2026.01.25
作業療法

監修:日本リハビリテーション専門学校 阿部正美(作業療法士)
作業療法士の働く場所は、病院やリハビリ施設だけではありません。
活躍の場は医療、福祉、教育、行政など多岐にわたります。
この記事では、作業療法士の働く場所を「身体障害」「精神障害」「発達障害」「老年期障害」の4つの領域に分け、それぞれの仕事内容や就職先を具体的に解説します。
病院以外の選択肢や自分に合った職場の選び方も紹介するため、キャリアを考える上での参考にしてください。
作業療法士の働く場所と聞くと、多くの人が病院やクリニックといった医療機関を思い浮かべるかもしれません。
しかし、高齢化や社会のニーズ多様化に伴い、その活躍の場は介護福祉施設、教育現場、行政機関、さらには一般企業にまで広がっています。
この記事では、伝統的な職場から少し意外な就職先まで、多岐にわたる作業療法士の働く場所と、それぞれの現場で求められる役割について具体的に解説していきます。
作業療法士の働く場所は、対象とする主な障害によって「身体障害」「精神障害」「発達障害」「老年期障害」の4つの領域に大別されます。
それぞれの領域で対象者の特性や求められる支援が異なり、専門性を発揮できる点が魅力です。
ここでは、各領域の代表的な職場と、そこで行われる具体的な仕事内容について詳しく見ていきます。
自分の興味や関心がどの領域にあるかを考えるきっかけにもなるでしょう。
身体障害領域は、作業療法士の働く場所として最も代表的です。
主な職場には、大学病院、総合病院の整形外科や脳神経外科、回復期リハビリテーション病院、クリニック、訪問看護ステーションなどがあります。
この領域では、病気や事故によって身体機能に障害を負った方々に対し、食事や着替え、入浴といった日常生活動作(ADL)の再獲得を目指してリハビリテーションを実施します。
また、福祉用具の選定や住宅改修のアドバイスを通じて、退院後の生活環境を整える役割も担います。
患者の回復を直接支援し、目に見える形で成果を実感できるのがこの領域の魅力です。
精神障害領域では、精神科病院やメンタルクリニック、デイケア、就労移行支援事業所などが主な職場となります。
ここでは、統合失調症やうつ病、依存症など、精神的な問題を抱える方々を対象に、その人らしい生活を取り戻すための支援を行います。
手工芸、園芸、スポーツといった様々な作業活動を通じて、生活リズムの改善、対人関係能力の向上、集中力や達成感の回復を促します。
長期的な視点で対象者と向き合い、心の回復と社会復帰を根気強く支える姿勢が求められるため、相手の話をじっくり聞ける傾聴力を持つ人に向いている領域です。
発達障害領域の作業療法士は、児童発達支援センター、放課後等デイサービス、特別支援学校、小児科クリニックなどで活躍しています。
主な対象は、発達に課題を抱える子どもたちです。
遊びや学習といった活動を通して、感覚統合の発達を促したり、身体の動かし方を教えたり、集団生活への適応を支援します。
理学療法士が「立つ」「歩く」といった基本的な運動機能の向上に焦点を当てるのに対し、作業療法士は遊びの中で道具を使ったり、友達と関わったりといった、より応用的で社会的なスキルの発達を支援する点に特徴があります。
保護者への助言やサポートも重要な役割の一つです。
老年期障害領域では、介護老人保健施設(老健)、特別養護老人ホーム、デイサービス、訪問リハビリテーション事業所などが主な職場です。
この領域の目的は、加齢や病気によって心身機能が低下した高齢者が、その人らしい生活を継続できるように支援することにあります。
日常生活動作の維持・改善のための訓練はもちろん、趣味活動やレクリエーションの提供を通じて生活に楽しみや役割を見出す手伝いをします。
また、認知症の進行予防や緩和を目的としたプログラムを実施することもあります。
利用者の生活に深く寄り添い、人生の質の向上を支える役割を担います。
作業療法士の専門性は、医療の現場だけでなく、地域社会のより広い場面で求められています。
近年では、その知識と技術を活かせる病院以外の就職先が増加傾向にあります。
ここでは、介護・福祉施設をはじめ、子どもたちの成長を支える教育現場、地域住民の健康を守る行政機関、さらには司法関連施設や一般企業といった、多様なキャリアの選択肢とそこで果たせる専門的な役割について紹介します。
介護老人保健施設や特別養護老人ホーム、障害者支援施設といった介護・福祉施設では、利用者の「生活」そのものに焦点を当てた支援が中心となります。
病院でのリハビリが「治療」を主な目的とするのに対し、これらの施設では利用者がその人らしい暮らしを長く続けられるよう、食事や入浴、趣味活動などの日常生活に深く関わります。
機能訓練だけでなく、レクリエーションの企画・運営や、介護職員への介助方法の助言など、多角的な役割を担います。
利用者一人ひとりと長期的に関わるため、深い信頼関係を築きながら、その人の人生に寄り添った支援ができるのが特徴です。
教育現場では、特別支援学校や地域の小中学校に配置され、障害のある子どもたちが学校生活を送りやすくなるよう支援します。
具体的には、学習しやすい姿勢の指導、書字や道具の操作に関する訓練、クラスに馴染むためのソーシャルスキルトレーニングなどを行います。
一方、保健所や市町村の役場といった行政機関では、公務員として地域住民全体の健康づくりに関わります。
介護予防事業の企画・運営や、障害を持つ人やその家族からの相談対応、福祉サービスの調整など、より広い視点から地域保健・福祉に貢献する役割が求められます。
刑務所や少年院、保護観察所といった司法関連施設も、作業療法士が活躍する場の一つです。
「司法領域」と呼ばれ、受刑者や在院者の更生と社会復帰を支援します。
対象者の中には、発達障害や精神障害、知的障害などを抱える人が少なくありません。
作業療法士は、彼らが自身の課題を理解し、感情をコントロールするスキルや社会生活に必要な技能を身につけられるよう、専門的なプログラムを実施します。
作業活動を通じて自己肯定感を高め、出所・退院後の生活設計を支援することで、再犯防止に貢献するという社会的に重要な役割を担います。
作業療法士の知識は、一般企業でも活かすことができます。
例えば、福祉用具メーカーや住宅設備メーカーでは、障害のある方や高齢者の視点に立った製品開発や企画に専門家として関わります。
臨床経験を基に、より使いやすく安全な製品のアイデアを提案したり、ユニバーサルデザインの観点から住宅設計のコンサルティングを行ったりします。
また、玩具メーカーで子どもの発達を促すおもちゃの開発に携わることや、保険会社でリハビリテーションの妥当性を評価する業務に就くなど、臨床現場で培った専門性を多様な形で発揮するキャリアパスも存在します。
作業療法士として活躍できる場所は多岐にわたるため、自分にとって最適な職場を見つけるには、いくつかの視点からキャリアを考えることが重要です。
漠然と就職先を探すのではなく、「誰の力になりたいのか」「どのような形で関わりたいのか」、そして「将来どのような専門家になりたいのか」を明確にすることで、進むべき道が見えてきます。
ここでは、自分に合った働く場所を選ぶための3つの考え方を解説します。
まず、自分がどのような人々の支援にやりがいを感じるかを考えてみましょう。
子どもの成長を間近で支え、その可能性を広げることに喜びを感じるなら、児童発達支援センターや特別支援学校などの発達障害領域が向いているかもしれません。
病気や怪我で突然これまでの生活が困難になった成人が、再び希望を取り戻す過程をサポートしたいのであれば、病院などの身体障害領域や精神障害領域が考えられます。
また、高齢者一人ひとりの人生に寄り添い、穏やかでその人らしい最期を支えたいという思いがあるなら、介護施設などの老年期障害領域が適しています。
支援したい対象を明確にすることが、職場選びの第一歩です。
対象者への関わり方は、リハビリテーションのステージによって大きく異なります。
発症直後で医学的な管理が重要な「急性期」では、生命の危機を脱した患者の早期離床や機能低下の予防が主な役割となり、総合病院などが職場です。
集中的なリハビリで機能回復と在宅復帰を目指す「回復期」では、回復期リハビリテーション病院で患者の能力を最大限に引き出す関わりが求められます。
そして、地域や自宅での生活を継続させる「生活期(維持期)」では、介護施設や訪問リハビリを通じて、その人らしい生活を長く続けられるよう支援します。
自分がどの段階で力を発揮したいかを考えることも重要です。
5年後、10年後にどのような作業療法士になっていたいか、長期的なキャリアプランから逆算して現在の職場を選ぶ視点も大切です。
特定の分野の専門性を深め、認定作業療法士や専門作業療法士の資格取得を目指すのであれば、症例数が多く教育体制が整った病院を選ぶのが近道かもしれません。
将来的に独立開業して訪問リハビリテーション事業所を立ち上げたいなら、まずは病院で多様な疾患の経験を積み、次に地域での働き方を学ぶために訪問看護ステーションへ転職するというキャリアパスが考えられます。
管理職や教育者、研究者など、目指す将来像によって、今積むべき経験は変わってきます。
ここでは作業療法士の働く場所に関して、学生や転職を考えている方からよく寄せられる質問とその回答を紹介します。
はい、働く場所によって給料や年収に違いはあります。
公務員として行政機関で働く場合は給与が安定しています。
また、施設の種類だけでなく、経営母体や地域、経験年数、役職によっても給与は変動するため、求人情報を比較検討することが重要です。
はい、可能です。
介護老人保健施設や児童発達支援センター、障害者支援施設など、新卒採用を積極的に行っている病院以外の職場は数多くあります。
ただし、新人教育体制がどの程度整っているかは施設によって差があるため、就職活動の際には見学や面接を通じて、しっかりと確認することをおすすめします。
教育制度を重視し、まずは病院で臨床経験を積むという選択をする人も少なくありません。
高齢化の進行に伴い、老年期障害領域の需要は今後も高まり続けると予測されます。
特に、地域包括ケアシステムの中核を担う訪問リハビリテーションや、介護予防、認知症支援といった分野での活躍が期待されます。
また、発達障害の子どもへの支援や、精神障害を持つ方の就労支援、司法領域など、これまで以上に活動の場は多様化していく見込みです。
作業療法士の働く場所は、病院やクリニックといった医療機関に限らず、介護・福祉施設、教育機関、行政、司法関連施設、さらには一般企業まで非常に多岐にわたります。
それぞれの職場は、身体障害、精神障害、発達障害、老年期障害という4つの領域に大別され、対象者や求められる役割、仕事内容が異なります。
自分に合った職場を見つけるためには、「誰を支えたいか」「どんな関わり方をしたいか」「将来どうなりたいか」といった複数の視点から自己分析を行い、キャリアプランを検討することが不可欠です。
この記事で紹介した情報を基に、施設見学やインターンシップなどを活用し、自身の興味や目標に合致する職場を探してください。
監修:日本リハビリテーション専門学校 阿部正美(作業療法士)
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