2026.02.22
理学療法
監修:日本リハビリテーション専門学校 石垣 栄司(理学療法士)
理学療法士のキャリアとして、病院やクリニックだけでなくスポーツクラブも選択肢の一つです。
この記事では、スポーツクラブで働く理学療法士の仕事内容や病院勤務との違い、働く上でのメリットや注意点を解説します。
活躍の場を広げるために有利となる資格や、具体的な求人の探し方についても紹介するため、スポーツ分野への転職を考えている方はぜひ参考にしてください。
スポーツクラブにおける理学療法士の主な役割は、利用者の健康維持・増進、怪我の予防、そして運動パフォーマンスの向上です。
病院やクリニックでの勤務が、病気や怪我をした患者に対する「治療」を目的とするのに対し、スポーツクラブでは健康な方やアスリートを対象とした「予防」や「コンディショニング」が中心となります。
医学的知識を持つ専門家として、安全かつ効果的な運動をサポートする重要な役割を担います。
スポーツクラブでの理学療法士の仕事は、一般的なトレーナー業務に加え、専門知識を活かした多岐にわたるサポートが求められます。
身体評価から個別の運動プログラム作成、怪我の予防指導、リハビリ後のトレーニング支援まで、利用者の目標達成に深く関わります。
医学的根拠に基づいたアプローチで、他のトレーナーとの差別化を図りながら、利用者の健康と安全を守る専門職としての役割を果たします。
理学療法士は、利用者の身体機能や既往歴を詳細に評価した上で、一人ひとりの目標や特性に合わせたトレーニングメニューを作成します。
筋力、柔軟性、関節可動域、身体の歪みなどを専門的な視点でチェックし、医学的根拠に基づいて最適なプログラムを立案するのが特徴です。
一般的なトレーニングジムのトレーナーとは異なり、特に身体に痛みや不安を抱える利用者に対して、安全性を確保しながら効果を最大限に引き出すメニューを提供できる点が大きな強みとなります。
スポーツクラブには、過去の怪我に不安を抱える人や、より高いレベルを目指すアスリートも訪れます。
理学療法士は、解剖学や運動学の知識を基に、怪我につながりやすい動作の癖を分析し、正しい身体の使い方を指導することで再発を予防します。
また、競技特性を理解した上で、パフォーマンス向上に必要な筋力や柔軟性、協調性を高めるためのトレーニングを指導することも重要な仕事です。
根本的な原因にアプローチすることで、利用者の長期的な健康と活躍を支えます。
利用者が抱える肩こりや腰痛といった身体の不調に対して、専門的なカウンセリングを行います。
理学療法士は利用者の話を聞き、身体の状態を評価することで、不調の原因がどこにあるのかを推測し、生活習慣の改善点やセルフケアの方法について具体的なアドバイスを提供します。
ただし、スポーツクラブでは医師の指示がないため、診断や治療、マッサージといった医療行為はできません。
あくまで身体の状態を見極め、運動を通じて改善できる範囲でサポートを行います。
一般的なジムのトレーナーと同様に、トレーニングマシンの正しい使い方を指導することも業務に含まれます。
理学療法士は、利用者の骨格や筋力、身体の特性を考慮しながら、最も効果的で安全なフォームを指導できるのが強みです。
解剖学的な視点から、どの筋肉にどのように効かせるべきかを具体的に説明し、代償動作を防ぎながら目的の筋肉を的確に鍛えるサポートをします。
これにより、トレーニング効果を最大化すると同時に、怪我のリスクを最小限に抑えます。
理学療法士が活躍の場をフィットネスジムやスポーツクラブに移すことには、病院勤務とは異なる多くの魅力があります。
治療が中心となる医療現場から、健康増進や予防医療の最前線へとフィールドを移すことで、新たなやりがいや働き方が見つかります。
ここでは、予防への貢献、利用者との長期的な関係性、そしてワークライフバランスの観点から、フィットネス分野で働く主なメリットを3つ紹介します。
スポーツクラブでは、病気や怪我をする前の健康な人々を対象とするため、予防医療に深く携われる点が大きなメリットです。
医療機関では症状が現れてからの対応が主となりますが、ここでは利用者が健康を維持し、さらに向上させるためのサポートができます。
身体の不調を未然に防ぐための運動指導や生活習慣へのアドバイスを通じて、人々の健康寿命を延ばすことに直接貢献できます。
地域スポーツの愛好家から高齢者まで、幅広い層の健康を支える社会的な意義を感じられるでしょう。
病院のリハビリテーションでは入院期間や通院回数に限りがありますが、スポーツクラブでは利用者が会員である限り、長期的なスパンで関わり続けることができます。
ダイエット成功、マラソン完走、筋力アップといった利用者の様々な目標に対し、経過を追いながら継続的にサポートできるのは大きなやりがいです。
トレーナーや他のスタッフとチームを組み、利用者のモチベーションを維持しながら二人三脚で目標達成を目指すプロセスは、深い信頼関係の構築にもつながります。
スポーツクラブでの勤務は魅力的な側面が多い一方で、病院やクリニックとは異なる環境だからこその注意点も存在します。
特に、業務範囲の法的な制約や、給与体系の違いは、転職を決める前に必ず理解しておくべき重要なポイントです。
これらの注意点を事前に把握しておくことで、転職後のミスマッチを防ぎ、納得のいくキャリアチェンジを実現できます。
理学療法士は医師の指示のもとで医療行為を行いますが、スポーツクラブには医師が常駐していないため、診断、治療、投薬といった医療行為は一切できません。
あくまでも業務は、健康な人への運動指導やコンディショニング、障がい予防の範囲に限られます。
利用者の身体に異常が見られ、専門的な医学的判断が必要だと考えた場合は、自身の業務範囲を越えずに、速やかに医療機関への受診を勧めるなどの適切な対応が求められます。
スポーツクラブでの給与体系は、運営母体の規模や地域、個人のスキルによって大きく変動します。
公立病院や大規模な医療法人と比較した場合、基本給が低めに設定されていることも少なくありません。
ただし、施設によってはパーソナルトレーニングの指名数に応じたインセンティブ制度が導入されており、自身の努力や人気次第で高い年収を得ることも可能です。
転職の際は、固定給だけでなく、インセンティブや手当を含めた総合的な収入の見込みを確認することが重要です。
理学療法士の国家資格だけでもスポーツクラブで働くことは可能ですが、関連する専門資格を併せて取得しておくことで、より有利に転職活動を進められます。
スポーツ分野に特化した知識や技術を持つ証明となり、他の候補者との差別化を図れます。
専門学校や各種団体が認定する資格を取得することは、自身のスキルアップだけでなく、スポーツ分野でキャリアを築く強い意欲のアピールにもつながります。
日本スポーツ協会が公認するアスレティックトレーナー(JSPO-AT)は、スポーツ現場における傷害予防、コンディショニング、応急処置、リハビリテーションなど、アスリートを支えるための高度な専門知識と技術を証明する資格です。
合格率が低く難関資格として知られていますが、保有していることでスポーツ分野への高い専門性を示せます。
理学療法士の資格と併せ持つことで、スポーツチームやトップアスリートからの信頼も得やすくなり、スポーツクラブでの活躍の幅が大きく広がります。
認定スポーツ理学療法士・専門スポーツ理学療法士は、日本理学療法士協会が定める認定理学療法士・専門理学療法士資格の一つです。
スポーツ活動における外傷や障がいの予防、評価、治療に関する専門的な知識と技術を有することを証明します。
資格取得には5年以上の実務経験や研修への参加などが必要ですが、スポーツ理学療法のスペシャリストとして自身の市場価値を高められます。
専門性の高いメディカルフィットネスやスポーツジムへの転職において、非常に強力なアピールポイントとなるでしょう。
理学療法士の医学的知識に加えて、トレーニング指導の実践的なスキルを証明するパーソナルトレーナー資格も有効です。
特に「NSCA-CPT」や「NESTA-PFT」といった、国際的に認知度の高い資格は、トレーニングプログラムの作成能力や指導力を客観的に示すことができます。
これらの資格を持つことで、より幅広い利用者のニーズに応えられるようになり、パーソナルトレーニングの指名を増やすことにもつながるため、収入アップも期待できます。
理学療法士がスポーツクラブで働くための求人を探すには、いくつかの方法があります。
医療機関向けの求人とは探し方が少し異なるため、スポーツ分野に強いチャネルを活用することが重要です。
転職エージェント、専門の求人サイト、そして企業の公式サイトといった複数の方法を併用することで、より多くの選択肢の中から自分に合った職場を見つけ出すことができます。
理学療法士専門の転職エージェントに登録すると、一般には公開されていない非公開求人を紹介してもらえる可能性があります。
特に、専門職を求めるスポーツクラブや新規事業の求人は、非公開で募集されるケースも少なくありません。
担当のキャリアアドバイザーが、希望条件に合った求人の紹介から、履歴書の添削、面接対策まで一貫してサポートしてくれるため、効率的に転職活動を進めたい方や、初めての転職で不安な方に適した方法です。
理学療法士や作業療法士に特化した求人サイトを利用するのも有効な手段です。
医療機関や介護施設の求人が大半を占めますが、「スポーツ」「フィットネス」「ジム」といったキーワードで検索条件を絞り込むことで、関連する求人情報を見つけ出すことができます。
多くの求人を一度に比較検討できるため、給与や勤務条件などの待遇面を重視して職場を選びたい場合に便利です。
定期的に新着求人をチェックすると良いでしょう。
働きたいと考えている特定のスポーツクラブがある場合は、その企業の公式サイト内にある採用ページを直接確認する方法が最も確実です。
大手フィットネスクラブチェーンや、メディカルフィットネスを強みとする施設は、自社サイトで独自に理学療法士の募集を行っていることがあります。
たとえ募集が掲載されていなくても、問い合わせフォームなどから直接アプローチすることで、採用担当者の目に留まり、選考の機会を得られる可能性もあります。
ここでは、スポーツクラブへの転職を検討している理学療法士の方から多く寄せられる質問について回答します。
給与水準や必要な臨床経験、そして将来のキャリアプランなど、転職活動を進める上での具体的な疑問や不安を解消するため、ぜひ参考にしてください。
事前にこれらの情報を把握しておくことで、より現実的な視点でキャリアチェンジを検討できるようになります。
平均年収は施設の規模や個人のスキルにより変動しますが、一般的には350万円から500万円程度が目安です。
ただし、パーソナルトレーニングのインセンティブ制度がある施設では、指名数や成果に応じて年収が大きく上がる可能性も秘めています。
転職は可能ですが、多くの施設では即戦力として整形外科領域などでの臨床経験が求められる傾向にあります。
経験が浅い場合は、研修制度が整っている大手企業を選ぶか、まずはクリニック等で数年間経験を積んでから挑戦するのが現実的な選択肢です。
理学療法士の医学的知識は、他のトレーナーとの大きな差別化要因となるため、独立は十分に可能です。
スポーツクラブでトレーナーとしての指導経験や集客スキルを身につけることは、将来の独立開業に向けた貴重な経験となり、成功の可能性を高めます。
スポーツクラブで働く理学療法士は、病院勤務とは異なり、利用者の怪我の予防や健康増進、パフォーマンス向上といった役割を担います。
夜勤がなくワークライフバランスを保ちやすい一方、医療行為ができない制約や給与体系の違いといった注意点も理解しておく必要があります。
転職を成功させるためには、アスレティックトレーナーなどの関連資格を取得して専門性を高め、転職エージェントや専門求人サイトなどを活用して、自身のキャリアプランに合致した求人情報を効率的に収集することが求められます。
監修:日本リハビリテーション専門学校 石垣 栄司(理学療法士)
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