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小児の作業療法士とは?仕事内容や発達障害へのリハビリ分野を解説

2026.02.12

作業療法

小児の作業療法士とは?仕事内容や発達障害へのリハビリ分野を解説

 

 

小児の作業療法士とは、発達障害を含む子どもたちの心と身体の発達を支援する専門職です。
その役割は、日常生活の動作から遊び、学習の土台づくりまで多岐にわたります。

この記事では、小児分野の作業療法士の具体的な仕事内容や、どのような子どもを対象にリハビリを行うのか、主な就職先から求められる資質まで幅広く解説します。

 

 

小児分野の作業療法士とは?子どもたちの成長を支える専門職

小児分野の作業療法士は、生まれつきの障害や病気、発達の遅れなどにより、日常生活や遊び、学習といった活動に困難を抱える子どもたちを支援する専門家です。
その役割は、単に身体機能の訓練を行うだけでなく、遊びなどの主体的な活動を通して、子どもが自分らしく、いきいきと生活できる能力を育むことにあります。
一人ひとりの発達段階や特性に合わせて、運動能力、感覚の調整、認知機能、社会性などを総合的に評価し、その子に必要な支援計画を立てて実践します。

小児の作業療法士が支援する子どもの主な症状や障害

小児の作業療法士が関わる子どもは、特定の診断名がついている場合に限りません。
落ち着きがない、手先が不器用、友達と上手く遊べないなど、保護者や園の先生が感じる「育ちにくさ」も支援の対象となります。
ここでは、作業療法の対象となることが多い代表的な症状や障害について紹介します。

 

 

発達障害(ASD・ADHDなど)を持つ子ども

自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの発達障害を持つ子どもは、作業療法の主な対象です。
ASDの子どもに見られる特定の音や光、触覚への過敏さや、対人関係の困難さに対しては、感覚統合療法やソーシャルスキルトレーニングなどを行います。

ADHDの子どもの多動性や不注意に対しては、集中しやすい環境の整え方を助言したり、遊びを通して注意を持続させる練習をしたりします。
個々の特性を理解し、その子が過ごしやすいように支援することが重要です。

 

臨床現場で役立つ「みるチカラ」とは

 

脳性麻痺など身体に障害のある子ども

脳性麻痺や筋ジストロフィー、染色体異常など、身体的な障害を持つ子どもへの支援も作業療法士の重要な役割です。
姿勢を保つ練習や、手足を使った細かな動きの訓練を通して、基本的な運動能力の向上を目指します。
また、着替えや食事、排泄などの日常生活動作(ADL)を、その子の能力に合わせて行えるよう、補助具の選定や使い方のアドバイス、環境調整も行います。

身体機能だけでなく、遊びや学習への参加を促し、生活の質を高めることを目指します。

 

 

学習障害(LD)や読み書きに困難を抱える子ども

学習障害(LD)は、知的な発達に遅れはないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」などの能力に著しい困難を示す状態です。
作業療法士は、文字の形を正確に認識する力(視知覚)や、鉛筆を適切に操作する手指の巧緻性、正しい姿勢を保つ力など、学習の土台となる身体的な機能にアプローチします。
例えば、ビジョントレーニングで目の動きをスムーズにしたり、粘土やブロック遊びで手指の力を養ったりすることで、学習上の困難さを軽減する支援を行います。

 

 

具体的な仕事内容は?遊びを通して心と体の発達を促すアプローチ

小児分野における作業療法の特徴は、「遊び」を治療の手段として積極的に用いる点にあります。
子どもにとって遊びは最も自然で意欲的な活動であり、その中に発達を促す要素を組み込むことで、楽しみながらリハに取り組むことができます。

作業療法士は、子どもの発達段階や興味関心に合わせて治療的な活動を計画し、心と身体の成長を支援します。

 

 

「着替え」「食事」など日常生活の動作を習得する支援

作業療法士は、子どもが年齢に応じて身の回りのことを自分で行えるよう支援します。
例えば、「ボタンをかける」「箸を使う」「靴紐を結ぶ」といった動作が苦手な子どもに対し、その原因を分析します。

手指の巧緻性が課題であれば粘土遊びやビーズ通しで指先の力を養い、動作の順序を覚えるのが苦手なら絵カードを使って手順を視覚的に示します。
また、スプーンや箸の持ち方を補助する道具を紹介するなど、子どもが「できた」という達成感を得られるような工夫をします。

 

臨床現場で役立つ「みるチカラ」とは

 

「落ち着きがない」など感覚の偏りを調整する支援

じっとしていられない、人混みや大きな音を極端に嫌がる、といった行動の背景には、感覚の受け取り方に偏りがある場合があります。
作業療法では、感覚統合療法というアプローチを用いて、これらの困難さを和らげます。
ブランコやトランポリン、ボールプールなどの遊具を使い、揺れや圧迫、回転といった多様な感覚刺激を脳に提供します。

これにより、脳が感覚情報を適切に整理・統合する力を育て、子どもが自分の身体や周囲の状況を把握しやすくなるよう促します。

 

 

「文字の読み書き」「図形の認識」など学習の土台をつくる支援

文字を整えて書けない、図形を写すのが苦手といった学習面の課題に対し、作業療法士は学習の前提となる能力を育む支援をします。
例えば、正しい姿勢で椅子に座り続ける体幹の力、鉛筆を適切に操作する手指の機能、文字や図形を正しく目で追って認識する力(ビジョンスキル)などを評価し、遊びを通して高めていきます。
線なぞりやパズル、迷路などの活動を通して、目と手を協応させる力を養い、スムーズな学習につなげます。

 

 

友達との関わり方など社会性を育むための支援

「順番が待てない」「自分の思い通りにならないと癇癪を起す」など、集団生活での困難さに対しても支援を行います。
作業療法士は、個別での関わりだけでなく、小集団でのグループ活動も企画します。
ルールのあるゲームや共同での製作活動などを通して、順番を待つこと、相手の気持ちを考えること、協力することなどを体験的に学びます。

こうした活動の中で、適切な自己主張や感情のコントロールの方法を身につけ、社会性を育んでいきます。

 

 

保護者や学校と連携し、子どもが過ごしやすい環境を整える支援

作業療法士の役割は、子どもへの直接的な支援だけにとどまりません。
保護者に対して、家庭でできる関わり方や、子どもの特性に合わせた環境設定について助言します。
また、保育園や幼稚園、学校の先生と情報共有を行い、集団生活の中で子どもが能力を発揮しやすくなるような支援策を共に考えます。

例えば、教室の座席位置の調整や、刺激の少ないスペースの確保などを提案することもあります。
関係者が一体となって子どもを支える体制づくりも重要な仕事です。

 

臨床現場で役立つ「みるチカラ」とは

 

小児の作業療法士が活躍できる主な職場・就職先

小児分野の作業療法士は、医療、福祉、教育といった幅広い領域で活躍しています。
小児科を持つ病院や小児病院だけでなく、地域に根差した療育施設や学校など、その働き方は多様です。
それぞれの職場で求められる役割や連携する職種も異なり、自身の専門性を様々な形で発揮することが可能です。

 

 

児童発達支援センターや放課後等デイサービス

児童発達支援センターは未就学児、放課後等デイサービスは就学児を対象とした、身近な地域にある通所の療育施設です。
作業療法士は、個別または小集団のプログラムを担当し、日常生活の動作、遊び、コミュニケーションスキルの向上を支援します。

子どもの長期的な発達を見守りながら、保護者からの相談に応じるなど、地域の子育て支援拠点として重要な役割を担います。
福祉分野の代表的な職場として、多くの作業療法士が活躍しています。

 

 

小児科のある病院やリハビリテーションセンター

大学病院や総合病院の小児科、リハビリテーションセンターは、医療的なケアが必要な子どもたちが集まる場所です。
作業療法士は医師の診断に基づき、脳性麻痺や先天性疾患、事故による障害などを持つ子どもに対して、医学的リハビリテーションの一環として作業療法を提供します。

理学療法士や言語聴覚士、医師、看護師など、多職種と密に連携しながら、子どもの機能回復と発達支援にあたるのが特徴です。

 

 

特別支援学校や特別支援学級

教育現場も作業療法士の活躍の場の一つです。
特別支援学校や、地域の小中学校内に設置されている特別支援学級に教員として、あるいは外部の専門家として配置されます。
子どもたちが学習しやすいように、姿勢を保つための椅子の調整や、読み書きしやすい文具の選定、集中できる環境づくりなどを支援します。

「自立活動」という授業の中で、個々のニーズに応じた身体の動かし方やコミュニケーションの方法などを指導することもあります。

 

臨床現場で役立つ「みるチカラ」とは

 

保育所や幼稚園への訪問支援

作業療法士が地域の保育所や幼稚園などを巡回し、発達が気になる子どもを支援する働き方です。
集団生活の中で子どもがどのような点に困っているかを直接観察し、担任の保育士や先生に対して、具体的な関わり方や環境設定のアドバイスを行います。

特定の子どもだけでなく、クラス全体が過ごしやすくなるような働きかけも重要です。
早期からの適切な支援につなげ、子どもたちの健やかな園生活をサポートする役割が期待されます。

 

 

小児分野の作業療法士に向いている人の3つの特徴

小児分野の作業療法士として働くためには、専門的な知識や技術はもちろんのこと、子どもやその家族と真摯に向き合う姿勢が不可欠です。
子どもの発達は個人差が大きく、予測通りに進まないことも多いため、特有の適性が求められます。
ここでは、小児分野で活躍するために重要となる3つの特徴について解説します。

 

 

子どもの視点に立って根気強く向き合える人

子どもの成長は一朝一夕ではなく、時には停滞したり後退したりすることもあります。
そのため、短期的な成果を求めるのではなく、長い目で子どもの発達を見守る根気強さが不可欠です。
大人の計画通りに進めようとするのではなく、子どものその日の気分や興味を尊重し、遊びの中から意欲を引き出す柔軟な姿勢が求められます。

子どものペースに合わせて、できたことを共に喜び、粘り強く関わりを続けられる人が向いています。

 

 

観察力があり、子どもの小さな変化に気づける人

特に乳幼児や言葉での表現が苦手な子どもは、自分の気持ちや身体の状態をうまく伝えることができません。
そのため、作業療法士には、子どもの表情やしぐさ、遊び方の様子など、非言語的なサインからその子の内面を読み取る鋭い観察力が求められます。
昨日との様子の違いや、何気ない行動に隠された成長のサインを見逃さないことが、次の支援への重要なヒントになります。

子どもの些細な変化に気づき、それを支援に活かせる力は大きな強みです。

 

臨床現場で役立つ「みるチカラ」とは

 

保護者や関係機関と円滑に連携できるコミュニケーション能力がある人

子どもの支援は、作業療法士一人で完結するものではありません。
最も身近な存在である保護者との信頼関係を築き、日々の悩みや不安に寄り添うことが大切です。
また、学校や保育園の先生、医師、他のセラピストなど、子どもを取り巻く多くの人々と情報を共有し、連携して支援方針を立てる必要があります。

それぞれの立場を尊重しながら、専門家として分かりやすく情報を伝え、協力体制を築いていけるコミュニケーション能力が不可欠です。

 

 

小児分野で働く作業療法士のやりがい

小児分野で働く作業療法士の最大のやりがいは、子どもの成長を間近で支援し、その瞬間に立ち会えることです。
昨日までできなかったブランコに乗れたり、初めて自分の名前を書けたりした時の子どもの笑顔や、それを見守る保護者の喜ぶ姿は、何事にも代えがたい喜びとなります。
自分の関わりが、子どもの可能性を広げ、将来の自立に向けた一歩となることに、大きな責任と誇りを感じることができます。

一人ひとりの人生の重要な時期に関われる、非常に魅力のある仕事です。

 

 

小児分野で働く作業療法士が感じる大変さ

小児分野の作業療法士は、やりがいが大きい一方で、大変さを感じる側面もあります。
子どもの成長には時間がかかるため、支援の成果がすぐに見えにくいことへのもどかしさや、根気のいる関わりが求められます。
また、子どもの発達に対する保護者の不安や期待に応える中で、精神的な負担を感じることもあります。

多様な障害や特性に対応するため、常に新しい知識や技術を学び続ける自己研鑽も欠かせません。
一人で抱え込まず、同僚や他職種と連携することが重要です。

 

臨床現場で役立つ「みるチカラ」とは

 

小児分野の作業療法士に関するよくある質問

ここでは、小児分野の作業療法士を目指す方や、子どもの発達支援について調べている保護者の方からよく寄せられる質問にお答えします。
資格や相談先、大人との違いなど、具体的な疑問を解消するための参考にしてください。

 

 

作業療法士の国家資格以外に、有利になる資格はありますか?

必須の資格はありませんが、専門性を示すものとして「認定作業療法士」や「専門作業療法士」、民間では「感覚統合療法」関連の資格などが評価されます。
作業療法士の国家試験に合格後、学会主催の研修や勉強会に参加し、専門分野の知識と技術を深めることがキャリアアップにつながります。

 

 

子どもの発達が気になります。どこに相談すれば作業療法を受けられますか?

まずは、かかりつけの小児科医、市町村の保健センターや子育て支援センター、児童相談所などに相談することをおすすめします。
そこで必要性が認められれば、専門の医療機関や児童発達支援センターなどを紹介してもらえます。
直接、地域の療育施設に問い合わせることも可能です。

 

 

大人の作業療法と小児の作業療法では何が違いますか?

大人の作業療法は、病気や怪我で失われた機能の回復や維持を目指すことが多いのに対し、小児では、これから伸びていく心身の発達そのものを促す点が大きな違いです。
そのため、小児の支援では「遊び」を手段として用い、子どもの自発性や意欲を引き出しながら、発達の土台を育んでいきます。

 

 

まとめ

小児の作業療法士は、発達障害や身体障害など、さまざまな困難を抱える子どもたち一人ひとりに寄り添い、その子らしい成長を支える専門職です。
仕事内容は、日常生活の動作訓練から、遊びを通じた感覚調整、学習の土台づくり、社会性の育成まで多岐にわたります。
病院や療育施設、学校など幅広い場で活躍し、子どもたちの未来の可能性を広げる重要な役割を担っています。

監修:日本リハビリテーション専門学校 五十嵐 千代子(作業療法士)

 

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