2026.01.26
理学療法

監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城武志(理学療法士)
理学療法士は、リハビリを通じて患者の身体機能回復を支援する専門職です。
この仕事内容とは、具体的にどのようなものでしょうか。
本記事では、理学療法士が行うリハビリの具体的な内容から、作業療法士といった他の専門職との違い、主な活躍の場、そして理学療法士になるためのステップまでを詳しく解説します。
理学療法士とは、病気や怪我などによって身体機能が低下した人々に対し、運動療法や物理療法を用いてリハビリを行う専門家です。
英語ではPhysicalTherapistと表記されるため、その頭文字から「PT」という略称で呼ばれることもあります。
理学療法の役割は、寝返る、起き上がる、座る、立つ、歩行するといった基本的な動作能力の回復や維持、悪化の予防を支援することです。
患者一人ひとりの状態に合わせたサポートを通じて、日常生活や社会生活への復帰を手助けできる点に、この仕事の大きな魅力があります。
理学療法士は、リハビリテーションを提供するにあたり、まず患者一人ひとりの身体機能や生活状況を詳細に評価します。
その評価結果に基づき、個別の目標を設定し、具体的なリハビリ計画であるリハビリプログラムを作成します。
理学療法士がリハビリを行う上で用いるアプローチには、大きく分けて「運動療法」と「物理療法」の2種類があり、これらを患者の状態に合わせて組み合わせることが一般的です。
この計画に沿ってリハビリテーションを進め、定期的に再評価を行いながら内容を最適化していきます。
運動療法とは、関節の可動域を広げたり、筋力を強化したり、バランス能力を高めたりすることを目的として、身体を動かすことで治療を行う方法です。
具体的な内容としては、関節を動かす練習や筋力増強トレーニング、歩行訓練、ストレッチなどが挙げられます。
このアプローチは、脳卒中後の麻痺や骨折による機能障害、スポーツ障害、腰痛といった症状を持つ患者に対して行われます。
理学療法士が患者の状態を評価し、個々の能力に応じた運動メニューを立案・指導することで、安全かつ効果的に身体機能の改善を図ります。
物理療法は、熱、電気、光、水、超音波といった物理的なエネルギーを利用して、症状の改善を図る治療法です。
このアプローチの主な目的は、痛みの緩和、筋肉の緊張をほぐすこと、血行を促進して組織の回復を早めることにあります。
例えば、温熱療法で患部を温めて血流を改善させたり、電気刺激を与えて痛みを和らげたりします。
物理療法は、運動療法の効果をより高めるための補助的な手段として用いられることが多く、両者を組み合わせることで、より効果的な回復を促進することが可能です。
リハビリテーションの現場では、理学療法士のほかにも、作業療法士や言語聴覚士といった専門職が連携して患者をサポートしています。
これらの職種は、それぞれ専門とする領域やアプローチの方法に違いがあり、患者の状態に応じて各専門家がチームとなって関わります。
ここでは、理学療法士と作業療法士、そして言語聴覚士との間にある、それぞれの役割や対象領域の具体的な違いについて解説します。
理学療法士と作業療法士の最も大きな違いは、リハビリテーションの目的にあります。
理学療法士が「立つ」「歩く」といった基本的な動作能力の回復を目指すのに対し、作業療法士は食事や着替え、入浴といった日常生活の応用的な動作や、社会復帰を目的としたアプローチを行います。
作業療法でいう「作業」とは、人の生活に関わる全ての活動を指し、手工芸やレクリエーションなどもリハビリの手段として用います。
このように、理学療法が身体機能そのものに焦点を当てる一方、作業療法はより生活に密着した活動を通じて心と身体の回復を支援する点が特徴です。
理学療法士が身体全体の基本的な動きをリハビリの対象とするのに対し、言語聴覚士はコミュニケーションや食事に関する機能の専門家です。
具体的には、病気や事故の後遺症で「話す」「聞く」「表現する」といった言葉の機能に問題が生じた人への訓練や、食べ物をうまく飲み込めない嚥下障害を持つ人へのリハビリを行います。
主なリハビリ領域は、失語症や構音障害に対する会話の訓練や、安全に食事をするための嚥下訓練です。
このように、言語聴覚士は、人が社会生活を送る上で不可欠なコミュニケーションと食べる機能に特化して支援するという違いがあります。
理学療法士の専門知識と技術は様々な場面で必要とされており、その活躍の場は多岐にわたります。
最も代表的な職場は病院などの医療機関ですが、高齢化社会の進展に伴い、介護保険領域の施設での需要も急速に高まっています。
さらに、スポーツ選手のパフォーマンス向上を支える分野や、利用者の自宅に直接訪問してリハビリを行う在宅分野など、活躍のフィールドは広がり続けています。
理学療法士にとって最も一般的な職場は、大学病院や総合病院、リハビリテーション専門病院、整形外科クリニックといった医療機関です。
これらの施設では、手術直後の急性期から回復期、そして退院後の維持期まで、患者の病状や状態に合わせたリハビリテーションを提供します。
入院患者や外来患者に対し、医師や看護師、その他の医療専門職とチームを組んで連携しながら、身体機能の回復と社会復帰を支援する重要な役割を担っています。
高齢化が進む現代において、介護老人保健施設や特別養護老人ホーム、デイサービスセンターなどの介護・福祉施設も理学療法士の重要な職場です。
これらの施設では、高齢者の身体機能の維持・向上や、転倒予防、日常生活動作の自立支援を目的としたリハビリを行います。また、認知症の進行緩和を目的としたプログラムや、生活の質を高めるためのケアにも関わります。利用者が自分らしく安心して生活できるよう、長期的な視点で支える役割が求められます。
理学療法士の中には、プロスポーツチームや実業団、フィットネスクラブ、スポーツジムなどで活躍する人もいます。
スポーツ分野での主な役割は、選手の怪我の予防やコンディショニング管理、怪我をした際のリハビリテーション、そして競技への早期復帰のサポートです。
さらに、選手の身体的な特徴を分析し、パフォーマンスを最大限に引き出すためのトレーニング指導も行います。
医学的な知識に基づいた専門的なアプローチで、アスリートの活躍を支える重要な存在です。
訪問看護ステーションや介護施設に所属し、利用者の自宅へ直接出向いてリハビリを提供する働き方も増えています。
この訪問リハビリの大きな特徴は、利用者が実際に生活している環境で、より実践的な支援を行える点です。
日常生活動作の練習はもちろん、住宅改修に関する助言や福祉用具の選定、家族への介助方法の指導など、その人らしい生活を在宅で継続できるよう、多角的な視点からサポートします。
理学療法士として働くためには、理学療法士国家資格を取得することが不可欠です。
資格を取得するためには、国が定めた教育課程を修了し、年に一度行われる国家試験に合格する必要があります。
理学療法士になるには、まず指定された養成校で専門知識と技術を学び、国家試験の受験資格を得ることから始まります。
ここでは、その具体的なステップについて解説していきます。
理学療法士になるための最初のステップは、文部科学大臣または厚生労働大臣が指定した養成校で専門教育を受けることです。
養成校には、4年制大学、3年制の短期大学、そして3年制または4年制の専門学校があります。
これらの学校では、解剖学や生理学といった基礎医学に加え、理学療法に関する専門的な知識と技術を学びます。
カリキュラムには臨床実習も含まれており、医療機関や施設での実務経験を通じて、卒業後に国家試験の受験資格が与えられます。
養成校で必要なカリキュラムを全て修了し、卒業見込みとなることで、年に一度、2月下旬に実施される理学療法士国家試験の受験資格を得られます。
この試験はマークシート形式の筆記試験で、理学療法に関する幅広い専門知識が問われます。
合格率は例年80〜90%前後で推移していますが、決して簡単に合格できるわけではなく、養成校で学んだ内容を十分に理解しておく必要があります。
この国家試験に合格することで、正式に理学療法士としての免許が与えられ、専門職として働くことが可能になります。
理学療法士という職業やリハビリの分野に関心を持つと、様々な疑問が浮かんでくるかもしれません。
特に、将来性や仕事への適性、収入といったキャリアに関する点は、多くの人が知りたい情報です。
ここでは、理学療法士を目指すにあたってよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
進路やキャリアプランを考える上での参考にしてください。
理学療法士と作業療法士は、どちらも高齢化社会において需要が高く、将来性のある専門職です。
それぞれ専門領域が異なるため、一概にどちらが優れているとはいえません。
理学療法士は基本的な動作、作業療法士は応用的な動作や精神面を支える役割を担います。
自身の興味やどのような形で人の役に立ちたいかに基づいて、適した職種を選ぶことが重要です。
理学療法士は、他者への思いやりがあり、根気強く人と向き合える人に向いています。
リハビリの対象は高齢者だけでなく、小児の発達障害やスポーツ選手など多岐にわたり、精神科領域でも役割があります。
患者だけでなくその家族を支える視点も必要です。
目の前の課題に対し、観察力と探究心を持って解決策を考え、粘り強くサポートできる人が適しています。
理学療法士の平均年収は、勤務先の規模や地域、経験年数によって変動しますが、おおよそ430万円前後が目安です。
経験を重ねて専門性を高めたり、管理職になったりすることで給料アップが期待できます。
また、認定理学療法士や専門理学療法士といった資格を取得することも、キャリアアップと年収向上につながる一つの方法といえます。
理学療法士は、病気や怪我によって身体機能に障害を持つ人々に対し、運動療法や物理療法を用いて基本的な動作能力の回復を支援するリハビリの専門職です。
主な職場は医療機関や介護福祉施設ですが、スポーツ分野や在宅分野など活躍の場は広がっています。
作業療法士や言語聴覚士とはそれぞれ専門領域が異なり、チームで連携して患者を支えます。
理学療法士になるには、指定の養成校で3年以上学び、国家試験に合格して資格を取得する必要があります。
監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城武志(理学療法士)
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