レポート

REPORT

作業療法士の訪問看護ステーションでの役割|仕事内容とリハビリの違い

2026.02.09

作業療法

作業療法士の訪問看護ステーションでの役割|仕事内容とリハビリの違い

監修:日本リハビリテーション専門学校 柴田 美雅(作業療法士)

 

在宅医療の需要が高まる中、訪問看護ステーションで働く作業療法士の役割に注目が集まっています。
病院や施設とは異なる環境で、利用者の生活に直接関わる働き方は、多くの作業療法士にとって新たなキャリアの選択肢となっています。
この記事では、訪問看護ステーションにおける作業療法士の具体的な役割や仕事内容、そして混同されがちな訪問リハビリとの違いについて詳しく解説します。

 

 

訪問看護ステーションにおける作業療法士(OT)の基本的な役割

訪問看護ステーションにおける作業療法士(OT)の基本的な役割とは、利用者が住み慣れた自宅で、その人らしく安全な生活を継続できるよう支援することです。
病院での機能回復訓練が中心となる役割とは異なり、実際の生活環境の中で心身機能の維持・改善を図ります。
具体的には、日常生活動作の訓練、生活環境の調整、福祉用具の選定、さらには家族への介護指導や精神的なサポートまで、その役割は多岐にわたります。

 

臨床現場で活きる即戦力養成

 

【具体例で解説】訪問看護で作業療法士が行う5つの仕事内容

訪問看護ステーションにおける作業療法士の仕事は、単に身体機能の訓練を行うだけではありません。
利用者の実際の生活空間に入り込み、食事や入浴といった基本的な動作から、家事や外出などの応用的な活動まで、生活全般をサポートします。
また、安全な環境を整えるための助言や、介護する家族への支援も重要な業務です。

ここでは、作業療法士が訪問看護で行う具体的な仕事内容を5つの側面に分けて解説します。

 

 

利用者の身体機能・精神機能の状態を評価し訓練する

訪問看護における作業療法士の最初の重要な仕事は、利用者の自宅という実際の生活環境で、心身の状態を正確に評価することです。
身体機能はもちろん、認知機能や高次脳機能障害、そして精神面の状態までを包括的に把握します。
この評価に基づき、一人ひとりの目標に合わせた個別のリハビリ計画を立案し、実行に移します。

例えば、ベッドからの起き上がりや室内移動といった基本的な動作訓練から、趣味活動の再開に向けた意欲の向上を促す関わりまで、その人らしい生活を取り戻すための専門的なアプローチを行います。

 

 

食事や入浴など日常生活動作(ADL)を直接的に支援する

作業療法士は、利用者が毎日行う食事、着替え、トイレ、入浴といった日常生活動作(ADL)が、より安全かつ自立して行えるように直接支援します。
病院のリハビリ室とは違い、利用者が実際に使っている食器や浴室、トイレの環境下で、具体的な動作方法の指導や練習を行います。

例えば、片麻痺がある利用者に対して、自助具を使った食事の練習をしたり、浴槽をまたぐための安全な手順を一緒に確認したりします。
このように、実生活に即したリハビリを提供することで、利用者の在宅生活の質を具体的に向上させます。

 

 

家事や外出など応用的日常動作(IADL)の練習をサポートする

日常生活動作(ADL)に加え、調理や掃除、洗濯といった家事や、買い物、公共交通機関の利用などの応用的日常動作(IADL)の練習もサポートします。
これらは、利用者が地域社会で自立した生活を送るために不可欠な活動です。
病院からの訪問リハでは難しい、近所のスーパーまでの同行やバスの乗り降りの練習など、より実践的な支援を行えるのが訪問看護の強みです。

利用者の希望や目標に合わせて具体的な練習計画を立て、自信を持って社会参加できるよう支援することは、作業療法士の重要な役割です。

 

臨床現場で活きる即戦力養成

 

福祉用具の選定や住宅改修について具体的に助言する

利用者が自宅で安全に生活できるよう、環境を整えることも作業療法士の専門分野です。
利用者の身体機能や生活動線、家屋の構造を評価し、手すりの設置や段差の解消といった住宅改修の必要性を判断します。

また、入浴用具やポータブルトイレ、自助具など、最適な福祉用具の選定についても具体的な助言を行います。
これらの提案は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員と連携しながら進められ、利用者が最小限の介助で、できる限り自立した生活を送れる環境づくりを目指します。

 

 

介護を行う家族への介助方法の指導や精神的なケアを行う

訪問看護の支援対象は、利用者本人だけではありません。
在宅療養を支える家族もまた、重要な支援対象者です。
作業療法士は、介護者の身体的負担を軽減するための、安全で効率的な介助方法を具体的に指導します。

例えば、ベッドから車椅子への移乗方法や、着替えのさせ方のコツなどを伝えます。
また、日々の介護に関する悩みや不安を聞き、精神的なサポートを行うことも大切な役割です。
家族が安心して介護を続けられる環境を整えることで、利用者本人の在宅生活を支えます。

 

 

「訪問看護」と「訪問リハビリ」の明確な違いを徹底比較

作業療法士が在宅分野で働く際、「訪問看護」と「訪問リハビリ」は混同されやすいサービスです。
どちらも利用者の自宅に訪問してリハビリテーションを提供する点は共通していますが、その根拠となる保険制度やサービスを提供する事業所の種類、看護師との連携体制など、いくつかの明確な違いが存在します。
これらの違いを理解することは、自身のキャリアを考える上で非常に重要です。

ここでは、両者の違いを3つのポイントから徹底的に比較・解説します。

 

 

根拠となる保険制度の違い(医療保険・介護保険)

「訪問看護」と「訪問リハビリ」の最も大きな違いは、根拠となる保険制度にあります。
「訪問リハビリ」は原則として介護保険が適用されますが、「訪問看護」は介護保険だけでなく、医療保険も利用可能です。
これにより、訪問看護ステーションからのリハビリは、急性期疾患の退院直後や末期がんの患者、厚生労働大臣が定める疾病等の利用者など、医療的なニーズが高いケースにも対応できます。

また、精神科訪問看護のように、医療保険が主体となるサービスを提供できるのも訪問看護の特徴です。

 

臨床現場で活きる即戦力養成

 

サービスを提供する事業所の違い

サービスを提供する事業所の種類も異なります。
「訪問リハビリ」は、病院、診療所、介護老人保健施設(老健)といった医療機関や介護施設が提供主体となります。
一方、「訪問看護」からのリハビリは、その名の通り「訪問看護ステーション」から提供されます。

訪問看護ステーションには必ず看護師が配置されており、リハビリ専門職だけでなく看護職も在籍しているのが大きな特徴です。
このため、医療的な観察やケアが必要な利用者に対して、より迅速かつ一体的なサービスを提供できる体制が整っています。

 

 

看護師との連携体制における違い

看護師との連携のあり方にも違いが見られます。
訪問看護ステーションでは、作業療法士は同じ事業所に所属する看護師と日常的に情報交換やカンファレンスを行います。
利用者の日々のバイタルサインや健康状態、服薬状況などを密に共有しながらリハビリ計画を立てることができます。

一方、病院から提供される訪問リハビリの場合、看護師との連携は外部の訪問看護ステーションとの連絡が主となり、連携の頻度や密度は事業所間の関係性によります。
ステーション内での日々の密な多職種連携は、訪問看護の大きな強みです。

 

 

作業療法士が訪問看護ステーションで働く3つのメリット

訪問看護ステーションは、病院や施設とは異なるやりがいや魅力があり、作業療法士にとってキャリアの可能性を広げる職場です。
利用者のリアルな生活に深く関わり、その人らしい暮らしを支えることができるのは、訪問ならではの醍醐味と言えます。
また、看護師をはじめとする多職種との密な連携を通じて専門性を高められるほか、比較的柔軟な働き方がしやすいという特徴もあります。

ここでは、作業療法士が訪問看護ステーションで働く主な3つのメリットを解説します。

 

 

利用者一人ひとりのリアルな生活に深く寄り添える

訪問看護ステーションで働く最大のメリットは、利用者の実際の生活空間に入り、その人らしい暮らしに深く寄り添える点です。
病院のリハビリ室では見えにくい、利用者の生活習慣や価値観、家族との関係性、住環境などを直接把握できます。
これにより、画一的な訓練ではなく、本人の希望や目標に沿ったオーダーメイドのリハビリテーションを提供することが可能です。

同じく在宅で活動する理学療法士とも共通しますが、作業療法士は特に趣味や役割など生活行為全般に焦点を当て、QOLの向上に直接的に貢献できるやりがいを感じられます。

 

臨床現場で活きる即戦力養成

 

看護師など多職種との連携で幅広い知識が身につく

訪問看護ステーションでは、看護師、理学療法士、言語聴覚士といった多様な専門職と日常的に連携して業務を進めます。
リハビリの視点だけでなく、看護師から全身状態の管理や医療的ケア、疾患に関する知識を学ぶ機会が豊富にあります。
他職種の専門性を理解し、それぞれの視点を統合してアセスメントを行うことで、より包括的で質の高いケアを提供する能力が養われます。

このような環境は、セラピストとしての視野を広げ、専門性を深める上で非常に有益です。

 

 

比較的ワークライフバランスを調整しやすい傾向がある

訪問看護は、比較的ワークライフバランスを保ちやすい働き方ができる傾向にあります。
サービスは基本的に日中に行われ、予約制でスケジュールを組むため、緊急の呼び出しなどが少なく、残業も発生しにくいです。
多くの事業所が土日祝日を休日と定めており、プライベートの時間を確保しやすいのが特徴です。

また、常勤だけでなく、パートタイムや時短勤務といった多様な雇用形態の求人が多く、子育てや介護など個々のライフステージに合わせた働き方を選択しやすい点も大きなメリットと言えます。

 

 

訪問看護で働く作業療法士の給与相場と年収を上げるコツ

訪問看護ステーションで働く作業療法士の給与水準は、病院や介護施設などの他の職場と比較して高い傾向にあります。
これは、介護保険や医療保険の報酬が直接事業所の収益に結びつきやすいビジネスモデルであることや、訪問件数に応じて支給されるインセンティブ制度を導入している事業所が多いためです。
年収を上げるための具体的な方法としては、まず担当する訪問件数を着実に増やすことが挙げられます。

加えて、経験を積んで管理者やチームリーダーといった役職に就くことや、認定作業療法士などの専門資格を取得して資格手当を得ることも有効な手段です。

 

 

訪問看護ステーションの作業療法士に求められる資格やスキル

訪問看護の分野で作業療法士として活躍するためには、専門職としての国家資格に加え、臨床での実践的な経験や多様なスキルが求められます。
特に、一人で利用者の自宅を訪問し、その場で状況を判断し対応する能力は不可欠です。
また、利用者や家族、そして連携する多職種と円滑な関係を築くためのコミュニケーション能力も極めて重要になります。

ここでは、訪問看護の作業療法士に必須の資格から、あると転職に有利な経験やスキルまでを具体的に解説します。

 

臨床現場で活きる即戦力養成

 

必須となる作業療法士の国家資格

訪問看護ステーションで作業療法士としてリハビリテーション業務に従事するためには、国家試験に合格し、作業療法士の免許を取得していることが絶対的な前提条件です。
この国家資格は、人体構造や疾患、リハビリテーションに関する専門的な知識と技術を習得していることを公的に証明するものです。

養成校で定められた教育課程を修了し、国家試験に合格することで得られます。
資格を持たずに作業療法を提供することは法律で禁じられており、全ての業務の基盤となる最も重要な要件です。

 

 

3年以上の臨床経験があると転職に有利

法律上の必須要件ではありませんが、多くの訪問看護ステーションの求人では、3年以上の臨床経験が望ましいとされる傾向があります。
これは、訪問先では基本的に一人で利用者の評価やリスク管理、リハビリテーションの提供を行う必要があり、ある程度の自己判断能力と対応力が求められるためです。
特に病院やリハビリテーション施設などで、様々な疾患や障害を持つ患者を担当した経験は高く評価されます。

急変時の対応や多職種連携の経験も含まれるため、一定期間の臨床経験は、即戦力として期待され、転職活動において有利に働きます。

 

 

利用者や他職種と円滑に関わるためのコミュニケーション能力

訪問看護では、専門知識や技術と同等に高いコミュニケーション能力が求められます。
利用者やその家族との信頼関係を築くためには、相手の言葉に真摯に耳を傾ける傾聴力や、不安な気持ちに寄り添う共感力が不可欠です。
また、リハビリの目的や内容を分かりやすく説明する能力も重要です。

さらに、ケアマネジャー、医師、看護師といった多職種と常に連携を取るため、必要な情報を的確に報告・連絡・相談するスキルも欠かせません。
チームケアを円滑に進める上で、コミュニケーション能力は極めて重要な要素となります。

 

 

高齢化で高まる訪問看護分野における作業療法士の将来性

国が在宅医療・介護を推進する中で、訪問看護ステーションの役割はますます重要性を増しています。
特に、日本は急速な高齢化に直面しており、住み慣れた地域で自分らしい生活を最後まで続けたいと願う人々が増加しています。
利用者の生活の質(QOL)に直接的にアプローチできる作業療法士は、在宅療養を支える上で不可欠な存在です。

80代、90代の利用者が増加する中で、身体機能だけでなく、生活行為や社会参加、生きがいまでを支援できる専門性は、今後さらに需要が高まることが確実視されており、将来性は非常に高いと言えます。

 

臨床現場で活きる即戦力養成

 

訪問看護の作業療法士に関するよくある質問

訪問看護ステーションへの転職や就職を検討している作業療法士の方から、多くの質問が寄せられます。
特に、訪問の経験がないことへの不安や、一人で訪問することへの懸念、そして看護師との連携の具体的なポイントなどが主な内容です。
近年では精神科訪問看護の需要も増えており、その領域に関する疑問も増えています。

ここでは、そうしたよくある質問に対して、具体的かつ簡潔に回答し、読者が抱える不安や疑問の解消を目指します。

 

 

訪問看護の経験がなくても転職は可能ですか?

結論として、訪問看護の経験がなくても転職は可能です。
多くの事業所では、未経験者向けに教育・研修制度を整備しており、入職後は先輩職員との同行訪問を通じて業務を学べます。
臨床経験が3年程度あると、基礎的な知識や技術が身についていると見なされ、より転職しやすくなる傾向があります。

 

 

一人で利用者の自宅へ訪問することに不安があります。

一人での訪問に不安を感じるのは自然なことです。
ほとんどの事業所では、独り立ちできるまで先輩が同行訪問でサポートします。
また、訪問中に判断に迷ったり、緊急事態が発生したりした際には、電話や業務用チャットですぐに事業所の看護師や管理者に相談できる体制が整っています。

特に精神科訪問看護では、複数名で訪問する場合も多くあります。

 

 

看護師との連携において特に重要なことは何ですか?

看護師との連携では、利用者の状態に関するタイムリーな情報共有と、互いの専門性を尊重し合う姿勢が最も重要です。
リハビリの観点から気づいたADLの変化や心身の状態を伝え、看護師からはバイタルサインや医療的な情報を得ます。
両者の視点を統合することで、より質の高いケアの提供が可能です。

 

 

まとめ

訪問看護ステーションで働く作業療法士は、利用者の自宅というリアルな生活の場で、心身機能の評価・訓練から日常生活動作の支援、環境調整、家族ケアまで、非常に幅広い役割を担います。
病院で行うリハビリとは異なり、看護師をはじめとする多職種と密に連携しながら、一人ひとりの生活に深く寄り添った支援を提供できる点が大きな特徴です。
高齢化を背景に在宅医療のニーズは今後も拡大し続けるため、作業療法士が活躍できるフィールドとしての将来性も非常に高いと言えます。

本記事で解説した仕事内容やメリット、訪問リハビリとの制度的な違いが、キャリアを考える上での参考となれば幸いです。

 

監修:日本リハビリテーション専門学校 柴田 美雅(作業療法士)

 

臨床現場で活きる即戦力養成

 

それぞれのご案内

アクセス

アクセス

〒171-0033 東京都豊島区高田3-6-18
TEL:03-5954-6511(代表)

重要なお知らせ 新型コロナウィルス感染症対策関連情報

グループ校