理学療法士とパラリンピックとの関わり方と障がい者スポーツトレーナー

理学療法士はパラリンピックに関われるの?

理学療法士として働く人の中で、スポーツ業界で活躍する人は多くいます。スポーツトレーナーの資格は民間資格なので、国家資格である理学療法士を取得しておくと有利に働くためです。

ただし理学療法士としてプロのスポーツ選手と関わることができる人はほんの一握り。特に働き始めてすぐに専属トレーナーとなることは難しく、まずは病院などで働き実力を身に付けることから始め、そしてスポーツトレーナーになるために必要な知識を、理学療法士の資格にプラスして、勉強する必要があります。

また、地域のクラブスポーツ施設でボランティアとして活動するなどして、実績を上げていくことも有効です。

理学療法士としてスポーツ業界で活躍できる人材になり、周りに認めてもらえるようになれば、パラリンピックといった国際的な場面に携われる可能性も十分に可能です。

障がい者スポーツトレーナーについて

理学療法士の資格にプラスアルファで、パラリンピックに関わるための資格を取得するとしたら、障がい者スポーツトレーナーが良いでしょう。

障がい者スポーツトレーナーとは、障がい者のスポーツ活動に必要な安全管理および競技力の維持・向上のサポートするためにある資格です。いわば、障がい者のためのアスレティックトレーナーといったところでしょうか。

日本全国で資格取得者はだいたい140名(2016年のデータ)くらいしかいない、まだまだ認知度の低い資格ではあります。

資格を取るには競技団体の推薦を頂いた上で「障がい者スポーツトレーナー養成講習会に参加することが条件です。講習会に参加できる要件を公式ホームページより引用します。(日本障がい者スポーツ協会|指導者育成講習会・研修会)

(1)次の1)を満たす者:A1)有資格種別

日本体育協会公認アスレティックトレーナー (2)次の1)、2)、3)を全て満たし、当協会障がい者スポーツトレーナー部会の審査を受け、会長が認めた者:B

1)有資格種別
1理学療法士 2作業療法士 3柔道整復師 4あん摩マッサージ指圧師 5灸師 6鍼師 7その他の資格(1~6の資格と同等のものと主催者が判断したもの)

2)推薦団体 (公財)日本障がい者スポーツ協会登録競技団体、都道府県・指定都市障がい者スポーツ協会・障がい者

スポーツ指導者協議会のいずれかの団体においてトレーナーとしての活動を有し、推薦がある者。 3)活動実績

1)に挙げた公認資格に関係した日常活動を2年以上有すること。 ※「日常活動」とは、トレーナー活動を職業として、または職業に近い形で実施している事を示す。

(3)2次講習会からの再受講者:C
平成 27・28 年度の1次検定試験を合格した者
※ C 区分については、再度 2 次講習会からの受講と、2 次検定試験の受験が必須となる。

研修会は1次と2次があり、1次試験は筆記、2次試験は実技試験です。

2次試験では普段どのようにして障がい者スポーツトレーナーとして活動しているかが出てしまいます。「資格を取りに行く」のではなく、日常から障がい者スポーツトレーナーとしての意識・心構えで過ごす習慣をつけることが大切です。

パラリンピックでの理学療法士の役割

東京パラリンピックの盛り上がりに伴って、理学療法士として関わりたいと思う方も増えていくでしょう。障害者の社会参加や自立を支援する理学療法士の役割は大きく、幅広い活動が期待されています。

上記のトレーナーとしての仕事だけでなく、チームスタッフ、レフェリー、シャペロン(ドーピング検査の補助をする人)など、理学療法士が活躍できる仕事は多岐に渡ります。

「障害者のスポーツ」は、特別なスポーツが存在しているのではなく障害のためにできないことをルールの変更や用具の工夫により補って行うスポーツです。クラス分け、用具の開発・工夫、コンディショニングなどの分野で、多くの理学療法士が活躍しています。

スポーツは生活を豊かにしてくれるものであり、心身の健康を与えてくれるものです。それを支えることができる理学療法士は非常にやりがいのある仕事と言えるでしょう。

理学療法士・作業療法士のキャリアアップとは。

理学療法士・作業療法士のキャリアアップとは

理学療法士・作業療法士とひとくくりにしても、実際に働く形は人それぞれです。まず、働く場所によってその先に描けるキャリアプランが変わってくるでしょう。

働く場所は、病院やリハビリテーションセンターが多いですが、福祉施設や小児に特化した施設、訪問リハビリなど様々です。そして任されている仕事に合わせて専門的な業務も多岐にわたります。

キャリアアップを目指すなら、まずは専門性のある技能を伸ばして自分の任されている分野のスペシャリストになることでしょう。

例えば現場で主任になったり、セミナーや勉強会に参加して手技を磨き、そういったセミナーを開く側のスペシャリストになれるよう努力する道です。

技能が上がれば立場的にも出世することになり年収や待遇が良くなったり、仕事の幅が増え活躍の場が広がることにも繋がります。そして何より日々対面する患者様により良いリハビリテ―ションを提供できることになります。

技能を伸ばし、リハビリスーパーバイザーと呼ばれるスペシャリストになることができれば、新しくリハビリプログラムを開発したり後輩育成のプランを考えたりする仕事もすることができます。責任も広がりますが、自分の理想とするリハビリテーションを極められ、思い描いたリハビリテーションが実現できるため、非常にやりがいのある仕事です。

経営側へのキャリアアップや独立開業

理学療法士・作業療法士の管轄はリハビリテーションに関するところまでですが、さらにその先の病院経営や施設のマネジメントを行う方向にキャリアアップすることもできます。

大きな規模を見れば見るほど現場からは離れていってしまうことになるので、舵を切る前に「自分はどんな仕事がしたいのか?」「10年後はどういった姿で働いていたいのか?」をしっかりと考える必要があります。

大病院の経営側に一理学療法士・作業療法士が関わるようになるには道のりが遠いですが、例えば訪問リハビリテ―ション施設などで新しく別の地域にも施設を増やしたいとなったときに新施設の担当を任されたりすることはよくあります。

理学療法士・作業療法士の知識とはまた別の経営やマネジメント、経済について学ぶ必要が出てくるでしょう。こういった場合は自分の施設に対しての考えだけでなく、いろんな施設のやり方や最新情報を知って対策していくのが近道です。そのような情報を得るためにも、理学療法士・作業療法士同士の繋がりや養成学校時代の教師に相談できる環境があるとよいですね。

また、独立開業して一国一城の主になるという道もあります。ただし理学療法士・作業療法士の資格は独立開業できる資格ではないので、独立開業が可能である資格を別途取得する必要があります。独立開業権のある柔道整復師を取得して接骨院を開くケースなどは多いです。

独立開業することは非常に難しいですが、まだ世の中にないオリジナルの施設を考案し作り上げていけるため魅力的なキャリアアップの道でしょう。

理学療法士・作業療法士は常に勉強が必要な職業

スペシャリストになる道を選んでも、経営や独立開業の道を選んでも、理学療法士・作業療法士である限り常に勉強は必要です。キャリアアップを目指すのであれば猶更、医学の進歩に合わせて常に研究し、コミュニケーションスキルにおいても学びを重ね、都度新しい知識と技術を吸収していかなければなりません。

理学療法士・作業療法士を目指している段階では国家資格取得がゴールのように感じてしまいますが、一生ものの資格であることを考えると資格取得はまだまだスタートラインに立った段階と言えます。

その先何十年と業界にいる場合、最初に就職した職場だけでなく様々なジャンルの職場を渡り歩く可能性もあります。そんな中で困難に出会うこともあるかもしれませんが、資格取得を目指す段階で決意した志や一緒に頑張った仲間がいれば乗り越えられるでしょう。

理学療法士を目指す高校生に必要な科目と今のうちにやっておきたいこと

理学療法士を目指している高校生の多くが、「理系に進んだ方が良いのだろうか?」「文系でも理学療法士になれるのかな?」「今のうちに勉強しておいた方が良い科目はあるかな?」と、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

そこで、この記事では高校生が高校で勉強した方が良い科目と、高校生のうちにやっておいた方が良い事をまとめます。

高校で勉強した方が良い科目

理学療法士を目指している高校生が不安に思っているであろう「文系・理系」の問題ですが、結論から言いますとどちらでも特に大きな問題はありません。

高校生のうちにしっかり勉強しておくと、理学療法士養成校に入学後役立つのは特に以下の科目です。

・国語
・数学
・理科(物理・化学・生物)
・英語
・体育

これらの科目は、理学療法士として必要な基礎知識を身につけるのに役立ちます。特に重要な科目は、国語です。意外かもしれませんが、国語は、論理的思考力を養うため、また難しい医療分野の教科書を読んだり、レポートをまとめたりするために必要となります。

また数学は、理学療法士の専門的な知識を理解するため。理科は、身体の仕組みを理解するため。英語は、研究論文を読むために必要です。体育は、運動能力を向上させるためにそれぞれ必要です。

 

 

さらに、理学療法士の仕事の中でとても大切なスキルの一つに「患者さんとコミュニケーションをとること」があります。そのため、高校でコミュニケーション能力を高めるための科目を勉強しておくと良いでしょう。例えば、英語、国語、社会科、歴史、心理学などの科目です。

理学療法士になるには、大学や専門学校で理学療法士養成課程を修了する必要があります。そのため、高校で勉強した科目は、大学や専門学校での勉強に役立ちますが、結局のところは、「進学先の大学や専門学校でどれだけ頑張って勉強できるか」がとても重要になります。

文系・理系はどちらでも構わないので、今できる勉強をしっかりやって、1日30分でも良いので机に向かって予習・復習を行い「勉強する習慣」を付けておくとよいでしょう。

コミュニケーション能力を高めよう!

理学療法士になる上で必要なことは、学校の勉強だけではありません。コミュニケーション能力を高めておくことも必要です。人と接する経験を積んでおける機会があれば、利用しましょう。

最も良いのは、部活動やアルバイトでしょう。部活動ではきちんとした挨拶ができるようになったり、チームメイトを思いやった会話ができるようになったりと人と人との関わり方を学ぶ上で最上の場だと言えます。アルバイトについては、単純作業ではなく人と接する仕事を選ぶとより良いでしょう。

スポーツジムで担当のお客さんにアドバイスをしたり、トレーナーとしてプログラムを考えたりする仕事ができるとなお良いですね。

理学療法士になると、患者さんと直接コミュニケーションをとっていくことになります。その患者さんに対して、どんなリハビリが一番いいのか。何を話すべきなのか。こういったことについて適切な判断をするために、相手の気持ちを理解することのできるコミュニケーション能力は、とても重要なのです。

患者さんとうまくコミュニケーションがとれるようになり、的確なリハビリができるようになると、患者さんの満足度が高まり、特に訪問リハビリなどでは、患者さんの口コミで評判が広がって、仕事につながっていくこともあります。

電話の対応や、挨拶の仕方、言葉づかい、メールの送り方など、社会人としてのマナーも早めに学んでおきましょう。

自分から勉強する環境を整えよう!

理学療法士は、理学療法士になってからも勉強し続ける仕事です。日々医療は進化していますし、自らの手技を高めていく必要があるからです。

変わっていく世の中に対応していく力も求められます。日本理学療法士協会は、社会保障制度論、医療経済学、栄養学、画像診断学、救急救命医学、理学療法管理学、予防理学療法学などを、新たに学習すべき科目として挙げています。今後はこのような勉強が必要になってきそうです。

そのために、養成校で学ぶカリキュラムの内容だけでなく、自分から勉強していく環境を整えておきましょう。