2026.02.14
作業療法

監修:日本リハビリテーション専門学校 小笹 久志(作業療法士)
放課後等デイサービスで働く作業療法士の環境が高まっています。
この記事では、具体的な仕事内容をはじめ、病院勤務との違いやメリット、事業者向けの専門的支援加算の要件まで幅広く解説します。
発達支援領域でのキャリアを検討している作業療法士や、専門職の採用を考えている事業者の方が、求人選びや施設運営の参考にできる情報を提供します。
放課後等デイサービスで作業療法士の需要が高まっている背景には、発達障害への社会的な認知向上と、それに伴う支援ニーズの多様化があります。
特に2024年度の報酬改定では、専門職の配置が手厚く評価される「専門的支援体制加算」が新設され、作業療法士の採用が事業所の運営面でも重要になりました。
作業療法士は、遊びや日常生活の動作を通じて子どもの発達を促す専門家です。
そのアセスメント能力に基づく個別支援は、事業所の療育の質を大きく向上させるため、保護者からの期待も高く、施設側にとってもサービスの差別化につながる存在として求められています。
放課後等デイサービスにおける作業療法士の業務は、単に子どもたちを見守るだけではありません。
専門的な視点から一人ひとりの発達課題を評価し、日常生活の自立や学習の基礎作り、社会性を育むための支援を計画・実行します。
その役割は、個別支援計画の立案から保護者対応まで多岐にわたります。
ここでは、具体的な仕事内容を5つの項目に分けて説明します。
作業療法士は、子ども一人ひとりの発達段階や特性を専門的な視点で評価し、個別支援計画の原案を作成します。
これには、面談での保護者からの聞き取りや、学校・家庭での様子の情報収集も含まれます。
その評価結果に基づき、子どもの興味や関心を引き出しながら達成可能な目標を設定し、具体的な支援プログラムを考案します。
立案した計画は、児童発達支援管理責任者や保育士、児童指導員などの他職種と共有し、カンファレンスを通じてチーム全体で支援方針を決定。
定期的に支援の効果を再評価し、計画の見直しも行います。
食事、着替え、トイレ、歯磨きといった日常生活動作(ADL)の自立は、子どもの自己肯定感を育む上で重要です。
作業療法士は、これらの動作がうまくいかない背景にある原因を探ります。
例えば「ボタンが留められない」場合、手先の器用さだけでなく、姿勢の安定性や集中力にも目を向け、根本的な課題にアプローチします。
理学療法士が「歩く」「立つ」といった基本的な動作を担うのに対し、作業療法士は道具を使う応用的な動作を支援する役割があります。
スプーンの持ち方や箸の操作、靴紐結びなど、生活に直結したスキルの獲得をサポートします。
落ち着きがない、特定のものに過敏、力加減が苦手といった行動の背景には、感覚情報の処理に課題がある場合があります。
作業療法士は、感覚統合の視点を用いて、子どもたちが様々な感覚を適切に整理・統合する手助けをします。
具体的には、ブランコやトランポリン、ボールプール、スライム遊びといった活動を、子どもの状態に合わせて意図的に提供します。
これらの活動は子どもにとっては楽しい「遊び」ですが、脳機能の発達を促すための重要なアプローチです。
遊びを通して、自己コントロール能力や身体イメージの形成を支援します。
学習支援において作業療法士は、勉強を直接教えるのではなく、学習に必要な基礎的な能力を育む役割を担います。
例えば、文字を綺麗に書けない子どもに対しては、鉛筆を正しく操作するための手指の巧緻性や、正しい姿勢を保つための体幹機能を高める運動を取り入れます。
また、板書を書き写すのが苦手な子どもには、眼球運動をスムーズにするビジョントレーニングを実施します。
このように、集中力やワーキングメモリ、視覚認知といった学習の土台となるスキルに働きかけ、子どもが学校での学習にスムーズに取り組めるよう支援します。
作業療法士にとって、保護者との連携は非常に重要です。
日々の支援の様子や子どもの成長した点、課題などを専門的な視点から具体的に伝え、保護者と目標を共有します。
これにより、保護者は子どもの状態を客観的に理解し、安心して支援を任せることができます。
また、家庭での悩み相談に応じ、日常生活の中で実践できる関わり方や環境調整の工夫をアドバイスするのも大切な業務です。
例えば、癇癪を起しやすい子への対応や、手先の器用さを促す遊びの提案などを行い、事業所と家庭が一体となって子どもの成長を支える体制を築きます。
医療機関で経験を積んだ作業療法士が、次のキャリアとして放課後等デイサービスを選ぶケースが増えています。
対象となる子どもの年齢層や関わる期間、求められる役割が病院とは大きく異なるため、そこには福祉施設ならではの働きがいやメリットが存在します。
ここでは、病院勤務と比較した場合の放課後等デイサービスで働く魅力について、3つの観点から解説します。
病院勤務の場合、入院期間や治療計画によって患者と関わる期間が限定されることが少なくありません。
一方、放課後等デイサービスでは、利用契約が続く限り、数年単位で同じ子どもの支援に携わることが可能です。
就学前から小学校卒業までといった長期間にわたり、子どもの発達段階に応じた支援を継続的に行えます。
昨日できなかったことが今日できるようになる、といった日々の小さな成長から、思春期に向けた大きな変化までを間近で見守れるのは、この仕事ならではの大きな魅力です。
子どもや保護者とじっくり信頼関係を築きながら、長期的な視点で支援計画を立て、その成果を実感できます。
放課後等デイサービスには、作業療法士の他に保育士、児童指導員、理学療法士、言語聴覚士、社会福祉士など、多様な専門性を持つスタッフが在籍しています。
医療機関ではリハビリテーション専門職同士の連携が中心ですが、ここでは保育や教育、福祉といった異なる分野の視点に日常的に触れることができます。
他職種の専門知識やアプローチ方法を学ぶことで、子どもをより多角的に理解できるようになり、自身の支援の幅も広がります。
チームで子どもの情報を共有し、それぞれの専門性を活かして議論することで、より質の高い療育の提供が可能です。
放課後等デイサービスの営業時間は、平日の放課後と土曜日や夏休みなどの学校休業日が中心です。
そのため、勤務形態は日勤が基本となり、病院のような夜勤や当直業務はありません。
一日のスケジュールも比較的決まっており、イベントなどの特別な場合を除いて残業も少ない傾向にあります。
このため、終業後の時間を趣味や自己研鑽、家庭の時間として有効に活用しやすく、プライベートとの両立を図りやすい環境です。
子育て中の作業療法士や、規則正しい生活リズムを重視する人にとって、ワークライフバランスを保ちながら専門性を発揮できる職場といえます。
放課後等デイサービスは多くのメリットがある一方で、医療機関とは制度や環境が異なるため、転職を検討する際には事前に理解しておくべき点もあります。
働き始めてからのミスマッチを防ぐため、給与体系や業務の範囲、役割の違いなどを正しく把握しておくことが重要です。
ここでは、病院勤務と比較して特に知っておくべき3つのポイントを説明します。
放課後等デイサービスは児童福祉法に基づく福祉施設であり、医療法が適用される医療機関ではありません。
そのため、医師の指示のもとで行うような医療行為は一切行えません。
病院で行うような医学적リハビリテーションとは異なり、あくまで「療育」という枠組みの中で、日常生活や社会生活への適応を目指した支援が中心となります。
関節可動域訓練や物理療法といったアプローチは基本的に行わず、遊びや生活活動を通じた機能訓練が主です。
医療的な介入を専門としたい場合、その役割の違いを理解しておく必要があります。
一般的に、放課後等デイサービスの給与水準は、大規模な病院や医療法人と比較すると同等か、やや低い傾向が見られる場合があります。
これは、診療報酬と介護・福祉報酬の制度の違いに起因します。
ただし、近年は専門職の配置を評価する加算制度が充実しており、資格手当などで給与に反映させている事業所も増えています。
また、児童発達支援管理責任者などの管理職にキャリアアップすることで、給与の向上も目指せます。
求人情報を確認する際は、基本給だけでなく賞与や各種手当、昇給制度などを総合的に比較検討することが求められます。
多くの放課後等デイサービスでは、利用する子どもたちのために学校から事業所、事業所から自宅への送迎サービスを提供しています。
作業療法士であっても、専門的な療育業務だけでなく、他のスタッフと同様に送迎車の運転や添乗業務をローテーションで担当することがあります。
そのため、普通自動車運転免許が応募の必須条件、あるいは歓迎要件となっている求人も少なくありません。
運転に不安がある場合や、療育業務に専念したいと考える場合は、応募時や面接の段階で送迎業務の有無やその頻度について、事前に確認しておくことが重要です。
放課後等デイサービスで働く作業療法士のやりがいは、子どもの成長を最も身近な場所で長期間にわたって支援できる点にあります。
個別支援計画に基づいて関わった子どもが、昨日までできなかったことができるようになった瞬間や、苦手なことに挑戦しようとする姿を見られた時に大きな喜びを感じます。
また、自分のアプローチによって子どもが笑顔になったり、自信を持てるようになったりと、内面的な成長に貢献できることも魅力です。
保護者から「家での様子が変わりました」と感謝の言葉を伝えられた際には、専門職としての介在価値を強く実感でき、日々の業務の励みとなります。
放課後等デイサービスで働く作業療法士は、支援の成果がすぐに目に見える形で現れにくいという側面があります。
子どもの発達は一進一退を繰り返すことも多く、根気強く長期的な視点で関わり続ける姿勢が求められます。
また、複数の子どもたちを同時に見ながら、一人ひとりの特性に合わせた個別対応と全体の安全管理を両立させなければならないため、常に高い注意力が要求されます。
保護者とのコミュニケーションでは、家庭環境や教育方針を尊重しながら専門的な助言を行う難しさを感じることもあります。
事業所によっては専門職が自分一人という場合もあり、相談相手がいない孤独感を抱えるケースも想定されます。
放課後等デイサービスでの勤務は、特定の特徴を持つ作業療法士にとって、特にやりがいを感じられる環境です。
まず、何よりも子どもが好きで、その成長過程に長期的に寄り添いたいという思いがある人に向いています。
また、一人ひとりの子どもの個性や特性をじっくり観察し、その子に合ったオーダーメイドの支援策を考えることに喜びを感じる人も適性があります。
医療的なアプローチだけでなく、生活に根差した療育や遊びを通じた支援に興味がある人も、その専門性を大いに発揮できます。
さらに、保育士や児童指導員など、他職種の視点を尊重し、チーム一丸となって働くことに前向きな協調性も重要な資質です。
2024年度の障害福祉サービス等報酬改定により、質の高い療育の提供を評価する「専門的支援体制加算」が新設されました。
この加算を算定するには、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、公認心理師(心理指導担当職員)、視能訓練士のいずれかの資格を持つ専門職を、常勤換算で1名以上配置する必要があります。
作業療法士を配置することで、この加算要件を満たすことが可能です。
加算の取得は事業所の収益向上に直接つながるだけでなく、専門性の高い支援を提供できる施設として、保護者からの信頼を得やすくなるというメリットもあります。
作業療法士の採用は、経営の安定化とサービスの質的向上の両面に貢献します。
放課後等デイサービスへの転職を成功させるには、給与や勤務時間といった条件面だけでなく、事業所の療育方針や職場の環境が自分に合っているかを見極めることが不可欠です。
数多くある求人の中から自分に最適な職場を見つけるためには、事前の情報収集が重要になります。
ここでは、入職後のミスマッチを防ぎ、後悔しないための転職先の選び方について、3つの重要なポイントを解説します。
放課後等デイサービスは事業所ごとに特色があり、運動療育に特化している施設、学習支援をメインに行う施設、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を重視する施設など、その療育方針は様々です。
まずは、自分が作業療法士としてどのような支援をしたいのか、例えば「感覚統合アプローチを実践したい」「日常生活動作の支援に力を入れたい」といった希望を明確にしましょう。
その上で、事業所のホームページや求人情報を詳しく読み込み、提供されているプログラム内容が自分のやりたいことと一致しているかを確認することが、やりがいを持って長く働き続けるための第一歩です。
働きやすさは、職場の人間関係や連携体制に大きく左右されます。
求人に応募する際は、作業療法士が自分一人だけの配置なのか、他に理学療法士や言語聴覚士といった同業の専門職がいるのかを確認しましょう。
複数の専門職がいる環境であれば、困った時に相談しやすく、互いに知識や技術を高め合うことができます。
また、保育士や児童指導員といった他職種との情報共有がどの程度活発に行われているかも重要なポイントです。
定例会議の有無や、日々の情報交換の方法などを面接時に質問し、チームとして子どもを支援する風土があるかを見極めることが大切です。
求人票やウェブサイトの情報だけでは、職場の本当の雰囲気はわかりません。
可能であれば、応募前や面接の際に職場見学を申し出て、実際に施設を訪れることを強く推奨します。
子どもたちの表情が生き生きしているか、スタッフ同士が楽しそうにコミュニケーションを取っているか、施設内が清潔で安全な環境かなどを自分の目で確かめることで、より多くの情報を得られます。
自分がその場で働いている姿を具体的にイメージできるかどうかが、判断の重要な基準になります。
実際の支援の様子を見ることで、その事業所の療育の質や理念が実践されているかを肌で感じ取れます。
放課後等デイサービスへの転職を具体的に考え始めると、未経験での挑戦は可能なのか、給与はどの程度なのか、といった疑問が出てくるものです。
ここでは、作業療法士の方から特によく寄せられる質問を3つ取り上げ、それぞれの回答を簡潔にまとめました。
転職活動における不安や疑問を解消するための一助としてください。
はい、未経験でも働くことは可能です。
成人領域での経験しかなくても、研修制度が整っている事業所が増えてきており、入職後に学びながらスキルを身につけられます。
これまでに培ったアセスメント能力や他者とのコミュニケーションスキルは、分野が違っても活かせます。
何よりも、子どもが好きで発達支援の分野を学びたいという意欲が重要です。
常勤の作業療法士の場合、年収300万円から450万円程度が一つの目安となります。
ただし、この金額は地域や事業所の規模、個人の経験年数によって変動します。
専門的支援加算などを算定している事業所では、資格手当が充実している傾向にあります。
求人情報を比較する際は、月給だけでなく賞与や各種手当を含めた総額で判断することが重要です。
理学療法士(PT)は「座る・立つ・歩く」といった基本的な動作機能の向上、言語聴覚士(ST)は「話す・聞く・食べる」といったコミュニケーションや嚥下機能の支援を専門とします。
一方、作業療法士(OT)は、これらの基本的な動きを応用した食事や着替え、遊び、学習など、より生活に密着した活動全般を支援する役割を担います。
放課後等デイサービスにおける作業療法士は、個別支援計画の立案から日常生活動作の支援、感覚統合アプローチの実践まで、専門性を活かした多岐にわたる業務を担います。
病院勤務とは異なり、子どもの成長を長期的に見守れる点や、多職種と連携しながら療育に携われる点に大きなやりがいがあります。
また、日勤が基本でワークライフバランスを保ちやすいことも魅力の一つです。
転職を検討する際は、給与や業務範囲の違いを理解した上で、施設の療育方針や連携体制、職場の雰囲気を十分に確認することが、ミスマッチを防ぐ鍵となります。
事業者にとっては、作業療法士の配置が専門的支援加算の算定につながり、療育の質と経営基盤の強化に寄与します。
監修:日本リハビリテーション専門学校 小笹 久志(作業療法士)
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