-目次-
- 理学療法士は多くの方々と向き合う仕事
- 患者さんだけでなく、そのご家族の人びとも支えられる理学療法士に
理学療法士は多くの方々と向き合う仕事
理学療法士は、障がいをお持ちの方、高齢の方など、多くの方々と、個々に正面から向き合う仕事をします。
本当の意味で向き合えているかどうかは、現場で働く理学療法士でもわかりません。いつも理学療法士は自分に対しそう疑問を投げかけ、もっと理解しよう、と常に考えています。
理学療法士には、ただ患者さんやご家族が言われていることや、表出していることだけで判断しないで、相手への配慮と相手の言動から読み取る努力が必要です。そこには、ここまで理解できれば十分というのはありません。ただ、見えない部分をもっと見よう、相手をもっと理解しよう、と努力するのです。
ある脳科学者が「痛みに敏感な人程、長生きをする」と、言っていました。
更に「痛みの感じ方は皆違い、それは他者の心の痛みの理解にも繋がり、そして社会性に影響します。」、「殺人(殺傷)事件を起こした犯人達は、痛みに対する感じ方が鈍い人が多かったという研究がある。」という事なのです。
皆さんはどの様に思われますか?人間は痛みも含めて感覚(聞いたり、見たり、触ったり等)の自分の感じ方を基本にしながら、他者の感じ方を推測しているらしいのです。どんな状況に至っても、目の前の人を殴ったら、相手の痛みが想像出来るから自分の行動をコントロールする事が出来るという事でしょう。
リハビリテーションという仕事は身体・心に『痛み』を持った人達が対象です。理学療法士はその方達に向き合う事になります。人間に興味がある人・想像力が豊かな人・あるいは想像力、感性を豊かにしたいと思っている人にとって、この仕事は魅力的なそしてやりがいのある仕事です。
患者さんだけでなく、そのご家族の人びとも支えられる理学療法士に
理学療法士は、患者さんだけでなくそのご家族を支えることも必要です。
ご家族の介護負担は負担が大きくなりますと、患者さんとともに生活を継続することが難しくなり大問題です。そこには私たちに見えないことが多く存在しています。ご家族の介護負担には、例えば就寝時に、本人に対する着替えや、ベッドメイク、おむつ交換、夜間の水分補給、床ずれなどがあれば薬を塗ったり貼ったりして、それから自身の寝る支度をします。
このように最後に床に就き、翌朝は、誰よりも先に起きて、おむつ交換や、着替え、その他介助があり、それから自身の着替えなどを行います。睡眠時間だって短くなってしまうのです。これが毎日続くのです。このように同居されるご家族には、倍以上の時間と労力がかかることが多いので、そういった事に気が付かないで、ご家族の方に、理学療法士が自宅での運動や介助を指導してしまいますと、途端に介護負担が増して、介護疲れが原因で在宅生活が続けられなくなる、なんてことも考えられます。
こういった介護負担は、理学療法士から理解しようとしないと分からないことが多いのです。なぜなら、ご家族は、介護負担として何があるか、など口にされないことが多いからです。
自分が大切な家族のお世話をすることを想像してみてください。本人の前で、「○○が大変です」とか「○○について困っています」などと言えますでしょうか。大切なその人を傷付けてしまうとか、かえって本人が、家族に負担をかけてはいけないと考え遠慮してしまうことになりかねません。
理学療法士は、そういった人と人との関係に十分配慮しながらお話をお聞きしたり、相手の言動から読み取る力が必要です。この相手を理解しようとする努力は、ご家族にとっても介護負担の軽減にもなり安心して介護を続けるきっかけになる場合があります。
これから理学療法士を職業としてお考えの方、またはすでに学び始めている方には、この仕事が人に対する配慮が必要な仕事であること。そういった配慮ができるようになるために、いろいろな人の働き方、生活の仕方、生き方、に触れてほしいです。
そして周りの人々から学ぶという、謙虚な姿勢で理学療法を学んでください。