2026.01.27
理学療法

監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城武志(理学療法士)
理学療法士は公立病院や行政機関などで公務員として働く道も選択できます。
理学療法士の公務員は、安定した雇用や充実した福利厚生が魅力ですが、採用枠が少なく、なるには公務員試験の突破が必要です。(自治体によっては公務員試験が無いところもあります)
この記事では、公務員理学療法士の仕事内容や試験の概要、気になる給料事情、働く上でのメリットや注意点を詳しく解説します。
理学療法士が公務員として働く職場は、主に公立病院、行政機関、自治体が運営する福祉・教育機関の3つに大別されます。
最も一般的なのは公立病院での臨床業務ですが、行政機関で地域の保健福祉に関わる仕事内容もあります。
求人や募集は常にあるわけではなく、欠員が出た際に不定期で行われることが多いため、希望する自治体の採用情報をこまめに確認することが重要です。
公務員理学療法士の最も代表的な勤務先は、国立病院機構や都道府県、市区町村が運営する公立病院です。
市民病院などがこれにあたり、仕事内容は民間の病院と同様に、患者へのリハビリテーション業務が中心となります。
民間病院との大きな違いは、営利を目的としないため経営が安定している点です。
例えば、東京都や千葉県、京都府などの自治体が運営する病院では、地域の中核医療を担う重要な役割を果たします。
東京や千葉といった首都圏だけでなく、全国の公立病院で理学療法士の募集が行われる可能性があります。
理学療法士は、都道府県庁や市役所、保健所といった行政機関で専門知識を活かして働くこともできます。
この場合、地方公務員として採用され、デスクワークが中心となります。
具体的な業務は、介護予防事業の企画立案、地域包括ケアシステムの構築、住民の健康相談、福祉用具の利用支援など多岐にわたります。
臨床現場とは異なり、地域全体の健康課題に取り組む視点が求められます。
国家公務員として国の機関で働く道もありますが、理学療法士の募集は極めて稀です。
役所で働く場合は、より広い視野で地域医療に貢献することになります。
公立病院や行政機関の他に、自治体が運営する福祉施設や教育機関も公務員理学療法士の勤務先となります。
具体的には、心身障害者福祉センター、児童発達支援センター、特別支援学校などが挙げられます。
これらの施設では、障害を持つ方や発達に支援が必要な子どもたちを対象に、リハビリテーションや日常生活動作の指導を行います。
対象者の年齢層や専門領域が特化しているため、より深い専門性が求められます。
ただし、これらの施設での理学療法士の募集は、病院や行政機関に比べてさらに少ない傾向にあります。
理学療法士が公務員になるには、各自治体や機関が実施する採用試験に合格する必要があります。
募集人数が少なく倍率が高いことが多いため、公務員試験は難しいというイメージを持つ人も少なくありません。
採用試験は、一般的に筆記試験、小論文、面接で構成されており、理学療法士としての専門知識だけでなく、公務員として必要な幅広い知識や人物像が評価されるため、十分な準備が不可欠です。
公務員採用試験の筆記試験は、「教養科目」と「専門科目」の2つで構成されるのが一般的です。
教養科目は、公務員として必要な基礎学力を問うもので、数的処理、文章理解、社会科学、自然科学など幅広い分野から出題されます。
一方、専門科目は理学療法士としての専門知識を問う内容で、解剖学、生理学、運動学、病理学、リハビリテーション医学など、国家試験で問われるような基礎的な知識が中心です。
この試験内容からもわかるように、理学療法の専門知識だけでなく、一般教養も含めた総合的な学力が求められます。
筆記試験と並行して、面接試験も公務員採用の重要な選考過程です。
面接は個人面接が一般的ですが、自治体によっては集団討論や集団面接が行われる場合もあります。
面接では、志望動機や自己PR、これまでの経験といった一般的な質問に加え、「公務員として地域にどう貢献したいか」「理学療法士としてどのような役割を果たしたいか」など、公務員としての適性や倫理観を問われることが多いです。
円滑なコミュニケーション能力や協調性、誠実な人柄など、組織の一員として円滑に業務を遂行できるかが評価されます。
採用試験では、小論文や作文が課されることも多くあります。
テーマは、「地域包括ケアシステムにおける理学療法士の役割」「高齢化社会における介護予防の重要性」など、医療や福祉に関する時事的なものが頻出です。
ここでは、理学療法士としての専門的視点に加え、社会情勢への関心や、課題に対する論理的な思考力、文章構成力などが評価されます。
与えられたテーマに対して、自身の考えを制限時間内に的確に文章で表現する能力が求められるため、日頃から関連分野のニュースに関心を持ち、自分の意見をまとめる練習をしておくことが重要です。
公務員理学療法士の採用は、民間病院に比べて募集人数が極めて少ないのが現状です。
多くの自治体では、欠員が出た場合にのみ募集を行うため、毎年必ずしも採用があるとは限りません。
採用人数も1名から若干名というケースがほとんどで、その結果、採用倍率は非常に高くなる傾向にあります。
数十倍になることも珍しくなく、狭き門であることは間違いありません。
そのため、公務員を目指す場合は、希望する自治体や国立病院機構などの公式サイトを定期的に確認し、募集情報を見逃さないようにすることが重要です。
複数の自治体を視野に入れて、チャンスを広げる戦略も必要になります。
公務員理学療法士の給与は、国や地方自治体が定める給与規定(俸給表)に基づいて支給されるため、非常に安定しています。
民間病院と比較すると、初任給は同程度かやや低い傾向にありますが、勤続年数に応じて着実に昇給していくのが大きな特徴です。
景気や病院の経営状況に左右されにくく、ボーナスや退職金も安定して支給されるため、長期的な視点で見ると、生涯年収は民間の平均を上回るケースも少なくありません。
公務員の給与は、経験年数や役職に応じて定められた「俸給表」に基づいて決まります。
そのため、初任給は民間の医療機関と比較して特別高いわけではありません。
しかし、最大の魅力は毎年着実に昇給していく点にあります。
個人の業績評価も一部加味されますが、基本的には勤続年数に応じて給料が上がっていく年功序列型です。
これにより、長期的なキャリアプランやライフプランを立てやすくなります。
安定した昇給が見込めることは、将来設計において大きな安心材料となるでしょう。
公務員には、民間のボーナスにあたる「期末・勤勉手当」が年に2回(6月と12月)支給されます。この手当の支給月数は、人事院勧告に基づき決定され、民間企業のボーナス支給状況を踏まえて改定されることがあります。また、個人の成績率によって支給額が変動する場合があります。
退職金制度も整備されており、勤続年数に応じて支給額が増加します。人事院の調査によると、公務員の退職給付水準は民間企業とほぼ同水準になるように調整されています。安定した手当と退職金制度は、公務員の魅力の一つです。
公務員として働くことには、民間企業にはない多くのメリットが存在します。
特に理学療法士にとっては、雇用の安定性、充実した福利厚生、そしてワークライフバランスの取りやすさが大きな魅力となるでしょう。
これらのメリットは、長期的なキャリアを築き、安定した生活を送る上で非常に重要な要素です。
ここでは、公務員理学療法士として働く3つの主要なメリットを具体的に見ていきます。
公務員の最大のメリットは、その安定性にあります。
公務員は法律によって身分が保障されており、重大な問題を起こさない限り解雇されることはありません。
勤務先の経営状況によって雇用が左右される心配がほとんどないため、安心して長く働き続けることが可能です。
また、給与やボーナスも景気の動向に影響されにくく、毎年安定した収入を得られます。
これにより、住宅ローンを組んだり、子育てをしたりといった長期的なライフプランを非常に立てやすくなります。
公務員は、福利厚生が非常に充実している点も大きな魅力です。
住居手当、通勤手当、扶養手当といった各種手当が手厚く、経済的なサポートを受けられます。
また、休暇制度も整っており、年次有給休暇の取得が奨励されるほか、夏季休暇、結婚休暇などの特別休暇も用意されています。
さらに、育児休業や介護休業といった制度も法律で定められており、実際に多くの職員が利用しています。
ライフステージの変化に合わせて柔軟に働き方を選びやすい環境が整っているといえます。
公務員の職場では、勤務時間が法律や条例で定められており、年間休日も民間企業と比較して多い傾向にあります。多くの職場では土日祝日が休みで、カレンダー通りの勤務が基本です。しかし、職種や部署によっては残業時間や休日出勤の状況が異なる場合があります。
終業後の時間や休日を確保しやすい職種や部署では、家族との時間を大切にしたり、趣味や自己研鑽に時間を費やしたりと、プライベートを充実させやすい環境だと言えるでしょう。
ワークライフバランスを重視する人にとって、このような環境は魅力的な選択肢の一つとなるでしょう。オンとオフのメリハリをつけた生活を送りやすい点は、公務員の仕事の大きなメリットの一つです。
安定性や福利厚生など多くのメリットがある公務員ですが、働く上で知っておくべき注意点も存在します。
民間企業とは異なる公務員特有のルールや文化があり、これらを理解しておかないと、就職後にギャップを感じる可能性があります。
特に、副業の制限、年功序列の給与体系、そして定期的な異動は、人によってはデメリットと感じられるかもしれません。
事前にこれらの注意点を把握しておくことが重要です。
公務員は、国家公務員法および地方公務員法によって、原則として副業が禁止されています。
これは、職務の公正性を保ち、国民全体の奉仕者としての職務に専念するためです。
ただし、不動産投資や農業、あるいは任命権者の許可を得た非営利活動など、一部例外的に認められるケースもあります。
しかし、民間企業のようにスキルアップや収入増を目的とした自由な副業は難しいため、複数の収入源を持ちたいと考えている人にとっては大きな制約となります。
公務員の給与体系は、勤続年数に応じた昇給が基本にありつつも、近年では評価制度が導入され、個人の能力や業績が給与やボーナスに反映されるようになっています。そのため、若いうちから実力で高い収入を得たい、自分の成果を正当に評価してほしいと考える人にとっては、自身の努力や成果が給与に反映される仕組みがある一方で、民間企業と比較して物足りなさを感じる可能性もあります。
安定した昇給が期待できる反面、個人のパフォーマンスが給与に結びつきにくいと感じる場合がある点は、モチベーションを維持する上で課題となる場合もあります。
公務員には数年単位での定期的な異動が伴います。
これは職員の能力開発や組織の活性化を目的として行われるものです。
同じ自治体内の異なる部署や施設へ異動することが一般的ですが、場合によっては転居を伴う転勤の可能性もあります。
特定の分野で専門性を深く追求したいと考えている人にとっては、異動によってキャリアが中断されるリスクがあります。
また生活環境の変化を望まない人にとっても注意が必要な点であり、将来的な転職を考えるきっかけにもなり得ます。
公務員理学療法士を目指すにあたり、多くの人が疑問や不安を抱えています。
ここでは、試験対策はいつから始めるべきか、臨床経験がない新卒でも目指せるのか、行政職の具体的な仕事内容など、特によく寄せられる質問について回答します。
これらの情報を参考に、公務員というキャリアパスへの理解を深め、自身のキャリアプランニングに役立ててください。
一概には言えませんが、試験の半年前から1年前には対策を始めるのが一般的です。
教養科目は出題範囲が広く、専門科目も基礎から復習する必要があるため、計画的な学習が不可欠です。
働きながら勉強する場合は、さらに早めに準備を開始すると余裕を持って試験に臨めます。
はい、なれます。
自治体や施設によっては、新卒や臨床経験が浅い人を対象とした求人もあります。
ただし、応募資格として「臨床経験◯年以上」といった条件を設けている募集も多いため、各求人の募集要項を事前にしっかりと確認することが重要です。
主な仕事は、介護予防事業や健康増進施策の企画・運営、地域包括ケアシステムの推進、福祉用具に関する相談対応などです。臨床現場でのリハビリとは異なり、地域住民全体の健康を支えるための施策立案や調整業務が中心となります。
地域包括支援センターの運営主体が自治体直営の場合は、公務員として採用されます。
理学療法士が公務員として働く道は、雇用の安定性、充実した福利厚生、ワークライフバランスの取りやすさなど、多くの魅力を持っています。
勤務先は公立病院での臨床業務から、行政機関での企画・調整業務まで多岐にわたります。
しかし、その一方で採用枠が少なく倍率が高いこと、原則として副業が禁止されていること、年功序列の給与体系であること、定期的な異動があることなどの注意点も存在します。
公務員を目指す際は、これらのメリットとデメリットを十分に理解し、自身のキャリアプランや価値観と合致するかどうかを慎重に検討することが大切です。
監修:日本リハビリテーション専門学校 鍋城武志(理学療法士)
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