2026.02.18
作業療法

監修:日本リハビリテーション専門学校 阿部 英人(作業療法士)
公務員の作業療法士になるには、民間とは異なる仕事内容や年収、そして最大の関門である採用試験の仕組みを正確に理解することが不可欠です。
安定した雇用や充実した福利厚生が魅力である一方、採用枠が少なく倍率が非常に高いという厳しい現実があります。
本記事では、公務員として働く作業療法士の具体的な仕事内容から、メリット・デメリット、そして難関の試験を突破するためのポイントまで詳しく解説します。
作業療法士に公務員という選択肢が注目されるのは、景気に左右されない雇用の安定性や充実した福利厚生といった魅力があるからです。
民間施設とは異なる働き方や待遇は、長期的なキャリアプランを考える上で大きなメリットとなります。
臨床業務だけでなく、行政の立場から地域福祉に貢献できるという、公務員ならではのやりがいも注目される理由の一つです。
公務員の作業療法士は、その多くが地方公務員として採用され、臨床業務に加えて行政的な役割も担います。
国家公務員としての募集は非常に稀です。
勤務先は公立病院や保健所、役所など多岐にわたります。
また、国立病院機構や県立のがんセンターなどで働く場合は、厳密には公務員ではありませんが、給与や待遇が公務員に準ずる「みなし公務員(準公務員)」として扱われます。
公立病院や自治体が運営するリハビリテーションセンターでは、民間病院と同様に患者へのリハビリテーション提供が主な業務です。
地域の中核を担う医療機関として、急性期から回復期、生活期まで幅広い病期に関わります。
一般的なリハビリ業務に加え、地域の医療・福祉施設との連携や、住民向けの健康増進プログラムの企画・運営など、より公益性の高い役割を担うことも特徴です。
公務員の身分で臨床経験を積めるため、安定した環境で専門性を高めたい人にとって魅力的な職場といえます。
保健所や市役所、県庁、役場などの行政機関では、臨床業務とは異なるデスクワークや相談業務が中心となります。
具体的には、地域住民からの心身の健康に関する相談対応、難病患者や精神障害者の在宅生活支援、地域包括ケアシステムの推進に関わる企画・調整業務などが挙げられます。
福祉用具の導入支援や住宅改修に関する助言、介護予防事業の運営など、作業療法士の専門知識を活かして、地域全体の福祉サービスを支える重要な役割を担います。
教育分野も公務員作業療法士の活躍の場の一つです。
特別支援学校に「自立活動教諭」として勤務し、障害のある児童生徒に対して、日常生活動作や学習に必要な身体機能の向上を支援します。
この場合、作業療法士の資格に加えて教員免許が必要となるケースが一般的です。
また、市町村の教育委員会に所属し、地域の小中学校を巡回しながら、発達障害のある児童生徒やその担任教員、保護者に対して専門的な助言や支援を行う役割を担うこともあります。
公務員として働く作業療法士には、民間施設にはない多くのメリットが存在します。
最大の魅力は、法律で身分が保障された雇用の安定性です。
また、各種休暇制度や手当といった福利厚生が充実しており、ワークライフバランスを保ちやすい環境が整っています。
さらに、個々の患者だけでなく、行政の立場から地域全体の福祉に貢献できるという、広い視野でのやりがいも大きな特徴です。
公務員は、法律によって身分が保障されているため、不当に解雇される心配がほとんどありません。
民間企業のように業績悪化によるリストラや施設の倒産といったリスクがなく、定年まで安定した環境でキャリアを継続できます。
この雇用の安定性は、将来の生活設計を立てる上で非常に大きな安心材料となります。
景気の動向に一喜一憂することなく、腰を据えて専門職としての業務に集中できる点は、公務員として働く最大のメリットの一つです。
公務員は福利厚生が手厚く、ワークライフバランスを実現しやすい環境が整っています。
年次有給休暇の取得が奨励されているほか、夏季休暇や病気休暇、結婚や出産、育児、介護などライフイベントに応じた特別休暇制度も充実しています。
特に育児休業は男女ともに取得しやすく、復職後も時短勤務などの制度を利用しやすい傾向にあります。
共済組合による各種給付金や低金利の貸付制度もあり、仕事と私生活を両立させたい人にとって非常に魅力的な職場です。
公務員の作業療法士は、病院での臨床業務にとどまらず、行政の立場から地域全体の健康や福祉の向上に貢献できます。
例えば、介護予防事業の企画・運営や、障害を持つ人々が暮らしやすい街づくりのための施策立案など、より広い視点から社会に働きかけることが可能です。
目の前の患者一人ひとりと向き合うこととは異なる、地域住民全体の生活を支えるという大きなスケールの業務は、公務員ならではのやりがいと使命感につながります。
公務員の作業療法士には多くのメリットがある一方、事前に理解しておくべき注意点も存在します。
民間とは異なり、数年ごとの人事異動によって専門外の部署へ移る可能性や、原則として副業が禁止されているといった制約があります。
また、給与が年功序列で安定している反面、個人の成果が直接的な昇給につながりにくい側面も、公務員を目指す上で考慮すべき点です。
公務員には数年ごとの定期的な人事異動が伴います。
作業療法士として採用された場合でも、本人の希望に関わらず、福祉課や保健センターなど、直接的な臨床業務を行わない部署へ異動する可能性があります。
また、採用された自治体の管轄区域内での転勤も考えられます。
特定の分野で専門性を突き詰めたい場合や、同じ勤務地で働き続けたいという希望がある人にとっては、この異動や転勤の可能性がデメリットとなる場合があるため、事前の覚悟が必要です。
公務員は、国家公務員法および地方公務員法により、原則として営利目的の副業が禁止されています。
これは、職務の公正性を保ち、国民全体の奉仕者としての職務に専念するためです。
そのため、民間病院で働く作業療法士のように、週末に別の施設でアルバイトをして収入を増やすといった働き方はできません。
例外的に許可されるケースもありますが、手続きは厳格です。
収入の多様性を求める人にとっては、この副業禁止のルールが大きな制約となります。
公務員の給与は年功序列で安定している反面、個人の努力や成果が給与額に直接反映されにくいという特徴があります。
民間企業に見られるような、高い成果を上げたことによるインセンティブや大幅な昇給は期待できません。
毎年着実に給与は上がりますが、その幅は規定に基づいています。
若いうちから実力で評価され、高い収入を得たいという意欲が強い人にとっては、この給与体系がモチベーションを維持しにくい要因となる可能性も考えられます。
公務員作業療法士の採用は、欠員が出た際に若干名のみ募集されることが多く、非常に狭き門です。
そのため、公務員試験を突破するには、その難易度と特性を理解し、計画的かつ徹底的な対策を講じる必要があります。
筆記試験から面接、小論文まで、自治体ごとに異なる試験内容を把握し、自身の強みを最大限にアピールすることが、厳しい採用競争を勝ち抜くための鍵となります。
公務員における作業療法士の採用枠は、ほとんどの自治体で1名から数名程度と非常に少ないのが現状です。
退職者が出た場合などに不定期で募集がかかるため、希望する自治体でいつ募集があるか予測が難しい側面もあります。
この希少な採用枠に対して応募者が殺到するため、倍率は数十倍になることも珍しくなく、時には100倍を超えるケースも見られます。
専門知識だけでなく一般教養も問われるため、試験の難易度は非常に高く、合格には入念な準備が不可欠です。
公務員試験は、自治体や職種によって試験内容が異なります。一般的に、一次試験では筆記試験、二次試験では面接や小論文などが課されることが多いですが、この限りではありません。筆記試験では、社会科学や数的処理といった「一般教養」に加え、作業療法に関する「専門知識」が問われることがあります。ただし、「一般教養」の有無や出題範囲は自治体によって異なります。
自治体によって出題範囲や形式が異なるため、東京都や北海道、京都といった志望先の過去問を分析し、傾向を掴むことが重要です。
面接では、志望動機や公務員として地域にどう貢献したいかといった点が深掘りされます。小論文では、地域医療や福祉に関するテーマが出されることが多く、日頃から問題意識を持っておく必要があります。
作業療法士の公務員募集は、新年度が始まる前の秋から冬にかけて行われることが多いものの、退職者の発生などにより不定期に告知されるのが一般的です。
求人情報を見逃さないためには、希望する都道府県や市区町村の公式ウェブサイトの「職員採用情報」ページを日常的に確認することが最も確実な方法です。
公務員専門の求人サイトや転職エージェントに登録し、情報収集のアンテナを広げておくことも、希少な募集機会を掴むために有効です。
公務員の作業療法士を目指すにあたり、多くの方がさまざまな疑問を抱きます。
ここでは、民間病院との働き方の向き不向き、新卒での受験の可能性、そして難関である公務員試験の対策に必要な勉強期間など、特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
これらの情報を参考に、自身のキャリアプランを具体的に検討してみてください。
雇用の安定性やワークライフバランスを重視し、地域全体の福祉に貢献したい意欲があるなら公務員が向いています。
一方、臨床スキルの研鑽に集中し、個人の成果が給与に反映される環境を求めるなら民間病院が適しているでしょう。
自治体によりますが、新卒や臨床未経験でも受験可能な求人は存在します。
公務員になるには年齢や資格の要件を満たすことが先決です。
ただし、即戦力を求める募集では数年程度の臨床経験を応募条件としている場合も多いため、必ず募集要項を確認してください。
一般的に、筆記試験対策には半年から1年程度の学習期間を見込むのが目安です。
専門科目に加え、一般教養科目の範囲が広いため、計画的な準備が合格の鍵を握ります。
自身の学力や確保できる時間に応じて、余裕を持った学習スケジュールを立てることが重要です。
公務員の作業療法士は、雇用の安定性、充実した福利厚生、地域貢献という大きなやりがいを持つ魅力的な選択肢です。
その一方で、採用枠が極端に少なく、試験の倍率が非常に高いという厳しい現実があります。
また、臨床業務だけでなく行政事務や異動の可能性など、民間とは働き方が大きく異なります。
公務員を目指す際は、これらのメリットと注意点を十分に理解し、自身のキャリアプランと照らし合わせた上で、計画的な情報収集と入念な試験対策を進めることが求められます。
監修:日本リハビリテーション専門学校 阿部 英人(作業療法士)
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