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就労支援の作業療法士|役割・仕事内容から求人・加算メリットまで解説

2026.02.13

作業療法

就労支援の作業療法士|役割・仕事内容から求人・加算メリットまで解説

監修:日本リハビリテーション専門学校 栗原 実里(作業療法士)

 

作業療法士の活躍の場が、医療機関から福祉分野へと広がっています。
特に、障害者の就労をサポートする就労支援の現場では、心身機能や生活背景を評価し、その人らしい働き方を支援する専門性が高く評価されています。

この記事では、就労支援における作業療法士の具体的な役割や仕事内容、求人情報の探し方、事業者向けの加算メリットまで、幅広く解説します。

 

 

就労支援分野で作業療法士の専門性が求められる理由

就労支援の現場では、利用者が抱える障害の特性だけでなく、個々の生活習慣や価値観、得意・不得意な作業を総合的に理解する視点が不可欠です。
作業療法士は、心身機能、認知機能、対人関係スキルなどを「作業」という観点から分析し、その人が能力を最大限に発揮できる働き方を見立てる専門家です。
この多角的なアプローチが、利用者の就職と職場定着を成功に導くための重要な役割を担います。

 

 

就労支援における作業療法士の具体的な3つの役割

就労支援における作業療法士の役割は、多岐にわたります。
まず、利用者の能力や課題を客観的に把握するための専門的な評価を行い、それを基に個別の支援計画を立案します。

そして、計画に沿った職業リハビリテーションを実施し、最終的には利用者がスムーズに職場へ移行し定着できるよう、企業や関係機関との連携を図ります。
これら一連のプロセスを通じて、利用者の自立を支援します。

 

 

利用者の強みと課題を分析する作業遂行能力の評価

作業療法士は、面談だけでなく、施設内での模擬的な作業やグループワークを通じて、利用者の作業遂行能力を具体的に評価します。
例えば、軽作業における集中力の持続時間、パソコン入力の正確性、指示理解力、疲労の度合い、他の利用者との協調性などを専門的な視点で観察・分析します。

これにより、本人の自己評価だけでは見えにくい強みや、就労において配慮が必要な課題を客観的に把握できます。
この評価結果は、支援計画の根幹となり、利用者本人や他の支援員が具体的な目標を設定するための重要な情報となります。

 

 

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個別の目標に合わせた職業リハビリテーションの実施

評価によって明らかになった個々の課題に基づき、具体的な職業リハビリテーションプログラムを計画・実施します。
単にPCスキルやビジネスマナーを訓練するだけでなく、作業療法士の視点を活かし、集中力を維持するための環境調整、ストレスや疲労を自己管理する手法、効率的な時間管理術などを指導します。
利用者一人ひとりの希望職種や目標に合わせてプログラムを個別化し、就労に向けた実践的なスキルを着実に身につけていけるよう支援します。

これらの訓練は、就労移行支援のプロセスにおいて、利用者が自信を持って次のステップへ進むための基盤を築きます。

 

 

職場定着を後押しする企業や関係機関との連携

作業療法士の役割は、利用者が就職するまでで終わりません。
就職後の職場定着こそが最終的な目標であり、そのために企業や関係機関との連携が不可欠です。
利用者の障害特性や得意なこと、必要な配慮などを企業の人事担当者や現場の上司に専門的な視点から説明し、物理的な環境調整や業務内容の変更などを提案します。

また、ハローワークや障害者就業・生活支援センター、場合によっては就労継続支援事業所など他の福祉サービスとも連携し、多角的なサポート体制を構築します。
これにより、利用者が安心して長く働き続けられる環境を整えます。

 

 

医療機関のリハビリテーションとは異なる就労支援の視点

医療機関でのリハビリテーションが心身機能の回復を主な目的とするのに対し、就労支援では「働くこと」を通じてその人らしい生活を再構築することがゴールです。
病気や障害の治療ではなく、利用者が持つ能力を最大限に活かし、社会参加を実現するための支援が中心となります。

そのため、就労移行支援や就労継続支援の現場では、より長期的かつ生活全体を捉える視点が求められ、機能回復の程度だけでなく、本人の価値観や意欲を尊重した関わりが重要になります。

 

 

作業療法士が活躍できる就労支援サービスの種類

作業療法士が活躍する就労支援サービスは、主に「就労移行支援」「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」の3種類に分けられます。
それぞれ支援の対象者や目的が異なり、作業療法士に求められる役割も少しずつ異なります。
利用者が一般企業への就職を目指すのか、あるいは福祉的なサポートを受けながら働くのかによって、関わり方や支援内容が変わってきます。

ここでは、それぞれの事業所の特徴を解説します。

 

 

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利用者の「働きたい」を直接サポートする就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、障害のある方が一般企業へ就職するために必要な知識やスキルを身につけるための施設です。
利用期間は原則2年間と定められており、利用者はその中で職業訓練や職場探し、実習などを行います。
作業療法士は、利用者のアセスメントから個別支援計画の作成、コミュニケーションスキルやPCスキルなどの訓練プログラムの提供、企業実習先との調整、就職後の定着支援まで、一連のプロセスに深く関わります。

利用者の「働きたい」という思いに寄り添い、就職という明確なゴールに向かって伴走できる、やりがいの大きな職場です。

 

 

雇用契約を結びながら支援する就労継続支援A型事業所

就労継続支援A型事業所は、利用者と雇用契約を結び、最低賃金以上の給与を支払いながら就労の機会を提供する施設です。
一般企業での就労が難しいものの、一定の支援があれば安定して働ける方が対象となります。
ここでの作業療法士の役割は、利用者が労働者として業務を遂行し続けられるように支援することです。

具体的な業務としては、作業効率や正確性を高めるための指導、職場での対人関係に関する相談対応、心身の健康を維持するためのセルフケア指導、そしてより働きやすい環境を整えるための作業工程の見直しや環境調整の提案などが挙げられます。

 

 

個人のペースで働く訓練を行う就労継続支援B型事業所

就労継続支援B型事業所は、年齢や体力の面で一般企業やA型事業所で働くことが困難な方が、自分の体調やペースに合わせて軽作業などを行う施設です。
利用者と雇用契約は結ばず、生産活動に対する対価として「工賃」が支払われます。
作業療法士は、利用者が日中の活動の場として安心して通所できるよう、居心地の良い環境づくりに貢献します。

また、簡単な作業を通じて「できた」という達成感を得られるような機会を提供したり、生活リズムを整えるための助言を行ったりします。
就労そのものよりも、社会とのつながりを持ち、生活の質を高めることに重点を置いた支援が中心となります。

 

 

作業療法士が就労支援分野で働くことのやりがい

就労支援分野で働くことは、医療機関とは異なる種類の大きなやりがいを感じられます。
利用者の「働きたい」という願いを実現し、就職という人生の重要な転機に立ち会えることは、何物にも代えがたい経験です。
また、一人の利用者に長期間関わることで、その人の成長を間近で見守り、生活全体を支えることができます。

多職種と連携しながらチームで目標に向かう一体感も、この仕事の魅力の一つです。

 

 

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就労支援分野への転職で知っておきたいこと

就労支援分野への転職を成功させるためには、情報収集と準備が重要です。
自身のスキルや価値観に合った職場をどのように見つけるか、また、医療現場との違いから生じる可能性のある困難にはどのようなものがあるかを事前に理解しておくことが、転職後のミスマッチを防ぎます。
ここでは、具体的な求人の探し方と、就労支援の現場で直面しやすい課題について解説します。

 

 

自分に合った職場の求人を見つける方法

自分に合った職場を見つけるためには、複数の方法で情報を集めることが有効です。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などに特化した転職エージェントは、非公開求人を含めた多くの情報を持っており、キャリア相談にも乗ってくれます。
また、地域のハローワークや社会福祉協議会が運営する福祉人材センターも、地元の求人情報が豊富です。

求人票を見る際は、給与や休日といった条件面だけでなく、事業所のウェブサイトで支援方針やプログラム内容を確認することも重要です。
可能であれば施設見学を申し込み、職場の雰囲気や、作業療法士にどのような役割が期待されているのかを直接確認すると良いでしょう。

 

 

就労支援で働く上で大変だと感じやすい点

就労支援の現場では、医療機関とは異なる種類の困難さに直面することがあります。
利用者の就職や定着といった成果は、数ヶ月から数年単位の長期的な関わりの中で少しずつ見えてくるため、根気強さが求められます。
また、精神障害や発達障害、知的障害など、多様な背景を持つ利用者一人ひとりに合わせた支援を提供するには、幅広い知識と柔軟な対応力が必要です。

サービス管理責任者や生活支援員など、異なる専門性を持つ他職種との円滑な連携も不可欠です。
給与水準が前職の医療機関より低くなる可能性も考慮しておくべき点の一つです。

 

 

【事業者向け】作業療法士の配置で算定可能な福祉専門職員配置等加算

就労支援事業所の運営において、質の高いサービス提供と安定した経営基盤の確保は重要な課題です。
作業療法士のような専門職を配置することは、利用者への支援の質を高めるだけでなく、報酬上の評価にもつながります。
ここでは、作業療法士の配置によって算定が可能になる「福祉専門職員配置等加算」の要件や、加算取得が事業所にもたらすメリットについて具体的に解説します。

 

 

福祉専門職員配置等加算の算定要件を解説

福祉専門職員配置等加算は、質の高い支援を提供できる専門人材を一定数以上配置している事業所を評価する制度です。
この加算の対象となる資格には、社会福祉士や精神保健福祉士と並んで、作業療法士も含まれています。
加算には(Ⅰ)から(Ⅲ)までの区分があり、事業所に配置されている直接支援職員のうち、対象となる有資格者の割合によって算定できる区分が決まります。

例えば、加算(Ⅰ)では有資格者を常勤換算で35%以上、加算(Ⅱ)では25%以上配置する必要があります。
この要件を満たすことで、利用者一人あたりの基本報酬に加えて、所定の単位数が加算されます。

 

 

加算取得がもたらす事業所運営へのメリット

福祉専門職員配置等加算を取得するメリットは、単に報酬が増えることだけではありません。
第一に、加算による収益増は事業所の経営基盤を安定させ、職員の待遇改善や設備投資など、さらなるサービス向上のための原資となります。
第二に、作業療法士のような専門職がいることで、客観的なアセスメントに基づいた質の高い個別支援計画の作成や、専門的な訓練プログラムの実施が可能になります。

これは、利用者の満足度向上と支援成果に直結します。
結果として、専門性を重視する事業所として他の事業所との差別化が図れ、利用者やその家族、関係機関からの信頼を高めることにもつながります。

 

 

就労支援の作業療法士に関するよくある質問

ここでは、就労支援分野への転職を検討している作業療法士の方からよく寄せられる質問にお答えします。
未経験からの転職は可能なのか、医療機関と比べて給与はどう変わるのか、どのようなスキルが特に求められるのかなど、多くの方が気になるポイントをまとめました。

具体的な疑問を解消し、キャリアプランを考える上での参考にしてください。

 

 

就労支援の経験がなくても作業療法士は転職できますか?

結論として、就労支援の経験がなくても転職は可能です。
医療現場で培った身体・精神機能の評価スキルやリハビリテーションの知識は、就労支援の現場でも高く評価されます。

特に精神科での勤務経験は、利用者のメンタルヘルスケアに直結するため、有利に働くことが多いです。

 

 

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病院勤務と比較して給料はどのくらい変わりますか?

就労支援事業所の給与水準は、事業所の規模や運営母体、役職、経験年数によって大きく異なります。管理職を目指したり、専門性を活かして事業所の加算取得に貢献したりすることで、給与アップも可能です。

 

 

就労支援の現場で特に求められるスキルは何ですか?

臨床スキルに加えて、コミュニケーション能力が特に重要です。
利用者本人だけでなく、その家族や企業担当者、他の支援機関のスタッフなど、多くの人と連携する場面が多いためです。
相手の話を丁寧に聞き、専門的な内容を分かりやすく説明する力が求められます。

 

 

まとめ

作業療法士は、就労支援の分野において、利用者の心身機能や生活背景を総合的に評価し、その人らしい働き方を実現するための重要な役割を担います。
作業遂行能力の評価、個別リハビリテーションの実施、企業や関係機関との連携といった専門的な関わりは、利用者の就職と職場定着を強力に後押しします。

事業者にとっては、作業療法士の配置が福祉専門職員配置等加算の算定につながり、経営の安定化とサービス品質の向上に寄与します。
医療機関とは異なる視点やスキルが求められますが、利用者の人生に深く関わるやりがいのあるキャリアパスの一つです。

 

監修:日本リハビリテーション専門学校 栗原 実里(作業療法士)

 

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