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就労支援で作業療法士が担う役割とは?仕事内容ややりがいを解説

2026.02.10

作業療法

就労支援で作業療法士が担う役割とは?仕事内容ややりがいを解説

監修:日本リハビリテーション専門学校 田中 克一(作業療法士)

 

障害や病気を抱える方の「働きたい」という思いを支える就労支援の現場で、リハビリテーションの専門職である作業療法士の需要が高まっています。
医療機関とは異なる環境で、作業療法士がどのような専門性を発揮し、どんな役割を担うのか、具体的な仕事内容ややりがい、キャリアについて解説します。

 

 

就労支援の現場で作業療法士の専門性が求められる理由

就労支援の現場では、障害や疾患の特性を医学的観点から理解し、個々の利用者に合わせた支援を提供する専門性が不可欠です。
作業療法士は、心身機能の評価や作業活動を通じた訓練、環境調整を得意としており、利用者が抱える就労の課題を多角的に分析し、具体的な解決策を提案できます。
そのため、就労移行支援事業所をはじめとする多くの施設で、その専門知識と技術が求められています。

 

 

まずは基本から|就労支援サービスの種類と作業療法士が働く場所

障害者総合支援法に基づく就労支援サービスには、一般企業への就職を目指す「就労移行支援」、就職後の定着を支える「就労定着支援」、働く機会を提供する「就労継続支援」など、多様な種類が存在します。
作業療法士はこれらの事業所に加え、地域のハブ的役割を担う「障害者就業・生活支援センター」などで活躍しており、それぞれのサービス内容に応じて専門性を発揮しています。

 

 

利用者が一般企業への就職を目指す「就労移行支援」

就労移行支援は、障害者が一般企業へ就職するために必要な知識やスキルを身につけるためのサービスです。
作業療法士は、利用者一人ひとりの心身機能や認知機能、職業適性を評価し、その結果に基づいて個別支援計画を作成します。
具体的な業務としては、ビジネスマナー訓練、PCスキルのトレーニング、ストレスコーピングや対人関係スキル向上のためのプログラム実施、求人開拓や職場見学の同行などが挙げられます。

医学的視点から利用者の特性を分析し、能力を最大限に引き出すための支援を行います。

 

 

働き続けるためのサポートを行う「就労定着支援」

就労定着支援は、就職した利用者が職場で長く安定して働き続けられるようにサポートするサービスです。
作業療法士は、利用者との定期的な面談を通して、職場の人間関係や業務内容、生活リズムの変化といった課題を把握します。
その上で、利用者本人への助言だけでなく、企業の人事担当者や上司に対して、業務内容の調整や合理的配慮に関する専門的な提案を行うことも重要な役割です。

医療機関や地域の関係機関との連携を図り、多角的な視点から利用者の職業生活を支えます。

 

臨床現場で活きる即戦力養成

 

働く機会を提供する「就労継続支援(A型・B型)」

就労継続支援は、一般企業での就労が難しい方に対して、働く機会や生産活動の場を提供するサービスです。
雇用契約を結ぶA型と、結ばないB型があります。
作業療法士はここでも、利用者の作業遂行能力や集中力、意欲などを専門的に評価します。

その評価に基づき、個々の特性や体調に合った作業内容のマッチング、作業効率を高めるための道具の工夫や環境調整、円滑な対人関係を築くためのコミュニケーション訓練などを担当し、利用者がやりがいを持って活動できるよう支援します。

 

 

障害のある方の就労を多角的に支援する「障害者就業・生活支援センター」

障害者就業・生活支援センターは、就業面と生活面の両方から一体的な相談・支援を行う機関です。
作業療法士は、職業準備訓練や職場開拓、定着支援といった就労に関するサポートに加え、健康管理や金銭管理、余暇活動といった生活面の課題にも対応します。

ハローワークや企業、医療機関、福祉サービス事業所など、地域の様々な関係機関とのネットワークの中心となり、利用者が安定した職業生活を送るための橋渡し役としての役割を担います。

 

 

就労支援における作業療法士(OT)の具体的な仕事内容と役割

就労支援における作業療法士の仕事は、利用者の評価から始まり、個別支援計画の作成、専門的な訓練の実施、就職活動のサポート、そして就職後の定着支援まで多岐にわたります。
医療現場でのリハビリテーションとは異なり、利用者の「働く」という生活行為に直接焦点を当て、その人らしい職業人生を送れるように、一貫したプロセスの中で専門性を発揮することが主な役割です。

 

 

利用者の希望や心身機能、生活背景を評価・分析する

支援の第一歩は、利用者一人ひとりを深く理解するための評価から始まります。
作業療法士は、面談を通して利用者の職歴や就労への希望、価値観を聴取するだけでなく、標準化された評価バッテリーや作業サンプルを用いて、身体機能、精神機能、認知機能、遂行機能などを客観的に評価します。

さらに、生活リズムや家族背景、利用できる社会資源なども含めて多角的に情報を収集・分析し、その人の強みと課題を明確にすることが、適切な支援計画の土台となります。

 

 

個別の目標に合わせた職業リハビリテーション計画を作成する

評価・分析の結果に基づき、利用者本人と面談を重ねながら、個別支援計画を立案します。
この計画では、「週5日、安定して通所する」「報告・連絡・相談が適切にできるようになる」といった短期的な目標から、「事務職として就職する」という長期的な目標まで、具体的かつ達成可能なゴールを設定します。
作業療法士は、目標達成のために必要な訓練プログラムや支援内容を専門的視点から計画に落とし込み、定期的に進捗を確認しながら、利用者の状態に合わせて柔軟に計画を修正していきます。

 

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就職に必要なスキルを向上させるための専門的な訓練を実施する

個別支援計画に基づき、就職に向けた具体的な訓練プログラムを提供します。
基本的なPCスキルやビジネスマナー講座に加え、作業療法士の専門性を活かした訓練が特徴です。
例えば、ストレスへの対処法を学ぶ心理教育、円滑な対人関係を築くためのソーシャルスキルトレーニング(SST)、集中力や作業耐久性を高めるための模擬的な軽作業など、個々の課題に合わせたプログラムを企画・実施します。

これらの訓練を通じて、利用者が職場で求められるスキルと自信を身につけられるよう支援します。

 

 

就職活動における具体的なサポートを行う

訓練と並行して、実際の就職活動を具体的にサポートします。
利用者の強みや特性が伝わるような履歴書・職務経歴書の作成支援や、模擬面接の実施などが主な業務です。
作業療法士は、利用者の障害特性を企業側に分かりやすく説明する方法を一緒に考えたり、面接に同行して本人が安心して臨めるよう支援したりすることもあります。

ハローワークや障害者専門の求人サイトを活用しながら、利用者の希望と適性に合った求人を一緒に探し、マッチングを図ります。

 

 

職場定着に向けて企業や関係機関との連携を図る

就職はゴールではなく、安定して働き続けるための新たなスタートです。
作業療法士は、就職後も利用者と定期的に連絡を取り、職場での悩みや課題について相談に乗ります。
同時に、就職先の企業担当者と連携し、業務量の調整や作業環境の整備、本人への指示の出し方といった合理的配慮に関する助言を行います。

また、主治医や相談支援専門員といった地域の関係機関と情報を共有し、チームとして利用者を支える体制を構築することで、長期的な職場定着を目指します。

 

 

就労支援員との違いは?作業療法士だからこそ発揮できる専門性

就労支援員も作業療法士も、利用者の就労をサポートするという目的は共通しています。
しかし、作業療法士は心身機能や精神機能に関する医学的リハビリテーションの専門職であり、その視点に基づいたアセスメントやアプローチができる点に大きな違いがあります。
この専門性により、より根拠に基づいた個別性の高い支援の提供が可能です。

 

 

医学的視点に基づいた多角的なアセスメント能力

作業療法士の最大の専門性は、医学的知識に基づいた評価能力にあります。
利用者の「疲れやすい」「集中力が続かない」といった課題に対し、その背景にある疾患の特性や高次脳機能障害、精神症状などの影響をアセスメントできます。
単に本人の希望や職歴を聞くだけでなく、心身機能や生活背景を統合的に分析することで、就労の阻害因子と、活用できる強みを科学的根拠に基づいて特定します。

この詳細なアセスメントが、効果的な支援計画の立案につながります。

 

臨床現場で活きる即戦力養成

 

一人ひとりに合わせた作業活動の提供と環境調整

作業療法士は「作業」の専門家です。
個々の利用者の課題解決のために、手芸や創作活動、パソコン作業、調理といった多種多様な「作業活動」を治療的・訓練的に活用できます。
例えば、注意散漫な利用者には工程の少ない単純作業から始め、徐々に複雑な作業へ移行させるなど、目標に合わせて活動内容や難易度を意図的に調整します。

また、職場の物理的環境(机の配置や照明)や、業務の指示方法といった人的環境への具体的な調整を企業に提案できる点も、作業療法士ならではの専門性です。

 

 

作業療法士が就労支援分野で働く3つのやりがい

就労支援分野での仕事は、医療現場とは異なる大きなやりがいや達成感を得られます。
利用者の人生における重要な転機に深く関与し、その人の成長を長期的に見守ることができるのは、この分野ならではの魅力です。
また、福祉や労働分野の専門職と連携する中で、自身の専門性を再認識し、視野を広げる機会にも恵まれています。

 

 

利用者の人生の大きな節目となる「就職」に立ち会える

「働く」ことは、経済的な自立だけでなく、社会的な役割を得て自己肯定感を高めることにもつながる、人生の重要な要素です。
作業療法士は、様々な困難を乗り越えて利用者が「就職」という目標を達成する瞬間を共に迎えることができます。
医療現場での退院支援とはまた違った、その人の人生の新たなスタートに立ち会える喜びは非常に大きく、支援者としての大きなやりがいを感じられます。

利用者が生き生きと働く姿を見ることが、次の支援への活力となります。

 

 

医療現場とは異なる視点で長期的なサポートができる

病院では入院期間が定められているため、関われる期間に限りがあります。
一方、就労支援では、就職準備から職場定着まで、数ヶ月から数年にわたって一人の利用者と継続的に関わることが可能です。

時間をかけてじっくりと信頼関係を築き、その人の生活全体を見据えながら支援を展開できます。
利用者の小さな変化や成長を間近で実感しながら、その人らしい人生を歩んでいく過程に長期的に寄り添える点は、この仕事の大きな魅力です。

 

 

多職種と連携してチームで支援する経験が積める

就労支援の現場では、精神保健福祉士、社会福祉士、キャリアコンサルタントといった福祉・労働の専門職と日常的に連携します。
さらに、企業の人事担当者、ハローワークの職員、医療機関の医師やケースワーカーなど、事業所の垣根を越えた多様な立場の人々と協力して支援を進めます。
それぞれの専門性を尊重し、情報共有や意見交換を重ねながらチームとして一つの目標に向かう経験は、自身の視野を大きく広げ、コミュニケーション能力や調整能力を高めることにつながります。

 

臨床現場で活きる即戦力養成

 

就労支援分野で働くために必要なスキルや資格

就労支援の現場で活躍するためには、作業療法士の国家資格が基本となります。
それに加え、これまでの臨床経験や、多様な関係者と円滑に連携するためのコミュニケーション能力、そして支援の対象となる企業側の視点を理解する知識が求められます。
これらのスキルをバランスよく備えることで、より質の高い支援を提供できます。

 

 

必須の資格と歓迎される臨床経験

就労支援分野で働くために必須となる資格は特にありませんが、作業療法士の国家資格は職業指導員や作業指導員として役立つとされています。これに加えて特別な資格が求められることは少ないですが、これまでの臨床経験が非常に重要視されます。特に、精神障害や発達障害のある利用者が多いため、精神科領域での臨床経験は高く評価される傾向にあります。

また、身体障害領域での経験も、身体的な配慮が必要な利用者へのアセスメントや環境調整に直接活かすことが可能です。

 

 

円滑な連携に不可欠なコミュニケーション能力

就労支援の仕事は、多くの人との連携なくしては成り立ちません。
利用者本人との信頼関係を築くことはもちろん、事業所内の他のスタッフ、ハローワークや地域の支援機関の担当者、そして就職先の企業担当者など、様々な立場の人と円滑に意思疎通を図る能力が不可欠です。
相手の意見を尊重し、専門用語を避け、分かりやすく情報を伝えたり、時には意見を調整したりする高度なコミュニケーション能力が、質の高い支援を実現する上で重要なスキルとなります。

 

 

企業側の視点を理解するための知識

利用者を支援する視点だけでなく、雇用する企業側の視点を理解することも重要です。
企業がどのような人材を求めているのか、どのような業務内容があり、どのような配慮が可能かといった点を把握しなければ、効果的なマッチングは実現しません。
障害者雇用促進法をはじめとする関連法規の知識や、一般的なビジネスマナー、業界動向などに関心を持つことが求められます。

企業側のニーズを理解することで、より現実的で持続可能な就労支援が可能となります。

 

 

就労支援分野の求人を見つけるための方法

作業療法士を対象とした就労支援分野の求人を見つけるには、いくつかの方法があります。
公的機関であるハローワークから、福祉分野に特化した民間の求人サイト、非公開求人を扱う転職エージェントまで、それぞれの特徴を活かして情報収集することが転職成功への近道です。
自分に合った方法を組み合わせ、積極的に活用していくことが推奨されます。

 

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ハローワークや福祉分野専門の求人サイトを活用する

求人探しの基本的な方法として、ハローワーク(公共職業安定所)の利用が挙げられます。
地域に密着した求人情報が豊富で、公的機関や社会福祉法人などが運営する事業所の募集を見つけやすいのが特徴です。
また、インターネット上には福祉や介護、医療分野に特化した求人サイトも多数存在します。

これらのサイトでは、就労支援事業所の求人をキーワードで検索し、事業所の規模や理念、仕事内容を比較検討しながら、自分の希望に合った応募先を効率的に探すことが可能です。

 

 

転職エージェントに相談して非公開求人を紹介してもらう

より専門的なサポートを求めるなら、医療・福祉分野に強い転職エージェントの活用が有効です。
専門のキャリアアドバイザーが、これまでの経験や今後のキャリアプランについてヒアリングを行い、それに合った求人を提案してくれます。
一般には公開されていない「非公開求人」を紹介してもらえる可能性もあります。

さらに、応募書類の添削や面接対策、給与や勤務条件の交渉代行といったサービスも受けられるため、働きながらの転職活動でもスムーズに進めやすい点が大きな利点です。

 

 

就労支援と作業療法士に関するよくある質問

就労支援分野へのキャリアチェンジを検討する作業療法士の方から、臨床経験の活かし方や未経験からの転職の可能性、給与体系など、様々な質問が寄せられます。
ここでは、特に多くの方が抱く疑問点について、Q&A形式で解説します。
転職活動を進める上での不安や疑問を解消するための一助としてください。

 

 

Q. 病院での臨床経験は就労支援の現場でどのように活かせますか?

医学的知識に基づいた利用者の状態評価やリスク管理、多職種連携の経験が直接活かせます。
特に精神科や身体障害領域での経験は、障害特性の深い理解につながり、個別支援計画の立案や適切な訓練プログラムの提供に役立ちます。

 

 

Q. 未経験から就労支援分野へ転職することは可能ですか?

可能です。
作業療法士の資格があれば、就労支援が未経験でも応募可能な求人は多くあります。
病院での臨床経験で培ったアセスメント能力やコミュニケーションスキルは高く評価されます。

入職後の研修制度が整っている事業所も多いです。

 

Q. 就労支援の仕事と医療機関の仕事では、給与や待遇に違いはありますか?

運営母体や施設形態により異なりますが、一般的に医療機関の方が給与水準は高い傾向にあります。
ただし、就労支援施設でも経験や役職に応じて昇給が見込めます。
夜勤がないため、規則的な働き方がしやすい点はメリットと言えます。

 

 

まとめ

就労支援における作業療法士は、医学的リハビリテーションの専門性を基盤に、利用者の評価、個別支援計画の作成、職業訓練、就職活動支援、そして職場定着までを一貫して担う重要な役割を担います。
その業務は多岐にわたりますが、利用者の「働く」というライフイベントに深く関わり、その人の人生の新たな一歩を支えることができる、非常にやりがいの大きい仕事です。
医療現場とは異なるキャリアを考える際には、就労支援サービスの種類やそれぞれの役割を理解し、自身のスキルや経験が活かせる職場を見つけることが重要です。

 

監修:日本リハビリテーション専門学校 田中 克一(作業療法士)

 

臨床現場で活きる即戦力養成

 

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