2025.12.30
作業療法
作業療法士(OT)とは、心身に障害のある方に対して、日常生活の動作や社会復帰を支援するリハビリテーションの専門職です。
作業療法士の給料は、経験や働き方によって大きく変動します。
この記事では、最新の公的データをもとに、作業療法士の平均年収や、性別・年齢・勤務先といった条件別の給料差を詳しく解説します。
さらに、収入をアップさせるための具体的なキャリアプランや、他職種との比較も紹介し、自身の収入について考える上での情報を提供します。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、作業療法士を含む理学療法士・言語聴覚士・視能訓練士の平均年収は約430.3万円です。月収に換算すると約30.5万円、年間の賞与その他特別給与額の平均は約64.7万円でした。ただし、この金額は額面であり、実際に受け取る手取り額は、社会保険料や税金が差し引かれるため、これより少なくなります。日本の給与所得者全体の平均年収と比較すると、作業療法士の年収は平均的な水準に位置します。また、年収の中央値は、平均値よりもやや低い傾向にあると考えられます。
作業療法士の年収は、個人の属性や働く環境によって大きく異なります。
性別や年齢といった個人的な要因はもちろん、勤務先の規模や地域、正規雇用か非正規雇用かといった雇用形態によっても給与水準は変わってきます。
ここでは、公的な統計データや一般的な傾向に基づき、様々な条件別に作業療法士の給料・年収を比較し、どのような要因が収入に影響を与えるのかを具体的に掘り下げていきます。
自身の状況と照らし合わせながら、今後のキャリアを考える参考にしてください。
作業療法士の年収は、性別によって差が見られます。
厚生労働省の調査によると、男性の平均年収が女性を上回る傾向にあります。
この差が生まれる背景には、勤続年数の違いが影響していると考えられます。
女性は出産や育児などのライフイベントを機に、一時的に休職したり、パートタイム勤務に切り替えたりするケースが男性よりも多いです。
そのため、平均勤続年数が男性より短くなり、結果として平均年収にも差が生じます。
役職に就いている割合も男性の方が高い傾向があり、役職手当の有無が年収差の一因となっている側面もあります。
ただし、同じ職場で同等の経験年数や役職であれば、性別による給与の基本設定に大きな違いはありません。
作業療法士の年収は、年齢を重ねるとともに上昇する傾向があります。
新卒で入職する20代前半では年収300万円台からスタートすることが多く、経験を積むことで着実に昇給していきます。
年齢別に見ると、20代から30代にかけて年収は順調に上がり、リーダーや主任などの役職に就く機会も増えます。
40代から50代にかけては、管理職に就くことで年収のピークを迎えることが一般的で、平均年収は500万円を超えるケースも多くなります。
経験やスキルの蓄積が給与に反映されやすいため、長期的な視点でキャリアを築くことで生涯年収も上がることが期待できます。
定期昇給の制度がある職場では、勤続年数に応じて安定した収入増が見込めます。
作業療法士の給与は、勤務先の規模や地域によっても差が生じます。
一般的に、従業員数が多い大規模な病院や法人は、経営が安定しており、給与水準や福利厚生が充実している傾向があります。
昇給制度やキャリアパスが明確に定められていることも多く、長期的に働くことで安定した収入増が期待できます。
地域別に見ると、物価や家賃が高い東京や大阪などの大都市圏は、給与水準も高く設定される傾向にあります。
一方、北海道や福岡、熊本、鹿児島、沖縄などの地方都市では、都市部に比べて給与水準はやや低くなることが多いです。
ただし、地方は生活コストを抑えられるメリットもあり、一概にどちらが良いとは言えません。
求人を探す際には、給与額だけでなく、その地域の生活水準も考慮することが重要です。
作業療法士の収入は、正社員かパート・アルバイトかという雇用形態によって大きく異なります。
正社員の場合、月給制で安定した収入が得られ、賞与(ボーナス)や退職金、各種手当などの福利厚生も充実しています。
新卒の初任給は、専門学校卒か大卒かによって若干の差はありますが、一般的に20万円から24万円程度が相場です。
一方、パートやアルバイトは時給制で、時給相場は1,500円から2,500円程度です。
勤務時間や日数を調整しやすく、家庭との両立がしやすいというメリットがあります。
ただし、賞与や昇給の機会は正社員に比べて限られることが多く、社会保険の加入条件も勤務時間によって変わるため、年収ベースで見ると正社員よりも低くなることが一般的です。
作業療法士の年収は、他の医療専門職と比較してどのような水準にあるのでしょうか。厚生労働省の統計データに基づくと、同じリハビリテーション専門職である理学療法士や言語聴覚士とは、ほぼ同水準の年収です。これらの職種は「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士」としてまとめて集計されることが多く、給与体系も似通っています。
一方、看護師の平均年収は作業療法士よりも高い傾向にあります。これは、夜勤手当や危険手当などが給与に上乗せされるためです。さらに、薬剤師は6年制大学の卒業が必要なこともあり、医療職の中でも特に高い年収水準を誇ります。医療職の年収ランキングでは、薬剤師、看護師、そして作業療法士と理学療法士が続く形となります。
!!POINT!!
年収の側面だけでなく、働きがいという視点で見ると、それぞれの職種が持つ専門性と社会貢献の形に違いがあります。作業療法士は、患者様の日常生活動作の改善や社会参加を支援することで、直接的なQOL(生活の質)向上に貢献できる点に大きなやりがいを感じる方が多いです。理学療法士も同様に身体機能の回復をサポートしますが、作業療法士はより生活に密着した視点で支援を行います。看護師は患者様の生命維持と療養生活全般を支える重要な役割を担い、薬剤師は薬の専門家として医療安全に貢献しています。このように、各職種はそれぞれの専門性を活かし、医療現場で不可欠な役割を果たすことで、年収以外の大きな価値を生み出していると言えるでしょう。
作業療法士として現在の収入からさらに年収を上げるためには、いくつかの具体的な方法が考えられます。
現在の職場でキャリアを積み重ねて昇進を目指す道や、専門性を高める資格を取得して手当を得る方法があります。
また、より待遇の良い職場へ転職することや、空いた時間を利用して副業に取り組むことも有効な手段です。
将来的には、独立開業という選択肢も視野に入れることで、大幅な収入アップの可能性が広がります。
ここでは、これらの5つの方法について、それぞれ詳しく解説していきます。
現在の職場で長く働き続けることは、年収を上げるための一つの有効な方法です。
多くの医療機関や介護施設では、勤続年数に応じた定期昇給制度が設けられており、経験を積むことで給与が安定して上昇します。
さらに、臨床経験を重ねることで、チームリーダーや主任、リハビリテーション科の科長といった管理職への昇進の道も開けます。
役職に就くことで、基本給のアップに加えて役職手当が支給されるため、年収は大幅に増加します。
後輩の指導や部署のマネジメントといった役割を担うことで、自身のスキルアップにも繋がり、より高いレベルでの貢献が給与に反映されるようになります。
地道に実績を積み上げ、組織内での信頼を得ることが昇給への近道です。
作業療法士としての専門性を証明する資格を取得することは、収入アップに直接繋がる可能性があります。
職場によっては、特定の資格を持つ職員に対して資格手当を支給する制度を設けている場合があります。
例えば、日本作業療法士協会が認定する「認定作業療法士」や、その上位資格である「専門作業療法士」などがこれに該当します。
また、「呼吸療法認定士」や「心臓リハビリテーション指導士」といった関連領域の資格も、特定の分野での専門性を高め、臨床現場での評価を高める上で役立ちます。
資格取得は、自身のスキルアップや知識の深化に繋がるだけでなく、給与面でのプラスアルファや、転職の際に有利に働くというメリットも期待できます。
現在の職場の給与水準に満足できない場合、より待遇の良い職場へ転職するのも有効な手段です。
一般的に、都市部の民間病院や、介護保険分野の中でも特に需要が高い訪問リハビリテーション事業所、介護老人保健施設などは、給与水準が高い傾向にあります。
また、基本給だけでなく、賞与の支給実績や手当の種類、福利厚生なども含めたトータルの年収で比較検討することが重要です。
これまでの臨床経験や身につけたスキル、取得した資格などを武器に、自身の市場価値を正しく評価してくれる職場を探すことで、大幅な年収アップを実現できる可能性があります。
転職エージェントなどを活用し、非公開求人を含めた幅広い選択肢の中から、より条件の高い職場を見つけると良いでしょう。
本業の収入に加えて、副業で収入源を増やすことも年収アップの現実的な方法です。
作業療法士の資格と経験を活かせる副業として、訪問リハビリテーションの非常勤スタッフが挙げられます。
特に訪問リハビリは時給が高い傾向にあり、土日や平日の空き時間を利用して効率的に収入を得ることが可能です。
その他にも、地域の介護予防教室での講師や、専門学校の非常勤講師、医療・介護関連記事の執筆など、多様な働き方があります。
ただし、副業を始める前には、必ず本業の勤務先の就業規則を確認し、副業が許可されているかどうかを確かめる必要があります。
本業に支障が出ない範囲で、自身のスキルを活かせる副業に取り組むことが大切です。
作業療法士は法律上、理学療法士と同様に単独での開業権が認められていません。
しかし、関連分野で独立・開業することにより、高収入を目指す道は存在します。
例えば、訪問看護ステーションを設立し、その管理者として運営に携わる方法があります。
この場合、看護師などを雇用する必要がありますが、経営が軌道に乗れば大幅な収入増が期待できます。
また、整体院や自費リハビリ施設、コンサルティング事業など、医療保険や介護保険の枠外で事業を立ち上げることも可能です。
さらに、臨床経験を積んだ後に大学院へ進学し、養成校の教員として研究や教育の道に進むキャリアもあります。
教員は安定した収入が見込め、教授などの役職に就けば高年収を得ることもできます。
作業療法士が自身の専門性を高め、キャリアアップや年収アップを実現するためには、関連資格の取得が非常に有効です。
資格は、特定の分野における深い知識と高度な技術を持つことの客観的な証明となり、職場での評価を高めるだけでなく、資格手当の対象となる場合もあります。
ここでは、作業療法士のキャリア形成において特に有利に働き、収入増に繋がりやすいおすすめの資格を3つ紹介します。
これらの資格取得を目指すことは、自己投資として将来的に大きなリターンをもたらす可能性があります。
認定作業療法士は、一般社団法人日本作業療法士協会が認定する資格であり、作業療法士としての実践能力を客観的に証明するものです。
この資格を取得するためには、5年以上の臨床経験に加え、協会が指定する研修を修了し、審査に合格する必要があります。
認定分野は、認知症、精神科、脳血管障害、高次脳機能障害など多岐にわたります。
この認定資格を持つことで、特定の領域におけるスペシャリストとして認識され、職場内での役割拡大や昇進に有利に働くことがあります。
また、病院や施設によって※は資格手当の対象となる場合もあり、直接的な収入アップに繋がる可能性も期待できます。
転職市場においても、専門性をアピールする強力な武器となります。
※資格そのものに対する給与評価については就職先により条件が異なりますのでご注意ください
専門作業療法士は、認定作業療法士の上位に位置づけられる資格で、特定の専門作業療法分野において高度な実践能力、教育能力、研究能力を有することを証明します。
この資格の取得には、認定作業療法士であることが前提条件の一つであり、さらに臨床実践や研究、社会貢献などにおいて顕著な実績が求められるため、取得難易度は非常に高いです。
専門作業療法士の資格を持つ人材は、臨床現場における指導的役割や、後進の育成、研究活動の中核を担うことが期待されます。
そのため、リハビリテーション部門の管理職への登用や、大学などの教育機関へのキャリアチェンジにも繋がりやすく、長期的に見ると年収アップが期待できるでしょう。資格そのものに対する給与評価というより、職域や責任を伴ったポジションへのキャリアアップが期待できる資格とも言えます。
3学会合同呼吸療法認定士は、呼吸療法に関する高度な知識と技術を持つことを証明する資格です。
この資格は作業療法士だけでなく、理学療法士、看護師、臨床工学技士など、呼吸リハビリテーションに関わる多くの医療専門職が取得を目指します。
特に、急性期病院のICU(集中治療室)や呼吸器内科、回復期リハビリテーション病棟などで働く作業療法士にとって、この資格は大きな強みとなります。
呼吸器疾患を持つ患者へのリスク管理能力や専門的なアプローチスキルが評価され、チーム医療における信頼性が向上します。
職場によっては資格手当の対象となることもあり、キャリアアップやより専門性の高い職場への転職に際しても有利に働く資格です。
作業療法士の年収については、多くの方が様々な疑問や関心を持っています。
「どのくらいまで稼げるのか」「どうすればもっと収入を増やせるのか」といった疑問は、キャリアを考える上で非常に重要です。
ここでは、作業療法士の年収に関して特によく寄せられる質問を取り上げ、Q&A形式で分かりやすく解説します。
年収1000万円といった高収入の実現可能性や、年収500万円以上の好条件な求人の探し方など、具体的な疑問に答えていきます。
病院や施設に勤務する一人の作業療法士として、給与収入だけで年収1000万円に到達することは、極めて難しいのが現状です。管理職のトップクラスや、特別な手当がつく場合でも、この水準に達するケースは非常に稀です。しかし、年収1000万という目標が全く不可能というわけではありません。実現の可能性があるキャリアパスとしては、独立開業が挙げられます。例えば、訪問看護ステーションを立ち上げて経営者となり、事業を成功させれば、従業員としての給与の枠を超えた収入を得ることができます。また、複数の事業を手掛ける、あるいは大学教員としてキャリアを積み、教授職に就くといった方法でも、1000万を超える収入を得られる可能性があります。
!!POINT!!
作業療法士という職業は、爆発的に生涯年収を上げることよりも、長く安定的な収入が見込めるという強みがあります。これは、拘束時間が昼間に集中し、夜勤がほとんどないため、無理なく働き続けられる環境が多いためです。女性のライフイベントである出産や育児を経験しても、ブランクから復帰しやすく、長期にわたってキャリアを継続しやすい点も魅力です。そのため、高額な収入を短期間で得るというよりは、定年まで安定して働くことで、トータルとしての生涯収入を確保しやすい職業と言えるでしょう。
作業療法士の平均年収が約400万~450万であるため、年収500万円以上は一つの目標となる水準です。
この条件を満たす求人を探すには、いくつかのポイントがあります。
まず、管理職や将来の幹部候補を募集している求人は、給与水準が高い傾向にあります。
また、訪問リハビリテーションはインセンティブ制度を導入している事業所も多く、実績次第で高収入を目指せます。
さらに、給与水準が比較的高い都市部の求人に絞って探すのも有効です。
求人サイトを利用する際は、「年収500万以上」や「月給30万以上」といった条件で絞り込み検索を行いましょう。
経験年数や専門性をアピールすることで、年収600万や700万といったさらに好条件の求人に出会える可能性もあります。
作業療法士の平均年収は、日本の給与所得者の平均年収と比較すると、やや低い水準にある傾向が見られます。他の医療職と比較して特別に高いわけではありませんが、極端に低いわけでもありません。作業療法士の給料が安いと感じるのは、経験年数が浅い若手の時期や、給与水準が比較的落ち着いている地域・施設で働いている場合が多いでしょう。
しかし、本記事で解説したように、経験を積んで管理職を目指したり、専門性を高める資格を取得したり、より待遇の良い職場へ転職したりすることで、年収をアップさせることは十分に可能です。自身のキャリアプランを明確に持ち、戦略的に行動することが収入向上に繋がります。
監修:日本リハビリテーション専門学校 松生容一(作業療法士)
グループ校