2025.10.28
作業療法

【監修:栗原実里(作業療法士)】
作業療法士を英語で表現する方法や、その略称について解説します。
臨床現場や研究活動において、英語に触れる機会は少なくありません。
この記事では、理学療法士との違いや、作業療法士に求められる英語力、そしてそのスキルを活かせる具体的な場面を紹介します。
さらに、明日から使える英会話フレーズや学習方法も取り上げ、キャリアアップを目指す作業療法士や学生の方々へ向けた情報を提供します。
作業療法士は英語で「Occupational Therapist」と表記されます。
この英語表記の頭文字を取った略称が「OT」であり、医療や福祉の現場で広く使われる略語です。
発音は「オキュペイショナル・セラピスト」に近いです。
「Occupational」という単語には「職業の」という意味だけでなく、「占有する」「従事する」といった意味合いも含まれており、人が日々行うあらゆる活動、つまり「作業」を指します。
このため、仕事だけでなく、食事や入浴、趣味活動など生活全般に関わる支援を行う専門職としてこの名称が用いられています。
作業療法士(OT)は、同じリハビリテーション専門職である理学療法士(PT)や言語聴覚士(ST)としばしば混同されることがあります。
これらの専門職は協力し合う関係にありますが、それぞれに専門領域と役割が明確に異なります。
理学療法士が主に基本的な動作能力の回復を目指すのに対し、作業療法士はより応用的、かつその人らしい生活を送るための活動に焦点を当てるという違いを説明します。
理学療法士は英語で「PhysicalTherapist」と表記され、略称は「PT」です。
理学療法士の主な役割は、怪我や病気によって損なわれた基本的な動作能力、例えば「座る」「立つ」「歩く」といった機能の回復や維持を目的としたリハビリテーションを提供することです。
物理療法(温熱、電気など)や運動療法を用いて、身体機能の根本的な改善を図ります。
一方、作業療法士は、それらの基本動作を応用して、食事、料理、仕事といった個々の患者にとって意味のある「作業」ができるように支援します。
つまり、PTが「歩けるようにする」ことを目指すなら、OTは「歩いてスーパーに買い物に行けるようにする」といった、より生活に密着した目標を設定する点が異なります。
言語聴覚士は英語で「Speech-Language-HearingTherapist」と呼ばれ、略称は「ST」です。
その名の通り、「話す」「聞く」「理解する」といったコミュニケーション機能や、「食べる」「飲み込む」といった嚥下機能に関する障害を専門とします。
失語症や構音障害、聴覚障害、摂食嚥下障害を持つ人々に対して、検査や訓練、指導を行います。
作業療法士も、高次脳機能障害を持つ患者のコミュニケーション支援に関わることがありますが、STが言語や聴覚、嚥下の機能そのものに直接アプローチするのに対し、OTはそれらの機能を用いて、いかに他者と交流し、社会生活を送るかという視点でアプローチする点が異なります。
日本国内の医療機関や施設で働く場合、作業療法士の求人で英語力が必須条件となることはまだ多くありません。
しかし、近年は日本に在住する外国人が増えており、臨床現場で英語での対応を求められる機会は増加傾向にあります。
英語力があれば、外国人患者と円滑なコミュニケーションを図ることができ、より質の高いリハビリテーションを提供できます。
また、海外の最新論文を読む際や、国際学会に参加する際にも英語力は不可欠であり、自身のスキルアップやキャリアの選択肢を広げる上で非常に有利なスキルとなります。
作業療法士が英語力を身につけることで、日々の臨床業務からキャリア形成に至るまで、様々な場面でその能力を発揮できます。
外国人患者への対応はもちろんのこと、専門家として常に最新の知識をアップデートするためにも英語は重要なツールとなります。
また、将来的には海外での活動も視野に入れることができ、活躍の場を大きく広げる可能性を秘めています。
ここでは、具体的な3つの場面を紹介します。
都市部や観光地の近くにある医療機関では、外国人患者に対応する機会が少なくありません。
英語で直接コミュニケーションが取れると、通訳を介さずに患者の症状や悩み、生活背景を詳細に把握できます。
特に作業療法では、患者の価値観や文化を理解し、その人にとって意味のある作業を目標に設定することが重要です。
細かなニュアンスをくみ取り、信頼関係を築きながらリハビリを進める上で、英語力は大きな武器となります。
評価や訓練内容の説明もスムーズに行えるため、患者の不安を軽減し、より効果的な介入を実現できます。
作業療法をはじめとする医療分野の研究は世界中で行われており、その多くは英語の論文として発表されます。
英語の読解力があれば、翻訳版を待つことなく最新の研究成果やエビデンスに直接アクセスすることが可能です。
これにより、自身の知識を常にアップデートし、日々の臨床実践に活かせます。
また、国際学会に参加すれば、世界中の研究者や実践家と交流し、最先端の情報を得たり、自身の研究成果を発表したりする機会も生まれます。
専門性を高め、より質の高いリハビリテーションを提供するためには、英語での情報収集能力が不可欠です。
英語力があれば、日本国内だけでなく、海外で作業療法士として働く道も開けます。
国によって資格の認定基準は異なりますが、世界作業療法士連盟(WFOT)の認定校を卒業していれば、海外でのライセンス取得が可能な場合があります。
また、JICAの海外協力隊員として開発途上国へ赴き、リハビリテーションの専門家として国際協力に貢献することもできます。
グローバルな視点を持ち、多様な文化の中で経験を積むことは、作業療法士としての視野を広げ、大きな成長につながるキャリアパスの一つです。
外国人患者に対応する際、完璧な英語を話す必要はありません。
まずは基本的なフレーズを覚え、自信を持ってコミュニケーションをとることが大切です。
ここでは、問診や動作指示、痛みの確認など、臨床で頻繁に遭遇する場面で使える、実践的な英会話フレーズを英語で紹介します。
これらの表現を覚えておくだけで、円滑なコミュニケーションの第一歩となり、患者との信頼関係構築に役立ちます。
患者の状態を把握するための最初のステップが問診です。
まずは”How are you feeling today?”(今日の調子はいかがですか?)といった挨拶から始めます。
具体的な症状については”Could you tell me what’s bothering you?”(どのようなことでお困りか教えていただけますか?)や”Where do you feel the pain?”(どこに痛みを感じますか?)と尋ねます。
作業療法士として日常生活の様子を把握するために”Do you have any trouble with daily activities like dressing or bathing?”(着替えやお風呂など、日常の活動で何か困っていることはありますか?)といった質問も重要です。
患者が安心して話せるよう、ゆっくりと明確に話すことを心がけます。
リハビリテーションの場面では、患者に安全かつ正確に動いてもらうための指示が不可欠です。
“Please raise your right arm as high as you can.”(右腕をできるだけ高く上げてください)のように、具体的で分かりやすい言葉を選びます。
また、”Slowly bend your knees.”(ゆっくりと膝を曲げてください)や”Please hold this position for five seconds.”(この姿勢を5秒間保ってください)など、動きの速さや時間を指定することもよくあります。
患者の安全を確保するために”Stop if you feel any sharp pain.”(もし鋭い痛みを感じたらやめてください)といった声かけも忘れないようにします。
痛みの評価は、リハビリテーション計画を立てる上で非常に重要です。
痛みの強さを客観的に把握するためには、”Onascaleofzerototen,howwouldyourateyourpain?”(0から10の段階で、痛みを評価するとどれくらいですか?)という質問が有効です。
また、痛みの性質を詳しく知るために”Canyoudescribethepain?Isitsharp,dull,orthrobbing?”(痛みを説明できますか?鋭い、鈍い、ズキズキするといった感じですか?)と尋ねます。
さらに”Doesanythingmakethepainbetterorworse?”(何かをすると痛みが良くなったり、悪くなったりしますか?)と質問することで、痛みの増悪・緩解因子を探り、より適切な介入につなげられます。
作業療法士が働きながら英語力を向上させるには、日々の隙間時間を有効活用することが鍵となります。
まず、医療英単語に特化したスマートフォンアプリや単語帳を利用し、専門用語の語彙を増やすことから始めるのが効率的です。
リスニング力向上のためには、医療をテーマにした海外のドラマやドキュメンタリーを英語字幕で視聴する方法がおすすめです。
実際の会話に近い表現や発音を学ぶことができます。
スピーキング力を鍛えるには、オンライン英会話を活用し、講師に作業療法士の役割を説明したり、症例についてディスカッションしたりする練習が実践的です。
最終的な目標として、興味のある分野の英語論文を読む習慣をつけれ、リーディング力と専門知識を同時に高められます。
作業療法士は英語で「Occupational Therapist」と表記され、一般的に「OT」と略されます。
基本的な動作能力の回復を目指す理学療法士(PT)や、言語・嚥下機能に特化する言語聴覚士(ST)とは異なり、生活全般の「作業」を通じてその人らしい暮らしを支援する専門職です。
日本国内の臨床現場で英語が必須とされる場面は限定的ですが、外国人患者の増加やグローバル化の進展により、その重要性は高まっています。
英語力は、外国人患者への対応を円滑にするだけでなく、海外の最新研究にアクセスしたり、国際学会で知見を深めたりと、専門性を高める上で大きな利点となります。
将来的には海外での就業や国際協力など、キャリアの選択肢を広げることにも貢献します。
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