2026.02.17
作業療法
保健所で働く作業療法士は、病院勤務とは異なる役割を担う専門職です。
この記事では、保健所での具体的な仕事内容から、公務員として働くメリット・デメリット、給与事情、そして採用されるための求人の探し方までを詳しく解説します。
行政機関でのキャリアを検討している作業療法士の方にとって、必要な情報を網羅的に提供します。
保健所で働く作業療法士は、地方公務員として地域住民の健康増進や福祉サービスの向上に貢献します。
病院勤務が個々の患者に対して直接的なリハビリテーションを提供するのに対し、保健所では地域全体を対象とした間接的な支援が中心です。
具体的には、精神保健福祉相談、難病患者の在宅療養支援、介護予防事業の企画運営など、行政的な視点から専門知識を活かす役割を担います。
保健所における作業療法士の仕事内容は、多岐にわたります。
個別のリハビリテーションを行うのではなく、地域住民が抱える健康課題に対して、専門的な見地から相談、支援、企画を行うのが主な業務です。
対象は子どもから高齢者、精神や難病の領域まで幅広く、関係機関と連携しながら地域全体の保健福祉を支える重要な役割を果たします。
ここでは、その代表的な4つの業務を紹介します。
保健所の作業療法士は、精神保健福祉領域で重要な役割を担います。
心の健康問題に悩む本人やその家族からの相談に応じ、生活課題の整理や社会資源の活用について助言します。
また、精神障害者の社会復帰を支援するためのデイケアプログラムの企画・運営に携わることもあります。
医療機関や福祉サービス事業所、就労支援機関など、地域の様々な関係機関と連携し、対象者が地域で安心して暮らせるためのネットワークを構築するコーディネーターとしての機能も求められます。
難病を抱える患者やその家族が、住み慣れた自宅で安心して療養生活を送れるように支援することも大切な業務です。
作業療法士は家庭訪問を行い、療養環境の評価や福祉用具の選定、住宅改修に関する助言を行います。
直接的な身体へのリハビリではなく、療養上の悩みを聞き、必要な保健・福祉サービスの情報提供や関係機関への橋渡しをします。
患者本人だけでなく、介護を担う家族の負担軽減を図るための相談支援も行い、多角的な視点から在宅療養を支えます。
高齢者が要介護状態になることを防ぎ、健康で自立した生活を長く続けられるよう支援する介護予防事業は、保健所の重要な業務の一つです。
作業療法士は、地域の高齢者の実態やニーズを把握し、介護予防教室や転倒予防プログラムなどを企画・実施します。
また、地域の医療機関や介護サービス事業所と連携し、効果的なリハビリテーションが提供される体制を構築する「地域リハビリテーション」の推進役も担います。
地域ケア会議などに専門職として参加し、困難事例への助言を行うこともあります。
子どもの発達に関する相談支援も、保健所の作業療法士が担う役割です。
「言葉が遅い」「落ち着きがない」といった保護者の不安に寄り添い、子どもの発達段階に応じた関わり方や遊びについて助言します。
必要に応じて、地域の療育機関や発達支援センターといった専門機関につなぐ役割も果たします。
また、発達障害のある子どもやその家族を対象としたグループ活動や支援プログラムを企画・運営することもあります。
個別の訓練ではなく、親子関係の構築支援や生活環境の調整を通じて、子どもの健やかな育ちを支えます。
保健所で作業療法士として働くことは、地方公務員という立場ならではの多くのメリットがあります。
病院や施設での勤務とは異なり、雇用の安定性や充実した福利厚生、規則正しい勤務形態が魅力です。
ここでは、公務員として保健所で働くことの代表的な3つのメリットについて、具体的な内容を解説します。
キャリアプランを考える上で重要なポイントとなるでしょう。
公務員として働く最大のメリットは、身分が法律で保障されていることによる雇用の安定性です。
景気の変動に左右されにくく、民間企業のように業績悪化によるリストラのリスクが極めて低いため、安心して長く働き続けることが可能です。
また、給与や昇給、退職金制度が条例で定められており、将来の生活設計を立てやすい点も魅力です。
各種手当や共済組合による医療費補助、休暇制度といった福利厚生も充実しており、ライフステージの変化に対応しながら長期的な視点でキャリアを構築できます。
保健所は行政機関であるため、勤務時間は基本的に平日の日中となり、土日祝日は休みです。
年末年始や夏季休暇などの長期休暇も取得しやすく、カレンダー通りの生活が送れます。
シフト制勤務や夜勤、急な呼び出しがある医療機関とは異なり、オンとオフの切り替えがしやすい労働環境です。
そのため、家族や友人との時間を大切にしたり、趣味や自己研鑽に打ち込んだりするなど、プライベートを充実させやすい点が大きなメリットです。
ワークライフバランスを重視する人にとって、魅力的な働き方といえます。
保健所での業務は、一人ひとりの患者と向き合う臨床現場とは異なり、市町村や都道府県といった広い視野で地域全体の健康課題に取り組むことができます。
介護予防事業の企画や精神保健福祉の体制づくりなど、制度や仕組みの構築に携わることで、より多くの住民の生活に影響を与えることが可能です。
医師や保健師、地域の関係機関など多職種と連携し、地域づくりに貢献できるスケールの大きな仕事は、公務員ならではのやりがいにつながります。
個人の支援だけでなく、社会貢献性の高い仕事に関心がある人に向いています。
公務員として保健所で働くことには多くのメリットがある一方、事前に理解しておくべきデメリットも存在します。臨床現場とは異なる業務内容や公務員特有の制度が、人によってはミスマッチにつながる可能性があります。転職や就職を考える際には、良い面だけでなく、これらの注意点もしっかりと把握し、自身のキャリアプランや適性と照らし合わせることが重要です。
ここでは複数のデメリットについて解説します。
保健所の業務は、住民からの相談対応、関係機関との調整、事業の企画・運営が中心となります。
そのため、病院勤務のようにリハビリテーションを直接提供し、利用者の身体機能の回復に立ち会うといった場面はほとんどありません。
実践的な手技や治療スキルを磨き続けたい、臨床家としての専門性を高めたいという意欲が強い場合、物足りなさを感じる可能性があります。
知識や経験を活かす場面は多いものの、その形は助言や指導といった間接的なものになることを理解しておく必要があります。
地方公務員である以上、定期的な人事異動は避けられません。
数年ごとに保健所内の別の担当部署へ異動したり、場合によっては本庁の福祉関連課や、全く専門性の異なる部署へ異動したりする可能性もあります。
作業療法士としての専門性を一貫して追求したいと考えていても、ジェネラリストとしてのキャリアを求められることがあります。
一つの分野で専門性を深めていきたい人にとっては、キャリアプランとの間にズレが生じる可能性がある点はデメリットといえるでしょう。
保健所における作業療法士の配置は、各自治体で1名から数名程度と非常に少ないのが現状です。
そのため、採用は欠員が出た際の補充が基本となり、毎年定期的に募集が行われるわけではありません。
希望する自治体の求人がいつ出るか予測が難しく、募集があっても採用枠は1名のみというケースがほとんどです。
そのため、タイミングよく応募の機会を得ること自体が難しく、競争率も高くなる傾向があります。
公務員への転職を希望する場合、長期的な視点で情報収集を続ける必要があります。
保健所で働く作業療法士の給与は、地方公務員の給与体系に基づいて定められています。
民間病院のように業績によって給与が大きく変動することはなく、安定した収入が保証されているのが特徴です。
給与は「給料表」を基準に、経験年数や役職に応じて決まり、着実に昇給していきます。
ここでは、公務員作業療法士の具体的な給与体系と、経験に応じた年収の考え方について解説します。
公務員の給与は、地方公務員法に基づき、各自治体の条例で定められた「給料表」によって決定されます。
作業療法士などの医療専門職は、一般的に「医療職給料表」が適用されます。
この給料表は、職務の複雑さや責任の度合いに応じた「級」と、勤続年数などに応じた「号俸」のマトリクスで構成されており、級と号俸が上がるごとに給料月額も上昇します。
この基本給に加えて、通勤手当、住居手当、扶養手当といった各種手当や、期末・勤勉手当(ボーナス)が支給され、最終的な給与額が決まる仕組みです。
公務員の給与は、基本的に年1回の定期昇給があり、勤続年数に応じて着実に上昇していきます。
そのため、長期的に働くことで安定した収入の増加が見込めます。
転職して保健所で働く場合、病院などでの臨床経験年数が一定の基準に基づいて換算され、初任給の号俸に反映されることが一般的です。
これにより、経験者は新卒者よりも高い給与からスタートできます。
また、年に2回(6月と12月)支給される期末・勤勉手当(ボーナス)も年収の大きな要素であり、年間でおおよそ給料月額の4ヶ月分以上が支給される自治体が多いです。
保健所で働くには、作業療法士の免許に加えて、公務員になるための手続きが必要です。
そのルートは、主に正規職員を目指す「地方公務員試験」と、非正規の「会計年度任用職員」として働く方法の2つに大別されます。
どちらの道を選ぶかによって、採用までの流れや準備が異なります。
ここでは、保健所の作業療法士になるための具体的なステップと、それぞれの申請方法について解説します。
正規の公務員として保健所で働くためには、各自治体が実施する地方公務員採用試験に合格する必要があります。
募集は「医療技術職」「福祉職」などの職種区分で行われ、その中に「作業療法士」が含まれる形が一般的です。
試験内容は、一般教養や社会常識を問う教養試験、専門知識を問う専門試験といった筆記試験に加え、論文試験や人物評価のための面接試験が課されます。
採用枠は非常に少ないため、倍率は高くなる傾向にあり、筆記試験から面接まで、計画的な対策が不可欠です。
募集時期は自治体によって異なるため、希望する自治体のホームページを定期的に確認する必要があります。
正規職員の採用試験とは別に、1年以内の任期で働く「会計年度任用職員(非常勤)」として採用される道もあります。
こちらは欠員補充や産休・育休代替などで募集されることが多く、選考方法は自治体によって異なりますが、書類選考と面接のほかに作文試験や基礎能力試験などが課される場合もあります。
正規職員に比べて採用のハードルは低いですが、雇用期間が定められており、給与や待遇面も異なります。
まずは会計年度任用職員として行政での働き方を経験し、仕事内容への適性を見極めながら正規職員採用試験の準備を進める、というキャリアプランも有効な選択肢の一つです。
保健所の作業療法士の求人は、募集時期が不定期で求人数も少ないため、情報収集が非常に重要になります。
一般的な転職サイトに掲載されることは稀で、能動的に情報を探しにいかなければ、貴重な採用機会を見逃してしまう可能性があります。
ここでは、限られた求人情報を見逃さずにキャッチするための、具体的な探し方を2つ紹介します。
計画的な情報収集が、希望のキャリアを実現するための第一歩です。
保健所職員の採用情報は、その保健所を管轄する都道府県や市区町村の公式ホームページに掲載されるのが基本です。
トップページの「採用情報」「職員募集」「市政情報」といったセクションを確認しましょう。
特に正規職員だけでなく、会計年度任用職員の募集情報も同じページに掲載されることが多いです。
転職を希望するエリアの自治体を複数リストアップし、少なくとも月に1〜2回は定期的にホームページを巡回する習慣をつけることが重要です。
情報を見逃さないためには、地道なチェックが最も確実な方法となります。
自分で求人情報を探し続けるのが難しい場合は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といったリハビリテーション専門職に特化した転職エージェントを活用するのも有効な手段です。
公務員の求人は公開情報が主ですが、会計年度任用職員などの非公開求人を扱っている場合があります。
また、エージェントは公務員採用に関する情報や過去の傾向を把握していることもあります。
キャリアアドバイザーに相談することで、情報収集のサポートだけでなく、応募書類の添削や面接対策など、選考を有利に進めるための支援を受けられるメリットもあります。
保健所への転職や就職を検討する中で、多くの方が疑問に思う点があります。
臨床経験の必要性、公務員試験の難易度、未経験からの挑戦の可能性など、具体的な不安や疑問は尽きません。
ここでは、そうした保健所の作業療法士に関するよくある質問をピックアップし、Q&A形式で簡潔に回答します。
キャリア選択の際の参考にしてください。
有利になることが多いです。
保健所の業務は直接的なリハビリを行いませんが、住民への助言や関係機関との連携において、臨床で培った知識や多職種連携の経験が不可欠だからです。
特に精神科、小児、地域リハビリテーション、難病などの分野での経験は、保健所の業務と親和性が高く、採用選考で高く評価される傾向にあります。
採用人数が各自治体で1名程度と極めて少ないため、倍率は高くなる傾向にあります。
難易度は自治体やその年の応募者数によって変動しますが、専門試験に加えて一般教養試験の対策も必要なため、準備は容易ではありません。
募集要項を確認し、過去問などで出題傾向を把握した上で、計画的に学習を進める必要があります。
申請前の情報収集が重要です。
応募自体は可能ですが、臨床経験者が求められることが大半です。
応募資格として作業療法士免許の保有は必須ですが、それに加えて「病院等での臨床経験〇年以上」といった要件を設けている自治体が多いためです。
新卒や臨床未経験の場合は、まず病院や施設で数年間の実務経験を積むことが、将来的に行政分野へ進むためのキャリアパスとして一般的です。
保健所の作業療法士は、地方公務員として安定した労働環境のもと、地域住民の健康増進に貢献できる専門職です。
その業務は、臨床現場での直接的なリハビリテーションとは異なり、精神保健福祉相談、難病患者支援、介護予防事業の企画など、行政的かつ間接的な支援が中心となります。
メリットとして雇用の安定性やワークライフバランスの良さが挙げられる一方、臨床スキルの活用機会が少ないことや、求人数が限られるといった側面も存在します。
保健所で働くためには、公務員試験の受験や会計年度任用職員としての応募が主なルートとなり、自治体のホームページなどで計画的に情報を収集することが不可欠です。
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