2025.11.10
作業療法
子どもが好きで、専門性を活かして人の役に立ちたいと考える人にとって、小児医療の分野は魅力的な選択肢です。
この記事では、子どもの医療や健康を支える様々な仕事について、職種ごとの役割、必要な資格、主な勤務先などを網羅的に解説します。
将来の進路を検討している高校生や、子ども関連の分野でキャリアアップを目指す社会人が、自分に合った仕事を見つけるための情報を提供します。
子どもの医療と聞くと医師や看護師を思い浮かべるかもしれませんが、実際には多様な専門職が関わっています。
例えば、リハビリテーションを担う作業療法士や言語聴覚士、心のケアを行う公認心理師、福祉の側面から支援する社会福祉士など、それぞれの専門家がチームとして連携し、子どもたちの健やかな成長を多角的に支えています。
職種によって仕事内容や必要なスキル、活躍の場は様々です。
ここでは、子どもの医療に携わる代表的な9つの専門職を取り上げ、それぞれの仕事内容や特徴を具体的に紹介します。
同じ「子どもを支える」という目的を持ちながらも、アプローチの方法は職種によって大きく異なります。
それぞれの専門分野を理解し、自身の興味や適性と照らし合わせながら、将来のキャリアを考える上での参考にしてください。
小児科医は、新生児から思春期までの子どもを対象に、病気やけがの診断と治療を行うのが中心的な仕事です。
風邪や感染症といった日常的な疾患から、アレルギー、低身長、発達障害など専門的な知識を要する領域まで幅広く対応します。
また、乳幼児健診や予防接種を通じて、病気の予防や早期発見に努めることも重要な役割です。
患児の身体的な問題だけでなく、心の発達にも目を配り、保護者の育児に関する不安や悩みに応えることも求められる、子どもの総合的な健康を管理する仕事と言えます。
看護師は、医師の診療補助や、入院している患児の療養上の世話を行います。
バイタルサインの測定、点滴や採血、薬剤の投与などが主な仕事ですが、小児科では特に、子どもの発達段階に応じたコミュニケーションや、処置に対する不安を和らげるための工夫が不可欠です。
助産師は、妊娠期から出産、産後までの母子の健康をサポートする専門職であり、新生児のケアにおいて重要な役割を担います。
どちらの仕事も、患児だけでなく、不安を抱える家族への精神的な支援も大切な業務です。
作業療法士は、遊びや学習、日常生活の動作といった「作業」を通じて、子どもがその子らしい生活を送れるように支援するリハビリテーションの専門職です。
発達障害のある患児に対して、手先の器用さを高める訓練や、集団活動への参加を促す関わりなどを行います。
近年、発達支援のニーズは高まっており、医療機関だけでなく療育施設や特別支援学校など活躍の場が拡大し、人材の需要が増しています。
多くの場合で夜勤がなく、医療系の国家資格の中では養成校の選択肢が広く挑戦しやすい点も特徴の一つである仕事です。
作業療法士は、子どもから高齢者まで幅広い年代の人々に対し、身体や精神の機能回復、日常生活動作の改善、社会適応能力の向上を目指して支援する専門職です。2022年3月時点で、全国に104,286人の作業療法士がいます。特に発達障害の分野では人材が不足していると推測されており、医療業界全体で作業療法士のニーズは大きいと言えるでしょう。
作業療法士の大きな魅力の一つは、医療職でありながら夜勤が少ないことです。患者さんのリハビリは日中に行われることがほとんどなので、夜勤は基本的にありません。これにより、仕事とプライベートのバランスが取りやすく、子育て中の社会人にとっても働きやすい環境と言えます。実際に、結婚や出産を機に、作業療法士として長く働くことを選択する人も少なくありません。
近年では、その活躍の場が医療機関だけでなく、教育業界にも広がっています。特別支援学校や幼稚園、保育園などで、発達に課題を抱える子どもたちの成長をサポートする作業療法士が増加しており、今後ますます需要が高まることが期待されています。教育現場での作業療法士は、子どもたちの個々のニーズに合わせた支援を行い、その成長を間近で実感できるという大きなやりがいがあります。
作業療法士の仕事は、患者さんが諦めていたことができるようになる瞬間に立ち会えたり、その人らしい生き方を支えたりと、大きな達成感とやりがいを感じられるでしょう。専門的な知識と経験を積むことで、60歳以降も現場で活躍したり、教育機関で次世代の作業療法士を育成したりすることも可能です。
作業療法士の即戦力として活躍するためには、質の高い養成校選びが必須です。
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言語聴覚士は、「話す」「聞く」「食べる」といった機能の専門家として、コミュニケーションや摂食嚥下に問題を抱える子どもを支援します。
言葉の発達の遅れや発音の誤り、吃音といった課題を持つ患児に対し、検査を通じて原因を探り、一人ひとりに合わせた訓練プログラムを実施します。
また、生まれつき口や喉の機能に問題があり、うまく飲み込むことができない乳児への哺乳指導も重要な仕事です。
専門的なアプローチにより、患児が他者と円滑に意思疎通を図り、食べる楽しみを享受できるようサポートします。
視能訓練士は眼科領域において視機能の検査やリハビリテーションを専門に行う仕事です。
特に子どもの分野では斜視や弱視の早期発見と治療に重要な役割を果たします。
乳幼児は視力の異常を自分で訴えることができないため視能訓練士が専門的な検査を通じて問題を正確に評価し医師の指示のもとで視機能の発達を促すための訓練を実施します。
眼鏡の処方に関わる検査も行い患児がクリアな視界を得て健やかに成長できるよう専門的な知識と技術で支える仕事です。
公認心理師は、心理学の専門知識に基づき、心の問題を抱える子どもやその家族を支援する仕事です。
不登校、いじめ、発達障害、虐待など、子どもが直面する様々な課題に対して、カウンセリングや心理検査を用いてアセスメントを行い、問題解決に向けた援助を提供します。
医療機関においては、病気や入院生活が子どもに与える心理的ストレスを軽減するためのケアも行います。
患児本人の内面に寄り添うだけでなく、保護者へのカウンセリングを通じて、家庭環境全体をサポートすることも大切な仕事です。
社会福祉士は、病気や障害によって生じる生活上の様々な困難に対し、福祉の立場から相談援助を行う専門職です。
医療ソーシャルワーカーとして病院に勤務する場合、医療費の支払いや退院後の生活、学校との連携など、患児と家族が抱える経済的・社会的な問題の解決を支援します。
利用可能な公的制度や福祉サービスの情報を提供し、関係機関と連携しながら、家族が安心して治療に専念できる環境を整えるのが主な仕事です。
医療と福祉をつなぐ架け橋として、多角的な視点から子どもと家族を支えます。
養護教諭は、主に学校の保健室に勤務し、児童生徒の心身の健康を支える仕事です。
日常的なけがや病気の応急処置をはじめ、健康診断の実施、感染症の予防と対策、健康に関する相談対応など、その業務は多岐にわたります。
近年は、アレルギーを持つ児童への対応や、不登校、いじめ、虐待といった心の問題を抱える子どもたちの初期対応と心のケアも重要な役割となっています。
子どもたちにとって最も身近な健康の専門家として、医療機関や行政と連携し、彼らが安全な学校生活を送れるよう見守る仕事です。
医療事務は病院やクリニックの窓口で受付会計診療報酬請求などの業務を担う仕事です
直接的な医療行為は行いませんが医療機関の円滑な運営を支える上で不可欠な存在です
特に小児科では体調の悪い子どもや不安を抱える保護者が最初に接する職員であるため安心感を与えるような温かく丁寧な対応が求められます
医療制度に関する専門知識も必要とされますが患者と医療スタッフの双方をサポートし地域医療に貢献できる仕事です
子どもの医療を支える専門職が活躍するフィールドは、病院やクリニックといった医療機関に限定されません。
それぞれの専門性を活かし、学校などの教育現場や、地域の子育てを支援する福祉施設、行政機関など、社会の様々な場面で子どもたちの健康と成長に貢献しています。
ここでは、主な勤務先を3つのカテゴリーに分けて、それぞれの特徴や仕事の内容を解説します。
大学病院やこども病院、地域の小児科クリニックは、子どもの医療に関わる専門職にとって最も代表的な勤務先です。
入院設備のある病院では、医師や看護師が中心となり、急性期の疾患から慢性的な病気の管理まで、24時間体制で医療を提供します。
また、リハビリテーション科では作業療法士や言語聴覚士が、医療福祉相談室では社会福祉士がそれぞれの専門性を発揮します。
クリニックは、地域の子どもたちの身近な健康相談窓口としての役割を担う仕事です。
養護教諭の主な勤務先は、小学校、中学校、高等学校などの保健室です。
日常的な健康管理から心のケアまで、児童生徒の学校生活を支えます。
また、近年では、障害のある子どもたちの学びの場である特別支援学校や特別支援学級で、医療専門職の活躍が広がっています。
作業療法士や言語聴覚士などが教員と連携し、子どもたちの身体機能の維持・向上やコミュニケーション能力の育成を支援する仕事であり、教育的な視点から長期的に子どもの成長に関わることが特徴です。
児童発達支援センターや放課後等デイサービスといった児童福祉施設は、発達に課題を抱える子どもたちに療育を提供する場です。
ここでは、作業療法士、言語聴覚士、公認心理師などが専門知識を活かして、子どもたちの発達を促すプログラムを実施します。
また、市区町村が設置する保健センターでは、看護師や助産師、社会福祉士などが勤務し、乳幼児健診や育児相談、虐待防止といった地域保健活動を通じて、地域全体の子育てを支援する仕事に従事します。
子どもの医療分野で専門職として働くためには、多くの場合、国が定めた資格を取得することが求められます。
これらの資格は、専門的な知識と技術を有していることの証明であり、人の命や健康を守るという責任の重さから、その取得には厳格な要件が課せられています。
目指す仕事について、どのような資格が必要になるのかを事前に把握しておくことは、進路を考える上で非常に重要です。
医師、看護師、助産師、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士、公認心理師、社会福祉士といった職種は、いずれも国家資格です。
これらの資格を取得するには、国が指定した大学や専門学校などの養成校で規定のカリキュラムを修了し、卒業後に国家試験に合格する必要があります。
また、養護教諭になるには教員免許状の取得が必須です。
専門職としての高い倫理観と専門性を担保するため、資格取得は不可欠なプロセスとなっています。
目指したい仕事が見つかったら、まずはその仕事に就くための資格取得ルートを調べましょう。
子どもの医療現場に関わる仕事の中には、必ずしも資格を必要としないものもあります。
その代表例が医療事務です。
資格がなくても就職は可能ですが、診療報酬制度などの専門知識が求められるため、民間の関連資格を取得しておくと実務で役立ちます。
また、小児科病棟で食事の配膳や環境整備など、看護師の補助的な業務を担う看護助手も、資格なしで働ける場合があります。
これらの仕事は、直接的な医療行為は行いませんが、医療現場を支える重要な役割を担っています。
子どもたちの健康と未来に直接貢献できる医療の仕事は、大きな責任を伴う一方で、他では得がたい深いやりがいを感じることができます。
日々成長していく子どもたちの姿に力をもらったり、不安を抱える家族の支えになれたりする瞬間に、この仕事ならではの喜びがあります。
専門職として子どもと関わる中で得られる、代表的なやりがいについて紹介します。
病気や障害と向き合う子どもたちが、治療やリハビリを通して回復し、笑顔を取り戻していく過程に立ち会えることは、この仕事における最大のやりがいです。
昨日までできなかった動作が一つできるようになったり、言葉が増えたりと、子どもの持つ無限の可能性と生命力の強さを日々実感できます。
特に成長発達が著しい時期の患児に関わるため、自身の専門的な支援がその子の未来を形作る一助となっているという手応えを感じることが可能です。
我が子が病気になったり、発達に課題があることが分かったりした時、保護者は大きな不安にさいなまれます。
そのような保護者に対し、専門的な知識に基づいて病状や今後の見通しを分かりやすく説明したり、利用できる社会資源を紹介したりすることで、その不安を和らげることができます。
患児本人へのアプローチだけでなく、家族全体を支え、安心して子育てに取り組めるよう支援することも重要な役割です。
保護者から「ありがとう」と感謝された時に、自分の仕事の意義を強く感じられます。
子どもの医療に関わる仕事は、医師や看護師だけでなく、リハビリテーション、心理、福祉、教育など、非常に多岐にわたる専門職によって支えられています。
それぞれの職種が独自の専門性を持ち、チームとして連携することで、子ども一人ひとりの健やかな成長を多角的にサポートしています。
どの仕事も高い専門性と責任が求められますが、子どもの未来に直接貢献できる大きなやりがいがあります。
この記事で紹介した情報が、自身の興味や適性に合った職種を見つけるためのきっかけとなれば幸いです。
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