではないかと自らを責めてしまい、大きな精神的プレッシャーを感じることがあります。
患者さんの期待に応えたいという思いが強いほど、その責任感から焦りや無力感を抱えやすくなります。
一人で抱え込まず、多職種で連携して多角的な視点からアプローチを見直すことが重要です。
患者さん本人やそのご家族とのコミュニケーションも、理学療法士の重要な役割の一つです。
リハビリへの意欲が低い患者さんのやる気を引き出したり、ご家族が抱える過度な期待と現実的な回復レベルとの間で調整を図ったりするには、高度なコミュニケーションスキルが求められます。
時には厳しい現実を伝えなければならない場面もあり、相手の心情を深く理解し、信頼関係を築きながら対話を進めることには、精神的なエネルギーを要します。
リハビリテーションは、医師や看護師、作業療法士、言語聴覚士など、多くの専門職が連携して進めるチーム医療です。
それぞれの専門的な視点から意見を出し合う中で、治療方針が異なったり、情報共有がうまくいかなかったりすると、ストレスが生じることがあります。
互いの専門性を尊重し、患者さんにとって最善の医療を提供するという共通の目標に向かって、円滑なコミュニケーションを図る努力が常に求められます。
理学療法士の給与は、経験年数を重ねても大幅な昇給が見込めない傾向にあります。
診療報酬制度によって収入の上限がある程度決まっているため、個人の努力が直接的な給与アップにつながりにくいのが実情です。
このため、将来のライフプランやキャリア設計に不安を感じる人も少なくありません。
しかし、専門性を高めて資格を取得したり、管理職を目指したり、あるいは副業や独立開業といった道を選ぶことで、収入を向上させることは可能です。
理学療法士が抱える「つらさ」は、身体的、精神的、経済的、そして将来性や学習面など、多岐にわたります。
これらの悩みは、日々の業務の中で複合的に絡み合い、働くモチベーションに影響を与えることがあります。
ここでは、それぞれのつらさの具体的な理由を掘り下げていきます。
理学療法士の仕事は、患者さんの体を持ち上げたり支えたりする動作が多く、腰への負担が集中しやすいです。
そのため、腰痛は「職業病」とも言えるほど、多くの理学療法士が抱える悩みとなっています。
介助業務だけでなく、長時間の立ち仕事やリハビリ機器の移動など、日々の業務全体で体力を消耗します。
適切な休息やストレッチ、筋力トレーニングといった自己管理を徹底し、自身の健康を守りながら働く意識が大切です。
患者さんの人生に深く関わる仕事であるからこそ、リハビリの成果が思うように出ない時には、強い焦りや責任を感じます。
特に、回復を楽しみにしている患者さんやご家族の期待を背負う中で、結果を出せないことへの無力感は大きな精神的な負担となります。
このような時は、一人で悩まずに上司や同僚に相談し、客観的なアドバイスを求めることで、精神的な重圧を軽減し、新たな視点を得ることができます。
多くの医療機関や介護施設では、給与テーブルが定められており、昇給額が少ないことが経済的なつらさの一因です。
また、専門職としてスキルアップを図るための学会参加や研修会の費用が自己負担となるケースも多く、経済的な負担を感じる場面は少なくありません。
この課題を解決するためには、研修費補助制度のある職場を選んだり、自身の知識や経験を活かして副業を始めたりするなど、能動的なアクションが求められます。
理学療法士の養成校が増加したことに伴い、資格取得者の数も年々増えています。
その結果、理学療法士の供給が需要を上回り、以前よりも好条件の職場を見つけるのが難しくなっているという現実があります。
このような状況で自身の市場価値を高めていくためには、特定の専門分野を極める、管理職のスキルを身につけるなど、他の理学療法士との差別化を図るキャリア戦略が重要です。
医療は日進月歩であり、理学療法の分野も例外ではありません。
新しい治療法や研究成果が次々と発表されるため、理学療法士は常に最新の知識と技術を学び続ける必要があります。
日々の業務で疲れている中で、休日や業務後に勉強時間を確保することは、決して楽なことではありません。
しかし、自身が学んだことが患者さんの回復に直結する喜びは、この仕事の大きなやりがいであり、専門家としての成長実感にもつながります。
仕事のつらさを感じた時、すぐに辞めてしまうのではなく、まずは状況を改善するための具体的な対処法を試みることが大切です。
現状の働き方を見直したり、働く環境を変えたり、あるいは理学療法士としての資格を活かした別の道を模索したりと、選択肢は一つではありません。
自分に合った解決策を見つけるためのヒントを以下に示します。
転職を考える前に、まずは現在の職場で改善できる点がないか探してみましょう。
例えば、身体的な負担が大きいのであれば、上司に相談して担当患者の特性を考慮してもらったり、業務の効率化を提案したりすることが考えられます。
また、精神的なストレスを感じている場合は、院内の勉強会や委員会活動に積極的に参加し、異なる役割を担うことで、新たなやりがいや人間関係を築けるかもしれません。
理学療法士が活躍する場は、急性期病院や回復期リハビリテーション病院、クリニック、介護老人保健施設、訪問リハビリステーションなど多岐にわたります。
職場によって、対象となる患者さんの層や求められる役割、働き方が大きく異なります。
例えば、病院での集中的なリハビリがつらいと感じるなら、在宅生活を支える訪問リハビリという選択肢もあります。
自分に合った環境を見つけることが、長く働き続ける上で重要です。
理学療法士として培った医学的知識や身体動作に関する専門性は、臨床現場以外でも大いに役立ちます。
例えば、福祉用具メーカーでの商品開発や、医療機器の営業、行政機関での介護予防事業の企画・運営、あるいは一般企業で従業員の健康管理をサポートする役割など、多様なキャリアパスが考えられます。
臨床から離れることも、自身の可能性を広げる一つの有効な選択肢です。
理学療法士は、人の役に立てる非常にやりがいのある仕事ですが、その道は決して平坦ではありません。
目指す過程での厳しい学びや、現場に出てからの理想と現実のギャップなど、事前に知っておくべきことがあります。
これらを理解しておくことで、困難に直面した際も乗り越えやすくなります。
理学療法士になるためには、養成校で専門知識と技術を学び、国家試験に合格する必要があります。
特に、長期間にわたる臨床実習は、多くの学生が最も大変だと感じる関門です。
実際の医療現場で指導者の下、患者さんを担当するのは精神的にも肉体的にも大きな負担となります。
この厳しい実習や膨大な勉強量を乗り越える強い意志と覚悟が、理学療法士を目指す上で不可欠です。
しかし、この経験がプロとしての土台を築きます。
多くの人が「人の役に立ちたい」という高い志を持って理学療法士を目指します。
そのやりがいは計り知れないものですが、同時に、これまで述べてきたような身体的・精神的な負担や、給与面での課題といった厳しい現実も存在します。
仕事の華やかな側面だけでなく、地道な努力や困難な側面も正しく理解しておくことが、就職後のミスマッチを防ぎ、長期的にキャリアを継続していくための鍵となります。
ここでは、理学療法士の仕事やキャリアに関して、多くの方が抱く疑問について簡潔にお答えします。
はい、公的な医療・介護保険制度に準拠するため、勤続年数のみでの大幅な昇給は難しい傾向です。
しかし、管理職への昇進や認定・専門理学療法士などの資格取得による手当、好条件の職場への転職、または副業によって年収を上げることは可能です。
いいえ、決して難しくはありません。
産休・育休制度が整っている職場が多く、資格職であるため復職もしやすいです。
また、パートタイム勤務や、体力的な負担が比較的少ないデイサービスや訪問リハビリなど、ライフステージに合わせた多様な働き方が可能です。
はい、多職種との情報共有が不足している職場や、特定の管理職に権限が集中し、意見が言いにくい環境は悩みを抱えやすい傾向があります。
また、職員の定着率が低く、頻繁に人が入れ替わる職場も、安定した人間関係を築きにくい場合があります。
理学療法士の仕事には、身体的・精神的な負担や経済的な課題など、確かに大変な側面が存在します。
しかし、それらの課題には具体的な対処法があり、働き方の工夫やキャリアの選択によって乗り越えることが可能です。
何よりも、患者さんの回復に直接関わり、その方の人生を支えることができるのは、この仕事ならではの大きなやりがいです。
困難な面も理解した上で、それを上回る魅力と可能性を見出すことができれば、理学療法士は非常に素晴らしいキャリアとなるでしょう。
監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城 武志(理学療法士)
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