2026.01.28
作業療法

監修:日本リハビリテーション専門学校 松生容一(作業療法士)
作業療法士になるためには、心身のリハビリテーションに関する専門知識と技術を学び、国家資格を取得する必要があります。
作業療法士になるための第一歩は、文部科学省または厚生労働省が指定する大学、短期大学、専門学校といった養成校で3年以上学ぶことです。
この記事では、資格取得までの具体的なルート、大学と専門学校の違い、仕事内容、そして国家試験の難易度まで、作業療法士を目指す上で知っておくべき情報を詳しく解説します。
作業療法士として活動するためには、「作業療法士」という国家資格の取得が法律で義務付けられています。
この国家試験の受験資格を得るためには、国が指定した大学や専門学校などの養成校で、最低3年以上にわたり専門的な知識と技術を学ぶ必要があります。
独学のみで資格を取得することはできず、規定の教育課程を修了することが必須条件です。
作業療法士になるためには、国家試験の受験資格が得られる養成校を卒業しなければなりません。
そのための進学ルートは、主に「4年制大学」「3年制短期大学」「3年制または4年制の専門学校」の3つに大別されます。
それぞれのルートで学習内容の特色や卒業までにかかる期間、取得できる学位や称号が異なります。
自分の将来のキャリアプランや学びたいことに合わせて、最適な養成校を選択することが重要です。
4年制大学では、作業療法の専門的な知識や技術はもちろん、心理学や社会学といった関連分野や幅広い一般教養を体系的に学べます。
研究に力を入れている大学も多く、臨床実習に加えて卒業研究などを通じて、科学的根拠に基づいた思考力や問題解決能力を養えるのが特徴です。
卒業時には「学士」の学位が授与されるため、大学院に進学して研究を続けたり、将来的に教育者や研究者を目指したりするなど、幅広いキャリアパスを描くことが可能です。
専門学校では、作業療法士として臨床現場で即戦力となるための実践的なスキルを習得することに特化しています。大学に比べて実習や演習の授業時間が多く確保されており、現場で求められる具体的な技術を重点的にトレーニングできる環境が整っています。
専門学校には3年制と4年制の課程があり、特に4年制課程を選択するメリットは多岐にわたります。例えば、4年制を卒業すると「高度専門士」の称号が付与され、これは大学の「学士」と同等の扱いとなり、大学院への進学資格が得られる点が挙げられます。これにより、将来的に専門性をさらに深めたい、研究者や教育者を目指したいと考える人にとって、キャリアの選択肢が広がります。
4年制は3年制に比べて学習期間が1年長いため、より多くの時間を実習や演習、国家試験対策に充てることができ、じっくりと専門知識と技術を習得したい人や、着実に国家資格取得を目指したい人に向いています。多くの専門学校では就職サポートが手厚く、明確な目標を持って現場での活躍を目指す人に適しています。
作業療法士を目指す上で、大学と専門学校のどちらを選ぶかは、将来のキャリアを左右する重要な決断です。
大学は幅広い学問を学び研究職への道も開ける一方、専門学校は実践的なスキルを短期間で習得することに長けています。
それぞれの教育機関が持つメリットや特徴は異なり、学費や学習期間にも違いがあります。
自身の目標や価値観、ライフプランと照らし合わせながら、最適な進路を見極めることが大切です。
大学で学ぶ最大のメリットは、作業療法の専門知識に加え、幅広い教養と関連学問を深く探究できる点です。
研究活動を通じて論理的思考力や探究心を養う機会が豊富にあり、卒業後も大学院へ進学して研究者や教育者を目指す道が拓けます。
また、総合大学であれば他学部の学生との交流を通じて視野を広げることもできます。
卒業時に得られる「学士」の学位は社会的に広く認知されており、医療機関だけでなく、行政機関や一般企業への就職など、多様なキャリアを考える上で有利に働くことがあります。
専門学校の大きなメリットは、作業療法士として臨床現場で即戦力となるための実践的な技術を、集中的かつ効率的に学べることです。
カリキュラムは実技や実習に重点が置かれており、臨床現場を模した設備が整っている学校も少なくありません。
業界との強いつながりを活かした、手厚い就職サポートも魅力の一つです。
いち早く資格を取得し、専門職として現場で活躍したいという明確な目標を持つ人にとって、専門学校は最適な学習環境を提供します。さらに4年制の専門学校なら、卒業時に大卒(学士)と同等の称号「高度専門士」を得ることができます。
進路を決定する際には、学費と学習期間の比較が不可欠です。
一般的に、3年制の短期大学や専門学校は、4年制大学に比べて卒業までにかかる総学費を抑えることが可能です。
また、国公立か私立かによっても学費は大きく異なります。
学習期間については、3年制は1年早く臨床現場でのキャリアをスタートできるという利点がある一方、4年制は学問を深く探究するための時間を十分に確保できます。
奨学金制度の有無や利用条件も事前に確認し、自身の経済状況やライフプランに合った学校を選択しましょう。
キャリアチェンジとして、社会人経験を経て作業療法士を目指すケースも増えています。養成校の中には、夜間部を設けている専門学校もあり、日中働きながら学ぶという選択肢も存在します。
作業療法士の資格取得には昼間に行われる長期間の臨床実習が必須ですが、夜間部を設ける専門学校では、社会人が働きながら通学することを想定しており、仕事との両立を支援する体制が整えられています。実習期間中も仕事内容や時間を調整するなど、工夫することで資格取得は可能であるとされています。社会人入試制度や、教育訓練給付金制度の対象となる講座を設けている学校もあるため、情報収集を行い、自身の状況に合った学び方を見つけることが重要です。
作業療法士になるための最終関門が、年に一度実施される国家試験です。
養成校での3年以上にわたる学習の成果が問われるため、試験の難易度は決して低くありません。
しかし、養成校のカリキュラムを真面目にこなし、卒業に向けてしっかりと試験対策を行えば、合格は十分に可能なレベルです。
ここでは、国家試験の具体的な内容と、近年の合格率のデータからその難易度について見ていきましょう。
作業療法士の国家試験は、毎年1回、2月下旬に筆記試験が実施されます。
試験はマークシート形式で、午前と午後に分かれて行われます。
出題内容は、解剖学や生理学、運動学など理学療法士と共通の「共通問題」と、作業療法評価学や作業治療学といった「専門問題」で構成されており、幅広い知識が問われます。
この試験に合格し、厚生労働省の有資格者名簿に登録されることで、初めて作業療法士の免許が交付され、専門職として働くことが可能になります。
作業療法士国家試験の全国平均合格率は、毎年80%前後を維持しています。例えば、第59回(2024年実施)の試験では84.1%でした。この数字は、国が指定した養成校で3年以上の専門教育を受け、卒業が認められた学生たちが受験した結果です。
したがって、合格率の高さは試験の易しさを示すものではなく、養成校での体系的な教育と個人の努力が合格に結びついていることを意味します。学校によっては合格率を公表しているため、進学先を選ぶ際の指標の一つとしても参考にできます。
作業療法士は、病気やけが、あるいは生まれつきの障害によって日常生活に支障をきたしている人々に対し、その人らしい生活を取り戻すための支援を行うリハビリテーションの専門家です。
しばしば理学療法士と比較されますが、その役割やアプローチには明確な違いがあります。
作業療法士独自の専門性を理解することは、この職業の魅力を知る上で非常に重要です。
ここでは、具体的な仕事内容や、理学療法士との違いについて解説します。
作業療法士の仕事は、食事や着替え、入浴といった基本的な日常生活動作(ADL)から、仕事や学業、趣味活動といった応用的な動作まで、人が生きていく上で行う全ての「作業」に焦点を当ててリハビリテーションを行います。
手工芸やレクリエーション、園芸といった活動を治療手段として用いることも大きな特徴です。
活躍の場は病院やクリニックだけでなく、介護老人保健施設、発達支援センター、特別支援学校、精神科、就労支援施設など多岐にわたります。
対象者の人生に深く関わり、その人らしい生活の再建を支えることができる、非常に役に立つ仕事であり、大きな魅力を持っています。
リハビリテーション専門職には、作業療法士のほかに理学療法士や言語聴覚士がいます。
理学療法士が「立つ・歩く」といった基本的な動作能力(運動機能)の回復を目指すのに対し、作業療法士はその回復した機能を使って、食事や料理、仕事といったより応用的で目的のある活動が行えるように支援します。
また、言語聴覚士は「話す・聞く・食べる」といったコミュニケーションや嚥下の問題に対応します。
これら専門職は、医師の指示のもと、それぞれの専門性を活かして情報を共有し、チーム一丸となって患者の回復をサポートします。
作業療法士の給与水準は、勤務する施設の種類や規模、経験年数、地域によって変動しますが、国家資格を要する専門職として安定した収入を得ることが期待できます。
高齢化の進行や地域包括ケアシステムの推進に伴い、医療・介護・福祉の現場におけるリハビリテーションの需要は年々高まっています。
そのため、作業療法士の活躍の場は今後さらに広がり、将来性は非常に高いと言えます。
また、経験を積んだ後、認定作業療法士や専門作業療法士といった資格を取得し、特定の分野のスペシャリストとしてキャリアアップを図ることも可能です。
作業療法士という職業に興味を持った方が、進路を具体的に考える段階で抱きやすい疑問は少なくありません。
文系出身でも目指せるのか、社会人からのキャリアチェンジは可能なのか、どのような人がこの仕事に向いているのかなど、さまざまな不安や疑問が浮かぶことでしょう。
ここでは、そうしたよくある質問に対して、一つひとつ具体的にお答えしていきます。
進路選択の最後のひと押しとして、ぜひ参考にしてください。
結論として、文系出身者でも作業療法士を目指すことは十分に可能です。
養成校の入試科目は学校ごとに異なり、国語や英語といった文系科目で受験できる場合も多くあります。
入学後は、生物や物理といった理系分野の基礎から学ぶことができるカリキュラムが組まれているため、高校での文理選択で不利になることはありません。
大切なのは、入学後に学ぶことへの意欲です。
社会人から作業療法士になるためには、学業に専念する期間が必要なため簡単ではありませんが、十分に可能です。
養成校の中には社会人入試制度を設けている学校も多く、多様な経歴を持つ学生が学んでいます。
一度社会に出た経験で培われたコミュニケーション能力や問題解決能力は、患者さんと向き合う上で大きな強みとなります。
強い意志があれば、道は開けます。
作業療法士には、人の生活や心に寄り添い、根気強く支援できる人が向いていると言えます。
相手の状態や生活環境を注意深く観察する力、そしてその人に応じたリハビリ計画を柔軟に考える創造力が求められます。
リハビリはすぐに結果が出ないことも多いため、相手の小さな変化に喜びを見出し、辛抱強くサポートし続ける姿勢が大切です。
作業療法士になるには、まず国が指定する養成校で3年以上の専門教育を受け、卒業することがスタートラインです。
養成校には4年制大学、3年制短期大学、3年制または4年制の専門学校といった複数の選択肢があり、それぞれ学習内容やキャリアパスが異なります。
養成校では、1年目、2年と学年を重ねるごとに基礎から専門へと知識を深め、臨床実習などを通じて実践力を養います。
最終的に国家試験に合格するまでの道のりは平坦ではありませんが、計画的に準備を進めることで、将来性豊かな専門職への道が開けます。
監修:日本リハビリテーション専門学校 松生容一(作業療法士)
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